「英国の合意なき離脱リスク高まりポンド下落」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は105円台半ばを底値に反発。ポンドがドルに対して売られた影響もあり、106円23銭までドル高が進む。
- ユーロドルは引き続き値動きがなく、1.10台後半で推移。
- 英国の「合意なきEU離脱」のリスクが高まったことで、ポンドドルが下落。1.22台後半から1.21台半ばまで売られる。
- 株式市場は大幅に反発。原油価格の上昇からエネルギー関連株を中心に上昇。ダウは258ドル買われ、ナスダック、S&P500も揃って上昇。
- 債券は小幅ながら反落。長期金利は1.48%近辺まで小幅に上昇。
- 金は反落し、原油は続伸。
| ドル/円 | 105.66 〜 106.23 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1073 〜 1.1086 |
| ユーロ/円 | 117.10 〜 117.68 |
| NYダウ | +258.20 → 26,036.10ドル |
| GOLD | −2.70 → 1,549.10ドル |
| WTI | +0.85 → 55.78ドル |
| 米10年国債 | +0.008 → 1.479% |
本日の注目イベント
- 独 独8月失業率
- 独 独8月消費者物価指数(速報値)
- 欧 ユーロ圏8月景況感指数
- 欧 ユーロ圏8月消費者信頼感指数(確定値)
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 4−6月GDP(改定値)
- 米 7月中古住宅販売件数成約指数
- 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
上値の重かったドル円はジリジリと値を下げたものの、105円台半ばがブレイクできずに、NY市場では再び106円台を回復し、106円23銭までドル高が進みました。ドル円でドルを買う材料はほとんど見当たらない中、ポンドドルでドルが買われポンドが売られたことで、円が「連れ安」した側面が強かった展開でした。
イギリスのジョンソン首相は9月12日から約5週間の議会休会をエリザベス女王に要請し、女王がこれを承認しました。これで議会再開はEU首脳会議のわずか数日前のタイミングとなり、ジョンソン首相は、合意なきEU離脱を阻止しようとする動きを封じ込める思惑があると見られています。(ブルームバーグ)これに対してバーコウ下院議長は、「言語道断の憲法違反だ」と声明で厳しく批判しています。EUからの合意なき離脱の可能性が高まったことから、ポンドドルは1.22台後半から売られ、1.21台半ばまでポンド安が進みました。昨日はこれ以外にもイタリアではコンテ首相の続投が決定的となり、欧州の政治的材料が相場の中心にはなりましたが、為替への影響は限定的でした。イタリアでは、これでコンテ首相が新しい連立政権の樹立に向けて始動するものと思われます。
今月に入ってトランプ大統領の言動が市場を一段と混乱させていますが、全ての政策や言葉は2020年の大統領選を有利に進めるための布石であることは誰もが承知しているところです。その大統領選で、民主党候補指名獲得レースで先頭を走っているバイデン前副大統領への支持がトランプ大統領をリードしているという調査結果が出て来ました。ブルームバーグによると、米キニアピック大学が8月21−26日に実施した世論調査では、バイデン氏が54%で、トランプ氏の38%をリードしている結果が明らかになりました。6月に行った調査では53%対40%だったことから、バイデン氏がさらにリードを広げたことになります。また、この調査ではバイデン氏ら民主党候補トップ5人は、全員がトランプ氏を上回る支持を得たことも明らかになっています。
9月入ると、日米欧の中銀による政策会合が開催されるため、市場はその内容を予測し、大きく動くことが予想されますが、その会合が終わるといよいよ1年後に迫った米大統領選がいやが上でも相場を動かす材料になると思われます。昨日、たまたま立ち寄った本屋の店頭に並べてあった本を手に取ると、そこにも2020年の大統領選に関して大胆な予想が載っていました。そこでは、トランプ大統領の再選はないと予想されており、では誰が大統領に選ばれているのかと興味津々とページをめくると、「バーニー・サンダース」とありました。現時点では現職が有利と言われ、トランプ氏再選の可能性が高いと見られていますが、トランプ氏が破れ、民主党候補が勝利し、しかもバイデン氏ではなくサンダース氏が勝つという大胆な予測はやや驚きでした。同時に筆者の頭の片隅では、「その場合はドル売り、それともドル買い?」と、どのように反応すべきか思考回路が始動していました。元為替ディーラーの宿命のようなものでしょうか。「Once a dealer always a dealer」とは、よく言ったものです。
本日は106円台を維持できるかどうかに注目しています。今週火曜日には、前日のNYで106円43銭までドルが上昇したものの、ジリジリと値を下げ、東京時間では105円台半ばまで押し戻されています。予想レンジは105円60銭〜106円40銭といったところでしょうか。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 7/2 | カーニー・BOE総裁 | 貿易を巡る緊張の高まりで、英国を含む世界の成長に対する下振れリスクが強まっている。(そのため)大規模な政策対応が必要になる可能性がある。 | ポンドドル、1.12台半ばから1.12割れまで下落。 |
| 7/7 | トランプ大統領 | イランは気をつけた方がよい。良いことでは全くない。(イランがウラン濃縮度を引き上げたことで) | -------- |
| 7/10 | パウエルFRB議長 | 貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている。見通しに対する不確実性はここ数カ月で増してきている。海外の幾つかの主要国で経済の勢いが鈍化しているようだ。そうした弱さが米経済に影響を及ぼす可能性はある。通商を巡る動向や連邦債務上限、英国のEU離脱など、政府が扱う多くの政策課題がなお解決されていない。 | ドルは売られ、株、債券、金などが買われる。 |
| 7/17 | ベージュブック | 「貿易関連の不確実性がもたらし得る悪影響に関する懸念は広がっているものの、向こう数カ月の見通しは総じて明るく、緩慢な景気拡大が続くと想定されている」 | -------- |
