今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「NYダウ過去最大の下げ幅を記録」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京時間に急落し、101円52銭を記録し、その後は102円台半ばで推移していたが、NY時間の朝方には再び下げ足を速め、101円18銭まで円高が進む。
  • ユーロドルも続伸し、1.1485までユーロ高が進む。昨年1月以来のユーロ高を示現。
  • 株式市場はアジアや欧州の株安を受け、寄り付きから大きく値を下げて始まる。S&P500が一時7%を超える下落となり、「サーキット・ブレーカー」が発動される。ダウは2013ドル下げ、下落幅は7.8%と、過去最大の下げ幅を記録。
  • 債券相場は続伸し、長期金利は0.54%台に。アジア時間に一時0.31%まで低下する場面も。
  • 金は小幅に続伸。原油価格は昨日のアジア時間に大きく売られ、一時は27ドル台まで(約34%)下落、NYでは31ドル台とやや値を戻す。
ドル/円 101.18 〜 102.80
ユーロ/ドル 1.1379 〜 1.1485
ユーロ/円 116.18 〜 117.35
NYダウ −2,013.76 → 23,851.02ドル
GOLD +3.30 → 1,675.70ドル
WTI −10.15 → 31.13ドル
米10年国債 −0.222 → 0.541%

本日の注目イベント

  • 中 中国2月消費者物価指数
  • 中 中国2月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏10−12月期GDP(確定値)

「暴落」という言葉以外に言い表せないほど、NY株式市場では株が売られました。昨日の東京株式市場でも日経平均株価が一時1300円に迫る下げを見せ、1050円安で引けたため、ある程度の下げは想定していましたが、すでに相当の下げが続いていたことから、下げても1000ドル程と予想していました。S&P500指数は、朝方には下げ幅が7%を超えたことから「サーキット・ブレーカー」が発動され取引は15分間停止されました。ドル円はこのタイミングで101円18銭までドル安が進み、101円割れは回避できましたが、すでに東京時間で大台を104円台から101円台に替えていたこともあり、102円台半ばでNYでの取引を終えています。

週明け月曜日の混乱は新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、「OPECプラス」で減産合意がまとまらなかったことにありますが、さらにサウジアラビアの増産報道が混乱に拍車をかけました。専門家の間では、「サウジは石油の価格競争に打って出た」との見方が一般的なようです。ドル安が進み、株価の暴落に伴い、「VIX指数」は「50」を大きく超え、直近では「54台」まで恐怖が高まってきました。この水準は2008年のリーマンショック以来の高水準です。振り返ってみれば、ダウが最後に「最高値を更新」したのは2月12日で、2万9551ドルでした。それからまだ1カ月も経っていないにも拘わらず、昨日の引け値は2万3851ドルです。まさに天国から地獄といった様相です。

新型コロナウイルスの感染は欧米で拡大しています。イタリアではさらに死者の数が97人増え、463人に達しています。またドイツやフランスでも感染者の数が1000人を超えてきました。アメリカでも今朝の時点ではカリフォルニア州など8州が非常事態宣言を行っています。このような状況の中、WHOのテドロス事務局長は9日の記者会見で、「パンデミックの脅威は非常に現実的になった」と述べています。アメリカではトランプ大統領が、政権が給与税減税の可能性について上院と協議することを明らかにしています。

