今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円108円台前半から反落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大幅に反落。東京時間に108円16銭近辺までドル高が進んだものの、その後は一貫して下げ、NYでは107円36銭までドル安が進む。
  • ユーロドルは前日とほぼ同じ動きを見せ、1.12割れが底堅いものの、上値も1.13には届かず。
  • 株式市場はまちまちながら、ナスダックは3日続伸し、最高値を更新。アマゾンなどが指数を押し上げた。ダウは反落し77ドル安。
  • 債券相場は続落。長期金利は0.67%台へ上昇。
  • 金と原油は揃って反落。
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6月ADP雇用者数 → 236.9万人
6月製造業PMI(改定値) → 49.8
6月ISM製造業景況指数 → 52.6
6月自動車販売 → 1305万台
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ドル/円 107.36 〜 107.60
ユーロ/ドル 1.1198 〜 1.1275
ユーロ/円 120.26 〜 121.14
NYダウ −77.91 → 25,734.97ドル
GOLD −20.60 → 1,779.90ドル
WTI −0.55 → 39.82ドル
米10年国債 +0.020 → 0.676%

本日の注目イベント

  • 豪 豪5月貿易収支
  • 欧 ユーロ圏5月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏5月失業率
  • 米 6月雇用統計
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 5月貿易収支
  • 米 5月製造業受注
  • 米 債券市場、短縮取引
  • 加 カナダ5月貿易収支

本日のコメント

ドル円は昨日の朝方、前日のNYでのドル高の流れを受け、一時108円16銭前後まで買われ、6月9日以来、3週間ぶりの高値を付けましたが、やはりと言うか、ドル買いの勢いはなく、午後には107円台半ばまで押し戻される展開でした。昨日のNYでは 米長期金利が上昇したにも拘わらず、107円36銭まで売られ、再び元の「定位置」に戻っています。引き続きドルの上値は重く、ドル安材料が散見される中、堅調な株価がドルを支える構図になっているだけに、「支え」が外れてしまったら、重要なサポートである106円前後を抜けてくることも想定されます。

30日に発効された香港国家安法でしたが、昨日香港ではさっそく同法に基づく逮捕者が9人出たと報じられています。中国は対米関係だけではなく、対インド、オーストラリアや英国に対しても強硬姿勢を強め、外交関係を悪化させています。「習近平体制」の強化が着々と進められており、もはや平和的外交の道も閉ざされた印象です。香港国家安全法を巡り英政府は1日、約300万人の香港市民を対象に英国への移住を認める方針を明らかにしました。これにより中国との間で緊張が高まる可能性も浮上しています。

ジョンソン首相は英下院で演説を行い、国家安全法は1984年に英国と中国が調印した共同宣言に違反していると指摘しました。首相は、「国家安全法の施行は中英共同宣言に対する明白かつ、深刻な違反だ」と述べ、「香港の高度な自治を侵害し、香港基本法と対立するものだ」と批判しました。ラーブ外相も、香港市民に対して「特別な移民ルートを新設する」ことを明らかにしています。また、米下院でも1日、香港で抗議活動を行う民主派の取り締まりに関与する中国当局者との取引を行う銀行に制裁を科す法案を、全会一致で可決させました。トランプ政権も、国家安全法に関するだけではなく、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する人権侵害を巡り、中国高官に制裁を科す準備を行っていると、ブルームバーグは伝えています。

先月9、10日に開催されたFOMC議事録が公開されました。それによると、メンバーの多くがイールドカーブ・コントロール(YCC)の必要性を確信していないことが判明しました。議事要旨では、「委員会のフォワードガイダンス自体が引き続き信頼を得ている限り、イールドカーブに上限や目標を設定する政策を採用してフォワードガイダンスを強化する必要が生じるのか明確でないと、多くの参加者が主張した」と記されていました。パウエルFRB議長も講演で、YCCの導入には再三否定的な考えを示しており、日銀が採用しているイールドカーブ・コントロールをFRBが導入する可能性は低いと見られますが、債券市場では異なった動きを見せており、早ければ9月にも導入するのではないかといった見方もあります。ブルームバーグのデータを見ると、米債券市場では5年債の利回りが低下しており、3日には過去最低の0.2657%まで下がりました。また、債券先物市場では5年債と、10年債の未決済ポジションが急増しており、市場はFRBがYCCを導入する際には、2年債と5年債を購入するのではないかといった見立てで、銀行などが先回りしている動きが想定されます。仮にFRBがYCCを導入した場合、ドル円には下落圧力がかかると予想されます。

