「英ジョンソン与党勝利の可能性高まる」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- やや上値の重くなったドル円は欧州時間に108円90銭近辺まで下落したが、NYでは109円台に戻す。金利が動かなかったこともあり、その後は109円台前半で小動き。
- ユーロドルは小幅に反発したが、1.1030〜40で一進一退。
- 株式市場では上昇が一服。ダウは引けにかけて買われプラス圏で取引を終えたが、ナスダックとS&P500は反落。
- 債券市場は休場。
- 金は続落し、一時1450ドルを割り込み、3カ月ぶりの安値に。原油は4日ぶりに反落。
ドル/円 | 108.93 〜 109.11 |
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ユーロ/ドル | 1.1031 〜 1.1043 |
ユーロ/円 | 120.23 〜 120.41 |
NYダウ | +10.25 → 27,691.49ドル |
GOLD | −5.80 → 1,457.10ドル |
WTI | −0.38 → 56.86ドル |
米10年国債 | ---------- → 1.942% |
本日の注目イベント
- 豪 豪9月NAB企業景況感指数
- 日 10月マネタリーベース
- 中 中国10月財新サービス業PMI
- 独 独11月ZEW景気期待指数
- 英 英10月失業率
- 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
- 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
米債券市場が休みだったこともあり、米株式市場の動きもプラス・マイナスを繰り返した中で、ダウ以外は反落でした。ドル円も109円台を割り込み、108円90銭近辺まで売られたものの、NYの引け値では109円台に戻して取引を終えています。香港では警察官がデモ参加者に発砲する映像も流され、さらに情勢が緊迫してきました。また、米中貿易協議を巡る見通しも、依然として不透明感が拭いきれず、全体とすればややリスクオンが後退する状況でした。
そんな中、話題の中心の一つは、アリババの「独身の日」です。1日の取扱高は2680億元(約4兆1670億円)余りと、過去最高の昨年を上回り、懸念されていた中国の消費意欲は依然として旺盛であることが確認された格好です。ただ、同セールは割引率が大きいだけに、アリババにとっての利益貢献度は未知数だとブルームバーグは伝えています。アリババは年内に香港での株式上場を予定しています。
ジョンソン英首相が12月の総選挙で勝利する可能性が高まったとの見方が広がり、ポンドが大きく買われ、対円では2円ほど上昇しました。英ブレグジット党のファラージュ党首は、12月の総選挙で与党・保守党とは争わない方針を表明しました。この結果、総選挙後もジョンソン氏が首相に留まる確率が圧倒的に高いと予想されています。同氏は、会合出席後にビールを片手に「ブレグジット達成まで禁酒だ」とご満悦でした。また英国の7−9月期GDPが前期比0.3%増と、市場予想を下回ったものの、かろうじてマイナス成長にならず、リセッション入りを回避できたこともポンド買いにつながったようです。
日米ともに株価は堅調に推移しています。NYダウは昨日も小幅ながら続伸し、最高値を更新しています。米国人にとって、株価の上昇は資産効果を高め、個人消費をサポートすることにつながります。加えて、失業率も極めて低く、労働市場も底堅く推移しています。心配された「逆イールド」も解消され、2年債と10年債のスプレッドは足元では0.27%ほどに拡大し、スティープ化が進んでいるように見受けられます。このような状況からすると、米経済がリセッションに陥る可能性はかなり低いと見られます。一方日本では、企業の四半期決算がピークを迎えましたが、新聞の決算欄と見ると、「減益幅拡大」、「一転減益」、「赤字に転落」といった文字が目に付きます。増益の企業もあるようですが、おおむね厳しい決算に直面しています。昨日発表された「景気ウォッチャー調査」でも、景況感が急速に悪化していることが確認されました。それでも日経平均株価は上昇しており、安値で放置され、出遅れていたとはいえ、やや違和感を覚えます。
本日も重要な材料がない上、明日はパウエル議長の議会証言もあり動きにくい展開が予想されます。日本株も昨日と同じように上昇も一服かと思います。ドル円の予想レンジは108円70銭〜109円30銭程度でしょうか。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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11/5 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 | -------- |
11/5 | カプラン・ダラス連銀総裁 | 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 | -------- |
10/30 | トランプ大統領 | 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 | -------- |
10/24 | ドラギ・ECB総裁 | 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 | -------- |
10/24 | ペンス・米副大統領 | (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 | ややリスクオンの流れが強まる |
10/19 | 劉鶴・中国副首相 | 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 | -------- |
10/15 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 | -------- |
10/15 | ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト | 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 | -------- |
10/10 | トランプ大統領 | 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 | ドル円107円80銭から108円台を回復。 |
10/8 | エバンス・シカゴ連銀総裁 | 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 | -------- |
10/6 | ジョンソン・英首相 | 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) | -------- |
10/4 | ジョージ・カンザスシティー連銀 | 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 | -------- |
10/4 | パウエル・FRB議長 | 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書