今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円続伸、130円台を回復」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はさらに続伸。NYでは好調な経済指標と長期金利の上昇を材料に130円19銭まで上昇。
  • ユーロドルは前日より若干水準を切り下げたが堅調に推移。ユーロ円は4月26日以来の138円台後半まで上昇。
  • 株式市場は3指数が揃って続落。高インフレが続くとの見方が再び強まり、ダウは176ドル下げる。
  • 債券は大幅続落。長期金利は一時2.95%台まで上昇し、2.90%台で取引を終える。
  • 金と原油はともに小幅上昇。
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5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 57.0
5月ISM製造業景況指数 → 56.1
5月自動車販売台数 → 1268万台
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ドル/円 129.21 〜 130.19
ユーロ/ドル 1.0627 〜 1.0731
ユーロ/円 138.19 〜 138.85
NYダウ −176.89 → 32,813.23ドル
GOLD +0.30 → 1,848.70ドル
WTI +0.59 → 115.26ドル
米10年国債 +0.062 → 2.906%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4月貿易収支
  • 日 5月マネタリーベース
  • 欧 ユーロ圏4月生産者物価指数
  • 英 ロンドン市場休場(バンクホリデー)
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 5月ADP雇用者数
  • 米 4月製造業受注
  • 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演

本日のコメント

ドル円は想定以上に戻りが速く、昨日のNYでは130円台を回復し、130円19銭まで続伸しました。今週に入って市場のセンチメントは激変です。今週月曜日の午前には126円86銭まで売られたドル円は、連日「大台替え」を演じ、わずか3日で3円30銭強の上昇です。1日に1円以上上昇した計算となります。インフレ懸念が再び強まり、FRBは今後も強力な利上げを行う公算が高いとの観測が台頭しています。前日、バイデン大統領とパウエル議長の会談でも、言葉では発せられなかったものの、インフレ阻止に対する「目に見えぬプレッシャー」があったと理解できます。前日に続き円はほぼ全面安となり、ユーロ円は4月26日以来となる138円85銭まで円安が進みました。

この欄でも何度か、「ドル円が130円台を回復し、再び131円台を目指すには、9月のFOMCでの『利上げは見送り』といった見方が消える必要がある」と述べて来ましたが、FRBのウォラー理事は、「数回の会合でさらに50ベーシスポイントの引き締めを支持する」と述べ、「具体的にはインフレ率が当局の目標である2%に近づくまで沈静化しない限り、50bpの利上げを選択肢から排除しない」との考えを示していました。それに加え昨日はタカ派の代表格であるセントルイス連銀のブラード総裁がメンフィスでの経済講演で、約40年ぶりの高水準となっているインフレを減速させるため、政策金利を年内に3.5%まで引き上げるよう主張し、その上で、来年後半か2024年にはそうした利上げの一部を巻き戻すことができるとの見通しを示しています。さらに、記者団に「データが予想通りであれば、9月に0.5ポイントの追加利上げが行われると、現時点で予想している」とも述べています。「利上げ見送り」どころか、0.25ポイントではなく「0.5ポイントの利上げ」に言及しました。これでは株と債券が売られ、ドル円が130円台を回復するのも「むべなるかな」といった状況です。

昨日はこれに加え、5月のISM製造業景況指数が発表され、市場予想の「54.5」を上回り、さらに前月の「55.4」をも上回る「56.1」だったことも、ドル円を押し上げる効果がありました。インフレを阻止するためには、景気を減速させる必要があり、そのため「良好な経済指標」は「さらに強力な利上げをしなければならない」との発想から、皮肉にも株価が下げ、債券も売られ、ドルが上昇する要因と考えられます。昨日はこの他にもFOMCメンバーの発言がありました。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はCNBCとのインタビューで、「われわれが必要とする水準へとインフレを傾向的に引き下げるために必要な措置を講じることに、私は全く違和感はない」と発言し、「米金融当局がしなければならないのは、緩和策を取り除くことだ。ただデータに対してはオープンな姿勢、データ次第の姿勢である必要がある」(ブルームバーグ)と述べ、これまでのハト派姿勢を若干修正してきたと思えるような発言を行っています。また、6月、7月の両会合で0.5ポイントずつ利上げを実施することを支持すると語ったものの、その先の政策を予測することは控えていました。ここは、やはり「ハト派」です。またリッチモンド連銀のバーキン総裁は中立の立場から、「金利とバランスシートの両面で正常化する時だと考えられる。インフレがこれほど高まり景気がなおこれほど力強い状況にあっては、そうすることが完全に理にかなっている」と語っています。

最後に、ホワイトハウスでバイデン大統領とパウエル議長が会談した際に同席したイエレン財務長官について、その後会見した内容が届きました。イエレン氏は「インフレ進行の筋道について私は間違っていた」と述べ、昨年後半からの自身のインフレに対する見通しが間違っていたことを素直に認めています。イエレン氏は昨年10月24日には「米国がインフレに対するコントロールを失いつつあるとは考えていない。このところ経験しているようなインフレは米国では長い間みられなかった。しかし、正常に戻る中で、これも終わると予想する」と、足元でジリジリと上昇し始めた物価上昇をこのように捉えていました。さらにイエレン氏は今年1月14日の発言でも、「今回のインフレの要因は新型コロナウイルスだと認識することが重要だ。インフレ率を引き下げたいのであれば、われわれが出来る最も重要なことはコロナ対策で進展し続けることだと考える」と述べ、その上でインフレがどこまで続くかについては、「労働供給や需要パターンが正常化すれば、インフレ率が2022年後半までに鈍化し、物価は正常に戻ると考える」と語っていました。このような発言をしたイエレン氏が、自身の見通しや認識が誤っていたと率直に認める姿勢は評価できると思います。その後のロシアのウクライナ侵攻は誰も予想できなかったからです。

