「コロナ感染第2波への警戒から米国株大幅下落」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- 米国でのコロナ感染第2波への警戒感が強まり、センチメントはリスク回避の流れにシフト。ドル資金への需要が高まり、ドル円は107円07銭まで上昇。
- ユーロドルでもドル高ユーロ安が進み、1.1248までユーロが売られる。
- 株式市場は大幅に反落。連日最高値を更新中のナスダックは222ポイント下げ、ダウも710ドル安。
- 債券は反発。長期金利は0.67%台へと低下。
- 金は4日ぶりに反落。原油は在庫が予想を上回ったことを手掛かりに2ドルを超える大幅続落。
4月FHFA住宅価格指数 → 0.2%
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ドル/円 | 106.58 〜 107.07 |
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ユーロ/ドル | 1.1248 〜 1.1285 |
ユーロ/円 | 120.12 〜 120.50 |
NYダウ | −710.16 → 25,445.94ドル |
GOLD | −6.90 → 1,775.10ドル |
WTI | −2.36 → 38.01ドル |
米10年国債 | −0.033 → 0.679% |
本日の注目イベント
- 独 独7月GFK消費者信頼感
- トルコ トルコ中銀金融政策発表
- 欧 ECB議事要旨
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 5月耐久財受注
- 米 1−3月GDP(確定値)
- 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、テレビ討論会に参加
- 米 カプラン・ダラス連銀総裁、オンラインセミナーに参加
本日のコメント
有事のドル買い・・・??昨日のNYではコロナ感染第2波への警戒感から好調な株価も大きく売られ、安全資産の米国債が買われ、リスクオンの流れが一気に後退しました。ここまでは、いずれ起こると予想していましたが想定外だったのは、ここで円が買われず、ドルが全面高に振れたことです。このようなケースでは安全通貨の円やスイスが買われるのが「定石」ですが、昨日はドルが主要通貨に対して買われ、異なる動きでした。いざという時の「流動性を確保する」ということで,世界通貨のドルが買われたことのようです。もっとも、このような動きは3月のコロナ感染が猛威を振るった時にも見られましたが、コロナ感染が米国で再び拡大している中でのドル高です。今後は安全通貨の円に対する認識も少し変える必要があるのかもしれません。
米国では新型コロナウイルスの感染が再拡大してきました。1人の感染者が何人にウイルスをうつしているかを示す「再生産数」は、26州で拡大の目安である「1」を上回り、これまでで最多となっています。特に南部での感染が拡大しており、テキサス州ヒューストンでは集中治療室がほぼ満床になったとの報道もあります。コロナ感染は対岸の火事ではありません。日本でも昨日東京都で新たに55人の感染が確認されており、緊急事態宣言を解除してからは最多となり、2次感染の拡大に警戒感も出てきました。日米欧では感染拡大がピークを超え、南米にシフトしたかに見えましたが、再びコロナの逆襲が起こっているように思えます。経済活動を維持しながら感染を押さえ込もうという足元の政策が、分水嶺にさしかかっていると言えます。
そんな中、昨日IMFは世界経済見通しを発表しました。IMFは「世界経済は大封鎖に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」として、2020年の世界全体の成長率を「マイナス4.9%」と、4月時点での予想「マイナス3.0%」からさらに引き下げました。また2021年はプラス成長に戻るものの、前回よりも下方修正しています。IMFは「パンデミックの容赦ない拡大により、生活や雇用確保、不平等への長期的なマイナス影響の可能性が一段と高まった」と論じていますが、一方で、医療面で大きな進展があったり、経済活動が一段と早く再開したりした場合は、上方修正の可能性もあるとしています。
ブラード・セントルイス連銀総裁はテレビ会議で、「4−6月期は年率40%のマイナス成長が見込まれており、重大な危機だ」と述べ、「戦後経験したどんな数字よりも4倍悪い」との見通しを語っています。このように、世界的な景気の大幅減速が続き、さらにコロナ感染拡大に対する強い懸念が残る中、前日までの株価の上昇にはやはり違和感があります。昨日はドル資金の確保が最優先されたようですが、日米欧の中銀はドル資金の供給には万全の体制を取っています。仮に昨日の米国株の大幅な下げが再び「株価調整」の始まりであれば、今後円が買われる状況も考えておく必要があろうと思います。このままドル円が110円に向う可能性は低いのではないかと予想します。本日のドル円は106円50銭〜107円30銭程度を予想しています。
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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6/24 | IMF | 「世界経済は大封鎖に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」 | -------- |
6/24 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「4−6月期は年率40%のマイナス成長が見込まれており、重大な危機だ」「戦後経験したどんな数字よりも4倍悪い」 | -------- |
6/23 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | (YCCについて)「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」 | -------- |
6/18 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 | -------- |
6/16 | クラリダ・FRB副議長 | 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 | -------- |
6/16 | パウエル・FRB議長 | 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 | -------- |
6/11 | クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 | 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 | -------- |
6/11 | ムニューシン・米財務長官 | 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 | -------- |
6/11 | ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 | 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 | -------- |
6/11 | パウエル・FRB議長 | 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 | -------- |
6/5 | ラガルド・ECB総裁 | 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) | 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。 |
6/3 | エスパー・国防長官 | 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 | -------- |
5/29 | トランプ大統領 | 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 | -------- |
5/28 | クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 | 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 | -------- |
5/24 | 王毅・中国外相 | 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 | -------- |
5/21 | クラリダ・FRB副議長 | 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 | -------- |
5/21 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 | -------- |
5/18 | パウエル:FRB議長 | 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 | -------- |
5/18 | トランプ大統領 | 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 | -------- |
5/15 | パウエル・FRB議長 | 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 | -------- |
5/15 | ナバロ・米大統領補佐官 | 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 | -------- |
5/14 | トランプ大領 | 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 | -------- |
5/13 | パウエル・FRB議長 | 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 | -------- |
5/12 | ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 | (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 | -------- |
5/12 | トランプ大統領 | 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 | -------- |
5/10 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 | -------- |
5/7 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 | -------- |
5/7 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 | -------- |
5/7 | ポスティック・アトランタ連銀総裁 | 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書