「米長期金利急低下でドル円110円台に」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることから、米長期金利が急低下しドル円は110円33銭まで下落。リスク回避の動きが強まり、世界経済の鈍化が予想され、円への需要が高まった。
- ユーロドルも急反発。1.0872までユーロの買い戻しが進む。
- 株式市場は急落。イタリアや韓国でも新型コロナウイルスの感染拡大が続いたことで、ダウは1000ドルを超える下げに。他の主要指数も大幅安に。
- リスク回避の流れが強まり債券相場は急騰。長期金利は2016年7月以来となる1.36%台へと低下。
- リスク回避の流れから金は大幅高、前日比27ドル高の1676ドルで取引を終える。原油は世界景気が鈍化するとの見方から大幅安。
| ドル/円 | 110.32 〜 111.41 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.0813 〜 1.0872 |
| ユーロ/円 | 119.90 〜 120.44 |
| NYダウ | −1031.61 → 27,960.80ドル |
| GOLD | +27.80 → 1,676.61ドル |
| WTI | −1.95 → 51.43ドル |
| 米10年国債 | −0.1.02 → 1.369% |
本日の注目イベント
- 日 12月景気先行指数(CI)(改定値)
- 日 12月景気一致指数(改定値)
- 独 独10−12月期GDP(速報値)
- 米 12月ケース・シラ−住宅価格指数
- 米 12月FHFA住宅価格指数
- 米 2月消費者信頼感指数
- 米 2月リッチモンド連銀製造業指数
- 米 クラリダ・FRB副議長講演
新型コロナウイルスの感染がイタリアや韓国でも広がり、世界経済の重しとなることから、好調な米景気への悪影響も避けられないとの見方が強まり、昨日のNY株は久しぶりの大幅安を見せました。ダウは1000ドルを超える下げとなり、好調なナスダック指数も355ポイントの下げでした。昨日は東京市場が休場でしたが、アジア株や欧州株も3%前後下げた影響もあり、NY株式市場では寄り付きから大幅安で始まっていました。リスク回避の流れが一気に強まったことで、債券が買われ、長期金利は1.36%台へと急落し、これは2016年の「BREXIT」の時以来の低水準です。
米金利の低下に、先週112円台まで上昇したドル円は売られ、110円台前半まで円高が進む場面もありました。先週は日本での感染拡大が「円売り材料」とみなされ、ドル円は112円台前半まで上昇しましたが、感染拡大が世界規模になるとすれば、やはり安全通貨の円が買われるといった流れです。ただ、それでも日本での感染拡大は中国以外では突出しています。これまでは横浜港に停泊中の「ダイヤモンド・プリンセス」号にほぼ限定されていた感染が、北海道などでも広がり、感染者は高齢者だけではなく若年層にも広がっています。先週、多くの専門家が「ここ2週間がヤマ場」と述べていましたが、その最初の1週間を経過し、どうやら感染は拡大しているようです。感染が拡大するのか鎮静化するのかという意味で「ヤマ場」であったとするならば、感染は確実に拡大傾向にあるようです。いずれ感染はピークを迎え徐々に収まっていくものと思われますが、その影響はその後の景気に大きなダメージを与えることになります。特に中国ではサプライチェーンの断絶から、生産に影響が出て、世界経済に大きな影響を及ぼします。中国では生産だけではなく需要も低下し、自動車やスマートフォンなどの販売は下方修正を迫られることになります。一部には中国の1−3月期GDPはマイナス成長になるといった観測もあるようです。
先週末サウジアラビアのリヤドで行われたG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)では「新型コロナウイルスの最近の流行を含め、世界経済のリスク監視を強化する」ことで一致し、「各国が政策を総動員する」との共同声明を採択しました。ただ中国は閣僚と中央銀行総裁が参加せず、代わりに駐サウジアラビア大使や米国に勤務する関係者が参加したようで、震源地である中国の当事者が参加しなかったことが、G20の形骸化を象徴しているようです。
米債券市場では安全資産の債券に資金が集まっています。30年債は昨日1.83%台まで低下して、最低水準を更新しました。また10年債も1.36%台まで低下し、政策金利の動向に敏感な2年債も急低下しており、市場は徐々に利下げを織り込みつつあります。米金利の低水準の割には、ドル円はいまだ110円台です。これは上で述べたように、今回の新型コロナウイルスの感染が日本でも広がっていることとは無関係ではないと見ています。米金利先物市場では6月までの利下げ確率が49%程度まで上昇して来ました。クリーブランド連銀のメスター総裁は24日の講演で、新型コロナウイルスの感染拡大が米経済にとって脅威になっているが、金融政策の変更を正当化するものではまだないとの認識を示しました。総裁は、「現時点での経済的影響の規模を評価することは難しい」としながらも、「私の予測に対する下振れリスクとしてそれを組み込んだ」ことを明らかにしました。その上で、「現在の政策スタンスは適切というのが私の見解だ」と語っています。(ブルームバーグ)
