今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月6日(火) 「円105円台、NYダウ一時950ドル急落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • 東京タイムに105円台後半まで売られたドル円はNY時間では小康状態。106円前後で小動きとなり、長期金利の低下にも反応薄。
  • ユーロドルはさらに買い戻しが進み、1.12台まで反発。
  • 株式市場は大幅続落。アジア市場での大幅な株安を受け、ダウは一時950ドルを超える下げに。S&P500も5日続落し、この日は3%を超える下落に。
  • 債券相場は一段と上昇し、長期金利は2016年1月以来となる1.70%台まで低下。
  • 金は大幅に続伸。原油は反落。
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7月ISM非製造業景況指数 → 53.7
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ドル/円 105.90 〜 106.23
ユーロ/ドル 1.1170 〜 1.1213
ユーロ/円 118.47 〜 118.93
NYダウ −767.27 → 25,717.74ドル
GOLD +19.00 → 1,476.50ドル
WTI −0.97 → 54.69ドル
米10年国債 −0.138 → 1.707%

本日の注目イベント

  • 日 7月景気先行指数(速報値)
  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 豪 豪6月貿易収支
  • 日 6月景気動向指数
  • 米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演

トランプ大統領が下した「制裁関税第4弾」は、単に「貿易戦争」を激化させただけでなく、「通貨戦争」にまで波及しそうな勢いです。昨日の朝方、人民元が対ドルで7.0を超え、11年ぶりの「ドル高人民元安」が進み、それをきっかけに、円高が進み、日本株も大きく下げ幅を拡大しました。中国人民銀行は、「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」との声明を発表しました。7.0という水準は、これまで中国人民銀行が守ってきたレベルでしたが、人民元安を容認することで、国内の輸出企業を優位にするという意図が見えます。このままでは9月1日から、中国からの米国へのほぼ全ての製品に10%の関税がかかり、中国製品の値段が上がることで競争力が低下します。その値段の部分を、為替で「補完」しようという目的が見られるようです。この動きに日本株は昨日のザラ場で580円程まで下げ幅を拡大する場面もあり、ドル円は105円78銭前後まで一気に円高が進み、その後のNY市場でもダウは一時950ドルを超える下げを見せ、長期金利は1.70%台まで低下。リスク資産が大きく売られました。

問題はこれで終わりません。人民元安を受けて、トランプ氏は昨日早朝にツイッターで、「為替操作だ」と非難し、「中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた」と述べ、「これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」と主張しました。トランプ氏がさらに金融当局への利下げ圧力を強めることが予想され、それを織り込む格好で米長期金利が一段と低下し、米金利の低下がドル円を押し下げ、さらに円高が日経平均を押し下げるといった「負のスパイラル」に陥って来ました。

さらに、今朝7時ごろから106円近辺だったドル円が再び下げ足を速め、105円台半ばまで一段と円高が進みましたが、背景は米財務省が中国を「為替操作国」(Currency Manipulator)に認定したとの報道でした。ムニュ―シン財務長官は「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」とのコメントを発表しています。(ブル−ムバーグ)まさに「通貨戦争」の様相を呈してきましたが、円はその「とばっちり」を受けているといった状況です。

以前この欄で、ドル円は米長期金利の低下が続く以上はドルの上値は重く、円高傾向が続くといったコメントを残しました。それでも米金利の低下傾向を好感してNY株式市場が上昇し、何度も「史上最高値」を更新する動きを見せ、この株価の上昇がドル円下落の抑止力になっていました。そして、「問題は、株価が何らかのきっかけで大きく売られると、さらに金利が低下し、ドル下落のバッファーがなくなり、円高が一段と進む可能性がある」と指摘しました。足元の動きは、まさにそのような状況になりつつあります。米国内では、今後物価上昇に加えて株価の下落から個人消費も低迷し、景気悪化を防ぐためFRBが積極的に利下げに踏み切ることも予想され、ドル円は反転するきっかけがつかめない状況が続きます。

本日も日本株の下落に伴って、ドル円は下値を試す展開になりそうです。日本株がさらに下落し、今夜のNYでも同じように株が一段安になるようだと、105円を割り込む事態もあるかもしれません。「貿易戦争」と「通貨戦争」がどこまで拡大していくのか出口は見えず、闇夜は深まるばかりです。本日のドル円は105円〜106円20銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和