今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「トランプ政権、ブラジル、アルゼンチンに対する関税引き上げを発表」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間に109円72銭まで上昇したが、NYでは一転して大きく売られる。トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼・アルミに対して関税引き上げを発表。経済指標の悪化もあり、ドル円は108円92銭まで下落。
  • ユーロドルも急伸。1.1091まで上昇し、今回も1.10を割り込んだものの底堅い動きが確認される。
  • 株式市場は大幅に続落。新たな貿易戦争と製造業の減速が重なり、ダウは268ドル売られ、今回の上昇局面で最大の下落。
  • 債券相場も下落。長期金利は1.82%近辺まで上昇。
  • 金と原油は反発。
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11月製造業PMI(改定値) → 52.6
11月ISM製造業景況指数 → 48.1
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ドル/円 108.92 〜 109.61
ユーロ/ドル 1.1019 〜 1.1091
ユーロ/円 120.68 〜 121.01
NYダウ −268.37 → 27,783.04ドル
GOLD −3.50 → 1,469.20ドル
WTI +0.79 → 55.96ドル
米10年国債 +0.043 → 1.819%

本日の注目イベント

  • 豪   豪7−9月期経常収支
  • 豪   RBA、キャッシュターゲット
  • 日   11月マネタリーベース
  • トルコ トルコ11月消費者物価指数
  • 欧   ユーロ圏10月生産者物価指数
  • 英   NATO首脳会議(ロンドン、4日まで)
  • 米   11月自動車販売台数

やはり米国の製造業はまだ回復基調にはないということでしょうか。昨日発表された11月のISM製造業景況指数は、「48.1」と、市場予想を下回り、拡大、縮小の分岐点でもある「50」を割り込んだままでした。これで、4カ月連続で、「50」を下回ったことになります。特に新規受注指数が「42.7」に低下し、今の景気拡大が始まって以降最低水準に並ぶ数字です。同指標は先行指数で、今後の景気を製造業の視点から予想するものですが、米中貿易戦争に対する不透明が依然として払拭できないという現状を表しているようです。「製造業の回復は予想以上に時間がかかりそうだ」といった声も聞こえてきました。同指数発表を受けて株価が大きく下げ、債券も売られる展開でした。さらに両市場の下落に拍車をかけ、ドル円を109円割れまで押し下げたのが、再び「タリフマン」こと、トランプ大統領の発言でした。

トランプ氏はブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミニウムに対する関税を直ちに復活させると2日ツイッターで発表しました。その理由としてトランプ氏は、「甚だしい規模で自国通貨の切り下げを行ってきた。これは米国の農民にとって不利だ。従って、両国から出荷される全ての鉄鋼とアルミニウムに対する関税を直ちに復活させる」と語っています。突然復活した両国に対する関税引き上げは、2020年に大統領選を控え、支持層の柱である農家を意識した格好だと、ブルームバーグは報じています。これに対してブラジルのボルソナロ大統領は、経済閣僚と話してから対応したいと発言し、「必要とあればトランプ氏に話しをすることは可能だ。私には対話の経路が開かれている」と述べています。

対中国との貿易合意が近いとされる中で、新たにブラジルとアルゼンチンに貿易戦争を仕掛けたトランプ氏ですが、これは米中貿易戦争ほど世界景気に影響を及ぼすものではないと思われますが、今後の展開には注視しなければなりません。また米中貿易協議の合意について、トランプ氏の側近であるコンウェイ大統領顧問は2日、年内の対中貿易合意は可能かとの質問に、「もちろん可能だ。中国次第だ。例えば12月15日は重要な日であり、中国がそれを分かっていると確信している」と答えています。一方でロス商務長官はFOXビジネス・ネットワークに対して、「論理的な期限は12月15日だ。現在とその日までの間に何も起きなければ、トランプ大統領は関税を引き上げる考えであることをかなり明確に示している」と語り、中国に対する強硬な姿勢を維持するとともに、あくまでもボールは中国側にあるとしています。今回のブラジルとアルゼンチンに対する突然の関税引き上げ宣言も、個人的には、中国に対するけん制という意味合いも含んでいるような気もします。

