今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月8日(木) 「金融・商品市場の動揺続く」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は米長期金利の急低下と株価の急落でドル売りが強まり、105円50銭までドル安が進む。ただその後は金利と株価が上昇したことで106円26銭前後までドルが反発。
  • ユーロドルも1.1242まで買われた後、1.12を割り込む水準まで反落。
  • 株式市場は世界経済の減速懸念から急落したが、その後急反発する。ダウは一時600ドル近く下げたが買い戻しが入り、22ドル安。一方ナスダックとS&P500は小幅ながらプラスで引ける。
  • 債券相場は朝方に急騰。長期金利は一時1.6%を割り込み、2年6カ月ぶりの低水準を記録。株価の反発もあり、その後は1.73%台まで上昇する。
  • 金は続伸し1500ドル台に乗せる。原油は在庫が膨らんでいたことで大幅続落。
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6月消費者信用残高 → 14.59b
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ドル/円 105.50 〜 106.26
ユーロ/ドル 1.1191 〜 1.1242
ユーロ/円 118.43 〜 119.09
NYダウ −22.45 → 26,007.07ドル
GOLD +35.40 → 1,519.60ドル
WTI −2.54 → 51.09ドル
米10年国債 +0.032 → 1.734%

本日の注目イベント

  • 日 6月国際収支
  • 日 7月景気ウオッチャー調査
  • 中 中国 6月貿易収支
  • 欧 ECB経済報告
  • 英 英6月鉱工業生産
  • 米 新規失業保険申請件数

金融・商品市場の動揺が収まりません。昨日のNY市場では、為替だけではなく、債券、株、金、原油などほぼ全ての市場で乱高下が見られました。ニュージーランド準備銀行が50ベーシスの利下げを断行しました。利下げは予想されていましたが、一気に50ベーシスの利下げはサプライズで、景気に対する不確実性が高まっていることで、予防的な政策を取ったと受け止めています。これで隣国オーストラリアも、次回の会合でさらに利下げに踏み切る可能性が高まったと思います。

昨日はインドも利下げを行い、インドはこれで4会合連続の利下げを行ったことになります。その他にも多くの新興国が利下げを行っており、今後世界経済の鈍化が急速に進むとの見立てが広がっていることを物語っています。昨日米株式市場が朝方に大幅安を見せたのはこのような状況を織り込んだ動きで、債券市場でも安全資産の債券が買われ、金利が急低下し、ドル円はこの動きに反応して105円台半ばまで売られています。市場はその後平常心を取り戻したことで、ひとまず大混乱は避けられましたが、そもそもその根底には、「貿易戦争」があることは言うまでもありません。米中貿易戦争は出口が見えず、さらにトラン大統領は次の標的は欧州だと豪語しており、多くの国が利下げ競争に走るのも、むべなるかなといったところです。

多くの国の利下げを目にしたトランプ氏は、あらためてFRBを批判しました。いつものように、ツイッターで、「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する」と述べ、「当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」と、再び大幅な利下げを要求しています。恐らく、景気の鈍化傾向も、好調だった米株式市場が急速に下げに転じたのも、FRBが小幅な利下げに留めたことが原因だと断じているのでしょう。自身の言動が世界の金融・商品市場を混乱させていることを棚に上げ、FRBのせいにしているトランプ氏。個人的には非常に危惧しています。今週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に以下のような寄稿文が掲載されました。「連邦準備制度とFRB議長は、短期的な政治的圧力、特に政治的理由で解任や降格される危険から自由な立場で、米経済の利益を最優先に独立して行動することが認められるべきだという確信をわれわれは共有している・・・・」この寄稿文の「われわれ」とは、ジャネット・イエレン前FRB議長とベン・バーナンキ元FRB議長、それに、アラン・グリーンスパン元FRB議長の3名です。FRBの独立性が、これまでで最も脅かされていることに危機感を感じたことで、3名の議長経験者が連名で寄稿したと思われます。

市場の混乱はまだ続きます。そもそもリーマンショク後に異次元の緩和策を長期間にわたって行ってきたため、市場のマネーがジャブジャブとなっており、そのマネーがより有利な運用先を求めて瞬時に移動していることが窺えます。移動するマネーが大きければ大きいほど、相場の振幅も大きくなります。ここは慎重に行動することが肝要です。

本日のドル円は105円70銭〜106円70銭程度を予想しますが、105円台半ばは2度試して押し戻されており、目先のサポートを形成しつつあります。一方上値は、106円半ばを超えれば、「1時足」では雲抜けが完成し、上昇機運も高まることも予想されます。ただ、この雲は「帯状」になっており、値動きが限定的だったことを表しており、それほど強い抵抗帯ではありません。そのため、抜けても上昇の勢いがそれほど強まるとも思えません。むしろ、これまでの雲の形状を見ると、下落の雲がドルの上昇を抑えて、徐々に相場を押し下げている様に見えます。また日本株の弱さは突出しており、日本株が大きく上昇しないかぎり、ドル円のセンチメントも好転しない状況です。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
8/6 トランプ大統領 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和