今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「クロス円軒並み下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は上値を抑えられ小幅に下落。長期金利が低下し、ダウ平均が下げたことで円買いが優勢に。
  • ユーロドルは続落。6月3日以来となる1.1169までユーロ安が進む。復興基金設立が先送りになったことなどが嫌気された。
  • 株式市場は続落。ダウは208ドル安で3日続落。一方ナスダックは小幅ながら6日続伸。
  • 債券は小幅に買われ、長期金利は低下。
  • 金は大幅に反発。原油は続伸し、一時40ドル台を回復する場面も。
ドル/円 106.77 〜 107.04
ユーロ/ドル 1.1169 〜 1.1254
ユーロ/円 119.43 〜 120.21
NYダウ −208.64 → 25,871.46ドル
GOLD +21.90 → 1,753.00ドル
WTI +0.91 → 39.75ドル
米10年国債 −0.015 → 0.694%

本日の注目イベント

  • 欧 ユーロ圏6月消費者信頼感指数(速報値)
  • 米 5月中古住宅販売件数

本日のコメント

明日23日発売予定のボルトン前大統領補佐官による暴露本を巡り、司法省は国家機密に当たるとして出版差し止めを求めていましたが、ワシントンの連邦地裁はこれを棄却しました。当該暴露本はすでに書店に配送されており、内容も報道されていることが棄却の理由ですが、一方で地裁は、出版によりボルトン氏が民事・刑事責任を問われる可能性もあるとも指摘しています。これにより暴露本は明日にも発売されることになり、トランプ大統領にとっては、選挙戦を戦う上でマイナス材料になりそうです。そのトランプ氏、20日にはオクラホマ州タルサでコロナ感染が拡大して以来、初の本格的な選挙集会を開催しました。会場には支持者が多く集まったようにも見受けられましたが、実際に集まった支持者の数は、会場の収容能力の約3分の1にあたる6200人弱と報じられています。

報道では「空席が目だった」と伝えられており、「黒人暴行死事件」以来急速に支持を失っており、直近の調査ではトランプ氏が41.3%、バイデン氏が50.1%と、その差は10ポイント程に広がっています。さらに別の調査によると、2期目の選挙時の歴代大統領と比べ、トランプ氏よりも同時期の支持率が低かったのはブッシュ(父)と、カーター元大統領だけで、いずれも選挙では敗北している(日経新聞)ようです。コロナ感染が拡大しているにもかかわらず経済優先の政策を推進し、感染による死者数も増加したことや、黒人暴行死事件を抗議するデモが首都ワシントンで高まった際に、連邦軍の動員を示唆したことなどが「不支持」につながっているようですが、そこに今度は暴露本が出版され、ホワイトハウス内での言動が暴露されることになります。大統領選まで約5カ月です。コロナの感染状況と共に、市場はいよいよ11月の大統領選も「材料」として注目することになります。

コロナウイルスの感染拡大は止まりません。WHOは21日、コロナウイルスの感染症例が1日で過去最多の18万3000を超えたと発表しています。米国でもサンベルトと呼ばれるフロリダ州を中心に感染者が増えており、20日には1日で3万4284人も増え、累計でも224万人に達しています。またブラジルでは感染者と死者の増加ペースは減速したものの、累計感染者数は110万人、死者数は5万人に近づいています。今回のコロナウイルスでは模範国となった韓国でも、新たに48人の感染が確認されており、依然として感染第2波への警戒感が強まっています。(ジョンズ・ホプキンス大学調べ)

中国新華社は、中国による国家安全法は香港の法制度に優先するとの草稿を発表しました。それによると、国家の安全保障を脅かす行為に対し、中国当局が香港住民を直接訴追できる内容になっており、今月28−30日に開かれる「全人代常務委員会」で制定される可能性があるようです。7月1日に大規模デモを組織してきた香港の民間人権陣線の幹部は「この法がさかのぼって効力を持つ場合、何も言えなくなる。われわれは昨日の行為を理由に逮捕される可能性がある」と述べています。(ブルームバーグ)

ドル円はジワリと上値を切り下げています。特に先週からはユーロ円など「クロス円」が値を下げているのが目立ちます。「最弱通貨」から「最強」とは言わないまでも、米ドルと共に徐々に買われている状況です。米株式市場を見ると、ナスダックは例外としてもダウは3日続落で、この間420ドル程下げています。やはり11日の、あの1日で1861ドルの下げは、今後の動きを示唆していた可能性もあります。また、金価格は3週間ぶりに1750ドル台に乗せ、米大手金融機関は一段の上昇を予想しています。やや円が買われ易い状況になってきたと思われますが、下値のメドは引きつづき106円50銭前後で、106円を割り込むと一気に円の先高感が強まる恐れもあります。こうなるとドル円は、日足の「雲の下限」を下抜けすることになり、チャート上でも円高を示唆することになります。本日のドル円は106円30銭〜107円10銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
5/29 トランプ大統領 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 --------
5/28 クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 --------
5/24 王毅・中国外相 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 --------
5/21 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 --------
5/21 ウィリアムズ・NY連銀総裁 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 --------
5/18 パウエル:FRB議長 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 --------
5/18 トランプ大統領 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 --------
5/15 パウエル・FRB議長 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 --------
5/15 ナバロ・米大統領補佐官 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 --------
5/14 トランプ大領 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 --------
5/13 パウエル・FRB議長 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 --------
5/12 ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 --------
5/12 トランプ大統領 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 --------
5/10 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 --------
5/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 --------
5/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 --------
5/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和