今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月15日(木) 「NYダウ今年最大の下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は前日の上昇から一転し大きく売られる。NYダウが800ドルを超える下落を見せ、米長期金利が1.57%台まで急低下したことで、ドルは105円65銭まで下落。
  • ユーロドルは小幅に下落。ユーロ円の売りが相場を押し下げ、1.1131までユーロ安が進む。ユーロ円も117円78銭前後まで下げる。
  • 株式市場は主要3指数とも3%近く下げ、ダウは800ドル安と、今年最大の下げに。米債券市場で「逆イールド」が発生するなど、景気後退懸念が再燃。
  • 債券相場は急騰し10年債利回りは1.57%台へと急低下。2年債が1.6%台と、10年債を上回る。
  • 金は反発し、原油価格は大幅に反落。
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7月輸入物価指数 → 0.2%
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ドル/円 105.65 〜 106.11
ユーロ/ドル 1.1131 〜 1.1190
ユーロ/円 117.78 〜 118.55
NYダウ −800.49 → 25,479.42ドル
GOLD −13.70 → 1,527.80ドル
WTI +1.87 → 55.23ドル
米10年国債 −0.124 → 1.579%

本日の注目イベント

  • 豪 豪7月雇用統計
  • 日 6月鉱工業生産(確定値)
  • 米 7月小売売上高
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 7月鉱工業生産
  • 米 7月設備稼働率
  • 米 8月FHFA住宅価格指数
  • 米 企業決算 → アリババ、エヌビデア、ウォルマート

前日のNY市場で米中貿易を巡る明るいニュースが出たことで、107円手前までドル高が進んだものの、その流れはわずか1日で終わったようです。昨日のNYでは、世界的な景気減速が材料となり、米10年債利回りと2年債利回りが逆転する、「逆イールド」が発生したことで、近い将来に米国がリセッションに陥るとの観測が台頭。これが株価を押し下げ、NYダウは今年最大の下げとなる800ドルの下落でした。ドル円は長期金利の低下に押され、105円65銭まで売られ、前日の上昇分をほぼ吐き出した格好です。

米債券利回りの「逆イールド」はすでに3カ月物や3年債などでも見られましたが、「本命」の2年債との逆転は、実に12年ぶりのことです。10年債と2年債で「逆イールド」が発生すると、その後数年以内にリセッション入りしていることは、過去の事実が示しています。リセッションを巡っては、セントルイス連銀のブラード総裁が昨日、「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」と述べ、日本では20年にわたって低金利が続き、その間低インフレやマイナスが続いたことを例にあげ、「そうしたわなを回避する方法は何か。それが今回の枠組み見直しでの重要な課題だと思われる」と語っています。(ブルームバーグ)

またトランプ大統領もFRBの政策を批判し、「(パウエル議長は)何も分かっていない」し、「中国は米国の問題ではない。香港の状況は良くないが、米国の問題は米金融当局だ。過去の利上げは幅もスピードも行き過ぎていた」とツイートし、さらに別のツイートで、「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イードカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」(ブルームバーグ)と、一段と批判のトーンを上げています。トランプ氏は以前にも、「われわれの問題は中国ではない、FRBだ」と述べたこともあり、FRBに対する圧力をさらに強めています。

米国がこの後リセッションに入るのかどうかは、今しばらく経済データを読み解く必要がありますが、FRBは9月の会合では少なくとも25bpの利下げは避けられないと思います。個人的には50bpの利下げも十分考えられる情況になってきたと感じます。それにしても、昨日の金融・商品市場の動きは鮮烈でした。デスクの上にあるブルームバーグ専用の画面では、「デイブレイク」というページがあり、今朝そこには「新たな警報・・・・米英で逆イールド。米政権、中国に譲歩する用意ない・・・ナバロ氏」との文字が踊っており、その背景には黒い雲が湧き上がり、暗雲急を告げている構図になっています。本日も日本株の大幅な下げは避けられないところでしょう。ひょっとしたら日経平均株価が2万円の攻防になるかもしれません。そこまで売られることはないとしても、この先好材料は見当たりません。ドル円も105円05銭前後が壁になっていますが、米長期金利の低下傾向が続いていることから、「3度目の正直」の可能性も否定できません。予想レンジは105円〜106円20銭といったところでしょうか。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
8/6 トランプ大統領 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 --------
8/8 トランプ大統領 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 --------
8/14 トランプ大統領 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和