今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「バイデン新政権始動」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はやや水準を切り下げ、103円38銭まで売られる。リスク選好が進みドルが売られたものの、クロス円では円も軟調な動きに。
  • ユーロドルは小動き。ECBが金融政策を据え置いたことで材料不足となり動意に欠ける展開に。
  • 株式市場は3指数とも上昇していたが、引けにかけてダウはマイナスに転じる。ナスダックとS&P500は最高値を更新。
  • 債券は売られ、長期金利は再び1.1%台を回復。
  • 金と原油は下落。
***********************
新規失業保険申請件数 → 90万件
12月住宅着工件数 → 166.9万件
12月建設許可件数 → 170.9万件
1月フィラデルフィア連銀景況指数 → 26.5
***********************
ドル/円 103.38 〜 103.66
ユーロ/ドル 1.2136 〜 1.2173
ユーロ/円 125.53 〜 125.96
NYダウ −0.60 → 31,176.01ドル
GOLD −12.37 → 1,865.90ドル
WTI −0.18 → 53.13ドル
米10年国債 +0.026 → 1.106%

本日の注目イベント

  • 豪 豪12月小売売上高
  • 日 12月消費者物価指数
  • 独 独12月製造業PMI(速報値)
  • 独 独12月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月総合PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月サービス業PMI(速報値)
  • 英 英12月小売売上高
  • 米 12月中古住宅販売件数
  • 米 12月マークイット製造業PMI(速報値)
  • 米 12月マークイットサービス業PMI(速報値)
  • 米 12月マークイットコンポジットPMI(速報値)
  • 米 米上院財政委員会、イエレン氏の財務長官指名公聴会
  • 加 カナダ11月小売売上高

本日のコメント

式典を終えたバイデン大統領は、ホワイトハウスの執務室で早速15本の大統領令に署名を行う映像が公開されました。その中には、パリ協定への復帰やWHO脱退の撤回など、トランプ政権時代の政策を大きく転換するものも含まれていました。国のトップである大統領には、これほどの権限が委譲されていたことを、改めて知らされたのは筆者だけではないと思います。それだけに、最高指導者を選ぶ権利を有する国民も、より賢くなる必要があります。20日の就任式のスピーチでも、「結束」や「民主主義」という言葉を何度も使っており、その言葉の頻度からも、今後のバイデン政権の運営が簡単ではないことを物語っていたと感じました。

大統領就任2日目となったバイデン氏は重要な政策の柱の一つである、新型コロナウイルスと闘うための全国的な戦略を発表しています。バイデン氏はホワイトハウスで、コロナのため向こう約1カ月でさらに10万人が死亡する恐れがあり、事態は改善する前にさらに悪化するだろうと述べ、「より多くの人への無料のワクチン接種のため全力を尽くす」と述べました。またバイデン氏はより頻繁にマスクを着用するよう国民に呼び掛け、「こうした予防措置で4月までに5万人の命を救える」と指摘し、「マスク着用は実際のところ、われわれが出来る唯一にして最善のことだ。ワクチンよりも重要だ」と国民に訴えました。

下院での承認公聴会で中国に対する米国の強硬な姿勢は変わらないことに言及したイエレン次期財務長官が、その姿勢を裏付けるような言葉を、議員からの質問に対して回答している文書をブルームバーグが入手したと伝えています。イエレン氏は、新政権は「中国の悪質な慣行にはあらゆる手段を積極的に使う」とし、「対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはない」と書面で回答しています。さらにイエレン氏は、「通商上の不公正な優位を得るための人為的な為替操作に対しては、バイデン大統領は反対の意思を明確にしている。この意向を支持しており、承認を受ければ、いかなる為替操作に対しても政権内で協力して反対していく」と表明しています。FRB議長時代のイエレン氏とは打って変わった強い言葉での意思表明だと感じます。「物価の安定と雇用の最大化」を責務とするFRB議長から、バイデン政権の最重要閣僚の1人として、「財政、為替、貿易」などの分野で最前線に立つ、財務長官としての強い意志の表れだと思われます。

ECBは20日の理事会で、金融緩和措置の現状維持を決め、パンデミック緊急プログラム(PEPP)の規模を1兆8500億ユーロ(約233兆円)で維持し、少なくとも2022年3月末まで継続することを確認しました。ラガルド総裁は、「中銀預金金利をマイナス0.5%で据え置き、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)を通じて銀行に十分な流動性供給を続ける」ことを表明しました。また域内の景気については、「ユーロ圏経済は2020年10−12月『第4四半期』に恐らく縮小した。『第4四半期』の縮小は『第1四半期』に流れ込むだろう」とも述べ、景気が二番底に向っているとの認識を示しています。個人的には今回の会合で追加緩和の可能性を予想していましたが、ECBはコロナによる影響がより明瞭になる3月の会合で、より深い議論を行うことを選択した模様です。

米長期金利は先週後半から低下傾向にありましたが、1%の大台を割り込むことなく、再び1.1%台まで上昇してきました。一方104円台半ばまで買われたドル円はジリジリと下値を切り下げ、102円60銭から104円40銭までの上昇幅の「約半値」程度押し戻されたことになります。これまでも述べてきたように、まだドル下落のリスクは残っています。従って、ドルの戻りを売るスタンスは継続する必要があります。ただ、ドルの下値も徐々に底堅くなってきたのも事実です。102−104円のレンジ内で推移すると予想し、次の材料を待つ展開でしょう。本日のドル円は103円10銭〜103円90銭程度を見ています。

