今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米株式市場の上昇続く」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は反発して欧州時間には109円07銭前後まで上昇したが、米中貿易問題を巡り中国が悲観的だとの報道でドル急落。108円51銭までドル売りが進む。
  • ユーロドルは小幅に続伸。1.1090までユーロ高が進み、ユーロ円の買い戻しも進む。
  • 株式市場は続伸。3指数とも小幅ながら揃って最高値を更新。
  • 債券相場は反発。長期金利は1.81%台へとやや低下。
  • 金は反発し、原油は反落。
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11月NAHB住宅市場指数 → 70
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ドル/円 108.51 〜 109.03
ユーロ/ドル 1.1055 〜 1.1090
ユーロ/円 120.16 〜 120.58
NYダウ +31.33 → 28,036.22ドル
GOLD +3.40 → 1,471.90ドル
WTI −0.67 → 57.05ドル
米10年国債 −0.019 → 1.812%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
  • 欧 ユーロ圏9月経常収支
  • 米 10月住宅着工件数
  • 米 10月建設許可件数
  • 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演

相変わらず米中通商協議に関する報道でドル円が動く展開です。昨日の東京市場朝方にはドルがやや軟調となったものの、その後日本株の上昇に伴って108円台後半までドルが買われ、欧州市場の朝方には3日ぶりとなる109円台を回復しました。通商協議では、米中が核心的な問題について建設的な議論を行ったとの報道がドルを支えた格好でした。109円07銭までドル高が進んだものの、NY時間では一転してドルが売られ、108円51銭までドル安が進み、結局元の水準に戻っています。CNBCが伝えた、「中国は貿易取引で悲観的だ」といったニュースや、ホワイトハウスでトランプ大統領とパウエル議長が今年2回目となる会談を行ったことが話題となり、ドルが売られたようです。

パウエル議長は18日、トランプ大統領およびムニューシン財務長官とホワイトハウスで会談し、景気や経済成長、インフレなどについて話し合ったようです。会談はトランプ氏の招待で行われた模様で、金融当局は会談後声明を発表しました。声明では、「パウエル議長は、政策経路は米経済見通しに影響する今後の情報によって全て決まるとの考えを強調したことを除けば、金融政策についての自身の見通しに言及しなかった」と発表しています。一方トランプ氏は会談後にツイートし、「非常に良い誠意ある会談だった」とし、「金利やマイナス金利、低いインフレ、金融緩和、ドル高とそれが製造業に与える影響、中国やEUなどとの貿易を含む様々な問題を議論した」と投稿しました。(ブルームバーグ)これまで再三パウエル議長の金融政策を批判し、利下げ圧力を加え続けてきたトランプ氏でしたが、さすがにこの日は、「口撃」を自ら封印したようです。

クリーブランド連銀のメスター総裁はメリーランド大学のイベントで講演を行い、「現在の金融政策はインフレの行方を見守る上で好位置であると考えている」と述べ、米景気についても、「インフレは当局の2%目標に向かって上昇しているように見受けられるものの、製造業と投資はこのところ弱い。個人消費は力強く、底堅い」との見方を示し、「貿易政策は、米経済に今年影響を及ぼした要因の一つであることは間違いない」と語っています。メスター総裁は来年のFOMCでの投票権を持つことになっています。

ドル円は109円台が壁になりつつある状況で、米中通商協議の進展具合で上下する展開が続いています。ドルの方向性は上と見ていますが、なかなか確認できないのが現状です。一部の金融機関では、世界景気は今が底で、2020年1−3月期からは回復するとの見方を発表し始めています。株高もあり、堅調な個人消費が物価を押し上げるとの予想もあります。ここに世界景気の回復が加われば、FRBがいずれ「利上げ」も考慮しなければならない状況もないとは言えません。ただ目の前の材料はあくまでも米中通商協議の行方です。そして気になるのが、香港情勢の悪化です。昨日は香港警察が多数のデモ隊が立てこもっていた香港理工大学に突入し、さらに状況が悪化してきました。逮捕者の数も400人を超えたと伝えられており、中国がこのまま静観を続けるのか、今後の対応が注目されます。

本日のドル円は108円30銭〜109円程度と予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 「現在の金融政策はインフレの行方を見守る上で好位置であると考えている」「インフレは当局の2%目標に向かって上昇しているように見受けられるものの、製造業と投資はこのところ弱い。個人消費は力強く、底堅い」 --------
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和