今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月5日(月) 「ドル円続落し106円台半ばへ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • 7月の雇用統計は良かったものの、米中貿易戦争の行方に対する不安からドル円はさらに下落し、106円51銭を付ける。長期金利が急低下するなど、リスク回避の流れが強まり、円が買われた。
  • ユーロドルもドル安の流れから反発。1.1116までユーロの買い戻しが進む。
  • 株式市場は続落。米中通商問題が一段とエスカレートしたことが懸念され、S&P500は5日続落し、ダウも4日続落。
  • 債券相場は一段と上昇し、長期金利が1.84%台まで低下。
  • 金は大幅に続伸。一時は1461ドル台まで買われ、2013年5月以来となる高値を記録。原油は反発。
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8月失業率        → 3.7%
8月非農業部門雇用者数  → 16.4万人
8月平均時給 (前月比) → 0.3%
8月平均時給 (前年比) → 3.2%
8月労働参加率      → 63.0%
6月貿易収支       → −522億ドル
7月消費者信頼感指数   → 98.4
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ドル/円 106.51 〜 107.28
ユーロ/ドル 1.1079 〜 1.1116
ユーロ/円 118.26 〜 118.92
NYダウ −98.41 → 26,485.01ドル
GOLD +25.10 → 1,457.50ドル
WTI +1.71 → 55.66ドル
米10年国債 −0.048 → 1.845%

本日の注目イベント

  • 中 中国7月財新サービス業PMI
  • 中 中国7月財新コンポジットPMI
  • 独 独7月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月総合PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏7月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 企業決算 → HSBC
  • 米 7月ISM非製造業景況指数

トランプ大統領が中国に対する関税問題をさらにエスカレートさせたことで、金融・商品市場ではリスク回避の流れが一段と加速しています。ドル円は6月に記録した円の直近高値を抜き、106円51銭までドル安円高が進みました。これで、次の目安は今年1月3日の早朝に記録した105円近辺ということになり、やや円高に弾みがつきそうな雰囲気です。

米中貿易戦争は解決が長引くとは見られていましたが、この段階で中国製品に対する制裁関税第4弾が発動されるのは想定外でした。一部のメディアも報じているように、2020年の大統領選を意識しての行動かもしれません。「全ての政策は、2020年の大統領選に勝利するため」といった見方も、決してオーバーなことではないのかもしれません。今回のトランプ氏の決定を受け、円だけではなく、安全資産の金が1461ドル台まで急騰し、2013年5月以来、実に6年3カ月ぶりの高値まで買われました。また、米国債も買われ、長期金利は2016年11月以来の低水準まで低下してきました。安全資産が買われ、リスク資産が売られる展開です。

中国に対する関税第4弾を9月から実施するという決定で、先週末の雇用統計の影がやや薄くなった印象でしたが、7月の雇用統計は比較的良好でした。失業率は3.7%と予想通りで、非農業部門雇用者数は16.4万人とまずまずの結果でした。また賃金の伸びも好調で、平均時給は前年同月比で3.2%増と、こちらも市場予想を上回っており、労働市場は引き続き堅調だということが確認できます。今後の焦点の一つがFRBの利下げ回数になりますが、好調な労働市場が続けば、利下げに対する抑止力にはなると見られます。年内1回から2回の利下げが見込まれる中、今後は雇用統計の結果がこれまで以上に注目されるのではないでしょうか?昨年後半あたりから雇用統計の結果が市場に与えるインパクトが小さくなりましたが、再び「名門復活」の日もそう遠くない気がします。

米国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は4日FOXニュース・サンデーとのインタビューで、FRB議長の今回の利下げに対してトランプ大統領と同じ認識を示しています。同氏は、「実際はパウエル議長が1ポイント利上げをし、量的引き締めを行ったことがGDPの伸び率を少なくとも1ポイント押し下げており、議長の責任にほかならない」と、7月31日のFOMCで25bpの利下げを決めた根拠として、パウエル議長が米中貿易問題の緊張を挙げたことを批判しています。(ブルームバーグ)

