「マネーは債券から株式へ」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は米長期金利の上昇や、米中通商協議への期待から続伸。107円59銭までドル高が進み、高値圏で引ける。
- ユーロドルは明日のECB理事会を控え小動き。1.10台前半から半ばで推移。
- 株式市場は前日と同じような展開となり、ダウは上昇したが、ナスダックは下落。ダウは73ドル上昇し、5日続伸。
- 債券相場は続落。長期金利は5営業日続伸し、1.73%台に。
- 金は4日続落し、1500ドルの大台を割り込む。原油は5日ぶりに反落。
| ドル/円 | 107.19 〜 107.59 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.1031 〜 1.1052 |
| ユーロ/円 | 118.26 〜 118.78 |
| NYダウ | +73.92 → 26,909.43ドル |
| GOLD | −11.90− → 1,499.20ドル |
| WTI | −0.45 → 57.40ドル |
| 米10年国債 | +0.088 → 1.732% |
本日の注目イベント
- 豪 豪9月ウエストパック消費者信頼感指数
- 米 8月生産者物価指数
「資金は債券から株式へ」・・・・今朝の海外市場からのコメントを読むと、そのような内容の記事が目立ちます。確かに、そのような動きが顕著です。約1か月前には、1.5%を割り込み、1.48%台まで低下した米10年債は、昨日1.73%台まで上昇(価格は下落)しており、この間25ベーシスもの金利が上昇しています。また、先月14日には2万5500ドルを割り込んだNYダウは、2万7000ドルに迫る水準まで買われ、長く低迷を続けていた日本株も上昇に転じてきました。明らかに「債券売り、株式買い」の動きが強まっています。この結果、米長期金利との相関が高いドル円は、この動きに連動する形で、107円台半ばまで円売りが進んできました。
もっとも、単純にマネーが債券から株式にシフトしたというよりも、リスクオフが後退したことで、金融・商品市場で、これまでのポジションの巻き戻しが起きたと考える方が、より適切かと思います。事実、1560ドルまで買われた金(きん)は1500ドルを割り込む水準まで売られ、下落基調だった原油価格も上昇してきました。明日のECB理事会を皮切りに、日米欧では政策決定会合が開催され、その前に利益を確定しようという動きが上記巻き戻しにつながったと考えられます。10月から米中通商協議が再開されますが、すぐに米中が合意に達するとも思えません。また、ジョンソン英国の混迷は続いており、イタリア、ドイツ、香港の政治的リスクは多少低下したものの、存在します。市場を取り巻く環境はそれほど変わっていない中、巻き戻しの動きがかなりの規模で進行していると見られます。
トランプ大統領は10日、ボルトン大統領補佐官を解任しました。これでトランプ氏は就任以来3人の大統領補佐官を解任したことになります。トランプ氏はツイートで、「昨晩、私はボルトンにホワイトハウスでもう働く必要はないと告げた」ことを明かにしました。報道では、両氏の間では多くの点で意見が対立し、特にアフガニスタン問題や、北朝鮮問題では厳しい意見の対立があったようです。(ブルームバーグ)また、ボルトン氏はポンペオ国務長官とも対立しており、ボルトン氏の辞任はポンペオ氏にとっても「朗報」だとしています。
ドル円は106円台を固める動きになっています。上で述べたように、予想外の米金利上昇と株価の上昇が円売りにつながっています。昨日も述べたように、107円70銭近辺を明確に抜けると、日足で「雲抜け」を完成させることになり、上昇に弾みが付く可能性も出てきました。4月24日のドル高値である112円40銭から、8月26日のドル安値である104円46銭をフィボナッチ・リトレースメントで計ってみると、38.2%戻しが107円49銭となり、昨日の動きはほぼこの水準で止まっています。「半値戻し」が107円98銭ということで、このまま上昇したら、108円近辺が非常に重要な戻りのポイントになりそうです。「半値戻しは、全値戻し」という格言もあるように、ここを抜けるようだと、市場の雰囲気も一変しそうです。本日のドル円は107円10銭〜107円90銭程度を予想します。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 8/5 | 中国人民銀行 | 「一国主義や貿易保護主義、および対中追加関税などの影響で元相場は今日7元を突破した」人民元安が進み、声明文で。 | ドル円106円台半ばから105円台後半へ。日経平均株価500円を超える下落。 |
| 8/5 | トランプ大統領 | 「為替操作だ。中国は自国通貨を歴史的な安値付近にまで押し下げた。これは<為替操作>と呼ばれる。Fedよ聞いているか?これは重大な違反で、時とともに中国の力を大きく弱めることになる」 | -------- |
