今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ユーロドル2週間ぶりに1.11台後半に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は東京、NYの両市場で106円台半ばを試したものの、下値は堅く、押し戻される展開。NYでは106円67銭がこの日の安値。
  • ユーロドルは続落。約2週間ぶりに1.1186近辺まで売られる。
  • 株式市場はコロナウイルス第2波への警戒感が強く、ダウは続落。一方ナスダックは小幅ながら5日続伸。
  • 債券相場は続伸。長期金利は0.70%へと低下。
  • 金は続落し、原油は反発。
***********************
新規失業保険申請件数 → 150.8万件
5月景気先行指標総合指数 → 2.8%
6月フィラデルフィア連銀景況指数 → 27.5
***********************
ドル/円 106.67 〜 107.10
ユーロ/ドル 1.1186 〜 1.1234
ユーロ/円 119.57 〜 120.30
NYダウ −39.51 → 26,080.10ドル
GOLD −4.50 → 1,731.10ドル
WTI +0.88 → 38.84ドル
米10年国債 −0.030 → 0.708%

本日の注目イベント

  • 日 5月消費者物価指数
  • 日 日銀金融政策決定会合、議事要旨(4月27日、5月27日分)
  • 英 英5月小売売上高
  • 加 カナダ4月小売売上高

本日のコメント

昨日の東京時間の朝方、ドル円は107円をしっかりと割込み106円台半ばを試す動きを見せましたが、106円70銭近辺で跳ね返され、この動きはNYでも見られましたが、同じように106円67銭前後で下げ止まっています。先週記録した106円58銭辺りが意識され、106円台半ばを下抜けするには、今のところさらなる円買い材料が必要なようです。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙はトランプ大統領とのインタビュー記事を掲載し、その中でトランプ大統領は、米国での新型コロナウイルスの感染拡大は終わりが近いと見ており、パンデミックは中国がライバル国の経済を動揺させる手段として国際的な感染拡大を後押しした可能性があると確信していると、報じています。WSJによると、トランプ大統領は感染拡大が「意図的だった可能性はある」と語ったとしています。新型コロナウイルスの感染はフロリダ州では拡大が続いており、昨日も新たに確認された感染症例は過去1週間のペースを上回り、テキサス州でも入院患者数は7日連続で増加しています。NYなどでは経済活動が再開される中で、第2波発生への懸念が高まっており、株式市場ではダウは底堅い動きを見せながらも、一段の上昇に対する警戒感も高まっているようです。一方ナスダック市場では、アマゾンなどネット関連の銘柄が多いこともあり、「巣籠り効果」期待から堅調な動きになっています。足元では日米金利差が0.7%程しかなく、これまでのように「金利差」からドルが買われるといったドルへの支援材料もなくなりつつある中、株価の動きが「リスクオン・オフ」を決定する動きになっており、ドル円を動かすドライバーになっていると考えられます。

昨日、本稿でも述べましたが、ボルトン前大統領補佐官が出版予定の暴露本の内容が明らかになってきました。トランプ氏は、自身の大統領選での再選のため、農業州で勝利できるよう中国に農産物の購入を働きかけたことは述べた通りですが、中国が新疆ウイグル自治区で進めるウイグル族などの収容施設建設の正当化を主張する習近平主席に対し、「施設の建設を進めて良い」と述べた。あるいは、「香港のデモは大変なことだが、関わりたくない」と発言したこと。さらにはフィンランドがロシアの一部ではないかとの認識や、イギリスが核保有国であることを知らなかったことなど、これらの言動が事実であるとすれば、トランプ氏が米国の大統領としてふさわしくないことは明らかです。この本が仮に出版されれば、今後の大統領選にも大きな影響を与えるものと思われます。日経新聞はこれらの記事の見出しに「トランプ氏、国益より再選」と大きな文字で伝えています。「ドナルド」、「シンゾー」と呼び合った日米のトップが今、苦境に立たされています。

新規失業保険申請件数は先週よりも減少はしていましたが、市場予想を上回っており、減少ペースは鈍化しているようです。セントルイス連銀のブラード総裁は「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」と述べながらも、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」と語り、経済活動の再開という点では、第3四半期末が重要な「チェックポイント」になるとの認識を示しました。(ブルームバーグ)あと1カ月もすれば4−6月の第2四半期GDPが発表されますが、これはさすがに各国とも相当の落ち込みが予想されます。再開後の経済の動きがまるまる反映される第3四半期のデータが、どこまで回復しているのかが、今後の金融政策という点でもポイントになりそうです。本日のドル円は106円60銭〜107円40銭程度を予想します。

==========

先週11日には1日で1861ドル下げたNYダウは、その翌日からの3日間で1160ドル値を戻すなど、相変わらず荒っぽい値動きを続けています。その株式の先行きに「ブリッシュ」な見方をしている投資家の根拠の一つに、民主党副大統領候補を巡る懸念の後退があるそうです。政治イベントの予想を行う専門サイトでは、当初副大統領候補として有力だったウォーレン上院議員の可能性が大きく後退し、トップに躍り出たのがハリス上院議員です。ハリス氏はジャマイカ人の父と、インド人の母を持つ「非白人」で、2011年にはカリフォルニア州の司法長官をやった経歴があります。ミネソタ州で起きた黒人暴行死事件で人種差別への抗議デモが拡大する中、うってつけの候補といえます。もっとも株式市場は、ハリス氏が副大統領候補の最有力になったことを好感したのではなく、ウォーレン氏の可能性が後退したことを好感したようです。ウォーレン氏は、バイデン氏などと民主党の大統領候補選を繰り広げていた時から、ウオール街、特に富裕層には厳しい政策を掲げていました。果たして、「ハリス副大統領」はあるのでしょうか?良い週末を・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
5/29 トランプ大統領 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 --------
5/28 クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 --------
5/24 王毅・中国外相 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 --------
5/21 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 --------
5/21 ウィリアムズ・NY連銀総裁 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 --------
5/18 パウエル:FRB議長 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 --------
5/18 トランプ大統領 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 --------
5/15 パウエル・FRB議長 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 --------
5/15 ナバロ・米大統領補佐官 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 --------
5/14 トランプ大領 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 --------
5/13 パウエル・FRB議長 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 --------
5/12 ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 --------
5/12 トランプ大統領 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 --------
5/10 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 --------
5/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 --------
5/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 --------
5/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和