ドル円は再び110円台まで低下してきました。世界経済の下振れ観測が円への需要を高めたものですが、上でも述べたように、今回のリスク回避は日本もその対象国の一つであることを考えると、それほど円高が進む可能性は高くないと予想しています。もっとも、今回のウイルスの感染がどこまで広がるのかが予想できないことから、先行きは非常に不透明です。ここは慎重に対応するしかありません。本日のドル円は110円30銭〜111円30銭程度を予想します。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 2/24 | メスター・クリーブランド連銀 | 「現時点での経済的影響の規模を評価することは難しい」「現在の政策スタンスは適切というのが私の見解だ」 | -------- |
| 2/22 | G20(リヤド、サウジアラビア) | 「新型コロナウイルスの最近の流行を含め、世界経済のリスク監視を強化する」「各国は政策を総動員する」 | -------- |
| 2/19 | クラリダ・FRB副議長 | 「米金融当局は新型コロナウイルスを注意深く見守っているが、米経済にどう影響するのか判断するのは時期尚早だ」、「少なくとも今年第1四半期は、中国の成長に恐らく顕著な影響を及ぼすことは確かだ」 | -------- |
| 2/16 | 劉・中国財務相 | 「大規模な減税や歳出削減といった措置により短期的に厳しさが増す可能性はあるが、国として中期的な視点を持ち断固たる姿勢でそうした措置を講じる必要がある」 | -------- |
| 2/11 | パウエル・FRB議長 | 「われわれは特に、新型コロナウイルス出現の問題を注視している。この問題は中国での混乱につながり、世界の他地域の経済に波及する恐れがある」、「今の景気拡大に不安定さや持続不可能といったものはない」(議会証言で) | -------- |
| 2/7 | FRB金融政策報告書 | 「その経済規模ゆえに、中国での深刻な機能不全は、リスク選好の後退やドルの上昇、貿易およびコモディティー価格の落ち込みを通じ、米国や世界の市場に波及する可能性がある」、「中国でのコロナウイルスの影響が見通しへの新たなリスクをもたらした」 | -------- |
| 2/5 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | (新型コロナウイルスについて)「当局は注視しているが、今のところ、米経済に何か重大な影響は見当たらない」「過去のウイルスや自然災害について振り返れば、一時的な影響はあろう。しかし、ウイルスの問題が克服されれば、物事は正常に戻るため、回復が見られる」 | -------- |
| 2/2 | ゲオルギエバ・IMF専務理事 | 「不確実性が多く、リスクは下向きに傾いている。中銀に2020年も金融緩和を維持するよう強く求める」 | -------- |
| 1/23 | ラガルド・ECB総裁 | 「いかにして目標を達成するかについて、選択肢を除外することも、あらかじめ想定することも予測することもしない」「他のメンバーと同じように私も意見があるが、私の使命は全ての意見を活用することだ」 | -------- |
| 1/17 | トランプ大統領 | 「イランのいわゆる『最高指導』は最近あまり最高ではなく、米国と欧州に関して幾つかの不快な発意をした。イランの経済は崩壊しつつあり、国民は苦しんでいる」、「彼は、言葉に十分気を付けるべきだ」 | -------- |
| 1/15 | トランプ大統領 | (署名を終え)「非常に重要で特別な機会だ。これが発効し次第、われわれは第2段階を開始する」、「交渉材料を失わないよう、第2段階が可能になった場合のみ私は関税を撤廃することに合意するつもりだ。われわれが第2段階を終えれば、関税は直ちに撤廃されるだろう」 | -------- |
| 1/13 | ローゼングレン:ボストン連銀総裁 | 「インフレ高進と金融不安定化のリスクに注視するが、これらのリスクが抑制され続ければ、今年も良好な経済的成果が得られるというのが、私の見方だ」 | -------- |
| 1/13 | ボステック:アトランタ連銀総裁 | 「景気を刺激したり減速させたりする必要はあまりない。私見では、経済の成り行きを静観し、いずれかの方向への次の動きに備える」 | -------- |
| 1/8 | ザリフ・イラン外相 | 「国連憲法51条の下で自衛のための相応の対応を実行、完遂した。われわれはエスカレートや戦争を求めていないが、いかなる武力攻撃に対しても自衛する。」イラクの米軍駐留基地を攻撃後に。 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