ドル円は年初来の安値が視野に入ってきたと思われます。上でも述べたように、105円前後が大きな節目と見ていますが、この水準を割り込むのかどうかは、今後の相場の動きにとっても重要です。今月はFOMCがありません。次回は9月17〜18日に開催されますが、ここで引き続き利下げが実施されるのかどうかが今後の焦点です。それまでには様々な経済指標も発表されますので、この結果を分析することは当然必要ですが、9月FOMCでの当局の政策スタンスを汲み取るのには、今月22日〜24日に行われる恒例の、カンザスシティ連銀主催の「ジャクソンホールでのシンポジューム」が注目を集めます。この会合に世界中から中銀総裁やエコノミスト、あるいは企業経営者が集います。今年の会合は「Challenges for Monetary Policy」(金融政策への挑戦)と題してシンポジュームが行われます。詳細はまだ分かっていませんが、パウエル議長の講演も予定されると思われます。

本日のドル円は106円10銭〜107円20銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
6/2 中国国防相 対話したいならドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている。 --------
6/2 王受分中国商務次官 米中貿易協議の中断について米国に全責任がある。今後いかなる議論も誠実さと相互尊重、平等を基礎におく必要がある。全てが合意されるまで、何も合意はない。 --------
6/3 ブラード・セントルイス連銀総裁 インフレ率とインフレ期待を目標に近づけるのを助け、予想より急激な景気減速に備えた保険を確保するためにも、政策金利に下方向の調整を加えることは近く正当化される可能性がある。貿易の抑制が米経済に直接及ぼす影響は比較的小さいが、世界の金融市場を通じて広がる影響はより大きくなる可能性がある。 ドル円108円台前半から107円台後半に。
6/4 パウエルFRB議長 これまでと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。労働市場は力強く、インフレ率は当局の対称的な2%の目標付近にある。 NYダウが512ドル急騰するなど、米国株はほぼ前面高の展開に。
6/4 エバンス・シカゴ連銀総裁 インフレがやや低めのため必要に応じて政策を調整する余地はあるが、経済のファンダメンタルズは引き続き底堅い。個人消費も底堅い。これが実際に何を意味するのかわれわれは熟慮する必要がある。 --------
6/5 カプラン・ダラス連銀総裁 (政策金利を引き下げるという)その判断を下すには時期尚早だ。 --------
6/6 ドラギ・ECB総裁 最新の経済指標は世界的な向かい風がユーロ圏経済の見通しを圧迫していることを示している。理事会は不測の事態には行動し、あらゆる措置を取る準備ができている。 --------
6/10 トランプ大統領 中国の習近平国家主席がG20での会談に応じない場合、中国からの輸入品3000億ドル(約32兆5000億円)に対して直ちに25%の関税を課す可能性がある。 --------
6/10 トランプ大統領 当局は大きな誤りを犯し、私の言うことを聞かなかった。金利を大幅、かつ急速に上げすぎた。米国の金融当局はわれわれにとって、とても有害だ。 --------
6/13 クドロー国家経済会議委員長 トランプ大統領は会談への強い意欲を表明したが、会談はまだ正式に準備されてない。会談が実現しない場合には重大な結果に直面する可能性がある。しかし、大統領は会談をする方を好むだろう。 --------
6/14 ロス商務長官 G20では、よくても前向きに協議を再開するという合意にとどまりそうだ。 --------
6/18 ドラギECB総裁 見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は追加の刺激策が必要になるだろう。利下げは政策手段の一部であり、資産購入も選択肢だ。 ユーロドル小幅に下落。
6/19 FOMC声明文 「見通しを巡る不確実性が高まった」「これらの不確実性と落ち着いたインフレ圧力を考慮し、委員会は経済見通しに関する今後の情報が示唆するものを注視し、景気拡大や力強い労働市場、対称的な2%目標近くのインフレの維持に向けて適切に行動する」 ドル円は108円台半ばから108円割れまで下落。株高、債券高となり長期金利は2.02%台まで低下。
6/24 ロウ・RBA総裁 世界経済は減速しているが、なお、それほど悪くない状態にある。金融緩和が以前ほど有効でない可能性が高い。 豪ドルドル、0.6935近辺から20ポイント程上昇。
6/24 カプラン・ダラス連銀総裁 貿易を巡る緊張と不確実性がこの2カ月で大幅に高まり、見通しの下振れリスクが高まったが、それでも利下げの準備はまだ整っていない。米金融政策のスタンス変更が適切かどうか考える上で、より多くの時間をかけて状況の変化を見るのが賢明だろう --------
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和