今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米中協議の不透明感が増し、ドル円続落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続落。米中貿易協議のとりまとめが難航しているとの報道を受け、長期金利が低下。一時は108円24銭までドル売りが進み、10日ぶりとなる円高水準を付ける。
  • ユーロドルは反発。ドルが幅広く売られたことで、ユーロが買われ、1.1027まで上昇。
  • 株式市場は上下を繰り返しながらも、ほぼ前日と同水準で引ける。S&P500は小幅に最高値を更新し、他の2指数は小幅安。
  • 債券は続伸。リスクオンの後退から安全資産の債券が買われる。長期金利は1.81%台まで低下。
  • 金と原油はともに反発。
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10月生産者物価指数 → 0.4%
新規失業保険申請件数 → 22.5万件
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ドル/円 108.24 〜 108.69
ユーロ/ドル 1.0993 〜 1.1027
ユーロ/円 119.25 〜 119.56
NYダウ −1.63 → 27,781.96ドル
GOLD +10.10 → 1,473.40ドル
WTI −0.35 → 56.77ドル
米10年国債 −0.067 → 1.819%

本日の注目イベント

  • 日 9月鉱工業生産(確定値)
  • 欧 ユーロ圏9月貿易収支
  • 欧 ユーロ圏10月消費者物価指数(改定値)
  • 米 11月NY連銀製造業景況指数
  • 米 10月小売売上高
  • 米 10月輸入物価指数
  • 米 10月鉱工業生産
  • 米 10月設備稼働率

ドル円は続落し108円台半ばを割り込み、108円24銭前後まで下落しました。動きの鈍い展開が続いていましたが、昨日のドルの下落は今月に入って最も大きな下落となり、その材料となったのは、やはり「米中通商協議」を巡る動きでした。英フィナンシャルタイムズ(FT)は、米中の当局者は知的財産の諸規定や農産物購入、関税撤回を巡り議論を続けているが、貿易合意「第一段階」の取りまとめで難航していると報じたことがリスクオンの後退につながっています。

別の報道では、米中の次官級協議が新たに電話で開かれたとの情報もあるようですが、中国側が米中が「第一段階」で合意し、その先には米中双方が段階的に関税を引き下げる可能性があると発表した後、トランプ大統領は「合意はない」と否定しましたが、どうやら中国側の「勇み足」だったようです。トランプ氏も「合意を急がない」とも話しており、今だに米中首脳の会談場所も決まっていないことを考えると、今月中の合意はやや難しくなった印象です。手元のブルームバーグの端末を開いても、「中国は2015年から実施してきた米国産鶏肉の輸入禁止を解除し、認可された供給業者からの輸入を許可すると発表した」といった情報や、あるいは「中国は米国産大豆180万トンの陸揚げを遅らせている」といった、断片的なニュースしかありません。今後この貿易問題が解決に向けて進んで行くとは思っていますが、もやもやとした不透明感が拭い切れない状況は続くと言わざるを得ません。

中国の習近平主席は、米国との貿易問題に加え、香港の民主化問題でもさらに緊張が高まっており、気が休まらない状況です。習氏は14日、中国国営テレビ局(CCTV)での投稿で、「香港での急進的で暴力的な犯罪行為は一国二制度の根幹を揺るがしている」と非難し、林香港行政長官とその政府、香港の警察へ強い支持を表明しています。また、暴力的な犯罪者を処罰する香港司法機関についても断固支持すると述べています。さらに、「一国二制度」を堅持していく決意は「揺らいでいない」と言明する一方、中国政府は主権と安全を守り、香港問題に対するいかなる外国の干渉にも反対するとくぎを刺しています。(ブルームバーグ)

ドル円は109円台半ばを2回テストして抜けきれず反落してきました。まだ上昇傾向は崩れていないと考えていますが、チャート上では「ダブルトップ」の形状を示現しており、市場参加者の「目」もやや下方に修正されそうな雰囲気です。今後の米中通商協議の行方が全てのカギを握っていますが、中国だけではなく、トランプ政権側もこれ以上の貿易問題の悪化は避けたいはずです。12月15日の「制裁関税第4弾」の発動までちょうど1カ月を残すのみとなってきました。引き続き米中からの進展に期待したいところです。本日のドル円は、市場のセンチメントがややドル売りに傾いていることから、108円台を維持できるかどうかが注目点の一つです。最大、「120日移動平均線」のある、107円70−75銭辺りまで見ておく必要はあるとは思いますが、予想レンジは108円〜108円80銭程度にしたいと思います。

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日米トップの足元が揺れています。トランプ大統領はウクライナ問題で、バイデン氏の息子の企業調査を、ウクライナへの支援を条件に圧力をかけた疑惑で、今弾劾問題にまで発展しています。一方わが国の安倍首相は「桜を見る会」で、安倍事務所が後援会関係者に送った案内状が公開され、便宜を図った疑惑が持たれています。政府は直ちに来年の「桜を見る会」を中止すると発表しましたが、今年掛かった費用5500万円はもちろん税金です。公的行事を私的に利用したと言われても仕方ないでしょう。この問題で、「桜散る・・・・」となるのかどうか?
良い週末を・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和