今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「香港国家安全維持法発効」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は小幅ながら続伸し、107円99銭まで上昇。株価が続伸し、長期金利も上昇したことで低金利の円が売られた。
  • ユーロドルはやや水準を下げ、1.1191まで下落。
  • 株式市場は続伸。消費者信頼感指数など、経済指標の好転を手掛かりにダウは217ドル高。ナスダックも買われ、三度(みたび)1万ポイントの大台に。
  • 債券相場は反落。長期金利は0.65%台に上昇。
  • 金は続伸し、約8年ぶりに1800ドル台に。原油も小幅に続伸。
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6月消費者信頼感指数 → 98.1
4月ケース・シラ−住宅価格指数 → 3.98%
6月シカゴ購買部協会景気指数 → 36.6
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ドル/円 107.53 〜 107.99
ユーロ/ドル 1.1191 〜 1.1263
ユーロ/円 120.58 〜 121.42
NYダウ +217.08 → 25,812.88ドル
GOLD +19.30 → 1,800.50ドル
WTI +0.43 → 39.27ドル
米10年国債 +0.033 → 0.656%

本日の注目イベント

  • 豪 豪5月住宅建設許可件数
  • 日 4−6月期日銀短観
  • 中 6月財新製造業PMI
  • 独 独6月失業率
  • 欧 ユーロ圏6月製造業PMI(改定値)
  • 米 6月ADP雇用者数
  • 米 6月製造業PMI(改定値)
  • 米 6月ISM製造業景況指数
  • 米 6月自動車販売
  • 米 FOMC議事録(6月9−10日分)
  • 米 エバンス・シカゴ連銀総裁、オンラインフォーラム開催

本日のコメント

米長期金利が上昇し株式市場も大幅に続伸したことで、ドル円は107円99銭まで、小幅ではあったものの、続伸しました。ただ、108円には届かず、ここにはドル売り注文がある程度控えていることは想像に難くありません。コロナの感染拡大が止まらない中でも、株式市場には資金が流入し、特にアマゾンなどIT株が相場をけん引しています。この日はナスダックが三度(みたび)1万の大台を回復し、ダウも引けにかけて急伸しています。一方で、金価格は一時約9年ぶりとなる1804ドルまで上昇する場面もあり、債券はやや売られたといえ、高値圏で推移しており、ここではリスクオフと言えなくもありません。結局、過剰流動性による「金余り」という言葉で受け入れるしかないように思います。

パウエルFRB議長は下院で証言を行い、米経済は想定を超えるペースで回復しているとの認識を示す一方で、景気の先行きには依然として慎重な姿勢を崩してはいませんでした。議長は、「われわれは重要な新段階に予想より早く入った。経済活動の回復には歓迎されるが、それはまた、新たな課題、特にウイルスを抑制し続ける必要性を示す」と指摘しました。また「経済の今後の経路は極めて不確実であり、ウイルス抑制の成否に大きく左右される」とし、「人々が幅広い活動を再開しても安全と確信するまで、完全な回復の可能性は低い」と、これまでと同様、景気の先行きには慎重は見方を維持していました。ムニューシン財務長官も証言で、7月末までに新たな財政刺激策をまとめることを表明しました。

米国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、ジョンズホプキンス大学の調べでは、30日午後の時点では、24時間に4万8096人(1.9%)増加し、259万人に達しています。特に南部での感染拡大が顕著で、フロリダ州の感染者増加率は4.2%で、アリゾナ州が6.3%、カリフォルニア州でも2.9%と、深刻な状況が続いています。この日上院では、コロナ感染に関して米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が証言を行っています。ファウチ所長は、「数字は全てを物語る。私は非常に懸念している。現状に満足していない。誤った方向に進んでいるからだ」とし、「現時点で完全にはコントロールできていないことは明らかだ」と証言しさらに、「最近の急増が好転しない場合、1日当たりの新規感染例が現在の4万人から10万人に増えても驚かない」と指摘しました。また、死者数についても、「極めて憂慮すべき数字になるのは確実だ」と付け加えています。(ブルームバーグ)感染症の専門家であるファウチ所長のこの証言を聞くと、足元の株価の動きには驚きます。このギャップに違和感を持つ人は決して少なくはないと考えます。現時点の米国内の感染者数は259万人で、死亡者数は12万6000人となっています。確率的には感染者の約4.9%の人が亡くなっていることになります。ファウチ所長の言うように、今後感染者が1日で10万人という事態になれば、約5000人の人が1日で亡くなるということです。冷静に考えれば、もはやこれは「コロナ戦争」と言えるのではないかと思います。