上述のように、新たな貿易戦争と製造業の減速を示す指標にドル円は109円を割り込み、108円92銭まで売られました。今回のドル円と株式の上昇局面では、昨日の下落幅は両市場ともに最大の下げを見せました。ドル円は、それでも長期金利が上昇していることから、ドルのサポート材料にはなりそうで、108円台後半まで売られたものの、チャートではまだ大きな変化はありません。懸念されるのは米株式市場でしょう。この欄のコメントでも何度か触れましたが、米国株の上昇はややバブル化したと見られ、大幅下落はいずれあると予想していましたが、問題はここが「下落の始まり」なのかどうかを見極める必要があるということです。昨日は恐怖指数の「XIV指数」も18%ほど下げています。今後の動きを注意深く見ていかなければなりませんが、米国株の本格的な調整が始まるようだと、ドル円も徐々に下値を切り下げてくる可能性があります。本日のドル円は108円60銭〜109円30銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
12/2 ロス・米商務長官 「論理的な期限は12月15日だ。現在とその日までの間に何も起きなければ、トランプ大統領は関税を引き上げる考えであることをかなり明確に示している」 --------
12/2 トランプ大統領 「甚だしい規模で自国通貨の切り下げを行ってきた。これは米国の農民にとって不利だ。従って、両国から出荷される全ての鉄鋼とアルミニウムに対する関税を直ちに復活させる」 株価の大幅下落と、ドル円は109円台後半から108円台後半まで売られる。
11/26 ロウ・オーストラリア準備銀行総裁 「私の考えでは、利下げから量的緩和(QE)へと進むスムーズな連続性はない。中銀が資産購入に踏み込むのは利下げよりも大きなステップだ」 --------
11/26 トランプ大統領 米中貿易協議について、「われわれは極めて重要な取引の最後の難所にある。非常に順調に進んでいる」 ドル高、株高につながる。
11/25 パウエル・FRB議長 「経済を巡る今後の情報が当局の見通しとおおむね合致した状況が続く限り、現行の金融政策スタンスは依然として適切である可能性が高いとわれわれは考える」 --------
11/24 マイケル・ブルームバーグ・前NY市長 「ドナルド・トランプを打ち負かし、米国を立て直すために出馬する。大統領による無鉄砲で倫理観を欠いた行動がさらに4年間続くことに、米国は堪えられない」「再選された場合、米国が受けるダメージは二度と修復できなくなるだろう」(民主党大統領候補出馬にあたって) --------
11/20 劉鶴・中国副首相 (米国側の要求に)「戸惑っているものの、合意の第1段階に達する自信を持っている」「慎重ながらも楽観的だ」 ドル円→108円30銭近辺から反発。マイナス400円を超える下落を見せた日経平均株価も下げ幅を200円以下に縮小。
11/19 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「現在の経済状況および緩やかな成長の継続と力強い労働市場、2%へ向かうインフレを描く基本シナリオを考えると、現在の金融政策スタンスはこれを支える上で適切だと見受けられる」 --------
11/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 「現在の金融政策はインフレの行方を見守る上で好位置であると考えている」「インフレは当局の2%目標に向かって上昇しているように見受けられるものの、製造業と投資はこのところ弱い。個人消費は力強く、底堅い」 --------
11/13 パウエル・FRB議長 「景気に関する最新情報がわれわれの見通しとおおむね一致する状況が続く限り、現行金融政策のスタンスは引き続き適切となる可能性が高いだろう」「ただし、この見通しに対する留意すべきリスクは残る」 ややドル高に影響したが、動きは限定的。
11/12 トランプ大統領 「合意は近い。重要な第一段階の合意が近く実現する可能性がある」「合意に至らなければ、われわれは対中関税を大きく引き上げる」 リスクオンがやや後退し、ドル円、株価は小幅下落。
11/5 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「貿易政策を起因とする不確実性や世界経済の成長減速から国内経済を守るため、米金融当局は金利を引き下げたが、一旦(利下げを)休止する良い時期と考えている」 --------
11/5 カプラン・ダラス連銀総裁 「1.5−1.75%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは恐らく妥当な水準だ」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和