「米『パリ協定』に復帰」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は103円台半ばから後半でもみ合い。バイデン次期大統領が1.9兆ドル(約197兆円)の経済対策を発表したが反応せず。低調な小売売上の発表に押し切られた格好。
- ユーロドルは続落し、1.2075まで売られる。米金利の低下を材料にドルが買われた。
- 株式市場は続落。小売売上が予想を下回ったことで、個人消費の悪化傾向が確認されたとの声も。ダウは177ドル安。
- 債券相場は続伸。長期金利は1.08%台まで低下。
- 金と原油は揃って下落。
12月小売売上高 → −0.7%
12月生産者物価指数 → 0.3%
1月NY連銀製造景況業指数 → 3.5
12月鉱工業生産 → 1.6%
12月設備稼働率 → 74.5
1月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 79.2
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ドル/円 | 103.64 〜 103.91 |
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ユーロ/ドル | 1.2075 〜 1.2133 |
ユーロ/円 | 126.40 〜 125.78 |
NYダウ | −177.26 → 30,814.26ドル |
GOLD | −21.50 → 1,829.90ドル |
WTI | −1.21 → 52.36ドル |
米10年国債 | −0.044 → 1.083% |
本日の注目イベント
- 日 11月鉱工業生産
- 中 10−12月GDP
- 中 中国12月小売売上高
- 中 中国12月工業生産
- 英 ベイリー・BOE総裁講演
- 米 NY市場休場(キング牧師生誕記念日)
- 加 カナダ12月住宅着工件数
本日のコメント
今週水曜には予定通りバイデン次期大統領の就任式が首都ワシントンで行われます。すでに厳しい警備体制がしかれていますが、バイデン氏は就任式当日に、パリ協定復帰を含む10以上の政策を打ち出す予定です。特にパリ協定の復帰は、トランプ政権との違いを明確にする意味合いもあるようです。就任式の演説ではトランプ政権から続く公衆衛生と経済の危機への対応方針を示すほか、トランプ大統領支持者による連邦議会議事堂乱入を踏まえて、国民に結束を呼び掛ける模様です。バイデン氏らの顧問によれば、演説ではバイデン氏に投票しなかった人々にも支持を訴え、深まりつつある政治的分断を埋めることを目指す(ブルームバーグ)予定です。次期大統領首席補佐官に指名されているロン・クレイン氏によると、バイデン次期大統領は、新型コロナウイルス感染症、景気悪化、気候変動、そして人種差別といった「4つの重複した複雑な危機」に対処する方針を明らかにする予定とのことです。
先週14日パウエルFRB議長はプリンストン大学のセミナーで、同大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授との対話で、「必要となれば利上げはするが、その時は直ぐ来ない」との認識を示しました。また2%の物価目標についても、「新たな枠組みの信認のためには2%を一定期間上回る必要がある」と述べ、一時的に2%を超えてもすぐに利上げにつながらないことを改めて強調していました。(日経新聞)議長は、「一時的な物価上昇は、基調としての物価上昇を意味しない」とも語っています。これまでにもパウエル議長は、一時的な2%を超える物価上昇を容認する考えを示してきましたが、今後もこの考えを続けていく方針で、この方針は次期財務長官に決まっているイエレン氏とも共有できるものと見られます。
先週1%の大台を超え、一時は1.18%台まで急騰した米長期金利でしたが、足元では1.08%台まで低下しています。米金利の上昇を受け、ドル円は102円台半ばから104円台半ば近辺までドルが買い戻されました。一方1.2345まで買われたユーロドルでもドルが買い戻され、1.20台後半までユーロ安が進んできました。金利上昇が一服した割には、ユーロの下落が続いている印象ですが、これには積み上がったポジションの整理という側面も多分にあろうかと思います。ユーロ圏をけん引するドイツでは、「ポストメルケル」の動きも活発化しています。ドイツの与党、キリスト教民主同盟(CDU)の次期党首にメルケル首相の中道路線継承を唱えるラシェット氏が選出されました。メルケル首相は今年秋には退任することが決まっており、「成功した中道路線をさらに進めていく」と述べているラシェット氏が次期首相になる可能性が高いと見られていますが、CDUと姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)のゼーダー党首も人気が高く、ポストメルケルを巡る戦いはこれから佳境を迎えそうです。
好調だった米株市場にやや天井感も出始めたことで、資金が株から債券に流れています。依然として米株式市場に対し強気の見方をする専門家も多くいますが、先週から始まった米企業の決算発表にも注意する必要があります。すでに決算発表を行った米大手金融機関でも明暗は分かれており、注目される企業の決算内容次第では、株式市場全体に影響を与える可能性があります。本日のドル円は103円40銭〜104円10銭程度を予想します。
