今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円1年ぶりに110円台半ばへ」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は大幅に続伸。東京時間夕方には110円台を回復し、NYでは110円42銭までドル高が進む。長期金利の上昇やワクチンの普及が材料に。
  • ユーロドルはドル高が進む中、1.17台前半から半ばで小動き。
  • 株式市場は長期金利の上昇を嫌気して下落。ダウは4日ぶりに下げ、ナスダックとS&P500は続落。
  • 債券相場は続落し、長期金利は一時1.774%台まで上昇。ただその後は急速に低下し、結局前日比ほぼ変わらず。
  • ドル高を受け、金は大幅に下落。原油もスエズ運河が通航を再開したことから下落。
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1月ケース・シラ−住宅価格指数 → 11.10%
1月FHFA住宅価格指数 → 1.0%
3月消費者信頼感指数 → 109.7
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ドル/円 110.19 〜 110.42
ユーロ/ドル 1.1711 〜 1.1743
ユーロ/円 129.17 〜 129.52
NYダウ −104.41 → 33,066.96ドル
GOLD −28.60 → 1,686.00ドル
WTI −1.01 → 60.55ドル
米10年国債 −0.005 → 1.703%

本日の注目イベント

  • 豪 豪2月住宅建設許可件数
  • 日 2月鉱工業生産
  • 中 3月中国製造業PMI
  • 中 3月中国サービス業PMI
  • 独 独3月雇用統計
  • 欧 ユーロ圏3月消費者物価指数(速報値)
  • 英 英10−12月期GDP(改定値)
  • 英 英10−12月期経常収支
  • 米 3月ADP雇用者数
  • 米 3月シカゴ購買部協会景気指数
  • 米 2月中古住宅販売成約件数

本日のコメント

ドル円はついに110円台に乗せ、NY市場では110円42銭までドルが買われています。昨年3月23日以来となるドル高水準です。昨日の東京時間では、ドルは堅調に推移していたものの、109円99銭まで買われましたが、近いようで遠い110円でした。夕方に欧州市場が参入すると、110円の壁をあっさり突破。その後は利益確定のドル売りなどをこなしながら、緩やかに上昇しました。

ドル円一段高の背景は、やはり米長期金利の上昇だったと見ています。米長期金利は米国でのコロナワクチン接種の普及や、2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資計画の発表が近いといった見方から債券への売り圧力が強まり、価格が下落し、金利が上昇しました。ただ、引けでは結局前日と同水準近辺まで低下しています。ワクチンの普及に大型のインフラ投資。さらにスエズ運河の通航再開に加え、昨日発表された経済指標も好調さを示唆する内容だったことも、ドル高をサポートしています。3月の消費者信頼感指数は、米国でコロナ感染が急拡大した2020年3月以来となる「109.7」でした。昨年1、2月の水準にはまだ達していませんが、消費者の景気の先行きに対する心理は大きく改善していると見られます。

また1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数も急上昇しており、2006年以来の大幅な伸びとなっています。長期にわたる低金利を背景に、住宅市場では活況が続いています。さらに株高などによる資産効果も追い風となり、「いまの内に住宅を買っておこう」という動きが顕著になっています。旺盛な住宅需要は住宅価格を押し上げ、主要20都市では特に、フェニックス、シアトル、サンディエゴ、ボストンなどで上昇しており、フェニックでは前年比で「15.80%」も上昇しています。住宅の購入は周辺産業への影響も大きく、今後も住宅市場の好調な伸びが続くようなら、米景気にとっても大きな支援材料になります。このようにして見ると、2020年から始まった世界的なコロナパンデミックからの景気回復は、米国が頭1つも、2つも抜け出ており、いわば「米国の一人勝ち」といった様相にもなりかねません。物価が上昇することで、インフレ懸念から金利が上昇し、さらに景気回復を先取りする形で株価も上昇し、ドルへの投資がより魅力を増すのは自然なこととも言えます。

