今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月21日(水) 「コンテ・イタリア首相辞任」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • ドル円は小幅に下落。イタリアのコンテ首相が辞意を表明したことで、イタリアの政局不安から円が買われた。ドル円は106円17銭まで下落したが重要イベントを控え動きは緩慢。
  • ユーロドルは水準を下げ1.1065まで下落。イタリアの政治的リスクが意識され上値を切り下げる。
  • 株式市場は反落。欧州の政治的リスクが意識され、ダウは117ドル下落。
  • 債券相場は上昇。イタリアの政局不安から、イタリアやドイツの債券が買われ、米国債にも買いが集まる。長期金利が1.55%台まで低下。
  • 金は3日ぶりに反発、原油も小幅ながら反発。
ドル/円 106.17 〜 106.47
ユーロ/ドル 1.1065 〜 1.1106
ユーロ/円 117.57 〜 118.04
NYダウ −173.35 → 25,962.44ドル
GOLD +4.10 → 1,515.70ドル
WTI +0.13 → 56.34ドル
米10年国債 −0.051 → 1.555%

本日の注目イベント

  • 米 FOMC議事録(7月30−31日分)
  • 米 7月中古住宅販売件数
  • 米 日米貿易交渉の閣僚会議(ワシントン、22日まで)
  • 加 カナダ7月消費者物価指数

今週末に「ジャクソンホール」でパウエル議長の講演を控えていることもあり、ドル円は106円台でもみ合いが続いています。米長期金利はある程度の動きを見せるものの、ドル円の反応はいまひとつぱっとしません。もっとも昨日は特段経済指標の発表もなく、動きにくい面はありました。やや材料になったのが、イタリアの政局不安でした。

イタリアのコンテ首相は20日、マッタレッラ大統領に辞表を提出しました。コンテ氏はサルビーニ副首相が解散総選挙を求めていたことについて、利己的で無責任だと非難し、毎年選挙を実施するのはイタリアの利益にならないと指摘し、その上でコンテ氏は現政権の活動は、「これをもって終了する」と表明しました。イタリアの政治的リスクが再び表面化したことで、昨日はイタリア国債だけではなく、ドイツ国債も買われ、金利が低下しています。これら一連の流れから米国債にも買いが入り、金利低下、ドル円下落と、いつものリスク回避の流れが進んでいます。今後は、マッタレッラ大統領があらたな連立に向けた協議をどこまでリードできるかどうかにかかっているようです。

もっとも、イタリアの政局不安は今に始まったことではなく、この先市場の関心がそれほど高まるとは思えません。現時点では、やはり今週末の「ジャクソンホール」でパウエル議長がどのような内容の発言を行うのかが最大の関心事です。発言次第では9月のFOMCでの利下げ幅が50bpになる可能性も十分あると考えます。利下げ幅を巡っては、トランプ大統領が引き続き圧力をかけています。19日は、「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」と具体的な下げ幅にも言及し、この日は「量的緩和」という言葉もツイートしています。また昨日も同じように、「米利下げを目にしたい。ずいぶん前にしていなければならなかったからだ」(ブルームバーグ)と述べ、圧力をかけ続けています。仮にトランプ氏が求めるように今後1%の利下げがあるようなら、米国株が買われ、株式市場に再び安心感が戻ってきます。トランプ氏にとって、大統領選を有利に進めるためには、株価の上昇は喉から手が出るほど欲しいといったところでしょう。全ての言動が2020年大統領選での勝利につながっていると見られます。

ドル円は上記「ジャクソンホール」までは106円台で推移しそうな気配です。ただユーロドルが再び下値を試す動きになっています。イタリアのあらたな政局不安という材料が出て来たこともありますが、8月1日に記録した直近安値である1.1027を割り込むようなら、ドル円も107円近辺までドル高が進むことも考えられます。ユーロドルの動きにも目配りが必要です。本日のドル円は105円90銭〜106円70銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
8/6 トランプ大統領 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 --------
8/8 トランプ大統領 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 --------
8/14 ラード・セントルイス連銀総裁 「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセッションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」 --------
8/14 トランプ大統領 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 --------
8/19 トランプ大統領 「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和