今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

2019年8月22日(木) 「7月のFOMCでは2人の委員が利下げに反対」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

  • 週末のジャクソンホールを控えドル円は106円台半ばで小動き。FOMC議事録では7月の利下げが政策軌道に対する再検証の一環だとし、パウエル議長の発言と一致した。
  • ユーロドルは1.11を挟んだ展開。1.1080まで下落し、底値を試すも動きは緩慢。
  • 株式市場は大幅高を演じたものの、午後には議事録の公表を受け上げ幅を縮小。ダウは240ドル高となり、他の主要指数も上昇。
  • 債券相場は反落。長期金利は1.58%台へ上昇。
  • 金は変わらず。原油は反落。
ドル/円 106.35 〜 106.64
ユーロ/ドル 1.1080 〜 1.1105
ユーロ/円 118.02 〜 118.28
NYダウ +240.29 → 25,202.73ドル
GOLD ±0 → 1,515.70ドル
WTI −0.45 → 55.68ドル
米10年国債 +0.034 → 1.589%

本日の注目イベント

  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 8月マークイット製造業景況指数
  • 米 8月マークイットサービス業PMI
  • 米 7月景気先行指標総合指数
  • 独 独8月製造業PMI(速報値)
  • 独 独8月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月総合PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(速報値)
  • 欧 ECB議事要旨

引き続き大きな材料がない中、昨日は7月のFOMC議事録が公表され、その内容に注目が集まりました。7月30−31日に行われたFOMCでは、ご存知のように、「10年半ぶりの利下げ」に踏み切り、パウエル議長はその後の会見で、「今回の利下げは長期にわたる利下げの始まりではない」と述べ、利下げ観測に前のめりになっていた市場を「けん制」する発言を行いました。発言が予想外に「タカ派寄り」だったことで、ドル円は発言をきっかけに109円台までドル高が進み、ここを頂点にその後は105円台前半までドルが売られたことは記憶に新しいところです。それだけに、どのような議論がなされたのか、注目されていました。

議事録では、「世界的な低調な成長見通しや通商政策を巡る不確実性の影響に対応し、そうした要因に伴う一段の下振れリスクに対する保険を掛け、さらにインフレ率が2%目標により速やかに戻るのを促進するため、政策決定に賛成票を投じたメンバーらは全体的な政策スタンスをより適切に位置づけることを目指した」(ブルームバーグ)とし、25bpの利下げを決定しています。また利下げについては、2018年後半に始まった政策軌道に対して「継続して行われている再検証」の一環だと記され、上記パウエル議長の発言とも整合性がとれています。また利下げの理由としては、「貿易を巡る不確実性が見通しへの根強い向かい風として留まり続ける」とあり、トランプ大統領が仕掛けた「貿易戦争」が政策決定に重要な位置を占めていたのが理解できます。ただ、25bpの利下げについては、2名の委員が50bpの利下げを求めた一方、ボストン連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティー連銀のジョージ総裁は、利下げそのものに反対票を投じるなど、FOMCメンバーの中でも意見が分かれています。「貿易戦争」に伴う世界的な景気後退と、その影響がどの程度米国に及ぶのか予測することが、極めて困難であることを物語っているものと思われます。

トランプ大統領は、「米国はおそらく中国と取引をおこなうだろう」と述べるとともに、「この貿易戦争はずっと前に起こるべきものだった。誰かがしなければならなかった。私は選ばれし者だ」と述べ、これまで中国の不公平な貿易慣行を放置したとして歴代大統領を批判しました。ジャクソンホールでのパウエル議長の講演まであと1日。9月のFOMCまでも1カ月を切りました。大幅な利下げを執拗に要求しているトランプ大統領ですが、仮に9月のFOMCで25bpの利下げに留まった場合、トランプ氏は何と言ってパウエル議長を批判するのでしょうか。昨日すでに、「彼はパットの下手なゴルファーのようだ。まったく勘が鈍い」と述べています。ひょっとしたら、議長解任にも言及するかもしれません。以前にも、トランプ氏は「私にはその権限がある。ただ、それはしない」と述べていました。

引き続き動きにくい展開です。日本時間23日の午後11時から始まるパウエル議長の講演までは仕方のないところでしょう。本日のドル円は106円20〜106円90銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時     発言者     内容   市場への影響   
7/2 カーニー・BOE総裁 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。
7/7 トランプ大統領 イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) --------
7/10 パウエルFRB議長 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。
7/17 ベージュブック 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 --------
7/18 ムニューシン米財務長官 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 --------
7/18 ウイリアムズ・NY連銀総裁 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/18 クラリダ/FRB副議長 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。
7/19 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 --------
7/24 ムニューシン財務長官 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 --------
7/25 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。
7/25 ドラギ・ECB総裁 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 ユーロドル1.1101まで下落。
7/29 トランプ大統領 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! --------
7/30 日銀金融政策決定会合声明文 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 --------
7/31 パウエルFRB議長 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。
8/5 中国人民銀行 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。
8/5 トランプ大統領 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 --------
8/5 ムニューシン財務長官 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。
8/6 トランプ大統領 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 --------
8/8 トランプ大統領 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 --------
8/14 ラード・セントルイス連銀総裁 「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセッションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」 --------
8/14 トランプ大統領 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 --------
8/19 トランプ大統領 「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」 --------
8/21 FOMC議事録 世界的な低調な成長見通しや通商政策を巡る不確実性の影響に対応し、そうした要因に伴う一段の下振れリスクに対する保険を掛け、さらにインフレ率が2%目標により速やかに戻るのを促進するため、政策決定に賛成票を投じたメンバーらは全体的な政策スタンスをより適切に位置づけることを目指した」「貿易を巡る不確実性が見通しへの根強い向かい風として留まり続ける」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和