今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円一時106円に迫る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大きく売られ、一時は106円08銭まで下落。米中貿易協議を巡る不透明感に加え、ユーロドルでドル安が進んだことが、ドル円にも波及した格好。
  • ユーロドルは続伸。ユーロ圏PMIが景気の持ち直しを示唆したことからユーロ買いが強まり、1.1348まで上昇。
  • 株式市場は主要3指数ともに揃って続伸。ナスダックはIT株が買われ、2日連続で最高値を更新。新たな景気刺激パッケージが検討されていることを好感。
  • 債券相場はほぼ横ばい。長期金利は0.71%で小幅に上昇。
  • 金は3日続伸し、約7年ぶりの高値に。原油は小反落。
*******************************
5月新築住宅販売件数 →  67.6万件
6月マークイット製造業PMI(速報値) → 49.6
6月マークイットサービス業PMI(速報値) → 47.3
6月マークイットコンポジットPMI(速報値) → 47.5
6月リッチモンド連銀製造景況業指数 → 0
*******************************
ドル/円 106.08 〜 107.00
ユーロ/ドル 1.1302 〜 1.1348
ユーロ/円 120.25 〜 121.08
NYダウ +131.14 → 26,156.10ドル
GOLD +15.60 → 1,782.00ドル
WTI −0.36 → 40.37ドル
米10年国債 +0.003 → 0.712%

本日の注目イベント

  • 日 4月景気先行指数(CI)(改定値)
  • 日 4月景気一致指数(改定値)
  • 日 日銀金融政策決定会合における主な意見(5月15、16日分)
  • 独 独6月ifo景況感指数
  • 米 4月FHFA住宅価格指数
  • 米 IMF、経済見通し
  • 米 エバンス・シカゴ連銀総裁、オンライン討論会に参加
  • 米 ブラード・セントルイス連銀総裁、オンライン討論に参加

本日のコメント

昨日の東京時間朝10時過ぎ、前日のNYでの株高を受け順調に上昇し、前日比200円ほどのプラスで推移していた日経平均株価があっという間にマイナス180円近辺まで売られる場面がありました。ドル円も107円前後から106円74銭まで売られ、原因を探したところ、「ナバロ発言」が引き金だったようです。

ナバロ大統領補佐官がFOXニュースとのインタビューで「それは終わった」と発言し、市場は米中貿易協議の合意が終わったという風に判断し、一気にリスクオフが強まったことが背景でした。ナバロ氏はその後の声明で、「私のコメントは文脈から大きく外れて捉えられた。第1段階貿易合意とは全く関係なく、合意は引き続き有効だ。中国共産党が中国ウイルスの発生源を偽り、世界的な大流行をもたらしたので、われわれは同党への信頼を失ったと語っただけだ」と、自身の発言が誤解されたと述べました。またトランプ大統領も直ぐに、中国との第1段階貿易合意は「全く損なわれていない」とツイートしました。その後相場は持ち直し、ドル円は107円20銭前後まで上昇しています。

NY市場でもこの発言がくすぶり続けていたようで、ドル円急落の一因になった可能性はあります。NY株が続伸し、長期金利も小幅に上昇した中、ドル円は106円08銭まで売られ、5月7日以来、1カ月半ぶりの円高水準を付けています。ユーロ圏の6月のPMIが製造業で「46.9」と、前月の「39.4」から急劇に改善し、サービス業でも前月の「30.5」から「47.3」へと大幅な改善を見せたことでユーロドルに買いが集まり、「ドル安・ユーロ高」が進み、その流れから円も買われた側面が強かったと思われます。NYではその後ドル円も戻してはいますが、これまでの強いサポートであった「106円台半ば」を割り込んだことで、チャート上では日足でローソク足が下抜けしています。ドル円はその次のサポートである106円前後ではしっかり下げ止まっていますが、チャートが示唆する円高傾向には注意が必要かと思います。足元では日米ともに株価が堅調に推移していることで、ドルをサポートする動きにつながりやすいと見られますが、反対に株価が大きく調整するようだと、サポート材料の一つが外れることになります。昨日の本欄でも指摘したように、動かないと思っていると動くのが相場です。

ブラード・セントルイス連銀総裁は、このところ市場で時折話題にされる、債券利回りに上限を設けるイールドカーブ・コントロール(YCC)について、機能しない可能性があると指摘しています。同総裁はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」と述べ、現在日銀が採用しているYCCの導入には否定的な考えを示しました。本日のドル円は106円〜106円80銭程度を予想しますが、引き続き日米の株価の動きには注目したいと思います。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/23 ブラード・セントルイス連銀総裁 (YCCについて)「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」 --------
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
5/29 トランプ大統領 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 --------
5/28 クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 --------
5/24 王毅・中国外相 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 --------
5/21 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 --------
5/21 ウィリアムズ・NY連銀総裁 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 --------
5/18 パウエル:FRB議長 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 --------
5/18 トランプ大統領 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 --------
5/15 パウエル・FRB議長 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 --------
5/15 ナバロ・米大統領補佐官 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 --------
5/14 トランプ大領 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 --------
5/13 パウエル・FRB議長 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 --------
5/12 ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 --------
5/12 トランプ大統領 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 --------
5/10 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 --------
5/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 --------
5/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 --------
5/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和