今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月13日(火) 「香港、アルゼンチンなど地政学的リスク拡大」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は欧州時間に約7カ月ぶりとなる105円05銭を記録。NYでは朝方の105円12銭を底値にドルが買い戻されたが、上値は重く105円43銭止まり。その後やや値を下げて引ける。
  • ユーロドルは新たな動意もなく1.12を挟む展開。
  • 株式市場は大幅安。香港での大規模デモや、アルゼンチンペソの急落。さらに米中貿易戦争長期化などの懸念からダウは390ドル下げ、他の主要指数も3日続落。
  • 債券相場は急上昇。長期金利は1.65%台へと低下。
  • 金は3日ぶりに反発し、原油は3日続伸。
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7月財政収支 → 119.7b
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ドル/円 105.12 〜 105.43
ユーロ/ドル 1.1187 〜 1.1230
ユーロ/円 117.62 〜 118.24
NYダウ −389.73 → 25,897.71ドル
GOLD +8.70 → 1,517.20ドル
WTI +0.43 → 54.93ドル
米10年国債 −0.099 → 1.645%

本日の注目イベント

  • 独 独7月消費者物価指数(速報値)
  • 独 独8月ZEW景況感指数
  • 英 英失業率(4ー6月)
  • 米 7月消費者物価指数
  • 米 4−6月期家計債務残高

ドル円は欧州時間に105円05銭まで売られ、105円割れは回避できたものの、ついに105円割れが時間の問題となってきました。NYではややドルが持ち直したものの上値は重く、香港国際空港での大規模デモやアルゼンチンでは大統領予備選で、野党候補が元首相のマクリ氏に予想外の大差をつけて首位になったことなどが材料となり、NYダウは再び大幅な下落に見舞われています。ドル円もドルの戻りを売りたいとする姿勢が優勢のようです。

香港での大規模なデモに対して中国報道官は、「急進的なデモ隊の行動はテロ行為であり、香港の安定性への挑戦だ。警察による厳重な法執行を支持する」との声明を発表しています。また米中貿易戦争の出口が見えない状況の中、中国人民銀行の陳元副総裁は黒竜江省で開かれたイベントで、米国が中国を為替操作国と認定したことは、「貿易戦争が金融戦争、通貨戦争へと姿を変えつつあることを意味する」と述べ、「米国は地政学的な見地から、米国債を保有する中国に行動を抑制されていることを考えている。つまり、米国に弱点が全くないと言うことではない」と論じています。(ブルームバーグ)米国債を大量に保有する中国が、それを武器に使うということは予想されるものの、先週この欄で述べたように、実際問題としては、売却行為が自分の首を絞めることとなり、言葉で言うほど簡単ではありません。米国が中国に対して制裁関税を課したことについても、中国共産党機関紙・人民日報は「米国からのいかなる挑戦や圧力にも中国は打ち勝つことが可能だと宣言する」記事を準備していると、環球時報の編集長がSNSで発言しています。

上述のように、香港やアルゼンチンに加え、イタリアでも政治的混迷が続き、さらにインドとパキスタンの間でも緊張が高まっています。このように米中貿易戦争以外でも地政学的リスクが高まっており、安全通貨の円が買われ易い状況が続いています。CFTCが6日に発表した建玉明細によると、シカゴ先物市場における大口投機家は、円持ち高をロングにシフトし、ネットロングは2016年以降で最大となる1万561枚になっています。円高がさらに進むという見立ての下、円買いを膨らませている状況です。

ドル円はちょうど今月1日の109円台から「雲抜け」(1時間足)を果たした後、一度も雲を上回ることなく下落を続けています。そのため、この雲を上抜けすれば、一旦は下落が止まり、反転するサインになるかもしれません。ドルショートの投資家にとっては、決済タイミングを見るうえで参考になろうかと思います。本日も日本株の下落に伴ってドル円は105円方向を試すことが予想されます。ただ、105円が大きな節目になる可能性もあります。気になるのは、ここにきて筆者も含め多くの専門家や投機筋が、円高がさらに進むと予想し始めて いるという点です。105円前後が当面の底値になる可能性も、上記理由からわずかですがないとは言えません。注意が必要です。

本日のレンジは104円80銭〜105円70銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
8/6 トランプ大統領 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 --------
8/8 トランプ大統領 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和