==========

バイデン氏が正式に米大統領に就任し、すでに新政権が始動しています。ワシントンへ向かう自身の出身地であるデラウェア州で挨拶を行ったバイデン氏は、話が失った愛息に及ぶと、感極まって涙を見せる場面もあり、人柄を見せた格好でした。式典でのスピーチでも「団結」や「結束」を何度も訴えていた姿が印象に残りましたが、トランプ政権によって顕著化した米国の「分断」を、この4年間でいかに「結束」させるかは簡単ではありません。「米国は南北戦争以来となる分断の危機だ」(米ユーラシアグループのイアンブレマー氏)と言われるほど、現在の米国は厳しい状況に置かれています。再選の目はないものの、政治家としても経験が豊富なバイデン氏がこの4年間でどのような手腕を見せるか注目したいと思います。

「Welcome Joe, good by Donald」

良い週末を・・・・・。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/20 イエレン・次期財務長官 中国の悪質な慣行にはあらゆる手段を積極的に使う」、「対中関税は同盟国と協議するまで変更するつもりはない」、「通商上の不公正な優位を得るための人為的な為替操作に対しては、バイデン大統領は反対の意思を明確にしている。この意向を支持しており、承認を受ければ、いかなる為替操作に対しても政権内で協力して反対していく」 --------
1/19 イエレン・次期財務長官 (承認公聴会で)競争上の優位を得るため弱い通貨を米国が目指すことなく、他国によるそうした試みを求めるべきでない」、「貿易における優位性を得るため人為的に通貨価値を操作する外国によるいかなる、またあらゆる試みに反対すべく、取り組んでいく」 ドル円は小幅に上昇し、104円台をつける。
1/14 パウエル・FRB議長 「必要となれば利上げはするが、その時は直ぐ来ない」(2%の物価目標について)、「新たな枠組みの信認のためには2%を一定期間上回る必要がある」、「一時的な物価上昇は、基調としての物価上昇を意味しない」 --------
1/11 クラリダ・副議長 (長期金利が1%を超えたことについて)「ワクチンや経済成長期待などのプラスの期待を織り込んで金利が上昇しているのであれば、それは懸念すべきでない」 --------
1/7 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「米金融当局による債券購入プログラムが早ければ年末にも縮小を始める可能性がある」、「余りに早期に開始しようとすれば、市場に混乱を引き起こしかねない。そのため、私はこれに関してかなり慎重だ。景気の修復が実際に見られるようになるまで、変わらない姿勢でいるべきだ」 --------
1/4 シカゴ連銀のエバンス総裁 「インフレ率が2.5%を大幅に超えて上昇することは懸念していない。3%でさえ恐れていない」、「インフレ率が3%に向っているのを見れば、われわれは間違いなく政策対応をどう調整するかについて話しているだろうが、同時に、最大限の雇用を達成しインフレ率を適正化させることにも間違いなく焦点をあてているだろ」 --------
12/24 フォンデアライエン・欧州委員長 「長く、曲がりくねった道だった。しかしその成果を示す合意だ」、「公平であり、バランスの取れた合意だ。英国とEUの双方にとって、適切かつ守る責任ある内容だ」 ユーロドルは1.22台からじり安の展開に。
12/24 ジョンソン・英首相 「数十年にわたり英国の政治を悩ませてきた問題を解決した」、「いいとこだけを集めた協定ではないが、現段階で英国に必要なものであると信じている」 ポンドドル、1.35台半ばから1.36台に乗せる。
12/16 バイトマン・ドイツ連銀総裁 (拡大するECBの国債保有が危険だとしながら)「そうしなければ、われわれは市場への支配的影響力を得て国債のリスクプレミアムの違いをならす危険を冒すことになる。これは市場の規律をさらに弱める。とりわけ最近のPEPP拡充によりこの問題が増幅された」 --------
12/16 パウエル・FRB議長 「経済活動と雇用は回復を続けたが、今年初めの水準をなお大きく下回っている」、「ようやくトンネルの先に明かりが見えるような状況になった」としつつ、「あと数カ月が持ちこたえられず事業を失う人がいることを思うと心が痛む」 --------
12/16 FOMC声明文 「委員会は長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。インフレがこのより長期の目標を下回る状況が長く続いていることを踏まえ、委員会はインフレが一定期間2%を適度に上回ることを目標とし、それによって期間平均が2%となり、より長期のインフレ期待は2%でしっかりとどまるとうにする。委員会はこうした結果が得られるまで、緩和的な金融政策スタンスを維持する見通しだ」、委員会の目標である最大限の雇用と物価安定に向けて一段と顕著な進展があるまでそれを継続する」 株価が下落し、債券が売られ、ドル円は小幅に上昇したが、その後元の水準に。
12/10 ラガルド・ECB総裁 「望ましい金融環境が維持できているならば、全額を使う必要はない」(新型コロナウイルスのパンデミックについて)「先を見れば、ワクチン接種開始の見通しが健康危機の段階的な解消という想定への自信を深める」、「しかしながら、幅広く免疫が獲得されるには時間がかかり、さらなる感染再燃が公衆衛生と経済見通しに課題を突き付ける可能性は排除できない」 追加緩和策発表後、ユーロドルは1.20台後半から1.21台半ばへ。
12/1 シュナーベル・ECB理事 「さらに大きく緩和することよりも、現状を維持していくことに集中するのが適切だ」 --------
12/1 パウエル・FRB議長 「一定程度の財政支援を行えば、経済を前進させる助けになる他、特に中小企業にとって下方リスクへの備えにも役立つ」、「対応が過剰によるリスクは、過小なものに留まるリスクよりも小さい」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和