FRBのクオールズ副議長は30日、「FOMCはインフレ率が目標値の2%を幾らか上回っても問題ないと考えているとの見方は、非常に確実性の高いFOMCのコミットメントであり、私はこれを強く支持する」と表明しました。また、インフレ期待値を抑制できなくなりつつあるとの兆候が示されない限り、FRBは失業率が低下しても予防的な利上げという手段を取らない方針については、「早まるべきではない」と述べ、「マクロ経済や金融政策の動向を過去10年だけでなく、15年や20年分まで見ることによって、優れた結果を導き出せるのではないだろうか」と語っています。(ブルームバーグ)今週末発表される雇用者数でも、失業率の低下が予想されており、足元の長期金利も上昇傾向を強めていることへの「けん制」とも受け止められます。

「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が絡むポジションが強制的に清算されたことによる金融機関の損失が、合計で50億−100億ドル(約5510億円−1兆1030億円)に上る可能性があるようです。すでに、クレディスイスや野村ホールディングスが多額の損出が出る恐れがあることを発表していますが、さらに三菱UFJ証券も「欧州子会社での米顧客との取引において、多額の損出が生じる可能性がある」と発表しており、損出額は3億ドルの見込みだということです。

解任劇に揺れているトルコ中銀ですが、カブジュオール新総裁は、引き締め気味の金融政策を約束し、「政策金利の1週間物レポ金利は消費者物価を上回る水準に維持する」と表明しました。また効果的かつ、「独立して」金融政策手段を活用するとも語っていますが、「独立性」という点では、まず無理だと思われます。エルドアン大統領はここ2年で3人の中銀総裁の首をすげ替えています。前総裁も利上げを繰り替えしたことがエルドアン氏の「逆鱗」に触れ解任されたわけです。直近のトルコの消費者物価指数は「15.1%」で、さらに上昇する可能性もあります。金利引き下げへを望むエルドアン氏に抵抗して、果たして政策金利をそれ以上に維持することが出来るのか、非常に不透明です。

110円台に乗せたドル円ですが、ここまで来ると次のターゲットは、昨年2月に記録したドルの最高値である「112円23銭」だと、多くの市場関係者が声を揃えることになります。今年もまだ9カ月を残していますが、このままドル高が進めばこの水準に達することになりますが、まだまだ紆余曲折があると考えておくべきでしょう。