ドル円は108円を伺う動きを見せていますが、ここからドル買いで攻めるのも勇気が要ります。ただそれでも安易にショートメイクをするのではなく、東京時間は上値が重く見えても、NYではもう一段の上昇もないとは言えません。上値のメドは日足の120日移動平均線と200日移動平均線がある、108円15銭〜40銭辺りかと考えます。本日のレンジは107円60銭〜108円40銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/30 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所所長 「最近の急増が好転しない場合、1日当たりの新規感染例が現在の4万人から10万人に増えても驚かない」(死者数についても)、「極めて憂慮すべき数字になるのは確実だ」 --------
6/30 パウエル・FRB議長 「われわれは重要な新段階に予想より早く入った。経済活動の回復には歓迎されるが、それはまた、新たな課題、特にウイルスを抑制し続ける必要性を示す」、「経済の今後の経路は極めて不確実であり、ウイルス抑制の成否に大きく左右される」 --------
6/24 IMF 「世界経済は大封鎖に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」 --------
6/24 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4−6月期は年率40%のマイナス成長が見込まれており、重大な危機だ」「戦後経験したどんな数字よりも4倍悪い」 --------
6/23 ブラード・セントルイス連銀総裁 (YCCについて)「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」 --------
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
5/29 トランプ大統領 「中国は香港を一国二制度から一国一制度に置き換えた」、「WHOが実行・関与しなければならない改革について、われわれは詳細を示してきたが、WHOは行動を拒んでいる。きょう、WHOとの関係を打ち切る」 --------
5/28 クドロー・米国家経済会議(NEC)委員長 「要するに、中国は香港から自由を奪った」、「米国として見過ごすことはできない。この件に関して中国は責任を問われることになる。必要とあれば、香港に対して今後は中国と同様の扱いをする必要が出て来る可能性がある」 --------
5/24 王毅・中国外相 「中国には米国を変えようという意図はないし、米国に取って代わろうという意志もない。同時に、米国が中国を変えようと考えても、それは希望的観測だ」 --------
5/21 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナウイルスを巡る今後の状況や、それに伴う景気低迷の深刻さや期間により、金融と財政両方の政策による追加支援が必要となる可能性がある」 --------
5/21 ウィリアムズ・NY連銀総裁 景気の推移や回復具合次第で、追加の財政・金融支援が必要かどうか、経済を力強く持続的な軌道に乗せるために具体的などういった設計の支援とするかを判断しなくてはならない」マイナス金利の利用は現時点において、また現在置かれている状況下で適切な手段ではない」 --------
5/18 パウエル:FRB議長 「この困難な時期に経済を支援するためあらゆる手段をわれわれは講じることにコミットする。ただ、こうした行動はより広範な公的部門の対応の一部にすぎないとわれわれは認識している」 --------
5/18 トランプ大統領 「WHOは中国から独立すべきだ」「WHOが30日以内に大幅な実質的改善を公約しなければ。私は米国のWHOへの資金拠出の一部凍結を恒久化するほか、米国のWHO加盟を再考するつもりだ」 --------
5/15 パウエル・FRB議長 米経済の完全復活には国民の信頼が十分でなければならず、それにはワクチンの出現を待たなくてはならないかもしれない」、「ただ、回復するにも、かなりの時間がかかるかもしれない。来年末まで長引くことも考えられる。本当にわらない」 --------
5/15 ナバロ・米大統領補佐官 「ウイルスは武漢で作られ、11月には最初の患者が存在した」、「中国はWHOという盾に守られて2カ月の間、ウイルスを世界から隠ぺいし、数十万という中国人をミラノやNYなど世界各地に旅客機で送り込み、拡散させた」 --------
5/14 トランプ大領 中国と「完全に断交することが可能か、断交した場合に何が起きるか思案している」習近平主席とは「今は話したくない」 --------
5/13 パウエル・FRB議長 失業率は「5月ごろがピークでその後は持ち直すが、生産や所得の完全復元には時間がかかる」(マイナス金利について)「現時点で魅力的な政策手段とは考えていない」 --------
5/12 ファウチ・米アレルギー感染症研究所所長 (設定されたガイドラインを達成しないまま州や市が経済活動を再開させた場合)「私の感触ではそのようなことが起これば、それが引き金となって、制御できないような爆発的な感染拡大が起こる現実的なリスクがある」 --------
5/12 トランプ大統領 「他国がマイナス金利というベネフィットを享受している以上、米国もマイナス金利という贈り物を受け取るべきだ」 --------
5/10 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 残念ながら雇用面の最悪期はこれからだ」、「現在、職に就いていない人の割合は実際には23−24%前後だ。私が考えているように回復が緩やかなものになるなら、こうした人々に一層の支援が必要となるだろう」 --------
5/7 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (マイナス金利について)「よそで試されたと思うが、この国で試す価値があると私に思わせる理由は、個人的には見当たらない」 --------
5/7 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「恐らく16%か17%といったところだろう」と述べ、「実質的な数字は23−24%程度と考える。悲惨な水準だ」 --------
5/7 ポスティック・アトランタ連銀総裁 「現在、恐怖シナリオは確率が低くなったと思う」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和