今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル、主要通貨に対して続伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸し、107円45銭まで買われる。コロナウイルスへの警戒感が残るものの、株価の反発やドル資金への需要から終始107円台で推移。
  • ユーロドルは小幅に続落し、1.1191まで売られる。米国とEUと貿易問題も懸念材料に。
  • 株式市場は反発。ダウは299ドル上昇し、ナスダックも1万ポイントの大台を回復。
  • 債券相場は横ばい。長期金利は0.68%台で小動き。
  • 金は続落し、原油は反発。
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新規失業保険申請件数 → 148万件
5月耐久財受注 → 15.8%
1−3月GDP(確定値) → −5.0%
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ドル/円 107.12 〜 107.45
ユーロ/ドル 1.1191 〜 1.1231
ユーロ/円 120.15 〜 120.39
NYダウ +299.66 → 25,745.60ドル
GOLD −4.50 → 1,770.60ドル
WTI +0.71 → 38.72ドル
米10年国債 +0.007 → 0.686%

本日の注目イベント

  • 日 6月東京都区部消費者物価指数
  • 欧 ユーロ圏5月マネーサプライ
  • 米 5月個人所得
  • 米 5月個人支出
  • 米 5月PCEコアデフレータ
  • 米 6月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

本日のコメント

ドル円は底堅い動きを見せ、NYでは107円台半ばまで続伸しています。引き続きドルが主要通貨に対して買われ、海外からは「流動性の確保」といった言葉が聞こえてきます。前日700ドルを超える大幅安だったNYダウが、昨日は300ドル程戻したこともドルを支えたようですが、市場は依然として新型コロナウイルスの感染拡大を気にかけながら一進一退を繰り返す展開です。

ユーロドルはNYで再び1.12台を割り込みました。EUの欧州委員会が新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ景気対策として7500億ユーロ(約90兆円)の復興計画を発表して以来ユーロの買い戻しが活発化し、一時は1.13台後半までユーロ高が進みましたが、今週に入り再び下値を探る展開になっています。背景の一つに米国がEUからの輸入品に新たな関税の賦課を検討していることが挙げられます。トランプ政権はフランス、ドイツ、イギリス、スペインからの31億ドル(約3300億円)相当の輸入品に対して最高で100%の関税賦課を検討しており、今後の成り行き次第では、米中貿易戦争のように相場の波乱要因になる可能性があります。

米通商代表部(USTR)は、欧州からの輸入するオリーブやビール、ジン、トラックなどに新たな関税を導入するほか、航空機やチーズ、ヨーグルトなどに対する関税を引き上げたい考えのようです。ブルームバーグは、米国がこの関税賦課を実行に移せば、欧州の高級ブランドや酒類メーカーが打撃を受けることになり、両分野を傘下にもつフランスのヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)はとりわけ大きな影響を受けそうだと報じています。同社は昨年11月に米国の高級ブランドの一つであるティファニーを買収して話題になりましたが、ティファニーの本店はNYマンハッタンにあり、すぐ隣にはトランプ大統領が保有するあの金ピカの「トランプタワー」があります。今回の関税引き上げがこの買収とは関係ないとは思いますが、つい疑ってしまうのが、アナリストの悪い習性なのかもしれません。またトランプ大統領と独メルケル首相との関係の悪さは、何度かの「G7」で確認済みですが、トランプ政権はドイツがロシアから輸入する天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」に対して制裁を強めています。メルケル首相は、トランプ大統領が実際に制裁強化に踏み切る場合には、対抗措置を取る考えで、その準備を進めているとブルームバーグは伝えており、メルケル政権はEUにも協調行動を求めることも検討しているようです。

新型コロナウイルスの感染は米国のサンベルト地帯と呼ばれるフロリダ、テキサス、カリフォルニア州などでさらに拡大しているようです。アップルはフロリダ州の14店舗を再び閉鎖することを発表していますが、一方でNY市では7月6日から経済活動再開の第3段階に入る見通しで、店内での飲食やバスケットボールコートやテニスコート、団体スポーツなども再開する予定です。

ドル円は重要なサポートであった106円台半ばを下抜けしたものの、次のサポートである106円前後では下げ止まり、再び107円台半ばまで上昇してきました。株価との相関はある程度確認できますが、明確な方向性ははっきりしません。この局面では、利益のあるものはこまめに確定していくことが肝要です。本日のドル円は106円80銭〜107円50銭程度を予想します。

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新型コロナウイルスの感染が中国で急拡大したのが2月10日頃からで、その後日本やユーロッパで拡大し、そして米国へとい移っていきました。これにより、世界の多くの国が「ロックダウン」を余儀なくされたことはご存知の通りです。この対応についてスウェーデンの疫学者が「世界は狂ってしまった」と、感染拡大への対応として知られる措置とは関係のない「狂気の沙汰」だと主張している、とブルームバーグが伝えています。おかしなことを言うなと思い、その記事を読んでみました。スウェーデンのアンデシュ・テグネル氏は「感染者数があまりに増え、政治的な圧力が強くなった。そして、スウェーデンだけが残った」と語っています。あれ?スウェーデンは今回のコロナの被害を最小に留めたのかと思い、調べると、コロナによる感染症の死亡率は世界有数の高さで、人口10万人当たりの死者数は米国よりも多いことが分かりました。テグネル氏は、「世界の大半の地域で見られている極端な移動制限は、家庭内暴力や孤独、大量の失業者など、他の問題を生む恐れがある」と指摘しているようです。確かにこの様な「ロックダウン」による副作用があるのも事実ですが、「ロックダウン」をしなかったら、世界の死亡者数はこの程度では済まなかったのではないでしょうか?良い週末を・・・・・。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/24 IMF 「世界経済は大封鎖に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」 --------
6/24 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4−6月期は年率40%のマイナス成長が見込まれており、重大な危機だ」「戦後経験したどんな数字よりも4倍悪い」 --------
6/23 ブラード・セントルイス連銀総裁 (YCCについて)「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」 --------
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
5/29 トランプ大統領 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 --------
5/28 クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 --------
5/24 王毅・中国外相 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 --------
5/21 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 --------
5/21 ウィリアムズ・NY連銀総裁 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 --------
5/18 パウエル:FRB議長 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 --------
5/18 トランプ大統領 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 --------
5/15 パウエル・FRB議長 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 --------
5/15 ナバロ・米大統領補佐官 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 --------
5/14 トランプ大領 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 --------
5/13 パウエル・FRB議長 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 --------
5/12 ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 --------
5/12 トランプ大統領 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 --------
5/10 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 --------
5/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 --------
5/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 --------
5/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和