「米大統領、中国への制裁関税撤廃否定」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は109円台半ばまで上昇したものの、トランプ大統領が中国に対する制裁関税を撤廃することに「合意していない」と述べたことで109円台前半まで売られた。ただ、109円台は維持しており下落は限定的だった。
- ユーロドルは小動き。1.1037まで買われたが、値幅はわずか20ポイントに留まる。
- トランプ大統領の米中通商問題を巡るネガティブな発言があったものの、株価は揃って最高値を更新。
- 債券は続落。長期金利は1.94%台へと上昇。
- 金は続落。原油は株価の上昇に伴い、経済活動が活発化するとの見方から続伸。
11月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 95.7
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ドル/円 | 109.08 〜 109.42 |
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ユーロ/ドル | 1.1019 〜 1.1037 |
ユーロ/円 | 120.15 〜 120.74 |
NYダウ | +6.44 → 27,681.24ドル |
GOLD | −3.50 → 1,462.90ドル |
WTI | +0.09 → 57.24ドル |
米10年国債 | +0.025 → 1.942% |
本日の注目イベント
- 日 9月国際収支
- 日 10月景気ウオッチャー調査
- 中 中国10月マネーサプライ
- 独 独10月製造業PMI(改定値)
- 欧 ユーロ圏10月製造業PMI(改定値)
- 英 英9月鉱工業生産
- 英 英9月貿易収支
- 英 英7−9月期GDP(速報値)
- 米 債券市場休場(ベテランズデー)
- 米 ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演
前日、中国国務省が「過去2週間にわたり交渉担当者は真剣で建設的な協議を行い、合意を巡り進展する中で、追加関税を段階的に撤回することで一致した」と発表したことを受け、金融市場でリスクオンが一段と加速し、ドル高、株高、金利高が進みましたが、トランプ大統領は8日ホワイトハウスの記者団に、「合意していない」と述べました。「中国は(関税の)取り下げを求めているが、私は何も合意していない」と語っています。ただ、翌日9日には「中国との貿易協議が非常に良好に進展しており、中国指導者が私よりはるかに合意を望んでいる」と語り、「われわれが適切な取引をしないのであれば、合意することはない」と述べ、合意はしていないものの、交渉は順調に進んでいるとの認識を示しています。
この発言で、ドル円は大きく売られ、株価の下落とともにリスクオンが後退すると考えましたが、NY市場が終わって見れば、勢いは減速したものの、株高、債券安は進み、ほとんど影響がなかったようです。ドル円も依然として109円台を維持しており、今回トランプ氏が合意を否定する発言を行ったものの、市場はいずれは合意すると読んでいるということかもしれません。ブルームバーグは、モルガンスタンレーのストラテジストを経験したベンシニョール氏のコメントを引用し、同氏は「投資家は概して、何かがやり遂げられると判断している。何らかの貿易合意が今後数カ月、恐らく年末までにあり得ると考えている」と述べています。人気の高い消費財を対象とした「制裁関税第4弾」は12月15日に発動される予定になっています。中国側が先走ったように、「第1段階合意」に基づいて、この「第4弾」が発動されるのかどうかが、今後の大きな材料になりそうです。
先週は米国株の上昇がさらに勢いを増し、連日で最高値を更新しました。ドル円はリスクオンの流れから109円台半ばを試したものの、株価の動きに比べると勢いが鈍いと言わざるを得ません。米企業の好決算と米中通商協議の進展という2つの材料だけでリスクオンが強まりましたが、やはり根底には「カネ余り」とう状況が相場の礎になっているのでしょう。108円台を固めているドル円が、今後110円台を示現するには、上記「制裁関税第4弾」が回避されるかどうかにかかっていると言えますが、仮に回避されたとしても、ドルの上昇は依然ゆっくりとしたものになりそうです。
市場関係者の相場観が大きく「ドル高」に変化しない限り、このような動きが続くと予想されます。本日のドル円は108円90銭〜109円60銭程度を予想します。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 | -------- |
11/5 | カプラン・ダラス連銀総裁 | 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 | -------- |
10/30 | トランプ大統領 | 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 | -------- |
10/24 | ドラギ・ECB総裁 | 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 | -------- |
10/24 | ペンス・米副大統領 | (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 | ややリスクオンの流れが強まる |
10/19 | 劉鶴・中国副首相 | 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 | -------- |
10/15 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 | -------- |
10/15 | ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト | 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 | -------- |
10/10 | トランプ大統領 | 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 | ドル円107円80銭から108円台を回復。 |
10/8 | エバンス・シカゴ連銀総裁 | 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 | -------- |
10/6 | ジョンソン・英首相 | 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) | -------- |
10/4 | ジョージ・カンザスシティー連銀 | 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 | -------- |
10/4 | パウエル・FRB議長 | 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書