今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年7月10日(水) 「ドル主要通貨に対して上昇」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は緩やかに上昇し、欧州時間には108円96銭までドル高が進む。過度の利下げ観測の後退と、先週末の雇用統計の結果を引きずり、米長期金利の上昇もドル高をサポート。
  • ユーロドルは再度1.12突破を試みたものの抜けきれず。値幅も14ポイント程度とユーロ安が進む割には小動き。
  • ポンドが急落。「合意なき離脱」を巡る議会の混乱で1.2438前後まで売られ、約半年ぶりの安値を記録。
  • 株式市場はまちまち。ダウは3日続落したが、S&P500とナスダックは反発。
  • 債券相場も3日続落。長期金利は2.06%台まで上昇。
  • 金と原油は上昇したが、いずれも上昇幅はわずか。
ドル/円 108.73 〜 108.93
ユーロ/ドル 1.1200 〜 1.1214
ユーロ/円 121.85 〜 122.06
NYダウ −22.65 → 26,783.49ドル
GOLD +0.50 → 1,400.50ドル
WTI +0.17 → 57,83
米10年国債 +0.017 → 2.065%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7月ウエストパック消費者信頼感指数
  • 中 中国6月消費者物価指数
  • 中 中国6月生産者物価指数
  • 英 英5月鉱工業生産
  • 英 英5月貿易収支
  • 米 FOMC議事録(6月18−19日分)
  • 米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
  • 米 パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言
  • 加 カナダ中銀政策金利発表

ドル円は引き続き緩やかな上昇をみせ、欧州時間には108円96銭までドルが買われ、その後のNY時間でも109円台乗せはなかったものの、108円台後半で堅調に推移しています。「市場の利下げ観測が前のめりだ」とのコメントは何度か書きましたが、足元の動きは過度の利下げ期待が修正されている過程にあるようです。市場全体の動きは、さすがにパウエル議長の議会証言を控えていることで小動きですが、焦点は何と言ってもパウエル議長の発言内容にかかっているということです。議長が今月の利下げ以降の金融政策に、引き続き緩和姿勢を見せるか、あるいは、それ以降は一旦ニュートラルに戻すのかといった点がポイントになります。投資家も議長の言葉から、その次の行動のヒントを探る姿勢を強めることになります。議会証言は日本時間23時からの予定になっていますが、本日はさらに6月のFOMC議事録も公表されます。ここでは利下げは見送られましたが、その決定も全会一致ではなかったこともあり、その内容次第では為替に影響が出ることも予想されます。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、6月のFOMC会合で決定された政策金利据え置きを支持していると、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は同総裁とのインタビューの内容を報じています。同総裁は、「現時点では、どちらの方向にも金利を動かす差し迫った必要性はないというのが私の見解だ」と述べ、その理由として、「米経済の力強さは続いている。労働市場もなお極めて力強い」と語っています。(ブルームバーグ)因みに、ハーカー総裁は今年のFOMCでの投票権は持っていません。

ホワイトハウスから断続的に利下げ圧力と、パウエル議長自身にも政治的圧力がかかる中、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は9日、CNBCとのインタビューで、「パウエル議長を解任させようという試みはない」と発言し、「中央銀行の独立性を支持している」との立場を表明しています。ただその中でも、昨年12月の利上げを「取り消すよう」求めているようです。もっとも、この利上げに関してはFOMCメンバーの中にも「拙速」だったとする意見もあり、見方は別れています。

市場で再びドル高傾向が強まったことに関して、「1週間で状況がこれほど変わるものか」といったコメントが、為替市場でかなりアクティブな外銀の担当者から聞こえてきました。G20での米中首脳会議とその後の米雇用統計を経て、市場のセンチメントも、米景気の先行きに対して楽観的な見方に変わりつつあります。ただそれでもドル円については、直ぐに110円台を回復する地合いでもなさそうです。110円台を回復してさらに上昇するには、米経済の力強さを示すさらなるデータが不可欠だと考えます。今後ある程度の時間を経過し、その中で米国の優勢性が確認できれば、市場のセンチメントもさらにドル高を予想する姿勢に変わってくる可能性がありますが、それにはまだ時間がかかりそうです。

本日のドル円はややワイドに予想しますが、109円台に乗せる場面があったとしても、そこから一段と上昇する相場ではないと予想しています。ということで、レンジは108円30銭〜109円30銭程度とします。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
6/10 トランプ大統領 中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある。 --------
6/10 トランプ大統領 当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた。米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ。 --------
6/13 クドロー国家経済会議委員長 トランプ大統領は会談への強い意欲を表明したが、会談はまだ正式に準備されてない。会談が実現しない場合には重大な結果に直面する可能性がある。しかし、大統領は会談をする方を好むだろう。 --------
6/14 ロス商務長官 G20では、よくても前向きに協議を再開するという合意にとどまりそうだ。 --------
6/18 ドラギECB総裁 見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は追加の刺激策が必要になるだろう。利下げは政策手段の一部であり、資産購入も選択肢だ。 ユーロドル小幅に下落。
6/19 FOMC声明文 「見通しを巡る不確実性が高まった」「これらの不確実性と落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会は経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを注視し、景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」 ドル円は108円台半ばから108円割れまで下落。株高、債券高となり長期金利は2.02%台まで低下。
6/24 ロウ・RBA総裁 世界経済は減速しているが、なお、それほど悪くない状態にある。金融緩和が以前ほど有効でない可能性が高い。 豪ドルドル、0.6935近辺から20ポイント程上昇。
6/24 カプラン・ダラス連銀総裁 貿易を巡る緊張と不確実性がこの2カ月で大幅に高まり、見通しの下振れリスクが高まったが、それでも利下げの準備はまだ整っていない。米金融政策のスタンス変更が適切かどうか考える上で、より多くの時間をかけて状況の変化を見るのが賢明だろう --------
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和