| 8/5 | ムニューシン財務長官 | 「中国の直近の措置が作り出した不公正な競争上の優位を是正するため国際通貨基金(IMF)と協力する」米財務省が中国を為替操作国に認定したことについてコメント。 | ドル円106円近辺から105円台半ばまで下落。 |
| 8/6 | トランプ大統領 | 「(FRBの)無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるのに。いずれにせよ、われわれは勝利する。当局はより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない」 | -------- |
| 8/8 | トランプ大統領 | 「米国の大統領として、私が非常に強いドルを喜ぶと考えている人もいるだろう。だが私は喜んでいない。他国と比較した米金融当局の高い金利水準は、ドルを高い水準で維持し、米国の素晴らしい製造企業が競争するのをより難しくしている」 | -------- |
| 8/14 | ラード・セントルイス連銀総裁 | 「失業率は50年ぶりの低水準に近い。インフレ率は低位で安定している。やや低過ぎだと私は主張してきたが、基本的には低位安定だ。米景気はリセッションではない。よって、将来を戦略的に考えるのに適した時期だ」 | -------- |
| 8/14 | トランプ大統領 | 「スプレッド(利回り差)はあまりに大きく、何も分かっていない。パウエル議長とFRBに他国は感謝している。ドイツなど多くの国はゲームに興じている!クレージーな逆イールドカーブ!われわれは簡単に大きな報酬と利益を手に入れるはずなのに、FRBがわれわれの妨げになっている。われわれは勝つだろう」 | -------- |
| 8/19 | トランプ大統領 | 「米政策金利はかなり短期間に少なくとも100bp引き下げられるべきだ。恐らく何らかの量的緩和も伴うべきだ」 | -------- |
| 8/21 | FOMC議事録 | 世界的な低調な成長見通しや通商政策を巡る不確実性の影響に対応し、そうした要因に伴う一段の下振れリスクに対する保険を掛け、さらにインフレ率が2%目標により速やかに戻るのを促進するため、政策決定に賛成票を投じたメンバーらは全体的な政策スタンスをより適切に位置づけることを目指した」「貿易を巡る不確実性が見通しへの根強い向かい風として留まり続ける」 | -------- |
| 8/23 | パウエル・FRB議長 | 「金融政策は個人消費や設備投資に働きかける強力な手段だが、国際貿易のために確立された規則書にはならない」「政策対応の見本となるような先例がない」 | -------- |
| 8/23 | トランプ大統領 | 「われわれに中国は必要ない」「米国企業には中国からの生産移管を命じる」その後中国製品への関税率引き上げを発表。 | ドル円106円台から105円台前半に。NYダウは623ドルの大幅下落。 |
| 8/26 | トランプ大統領 | 「中国と交渉を再開する。とても大きなことが起きるだろう」 | ドル円と株価急反発。 |
| 8/27 | ダッドリー・前NY連銀総裁 | 「利下げは2020年の大統領選でトランプ氏の再選を助けるようなもので、これを拒否するべきだ。このままの姿勢ではトランプ政権が貿易戦争のエスカレートという破滅的な道を歩むのを容認することになる。大統領選の敗北も含めて、そのリスクを背負うのは大統領自身だという、明確なシグナルを発信することが必要だ」 | -------- |
| 8/29 | ラガルド・次期ECB総裁 | 「予見可能な将来において、極めて緩和的な金融政策を続ける必要があることは明らかだ。導入する措置の適切な組み合わせは、インフレ見通しに影響する衝撃の性質や金融市場の状況次第ということになる」 | -------- |
| 9/1 | 中国国営の新華社通信 | 米国の経済的な戦争挑発と戦う中国の決意はより強くなっており、対抗措置はさらに毅然として、計画的で狙いを定めたものだ。ホワイトハウスのタリフマンが学ぶべき1つの事実は、中国経済が進行中の貿易戦争でもたらされた圧力に抵抗するのに十分力強く、回復力があるということだ。 | -------- |
| 9/2 | 中国商務省 | 米国の追加関税は(今年6月に行われた)大阪での米中首脳会談での合意に著しく反し、中国は強烈な不満と断固たる反対を表明する。 | -------- |
| 9/4 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「国内外の不確実性が、景気見通しと金融政策に関する私の思索において重要な要素になりつつある」 | -------- |
| 9/6 | パウエル・FRB議長 | 「米経済に最も可能性の高い見通しは依然として、緩やかな成長と力強い労働市場に加え、インフレ率が当局の2%目標に近づくという好ましいものだ。ただ、世界的な景気減速や貿易政策を巡る不確実性、持続的な低インフレなどを含む大きなリスクは存在するため、それらに注視していく」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