本日のドル円は110円〜110円70銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
3/30 クオールズ・FRB副議長 FOMCはインフレ率が目標値の2%を幾らか上回っても問題ないと考えているとの見方は、非常に確実性の高いFOMCのコミットメントであり、私はこれを強く支持する」、「早まるべきではない」、「マクロ経済や金融政策の動向を過去10年だけでなく、15年や20年分まで見ることによって、優れた結果を導きだせるのではないだろうか」 --------
3/25 パウエル・FRB議長 「われわれの目標に向かってさらに大きく前進すれば、徐々に米国債や住宅ローン担保証券の購入を縮小していくだろう。その後さらに長期的には、利上げを可能にするためのテストを設定している」、「つまり、経済がほぼ完全に回復した時、時間をかけて非常に漸進的かつ透明性をもって、緊急時に導入した緩和策を引き上げていくことになる」 --------
3/23 ブレイナード・FRB理事 「見通しは大幅に改善しているが、雇用はコロナ禍前を1000万人近く下回っており、インフレ率は2%を下回る水準にとどまっていることから、経済はわれわれの目標からなお程遠い」 --------
3/23 イエレン財務長官 「経済対策の成立で、国民は生活基盤が損なわれることなくコロナ禍を乗り越えると私は確認している」、イエレン氏は「景気回復の兆候は見られるものの、われわれがどうゆう苦境から抜け出そうとしているのかを直視すべきだ。米国の雇用はなおコロナ前のピークを1000万人近く下回っている」 --------
3/23 パウエル・FRB議長 「今年は年を通じてインフレ率が上昇すると予想しているが、インフレへの影響は特段に大きくはなく、持続的でもないだろうというのが、最もあり得る展開だとみている」、「この四半世紀、経済には強いディスインフレ圧力が世界的に見受けられる」 --------
3/17 パウエル・FRB議長 「金融環境を巡るさまざまな指標を見れば、金融情勢が全般に極めて緩和的である様子を示していることが分かるだろう。そして、それは適切なことだ」、「予測を基に予防的に行動することはしない」、「われわれの目標達成を脅かすような、市場の無秩序な状況や金融環境の持続的なタイト化が見られれば懸念するだろう」 ドル円は109円台から下落。株価は上昇し、長期金利も1.64%台まで上昇。
3/17 FOMC声明文 「経済活動と雇用情勢が示す指標はここ最近は上向いたが、パンデミックによる悪影響が最も深刻だったセクターはなお脆弱だ」、「インフレ率は引き続き2%を下回っている」 --------
3/14 イエレン・財務長官 「インフレのリスクはあるだろうか。小さなリスクはあるが、制御可能だと私は考えている」(一部の物価は上昇するだろうが)、「それは一時的な動きだ」 --------
3/11 ラガルド・ECB総裁 「新型コロナウイルス流行に関する何らかの悪い展開がない限り、現在進行中のワクチン接種と段階的な制限緩和が、2021年中に経済活動がしっかりと回復するとの予想を支えるだろう」 --------
3/4 クノット・オランダ中銀総裁 (ワクチン接種により)「活動制限が解除されるであろう下期については楽観的になる理由があり、市場はそうした楽観を織り込みつつあるということだ」 --------
3/4 パウエル・FRB議長 われわれは広範囲にわたる金融環境を注視している。目標からまだ遠いところにいると考えている」、「われわれも目標達成を脅かすような、市場の無秩序な状況や金融環境の持続的なタイト化が見られれば懸念するだろう」、2%を大きく超えるインフレ期待を生むほどの水準にとどまることは確実にない」 株と債券は大きく売られ、長期金利は1.56%台に急騰。ドル円は107円台前半から107円98銭までドル高に。
3/3 ベージュブック 「新型コロナウイルス感染症ワクチンが一段と普及する中、大半の企業は向こう6−12カ月について楽観的な見方を維持している」、「大半の地区は、今回の調査機関中に雇用水準がゆっくりとではあるが上昇した」 --------
3/2 ブレイナード・FRB理事 「ワクチン接種の増加に加え、実行済みおよび予想される財政投入、緩和的な金融政策は2021年見通しが力強いことを示している」、「いかなる予想も依然かなりの不確実性が伴う」 --------
3/1 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (債券利回りの上昇について)「景気見通しが強まっていることを考えれば、驚きはない」、「景気には地平線上の夜明けが見える」 --------
2/24 パウエル・FRB議長 「われわれの政策は緩和的だ。失業率が高く、労働市場は最大限の雇用達成から程遠い状況にあるためだ」、「一部指標で価格上昇が示されている資産があるのは確かだ」「この状況は必ずしもインフレにつながらない。インフレというのは、(一時的な物価高騰ではなく)、毎年のように繰り返され継続的に物価が上昇するプロセスだからだ」 NYダウは424ドル高と急騰。ドル円は106円台まで上昇。
2/17 ローゼングレン・ボストン連銀総裁 「失業率の高止まりが続く限り、今後2年間は持続的なインフレ率2%の達成を見込んでいない」 --------
2/17 FOMC議事録(1月26、27日分) 「経済がそれらの目標からまだほど遠い状況にあることを踏まえ、一段と顕著な進展が得られるまでにはしばらく時間がかかる可能性が高いと、参加者は判断した」、「経済は委員会が掲げる中長期の目標からなお程遠く、今後の道のりはなお極めて不透明で、パンデミックが引き続き見通しに多大なリスクをもたらしているとの見解で参加者は一致した」 --------
2/16 オーストラリア準備銀行議事要旨 「債券購入プログラムは実施しなかった場合と比べ、金利と豪ドル相場の押し下げにつながった。これを考慮すれば、金融刺激策の巻き戻しを検討するのは時期尚早だろう」 --------
2/10 パウエル・FRB議長 「恩恵が広く共有されるような力強い労働市場からは、なお非常に遠い状態にある」、「最大限の雇用を達成し、それを維持するには、金融政策による支援以上のものが必要となる」 --------
2/7 バイデン大統領 習主席に「電話しない理由はない」、(中国に対するアプローチはトランプ前大統領とは異なるものになるとし)「対立する必要はないが、激しい競争になるだろう」、「彼の中には民主主義という概念はみじんもない」 --------
2/7 イエレン財務長官 「労働市場は深い穴に沈んでおり、抜け出すのはまだずっと先だ」、「十分な支援がなければ労働市場は2025年まで回復しない可能性がある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和