今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「パウエル議長利下げ休止を示唆」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は109円台から徐々に下げ、米中通商協議が難航するとの報道を受け、108円66銭まで下落。パウエル議長の議会証言はドル高に作用したものの影響は限定的。
  • ユーロドルは1.10台を割り込み、1.0995まで売られ、徐々に下値を切り下げる展開が続く。
  • 株式市場はおおむね続伸。ダウとS&P500は最高値を更新したが、ナスダックは小幅安。
  • 債券相場は続伸。米中通商協議への楽観的な見方が後退。長期金利は1.88%台まで低下。
  • 金と原油は反発。
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10月消費者物価指数 → 0.4%
10月財政収支 → −1345億ドル
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ドル/円 108.66 〜 108.92
ユーロ/ドル 1.0995 〜 1.1015
ユーロ/円 119.57 〜 119.85
NYダウ +92.10 → 27,783.59ドル
GOLD +9.60 → 1,463.30ドル
WTI +0.32 → 57.12ドル
米10年国債 −0.049 → 1.886%

本日の注目イベント

  • 豪 豪10月雇用統計
  • 日 7−9月GDP(速報値)
  • 中 中国10月小売売上高
  • 中 中国10月鉱工業生産
  • 独 独7−9月期GDP(速報値)
  • 欧 ユーロ圏7−9月期GDP(改定値)
  • 欧 OPEC月報
  • 英 英10月小売売上高
  • 米 10月生産者物価指数
  • 米  新規失業保険申請件数
  • 米 パウエル・FRB議長講演
  • 米 クラリダ・FRB副議長講演
  • 米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
  • 米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
  • 米 企業決算 → ウォルマート、エヌビディア

FRBのパウエル議長は13日、上下両院合同経済委員会で証言を行いました。議長は、「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」と発言し、政策金利が当面据え置かれる可能性が高いことを示唆しました。ただ同時に、「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」とも述べています。FRBは3会合連続で利下げを行ったこともあり、さらに10月末の利下げ決定後の記者会見でも「利下げ打ち止め」をほのめかしていたこともあり、サプライズはありません。証言では議員から、来年いっぱいの据え置き示唆を意図したのかと聞かれた議長は、「断じてそのようなことは言わない」と答え、「経済見通しに有意な見直しがあれば、FOMCには対応する用意がある」と付け加えました。(ブルームバーグ)

政策金利の据え置きを示唆したことで今後金利低下が見込めないこととなり、ドル円は買われてもいい状況だったと思われますが、市場はその前に、米長期金利の低下と、米中通商問題が難航するという報道に反応してドルを押し下げていました。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、米国と中国の通商協議は、農産物の輸入を巡り困難な状況に直面していると報じました。WSJは、関係者の話として、中国は米国産の大豆や豚肉など農産物を年間最大500億ドル(約5兆4500億円)相当購入することで同意したとトランプ大統領は述べているが、中国側は合意文書に具体的な数値を盛り込むことに警戒感を抱いていると伝えています。この報道を契機にリスクオンの流れがやや後退し、ドル円は108円66銭までドル安が進み、1週間ぶりのドル安水準を付けています。

ドル円は109円台半ばが徐々に「壁」になりつつある展開が続いています。日足の「200日移動平均線」もブレイクしたように見えましたが、結局現時点では、「抜け切れていない」状況になっています。もっとも、下値の方も直ぐに108円割れを試す勢いもなく、目先は109円を挟んで上下50銭程度のレンジ取引になっているようで、想定内の動きと言えます。全ては米中貿易の「第一段階合意」に米中首脳が署名できるのかどうかにかかっています。

そのトランプ大統領の弾劾問題では、これまでにない進展が見られています。昨日始まった大統領弾劾公聴会は全米に放映され、テイラー駐ウクライナ代理大使は、トランプ氏がマルバニー大統領補佐官を通じてウクライナ支援を保留するよう圧力をかけてきたことを証言しました、またもう一人の証人、ケント国務次官補代理は、元NY市長のジュリアーニ氏を通じての関与にも言及しています。今回の証言でトランプ氏が罷免される可能性は低いと見られているようですが、今後の展開次第では2020年の大統領選に影響を与える可能性は高いと思われます。

本日のドル円は108円台半ば割れを試すかどうかという点が注目されます。予想レンジは108円30銭〜109円程度と見ます。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和