今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月1日(木) 「FOMC、0.25%の利下げを決定」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • FOMCでは25bpの利下げを決めたものの、その後のパウエル議長の発言がタカ派的だったことでドル円は上昇。109円ちょうどまで買われ、108円70−80銭で取り引きを終える。
  • ドルが買われたことでユーロドルは1.11を割り込み、1.1060までユーロ安が進む。
  • 株式市場は大幅安。パウエル議長の「利下げサイクルの始まりではない」との発言を嫌気して3指数とも大幅安。ダウは333ドル安。
  • 債券相場は続伸。長期金利は2.01%台に低下。
  • 金は5日ぶりに反落。原油価格は在庫減少を手掛かりに5日続伸。
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7月ADP雇用者数      → 15.6万人
4−6月雇用コスト指数    → 0.6%
7月シカゴ購買部協会景気指数 → 44.4
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ドル/円 108.49 〜 109.00
ユーロ/ドル 1.1060 〜 1.1153
ユーロ/円 120.34 〜 121.12
NYダウ −333.75 → 26,864.27ドル
GOLD −4.00 → 1,437.80ドル
WTI +0.53 → 58.58ドル
米10年国債 −0.044 → 2.014%

本日の注目イベント

  • 中 7月財新製造業PMI
  • 独 独7月製造業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月製造業PMI(速報値)
  • 欧 企業決算 → バークレーズ、ロイヤル・ダッチ・シェル、BMW
  • 英 BOE金融政策発表
  • 英 BOE四半期インフレ報告
  • 英 カーニー・BOE総裁講演
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 7月ISM製造業景況指数
  • 米 7月自動車販売台数
  • 米 企業決算 → GM、ベライゾン

予想通り、FOMCでは「50bp」ではなく、「25bp」の利下げを決定しました。これ事態は織り込み済みであったことから、市場関係者はその後のパウエル議長の発言から「次の一手」を読み取る姿勢を強めていましたが、発言内容が「タカ派寄り」だったことで、株価は大きく下落。ドル円は金利低下がそれほど進まないとの見方から109円ちょうどまでドル高が進みました。FOMCの決定も、その決定を受けて発したトランプ大統領のツイートも、ほぼ想定内のものでした。

FOMCでおよそ10年半ぶりに利下げを決めたことで、FF金利の誘導目標はこれで2.00〜2.25%になりました。パウエル議長はその後の会見で、「一度きり(の利下げ)とは言っていない」としながらも、「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と述べ、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」と語りました。市場は、今回の利下げも含め、年内に2〜3回の利下げがあると予想していただけに、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」といった部分に反応し、株価が大きく下げ、ダウは一時400ドルを超える下げを見せました。このところの株価の上昇は、決して企業業績が良くて買われたわけではありません。「今後も金利低下が進む」という想定の下に最高値を更新し続けてきたわけで、昨日の株価の大幅下落は、その根底が崩れた以上ある意味当然と言えます。いつものことながら、市場は前のめりする傾向があります。「年内4回の利下げ」、「今回は50bpの利下げ」は、いずれもオーバーシュートだったということです。

正直なところ、筆者もパウエル議長の発言には驚きました。市場の利下げ期待に、これほど急ブレーキをかけることは想定外でした。せいぜい緩和スタンスを維持しながらも、今後のデータ次第では利下げのスピードは緩やかになるといった、「中立的な発言」を予想していました。この会見後、トランプ大統領は、「長期にわたる積極的な利下げサイクルの開始を期待していた」とツイッターで批判し、そうすれば、「中国や欧州連合など諸外国に遅れを取らずにすむ」と指摘し、その上で、「いつものことだが、パウエル議長はわれわれを失望させた」と述べていました。

FOMC声明文では、「経済見通しに関する世界的な動向と落ち着いたインフレ圧力が示唆するものを考慮して、委員会はFF金利誘導目標のレンジを2.00−2.25%に引き下げることを決定した」と記されています。また「不確実性」も残っていると指摘しています。(ブルームバーグ)世界的な景気減速や米中に代表されるように、貿易戦争の嵐が吹き荒れており、この先、好調な米経済にもその影響が及ぶ可能性があることを鑑み、2015年12月から始まった「利上げサイクル」を一旦修正した動きと捉えることができます。

パウエル発言を受けて、ドル円は109円ちょうどまで買われましたが、その後押し戻されています。今回も含めて、ドル円が7月に109円前後を試したのは3回ありますが、全て押し戻されており、このレベルが目先の上値の壁になりつつあります。輸出業者のみならず個人投資家も含めて、この先「円高傾向が続く」と予想していることが、この水準にドル売りが集まる背景かと思います。もっとも、この水準が目先のドルの天井になるのかどうかは分かりませんが、貿易問題は対中国だけではなく、EUとも続いています。また日米貿易交渉もこれからが本番です。また、ここにきて「為替介入」の話題も聞こえています。加えて、イラン問題もイラン側の出方次第では軍事行動に発展する可能性もあります。個人的にもまだドル下落の可能性が高いと予想していますが、それでも108円台を維持しているドル円は、よく健闘していると言えます。

明日は早くも7月の雇用統計が発表されます。ここでも108−109円のレンジが抜けないようだと、今月もドル円は108円台で推移する可能性が高まります。「8月は1年で最も円高が進む月」・・・。今週の経済紙にこんな記事もあり、筆者も取材を受けましたが、1990年から調べても、28回のうち8月は18回が円高でした。この辺りは頭の片隅の入れておいてもいいかもしれません。本日は108円20銭〜109円20銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
6/10 トランプ大統領 中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある。 --------
6/10 トランプ大統領 当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた。米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ。 --------
6/13 クドロー国家経済会議委員長 トランプ大統領は会談への強い意欲を表明したが、会談はまだ正式に準備されてない。会談が実現しない場合には重大な結果に直面する可能性がある。しかし、大統領は会談をする方を好むだろう。 --------
6/14 ロス商務長官 G20では、よくても前向きに協議を再開するという合意にとどまりそうだ。 --------
6/18 ドラギECB総裁 見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は追加の刺激策が必要になるだろう。利下げは政策手段の一部であり、資産購入も選択肢だ。 ユーロドル小幅に下落。
6/19 FOMC声明文 「見通しを巡る不確実性が高まった」「これらの不確実性と落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会は経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを注視し、景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」 ドル円は108円台半ばから108円割れまで下落。株高、債券高となり長期金利は2.02%台まで低下。
6/24 ロウ・RBA総裁 世界経済は減速しているが、なお、それほど悪くない状態にある。金融緩和が以前ほど有効でない可能性が高い。 豪ドルドル、0.6935近辺から20ポイント程上昇。
6/24 カプラン・ダラス連銀総裁 貿易を巡る緊張と不確実性がこの2カ月で大幅に高まり、見通しの下振れリスクが高まったが、それでも利下げの準備はまだ整っていない。米金融政策のスタンス変更が適切かどうか考える上で、より多くの時間をかけて状況の変化を見るのが賢明だろう --------
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和