今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米国株、3指数とも揃って下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は米中貿易協議の合意が来年以降にずれ込む可能性があるとの報道を受け、108円41銭まで下落したがその後反発。
  • ユーロドルは前日とほぼ同水準でもみ合い。1.10台半ばから後半で推移。
  • 株式市場は米中合意の成立が来年以降にずれ込むとの報道を受け3指数が揃って下落。ダウは112ドル売られ、連日で100ドルを超える下落。
  • 債券は3日続伸。長期金利は1.74%台まで低下し、約1カ月ぶりの低水準に。
  • 金はほぼ変わらず。原油は在庫が増加していたものの、予想よりも増えていなかったことなどから急伸。
ドル/円 108.41 〜 108.74
ユーロ/ドル 1.1053 〜 1.1081
ユーロ/円 119.91 〜 120.40
NYダウ −112.93 → 27,821.09ドル
GOLD −0.10 → 1,474.20ドル
WTI +1.90 → 57.11ドル
米10年国債 −0.038 → 1.745%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏11月消費者信頼感指数(速報値)
  • 欧 ECB議事要旨(10月23−24日開催分)
  • 欧 OECD経済見通し
  • 米 11月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 10月景気先行指標総合指数
  • 米 10月中古住宅販売件数
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
  • 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演

日米の株価がやや軟調になるのではと予想しましたが、昨日のNY株式市場では3主要指数が揃って下落しました。今回の上昇局面で、3指数が揃って売られるは初めてのことで、ダウも2日続けて100ドルを超える下げを見せたのも初めてのことです。これでNY株の上昇が終わったとは思えませんが、そろそろ調整局面が近づいてきたのかもしれません。

ロイター通信は、米中の貿易協議で「第1段階」の合意がまとまるのは、来年以降になる可能性があると、通商関係の専門家やホワイトハウスに近い複数の関係者を引用して伝えました。NY株はこの報道を受けて売られたようですが、その後、FOXビジネスはホワイトハウスの報道官による発言として、「第1段階」の合意文書を巡って進展が見られると報じており、依然として不透明であることは変わりません。米中両首脳の抱える台所事情を考えると、年内合意の可能性は残っていると、個人的には考えていますが、貿易協議そのものが決裂する可能性もあり、今後も注意深く見守るしかありません。

さらに今後の米中貿易協議の進展に影響を与えそうなのが、香港の民主化デモの行方です。昨日米議会上院では、香港人権・民主主義法案を全会一致で可決しました。法案は中国政府が香港の一国二制度を守っているのかを米政府が毎年検証し、違反があれば制裁を科すという内容です。(日経新聞)法案成立にはトランプ大統領の署名が必要ですが、今後トランプ氏が署名するかどうかが焦点だとしています。仮にトランプ氏の署名を経て成立するようだと、今後の貿易協議に悪影響を与えるのは必至と見られています。中国外務省はこの法案可決を受けて直ちに声明を発表し、「香港人権法案が成立すれば報復する」と警告し、香港への介入をやめるよう求めています。また香港政府も声明を出し、同法案は「不要で、根拠がなく、米国と香港との関係や米国の利益に悪影響を及ぼすだろう」と非難し、「極めて強い遺憾」を表明しています。

このように、米中関係が再び悪化する気配が増す中、ドル円はその割りには売られていません。昨日の夕方には108円35銭までドル売りが進む場面もありましたが、その後の海外市場では108円台後半まで買い戻されています。NY株が大きく買われても109円台を維持できず、逆に昨日の様に、NY株が下げても108円台を割り込まないのが、ここ1カ月のドルです。今朝の経済紙でも「円の低温相場一段と」といった見出しで、今年のドル円が動かない要因などを探っています。同紙では、値幅が伸びない理由に、「低成長、低インフレ、低金利」がその一因ではないかとの見方を紹介しています。このままだと今年1年間の値幅は「変動相場制に移行して以来最小」となるのは確実と見られます。足元の相場が年内に112円台半ばを抜けるとも思えないと同時に、下値の方も104円を割り込む可能性はほとんどないと見られます。個人投資家の皆さんからも、「何とかならないのか」、「稼げない」といった声が聞こえてきます。

本日のドル円は108円10銭〜108円80銭程度のレンジを予想しますが、これまで以上に香港の動きには目を向ける必要がありそうです。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
11/19 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の経済状況および緩やかな成長の継続と力強い労働市場、2%へ向かうインフレを描く基本シナリオを考えると、現在の金融政策スタンスはこれを支える上で適切だと見受けられる」 --------
11/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 「現在の金融政策はインフレの行方を見守る上で好位置であると考えている」「インフレは当局の2%目標に向かって上昇しているように見受けられるものの、製造業と投資はこのところ弱い。個人消費は力強く、底堅い」 --------
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
10/30 トランプ大統領 「パウエル議長とFOMCに国民は非常に失望している。」「われわれはドイツや日本など、他の国のどこよりも低い金利とすべきだった。米国は現在、間違いなく最も強大な国だが、FRBのせいで競争上、不利な立場に置かれている。われわれにとって問題なのは中国ではなくFRBだ。」 --------
10/24 ドラギ・ECB総裁 「成長の勢い鈍化が賃金上昇のインフレへの転化を遅らせている」と指摘し、見通しへのリスクは下方向だ」「ドイツは恐らくリセッションに陥っている」 --------
10/24 ペンス・米副大統領 (米中関係について)「両国がデカップリングするのではなく、米国は中国との関わり、および中国による世界との関わりを模索している」 ややリスクオンの流れが強まる
10/19 劉鶴・中国副首相 「中国と米国は多くの側面で大きく前進し、第一段階の合意に向け重要な基盤を築いた」、「中国は平等を相互尊重に基づいて双方の中核的な懸案事項に対処するため米国と協力して取り組む用意がある」 --------
10/15 ブラード・セントルイス連銀総裁 「今後の会合で追加の保険を検討する必要がある」 --------
10/15 ギータ・ゴピナート・IMFチーフエコノミスト 「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦を地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」 --------
10/10 トランプ大統領 米中貿易協議について、「非常にうまく行った。われわれはここで明日彼らと会うだろう。極めて順調だ」 ドル円107円80銭から108円台を回復。
10/8 エバンス・シカゴ連銀総裁 「さらなる保険として、25ベーシスポイント引き下げる根拠は十分ありそうだ」 --------
10/6 ジョンソン・英首相 「われわれは荷物をまとめて出て行くことになるだろう。EUが相互に受け入れ可能な合意の下でわれわれを陽気に見送るか、われわれが勝手に出て行かざるを得ないか、それだけの問題だ」(英紙テレグラフで) --------
10/4 ジョージ・カンザスシティー連銀 「一段の成長減速の兆候があれば追加利下げに賛成する用意がある」 --------
10/4 パウエル・FRB議長 「米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあると言えるだろう」「失業率は半世紀ぶりの低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している。われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和