| 7/18 | ムニューシン米財務長官 | 将来に検討することはあり得る問題だが、現時点でのドル政策に変更はない。 | -------- |
| 7/18 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 各国・地域の中央銀行は経済に問題が生じている場合は、迅速に行動を起こすべきだ。 | ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。 |
| 7/18 | クラリダ/FRB副議長 | 見通しに対する不確実性が高まっており、景気が下落するのを待ってから行動するのは望ましくないと当局は考えている。 | ドル円108円近辺から107円台前半に。株が買われ、債券も買われたことで金利は低下。 |
| 7/19 | ローゼングレン・ボストン連銀総裁 | 米経済は実際、かなり良好だ。経済が良好である限り、それが継続すれば、緩和に必要はない。 | -------- |
| 7/24 | ムニューシン財務長官 | 強いドルを信じている。それが力強い米経済や良好な株式相場を表している。そして特に大統領の経済政策によって、米国は他国を上回るペースの経済成長を達成している。 | -------- |
| 7/25 | ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 | 需要の伸びが十分でなければ、金融政策を一段と緩和して追加的支援を提供する用意がある。 | 豪ドル円75円台半ばから → 75円台前半に下落。 |
| 7/25 | ドラギ・ECB総裁 | 見通しは特に製造業で悪くなる一方だ。製造業が重要な国の見通しも悪化に歯止めがかかっていない。全ての政策手段を調整する用意がある。 | ユーロドル1.1101まで下落。 |
| 7/29 | トランプ大統領 | 米金融当局の動きは全て誤っている。小幅な利下げでは十分ではないが、いずれにせよわれわれは勝利する! | -------- |
| 7/30 | 日銀金融政策決定会合声明文 | 「物価安定に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」 | -------- |
| 7/31 | パウエルFRB議長 | 「この利下げの本質は、長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と、「サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」 | ドル円は50ポイントほどドル高に、株価は大幅に売られ、ダウは一時400ドルを超える下落に。 |
| 8/5 | 中国人民銀行 | 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 | ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。 |
| 8/5 | トランプ大統領 | 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 | -------- |
| 8/5 | ムニューシン財務長官 | 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 | ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。 |
| 8/6 | トランプ大統領 | 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 | -------- |
| 8/8 | トランプ大統領 | 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 | -------- |
| 8/14 | ラード・セントルイス連銀総裁 | 「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセッションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」 | -------- |
| 8/14 | トランプ大統領 | 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 | -------- |
| 8/19 | トランプ大統領 | 「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」 | -------- |
| 8/21 | FOMC議事録 | 世界的な低調な成長見通しや通商政策を巡る不確実性の影響に対応し、そうした要因に伴う一段の下振れリスクに対する保険を掛け、さらにインフレ率が2%目標により速やかに戻るのを促進するため、政策決定に賛成票を投じたメンバーらは全体的な政策スタンスをより適切に位置づけることを目指した」「貿易を巡る不確実性が見通しへの根強い向かい風として留まり続ける」 | -------- |
| 8/23 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策は個人消費や設備投資に働きかける強力な手段だが、国際貿易のために確立された規則書にはならない」「政策対応の見本となるような先例がない」 | -------- |
| 8/23 | トランプ大統領 | 「われわれに中国は必要ない」「米国企業には中国からの生産移管を命じる」その後中国製品への関税率引き上げを発表。 | ドル円106円台から105円台前半に。NYダウは623ドルの大幅下落。 |
| 8/26 | トランプ大統領 | 「中国と交渉を再開する。とても大きなことが起きるだろう」 | ACドル円と株価急反発。 |
| 8/27 | ダッドリー・前NY連銀総裁 | 「利下げは2020年の大統領選でトランプ氏の再選を助けるようなもので、これを拒否するべきだ。このままの姿勢ではトランプ政権が貿易戦争のエスカレートという破滅的な道を歩むのを容認することになる。大統領選の敗北も含めて、そのリスクを背負うのは大統領自身だという、明確なシグナルを発信することが必要だ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



