今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利1.91%台に急騰」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京時間には108円65銭まで売られたドル円は反発して109円49銭まで上昇。米中通商問題で進展が見られたことが材料に。
  • ドルが買われたことでユーロドルは1.1036まで下落。約3週間ぶりのユーロ安を記録。
  • 株式市場は米中通商問題の進展を手掛かりに続伸。ダウは182ドル上昇し、S&P500とともに最高値を更新。
  • リスクオンの流れが強まり、債券は大幅に反落。長期金利は1.91%台まで急騰。
  • 金は大きく売られ約半年ぶりの安値に。原油は反発。
*******************
新規失業保険申請件数 → 21.1万件
9月消費者信用残高 → 95.1億ドル
*******************
ドル/円 109.10 〜 109.49
ユーロ/ドル 1.1036 〜 1.1082
ユーロ/円 120.62 〜 120.96
NYダウ +182.24 → 27,674.80ドル
GOLD −26.70 → 1,466.40ドル
WTI +0.80 → 57.15ドル
米10年国債 +0.097 → 1.917%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA四半期金融政策報告
  • 中 中国10月貿易統計
  • 独 独9月貿易収支
  • 独 独3月経常収支
  • 米 11月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
  • 加 カナダ10月住宅着工件数
  • 加 カナダ10月建設許可件数
  • 加 カナダ10月就業者数
  • 加 カナダ10月失業率
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演

米中の通商協議を巡る対立がさらに緩和されたことを受けて、投資家のリスク許容度が一段と高まり、昨日のNY市場では安全資産が売られ、リスク資産が買われる展開になっています。昨日の東京時間には108円65銭前後まで売られたドル円は欧州市場で109円台を回復し、NY市場では一時は109円49銭までドル高が進みました。この結果、この欄でも何度か指摘している日足の「200日移動平均線」は上抜けに成功しています。米国株の方も、ダウとS&P500が最高値を更新し、ナスダックもほぼ最高値水準です。一方債券は売られ、長期金利が7月末以来となる1.91%台に乗せて、ドル円をサポートし、金も約半年ぶりに1460ドル台まで下落しました。米金利が大幅に上昇したことで、金利のつかない金が売られたということでしょう。

中国商務省の高峰報道官は、「過去2週間にわたり交渉担当者は真剣で建設的な協議を行い、合意を巡り進展する中で、追加関税を段階的に撤回することで一致した」と発表しました。さらに、「米中が第一段階の合意に達すれば、双方が既存の追加関税を合意内容に基づいてお互いに比例したペースで同時に撤回していくことになる。これは合意成立のための重要な条件だ」と続けました。(ブルームバーグ)これまでも一部合意の報道やコメントもありましたが、条件付きとはいえ、お互いの関税を段階的に双方が引き下げる可能性に言及したのはこれが初めてです。先ずは、12月にずれ込むと予想されている米中首脳会談が実現し、「第一段階合意」に署名することが極めて重要になってきました。

これに対して米国側では、コンウェイ大統領顧問が、トランプ大統領が合意署名を「切望」していると語り、政府関係者も、追加関税の段階的撤廃が第一段階の合意の一部になると認めたとブルームバーグは伝えています。またクドロー米国家経済会議(NEC)委員長も、「米中両国が第一段階の合意に至れば、関税の合意・譲許もあるだろう」と話しています。一方でロイター通信は、「米国の対中関税を撤回するホワイトハウスの計画は内部で強い反対に直面している」と伝えており、最終的な決断は下されていないと見られます。気まぐれなトランプ大統領のこと、この先まだ制裁関税の段階的撤廃に至るかどうかは予断を許しませんが、前回にも述べたように、トランプ氏にとっては「大統領選挙」、習近平氏にとっては「これ以上の景気悪化の阻止」が「最大の懸念材料」となっており、今後まだ紆余曲折があると予想しながらも個人的には楽観的な見方を維持しております。いずれにしても、今後の米中通商協議の行方が金融市場に与える影響は大きく、「弾劾問題」「大統領選」とともに、最大級の材料であることは間違いないようです。

ドル円はジリジリと上昇傾向を維持しています。筆者も10月辺りからは「円高材料が多い中、テクニカルで見るとドル上昇を示唆しているし、年末にかけてはドルが買われる傾向がある」と述べ、緩やかなドル高を想定してきました。109円20−30銭を上抜けしたことで、110円も視野に入ってきたと考えられます。米国株が連日最高値を更新し、大きく出遅れていた日本株もここに来て上傾向を強め、海外勢の資金流入も続いているようです。また長期金利も2%に近づいてきました。この状況が今後もさらに続くかどうかはもちろん断定できませんが、根底には「低金利」と豊富な資金があることは大きなサポート材料です。今しばらくはリスクオンの流れが続き、どこで「潮目」が変わるのかを注意しながら見ていくことが肝要でしょう。その際重要なことは、「腹八分目に医者いらず」という、昔ながらの言い伝えです。本日のドル円は108円90銭〜109円70銭程度を予想しますが、109円80銭前後には「週足」一目均衡表の「雲の下限」があります。この雲は比較的薄く、それほど強いレジスタンス・ゾーンとも思われませんが、ここから上が「110円」という一つの節目であることを考えると、輸出筋を中心にドル売り注文が集まることは想定に難くありません。昨日決算発表を行った日本最大の輸出企業であるトヨタ自動車の社内設定レートは107円です。110円でロックすると3円の為替益が得られるとすれば、担当者がドル売り注文を出すのも「むべなるかな」といったところです。

==============

米大統領選まで1年余りとなり、民主党では最後にトランプ氏と戦うのは誰か、熱を帯びてきました。有力候補の一人である、エリザベス・ウォーレン氏は選挙運動中にも強力な「反富豪」を打ち出し、他の候補とは明確な差別化を図っています。もし彼女が大統領になったら、高い税率の富裕税を導入し、富の平準化を図るようです。そのため、富豪といわれる人たちが反対の声を上げています。先ずはJPモルガンのダイモンCEOです。氏は「富を嘲笑の対象にすべきでない」と語り、世界最大のヘッジファンド創業者のレイ・ダリオ氏は「私は大富豪になるために働いたわけではない」と反対しています。ウォーレン氏も負けてはおらず、「私は全ての米国人の成功のために富豪に立ち向かうことを恐れない」と宣戦布告しています。仮に同氏が民主党の大統領候補として勝利したら、米国株はかなり売られることになるかもしれません。良い週末を・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和