本日は、米国が3日金曜日が振り替え休日のため、6月の雇用統計が発表されます。コロナの影響により労働市場は大きく変動させられており、事前予想はほとんど意味を持たない程「ブレ」が大きくなっています。昨日のADP雇用者数も驚きでした。6月分はいいとしても、5月分では当初「マイナス276万人」と発表されたものが、今回は何と「306.5万人の増加」に上方修正されています。その差は実に582万人にもなり、事前予想の不確実性というか、「難しさ」を知らされました。それでも、速報値で相場は動きます。本日も波乱が予想されます。本日のドル円は106円70〜107円80銭程度を予想します。

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
7/1 FOMC議事録 「委員会のフォワードガイダンス自体が引き続き信頼を得ている限り、イールドカーブに上限や目標を設定する政策を採用してフォワードガイダンスを強化する必要が生じるのか明確でないと、多くの参加者が主張した」 --------
7/1 ジョンソン・英首相 「国家安全法の施行は中英共同宣言に対する明白かつ深刻な違反だ」、「香港の高度な自治を侵害し、香港基本法と対立するものだ」 --------
6/30 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所所長 「最近の急増が好転しない場合、1日当たりの新規感染例が現在の4万人から10万人に増えても驚かない」(死者数についても)、「極めて憂慮すべき数字になるのは確実だ」 --------
6/30 パウエル・FRB議長 「われわれは重要な新段階に予想より早く入った。経済活動の回復には歓迎されるが、それはまた、新たな課題、特にウイルスを抑制し続ける必要性を示す」、「経済の今後の経路は極めて不確実であり、ウイルス抑制の成否に大きく左右される」 --------
6/24 IMF 「世界経済は大封鎖に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」 --------
6/24 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4−6月期は年率40%のマイナス成長が見込まれており、重大な危機だ」「戦後経験したどんな数字よりも4倍悪い」 --------
6/23 ブラード・セントルイス連銀総裁 (YCCについて)「現時点ではこの件について、答えよりも疑問の方が多い。低金利がかなり長期続くとすでに見込まれているため、この手法がFOMCでいずれ採用されるとはあまり考えられない」 --------
6/18 ブラード・セントルイス連銀総裁 「4月が最悪の月だったと期待したい。最近のデータはそれを示しているようだ」、「米国が危機を脱したとは全く考えていない」 --------
6/16 クラリダ・FRB副議長 「新型コロナによる混乱は物価全般に下押し圧力をかけている」 --------
6/16 パウエル・FRB議長 「われわれの考えでは、また全員とは言わないまでも大半の予想もそう考えていると思うが、回復しても2月時点の水準には遠く及ばないだろう」 --------
6/11 クドロー・国家経済会議(NEC)委員長 「V字回復を実現する確率は非常に高い。失業率は低下し、2021年も堅実で堅調な一年になる」 --------
6/11 ムニューシン・米財務長官 経済の再閉鎖は「さらにダメージが広がる。経済の打撃だけではない。今のところ持ちこたえている医療でも問題が起きる」、「経済を再び閉鎖するわけにはいかない」 --------
6/11 ファウチ・米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長 「一部の国や州ではロックダウンから回復しつつあるが、ウイルス感染が再び勢いを増すリスクはなおある」「終わりにはほど遠い」 --------
6/11 パウエル・FRB議長 「利上げについては考えることすら考えていない」(新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復を支援するため)「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることを強くコミットしている」 --------
6/5 ラガルド・ECB総裁 「景気の改善はこれまでのところ、緩慢だった」、「行動する必要があった」、「必要なことは何でもやる」(ECB理事会後の会見で) 追加緩和をきめたことで、ユーロドルは1.12台後半から1.13台半ばまで上昇。
6/3 エスパー・国防長官 「法執行当局の役割で軍を動員するという選択肢は最後の手段とすべきで、極めて緊急性が高く切迫した状況に限定する必要がある。今の状況はそれには当てはまらない。暴動法の発動は支持しない」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和