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緊急事態宣言の発令を受け、今週の「アナリストレポート」は、19日(火)と、21日(木)をお休みとさせて頂きます。宜しくお願い申し上げます。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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1/14 | パウエル・FRB議長 | 「必要となれば利上げはするが、その時は直ぐ来ない」(2%の物価目標について)、「新たな枠組みの信認のためには2%を一定期間上回る必要がある」、「一時的な物価上昇は、基調としての物価上昇を意味しない」 | -------- |
1/11 | クラリダ・副議長 | (長期金利が1%を超えたことについて)「ワクチンや経済成長期待などのプラスの期待を織り込んで金利が上昇しているのであれば、それは懸念すべきでない」 | -------- |
1/7 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「米金融当局による債券購入プログラムが早ければ年末にも縮小を始める可能性がある」、「余りに早期に開始しようとすれば、市場に混乱を引き起こしかねない。そのため、私はこれに関してかなり慎重だ。景気の修復が実際に見られるようになるまで、変わらない姿勢でいるべきだ」 | -------- |
1/4 | シカゴ連銀のエバンス総裁 | 「インフレ率が2.5%を大幅に超えて上昇することは懸念していない。3%でさえ恐れていない」、「インフレ率が3%に向っているのを見れば、われわれは間違いなく政策対応をどう調整するかについて話しているだろうが、同時に、最大限の雇用を達成しインフレ率を適正化させることにも間違いなく焦点をあてているだろ」 | -------- |
12/24 | フォンデアライエン・欧州委員長 | 「長く、曲がりくねった道だった。しかしその成果を示す合意だ」、「公平であり、バランスの取れた合意だ。英国とEUの双方にとって、適切かつ守る責任ある内容だ」 | ユーロドルは1.22台からじり安の展開に。 |
12/24 | ジョンソン・英首相 | 「数十年にわたり英国の政治を悩ませてきた問題を解決した」、「いいとこだけを集めた協定ではないが、現段階で英国に必要なものであると信じている」 | ポンドドル、1.35台半ばから1.36台に乗せる。 |
12/16 | バイトマン・ドイツ連銀総裁 | (拡大するECBの国債保有が危険だとしながら)「そうしなければ、われわれは市場への支配的影響力を得て国債のリスクプレミアムの違いをならす危険を冒すことになる。これは市場の規律をさらに弱める。とりわけ最近のPEPP拡充によりこの問題が増幅された」 | -------- |
12/16 | パウエル・FRB議長 | 「経済活動と雇用は回復を続けたが、今年初めの水準をなお大きく下回っている」、「ようやくトンネルの先に明かりが見えるような状況になった」としつつ、「あと数カ月が持ちこたえられず事業を失う人がいることを思うと心が痛む」 | -------- |
12/16 | FOMC声明文 | 「委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。インフレがこのより長期の目標を下回る状況が長く続いていることを踏まえ、委員会はインフレが一定期間2%を適度に上回ることを目標とし、それによって期間平均が2%となり、より長期のインフレ期待は2%でしっかりとどまるとうにする。委員会はこうした結果が得られるまで、緩和的な金融政策スタンスを維持する見通しだ」、委員会の目標である最大限の雇用と物価安定に向けて一段と顕著な進展があるまでそれを継続する」 | 株価が下落し、債券が売られ、ドル円は小幅に上昇したが、その後元の水準に。 |
12/10 | ラガルド・ECB総裁 | 「望ましい金融環境が維持できているならば、全額を使う必要はない」(新型コロナウイルスのパンデミックについて)「先を見れば、ワクチン接種開始の見通しが健康危機の段階的な解消という想定への自信を深める」、「しかしながら、幅広く免疫が獲得されるには時間がかかり、さらなる感染再燃が公衆衛生と経済見通しに課題を突き付ける可能性は排除できない」 | 追加緩和策発表後、ユーロドルは1.20台後半から1.21台半ばへ。 |
12/1 | シュナーベル・ECB理事 | 「さらに大きく緩和することよりも、現状を維持していくことに集中するのが適切だ」 | -------- |
12/1 | パウエル・FRB議長 | 「一定程度の財政支援を行えば、経済を前進させる助けになる他、特に中小企業にとって下方リスクへの備えにも役立つ」、「対応が過剰によるリスクは、過小なものに留まるリスクよりも小さい」 | -------- |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書