「ドル円底値から2円に迫る急反発」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 昨日の早朝には104円46銭まで急激な円高が進んだドル円は大幅に反発。トランプ大統領が中国との貿易協議を再開すると発言したこともあり、NY市場では106円42銭までドルが上昇。
- ユーロドルは小幅に下落したが、1.11を中心に小動き。
- 株式市場は大幅に反発。米中貿易問題で「大きなことが起こる」といったトランプ氏の発言や、イランとの交渉の余地が出てきたことなどが材料に。ダウは269ドル上昇し、主要指数も揃って上昇。
- 債券相場は横ばい。長期金利も1.53%台で変わらず。
- 金は小幅に反落。原油は続落し53ドル台に。
7月耐久財受注 → 2.1%
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| ドル/円 | 105.83 〜 106.46 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1094 〜 1.1124 |
| ユーロ/円 | 117.64 〜 118.20 |
| NYダウ | +269.93 → 25,898.83ドル |
| GOLD | −0.40 → 1,537.20ドル |
| WTI | −0.53 → 53.64ドル |
| 米10年国債 | ±0 → 1.535% |
本日の注目イベント
- 中 中国7月工業利益
- 独 独4−6月期GDP(改定値)
- 米 6月FHFA住宅価格指数
- 米 6月ケース・シラ−住宅価格指数
- 米 8月リッチモンド連銀製造業指数
- 米 8月消費者信頼感指数
予想外の展開でした。昨日の朝方には105円を大きく割り込み104円46銭までドル安が進みました。急激な円高が進んだことで、円高に弱い日本株も大きく下落すると予想したため、ドルの戻りも105円台前半辺りが限界ではないかとレンジ予想に盛り込みましたが、NYでは予想を大きく上回る106円台半ばまでドルが反発しました。予想を大きく外し、失礼いたしました。朝方のドル急落はトルコリラ円の急落と、それに伴って104円80銭以下にあった、「ストップロス」が執行されたためと思われます。
それにしても、トランプ大統領の発言一つで、全ての金融・商品市場が混乱させられています。「歯に衣着せぬ」とはいえ、大統領として、もう少し慎重に言葉を選ぶ必要があるはずです。前日「われわれに中国は必要ない」と言い放ったトランプ氏は、昨日G7終了後の会見では「中国と交渉を再開する。とても大きなことが起きるだろう」と述べ、米中の貿易交渉の担当者が中国と電話協議を行ったことを明らかにしました。トランプ氏はさらに、中国が取引成立を「非常に強く望んでいる」と再び主張し、中国側の交渉責任者である劉鶴副首相が、「冷静な態度で問題を解決したい」と述べたことを賞賛しています。「脅し」と「懐柔」を巧みに使い分けるトランプ流の交渉術に、市場も翻弄させられています。ただ注意したいのは、この件に関しては中国、環球時報の編集長や中国人民銀行の易総裁が、「認知していない」と否定していることです。
G7が閉幕しましたが、予想通り今回は「首脳宣言」もなく、景気の下振れに対応するという点で一致しただけでした。唯一の成果は日米貿易協議で合意に至ったことです。トランプ氏は、「日本から輸入する自動車・同部品に新たな関税を課すことは、現時点では、ない」と述べており、今後EUとも合意が近いことを示唆しました。(ブルームバーグ)また、対立が続いているイランとも、「適切な状況下であれば、イランのロウハニ大統領と会談し、核合意を巡る対立について協議する」と前向きな姿勢を示し、数週間以内に会談を設定したいと語っています。このように、米中貿易戦争が泥沼化し、株安、円高が進んだ状況が、今後急激に変わる気配も出てきました。もっとも、これら好材料も一夜にして変わる可能性はあります。ここしばらくは状況を見つめるしかありません。
今朝届いたブルームバーグ・ニュースには「言葉を失うウォール街、金融危機より異様なトランプマーケット」と題した記事がありました。「2008年当時の信用デリバティブ売買はクレ−ジーだったとよく話したものだが、今の方がはるかに異様だ。当時は流動性がポジション形成を難しくしていた。今はマーケットのあらゆる部分にそれぞれの特異な問題があり、中でもトランプ大統領という最大の問題がある。トランプ氏はこれまで誰も考えつかなかった前代未聞のやり方で大惨事を引き起こす」と、ファンド・アドバイザーの言葉を紹介しています。
ドル円は昨日の底値からほぼ2円戻したことになり、先週末のジャクソンホールでのパウエル議長の講演を待つ水準に近いところまで来ました。結局「往って来い」の展開だったということになります。本日は日本株も上昇が見込めますが、ドル円は106円台半ばから上では、現時点ではこれまで通りドル売りゾーンと見られます。予想レンジは105円50銭〜106円50銭程度と見ます。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 7/2 | カーニー・BOE総裁 | 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 | ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。 |
| 7/7 | トランプ大統領 | イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) | -------- |
| 7/10 | パウエルFRB議長 | 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 | ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。 |
| 7/17 | ベージュブック | 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 | -------- |
| 7/18 | ムニューシン米財務長官 | 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 | -------- |
| 7/18 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 | ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。 |
| 7/18 | クラリダ/FRB副議長 | 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 | ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。 |
| 7/19 | ローゼングレン・ボストン連銀総裁 | 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 | -------- |
| 7/24 | ムニューシン財務長官 | 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 | -------- |
| 7/25 | ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 | 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 | 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。 |
| 7/25 | ドラギ・ECB総裁 | 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 | ユーロドル1.1101まで下落。 |
| 7/29 | トランプ大統領 | 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! | -------- |
| 7/30 | 日銀金融政策決定会合声明文 | 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 | -------- |
| 7/31 | パウエルFRB議長 | 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 | ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。 |
| 8/5 | 中国人民銀行 | 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 | ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。 |
| 8/5 | トランプ大統領 | 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 | -------- |
| 8/5 | ムニューシン財務長官 | 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 | ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。 |
| 8/6 | トランプ大統領 | 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 | -------- |
| 8/8 | トランプ大統領 | 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 | -------- |
| 8/14 | ラード・セントルイス連銀総裁 | 「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセッションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」 | -------- |
| 8/14 | トランプ大統領 | 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 | -------- |
| 8/19 | トランプ大統領 | 「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」 | -------- |
| 8/21 | FOMC議事録 | 世界的な低調な成長見通しや通商政策を巡る不確実性の影響に対応し、そうした要因に伴う一段の下振れリスクに対する保険を掛け、さらにインフレ率が2%目標により速やかに戻るのを促進するため、政策決定に賛成票を投じたメンバーらは全体的な政策スタンスをより適切に位置づけることを目指した」「貿易を巡る不確実性が見通しへの根強い向かい風として留まり続ける」 | -------- |
| 8/23 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策は個人消費や設備投資に働きかける強力な手段だが、国際貿易のために確立された規則書にはならない」「政策対応の見本となるような先例がない」 | -------- |
| 8/23 | トランプ大統領 | 「われわれに中国は必要ない」「米国企業には中国からの生産移管を命じる」その後中国製品への関税率引き上げを発表。 | ドル円106円台から105円台前半に。NYダウは623ドルの大幅下落。 |
| 8/26 | トランプ大統領 | 「中国と交渉を再開する。とても大きなことが起きるだろう」 | ACドル円と株価急反発。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



