今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米国株、指数によって明暗分ける」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は米中通商協議の不透明感や長期金利の低下を手掛かりに下落。108円46銭までドル売りが進み、東京時間の安値に並ぶ。
  • ユーロドルは値幅も限られ小動き。1.10台後半で推移し、値幅は12ポイント程度に留まる。
  • 株式市場はまちまち。ダウは100ドルを超える下げを見せた一方、ナスダックは最高値を更新。ホーム・デポと百貨店コールズの決算がダウを押し下げた。
  • 債券相場は続伸。長期金利は約2週間ぶりに1.8%を割り込む。
  • 金は続伸。原油は在庫が増えているとの観測やロシアが減産に消極的との報道に大幅続落。
*******************
10月住宅着工件数 → 131.4万件
10月建設許可件数 → 146.1万件
*******************
ドル/円 108.46 〜 108.77
ユーロ/ドル 1.1072 〜 1.1084
ユーロ/円 120.16 〜 120.50
NYダウ −102.20 → 27,934.02ドル
GOLD +2.40 → 1,474.30ドル
WTI −1.84 → 55.21ドル
米10年国債 −0.029 → 1.783%

本日の注目イベント

  • 日 10月貿易収支
  • 独 独10月生産者物価指数
  • 米 FOMC議事録(10月29−30日分)
  • 米 ワールドビジネスフォーラム(NY市、21日まで)でイエレン前FRB議長らが講演

米中通商協議の行方がいまいちはっきりしなく、香港の民主化運動も過激化しており、ドル円は108円台半ばから109円前後で一進一退の動きになっています。昨日は順調に上昇していたNYダウが、約1カ月ぶりに100ドルを超える下落を見せました。連日最高値を更新していることから、100ドルを超える下げもある意味「Healthy correction」(健全な調整)と言えなくもありませんが、株価の上昇にもややブレイキがかかるかも知れません。ダウ下落の主因は住宅小売大手、ホーム・デポと百貨店コールズの株価が大きく売られたことが引き金となっています。一方で、昨日発表された10月の住宅着工件数は増加し、特に一戸建ての住宅は年初来の高水準でした。また許可件数は146.1万件と、2007年以来の高い水準で、個人消費とともに住宅市場の拡大が米景気を牽引していると見られます。今年に入って3度の利下げを行ったことに伴い、住宅ローン金利が低下していることが追い風になっているようです。

ペンス副大統領はラジオ番組で、(香港のデモに関連して)「何らかの暴力が行われたり、この問題が適切かつ人道的に対処されなかったりした場合、われわれが中国と取引するのは極めて難しくなるとトランプ大統領は明確にしている」と述べています。米国は現在、中国と「第一段階」の合意に向けて交渉中ですが、「中国に対して強い姿勢を取っている」とペンス氏は語っています。ブルームバーグによれば、中国側は、5月より後に発動した関税全ての即時撤回のほか、5月より前に導入された関税についても徐々に撤廃するよう米国側に求めている模様で、米国側もどこまで関税措置を撤廃するのかを検討しているとのことですが、まだ合意点には達していないようです。

NY連銀のウイリアムズ総裁はワシントンで、「現在の経済状況および緩やかな成長の継続と力強い労働市場、2%へ向かうインフレを描く基本シナリオを考えると、現在の金融政策スタンスはこれを支える上で適切だと見受けられる」と述べ、現行の金融政策の正当性に言及しました。また、今後の追加緩和の必要性については、「米経済の成長が予想以上に減速した場合や、インフレが継続的に望まぬ方向に動いた場合」を想定していると語っています。これは、前日のメスター・クリーブランド連銀総裁と同様の認識で、現状では12月のFOMCでの利下げは見送られる可能性が高いと予想されます。

日足チャートではドル円が、120日線と200日線の間で推移しているように見られます。120日線は現在107円台半ばにあり、まだ下方に「余裕」はあるものの、108円を割り込む展開になれば、そこまでの下落も想定されます。足元では108−109円のレンジが続いていますが、値幅もなく次の材料を待つといった状況です。次の材料も結局は、米中通商協議関連ということにはなりそうですが・・・。本日のドル円は108円20銭〜108円90銭程度を予想します。先週記録した108円24銭を下回るかどうかも焦点の一つです。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/19 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の経済状況および緩やかな成長の継続と力強い労働市場、2%へ向かうインフレを描く基本シナリオを考えると、現在の金融政策スタンスはこれを支える上で適切だと見受けられる」 --------
11/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 「現在の金融政策はインフレの行方を見守る上で好位置であると考えている」「インフレは当局の2%目標に向かって上昇しているように見受けられるものの、製造業と投資はこのところ弱い。個人消費は力強く、底堅い」 --------
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和