日本でも昨日黒田日銀総裁が国会で、「必要に応じて適切な対応をちゅうちょなく取っていく」と答えていますが、市場への影響は皆無でした。金融市場によってはすでに「リーマンショック級」のダメージを超えているものもあります。消費税を元に戻すか、5%にするなど、思い切った政策の実行が求められます。これまでのように、「適切な行動を取る」「ちゅうちょなく行動する」といった言葉だけでは、今回の混乱は抑えられないように思います。昨日の朝からの混乱の影響で影が薄くなっていましたが、昨年10−12月のGDP確定値が発表され、速報値の「マイナス6.3%」から0.8ポイント下方修正され「マイナス7.1%」でした。さらに7−9月期も「0.4%」から「0.1%」に下方修正され、ほぼゼロ成長の状況だったことが判明しています。つまり昨年10月の消費税増税の時点で、すでに景気はかなり落ち込んでいたことになります。新型コロナウイルスの感染の影響をもろに受ける1−3月期がマイナス成長になることは、ほぼ間違いないものと思われます。多くの国民が不要不急の外出を避け、会合や出張、イベントなどはほぼ全て中止です。レストランやホテル、居酒屋では閑古鳥が鳴いている状況で、人の移動も激減しています。個人消費がGDPの6割を占める日本が「リセッション」入りする可能性が現実味を帯びてきました。

本日もNY株式市場の暴落を受け、日本株は厳しい下げを余儀なくされそうで、「負の連鎖」は止まりそうもありません。日中に何か効果的な対策が出されれば反転のきっかになるかもしれませんが、その可能性は低いでしょう。本日のドル円は101円50〜103円50程度を予想しますが、この混乱の中、予想そのものが意味ありません。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/9 テドロス・WHO事務局長 「パンデミックの脅威は非常に現実的になった」 --------
3/5 ゲオルギエワ・IMF専務理事 「新型コロナウイルスは感染が気づかれないうちに拡大しており、世界経済の見通しはより暗いシナリオに移行した」 --------
3/3 パウエル・FRB議長 「経済見通しに対する新たなリスクを前に、米経済の力強さを維持できるよう、この措置を講じた」「米金融当局に全ての解決策があるわけではなく、人的・経済的ダメージの抑制には政府や医療専門家、中銀など多方面からの対応が必要となる」 --------
3/2 ラガルド・ECB総裁 ECBは状況の進展と景気及び中期的なインフレ、金融政策効果の波及にそれが及ぼす影響を注意深く見守っているところだ。われわれは、必要かつ潜在的なリスクに見合う形で、適切で的を絞った対応策をとる用意がある」 --------
2/24 メスター・クリーブランド連銀 「現時点での経済的影響の規模を評価することは難しい」「現在の政策スタンスは適切というのが私の見解だ」 --------
2/22 G20(リヤド、サウジアラビア) 「新型コロナウイルスの最近の流行を含め、世界経済のリスク監視を強化する」「各国は政策を総動員する」 --------
2/19 クラリダ・FRB副議長 「米金融当局は新型コロナウイルスを注意深く見守っているが、米経済にどう影響するのか判断するのは時期尚早だ」、「少なくとも今年第1四半期は、中国の成長に恐らく顕著な影響を及ぼすことは確かだ」 --------
2/16 劉・中国財務相 「大規模な減税や歳出削減といった措置により短期的に厳しさが増す可能性はあるが、国として中期的な視点を持ち断固たる姿勢でそうした措置を講じる必要がある」 --------
2/11 パウエル・FRB議長 「われわれは特に、新型コロナウイルス出現の問題を注視している。この問題は中国での混乱につながり、世界の他地域の経済に波及する恐れがある」、「今の景気拡大に不安定さや持続不可能といったものはない」(議会証言で) --------
2/7 FRB金融政策報告書 「その経済規模ゆえに、中国での深刻な機能不全は、リスク選好の後退やドルの上昇、貿易およびコモディティー価格の落ち込みを通じ、米国や世界の市場に波及する可能性がある」、「中国でのコロナウイルスの影響が見通しへの新たなリスクをもたらした」 --------
2/5 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 (新型コロナウイルスについて)「当局は注視しているが、今のところ、米経済に何か重大な影響は見当たらない」「過去のウイルスや自然災害について振り返れば、一時的な影響はあろう。しかし、ウイルスの問題が克服されれば、物事は正常に戻るため、回復が見られる」 --------
2/2 ゲオルギエバ・IMF専務理事 「不確実性が多く、リスクは下向きに傾いている。中銀に2020年も金融緩和を維持するよう強く求める」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和