130円台まで一気に回復したドル円は、ここから上は「常識的には」重く、前回の高値131円35銭を抜くには時間がかかると考えますが、その「常識」も通じないほど、動きが速く値幅も大きいことから、注意は必要です。

本日のドル円は129円10銭〜130円60銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/1 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「金利とバランスシートの両面で正常化する時だと考えられる。インフレがこれほど高まり景気がなおこれほど力強い状況にあっては、そうすることが完全に理にかなっている」 --------
6/1 デーリー・ サンフランシスコ連銀総裁 「われわれが必要とする水準へとインフレを傾向的に引き下げるために必要な措置を講じることに、私は全く違和感はない」、「米金融当局がしなければならないのは、緩和策を取り除くことだ。ただデータに対してはオープンな姿勢、データ次第の姿勢である必要がある」 --------
6/1 ブラード・セントルイス連銀総裁 「データが予想通りであれば、9月に0.5ポイントの追加利上げが行われると現時点で予想している」 良好な経済指標の発表もあり、ドル円は129円台から130円台に上昇。
5/31 バイデン・米大統領 「インフレに対応するのが私の計画だ。そのためにはまず単純な提案をしたい。FRBを尊重し、FRBの独立を尊重するということだ。私これまでそうしてきたし、これからもそう続ける」 ややドル高に影響を与える。
5/30 レーン・ECB理事 「正常化は25ベーシスポイント単位の利上げが自然な焦点だ。7月と9月の25bp利上げが基準のペースだ」、「これ以外の動きについての議論は7月や9月にこれより大幅な利上げをする根拠を示さなければならない」 --------
5/30 ウォラー・FRB理事 「数回の会合でさらに50ベーシスポイントの引き締めを支持する」と述べ、「具体的にはインフレ率が当局の目標である2%に近づくまで沈静化しない限り、50bpの利上げを選択肢から排除しない」 ドル円127円台半ばから後半に上昇。
5/28 エルドアン・トルコ大統領 「指標金利とインフレの関連性を押し付けようとしてくる人々は無学か売国奴だ」、「ロンドンやNYから世界を見ることにしか能のない人々のむやみな話に注意を向ける必要はない」 --------
5/25 FOMC議事録 「向こう2回の会合で0.5ポイントずつの利上げを行うことが適切となる公算が大きいだろうと、大部分の参加者が判断した」、「政策緩和の解除を早めれば、委員会は年内において、政策引き締めの効果、および経済の展開が政策調整をどの程度正当化したかを見極める上で良い位置につけることが出来ると、多くの参加者が判断した」、「金融安定に関する問題に言及した幾人かの参加者は、金融引き締めが米国債券市場の流動性や民間部門の仲介能力に絡む脆弱性と相互作用を起こす可能性を指摘した」 株式市場に安心感を与え、3指数が揃って上昇。ドル円は126円台後半から127円台半ばへ上昇。
5/24 ビルドワドガロー・仏中銀総裁 「0.5ポイント利上げは現時点でECBのコンセンサスに含まれていない。これを明白にしておく」と述べ、「金融政策の正常化であって引き締めではない。利上げは漸進的なものになる」 --------
5/23 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今後2回のFOMC会合で政策金利をいずれも0.5ポイントずつ引き上げた後、9月に利上げをいったん停止する可能性がある」、「インフレが現在とは違う方向に展開し始めた場合は、より積極的に動くことにオープンでなければならないだろう。検討対象から解除しているものは何もないことを明確にしておきたい」 --------
5/21 ラガルド・ECB総裁 「7−9月初めに資産購入を終了した後で、われわれはその後ある時点で利上げを行い、それは数週間後かもしれない」と、(0.5ポイントの利上げに関しては)、「現時点で何か言えることではない」 --------
5/20 黒田・日銀総裁 「物価上昇の要因は、国際商品市況を中心とした輸入物価の上昇であり、交易条件の悪化によって国民所得が流出し、経済を下押しする」、「マイナス金利を含む現行のYCC政策を軸とした強力な金融緩和策を粘り強く続け、経済の回復をしっかりサポートすることが重要だ」 --------
5/19 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 「株式市場が大荒れの1週間となっているのは驚きではなく、金融政策の引き締を一部反映したものだ」、「インフレ抑制に向け、複数回の0.5ポイントの利上げを支持する考えは変わらない」、「現在はインフレ率が高過ぎて、それを下げるために一連の金融調整を行う必要がある」、「今は0.5ポイントの行動に全く違和感はない」 --------
5/18 イエレン財務長官 「政権の立場から言えることは、われわれは市場が決定する為替レートにコミットしているということだ」と述べ、米金利上昇でドルへの資金流入が勢いづく中、「ドルが上昇しているのは理解できる」 --------
5/18 エバンス・シカゴ連銀総裁 「政策金利を米金融当局が経済にとって中立と考える水準をやや上回るまで引き上げ、利上げをそこで打ち止めにしても、インフレを現在の高い水準から減速させるのに役立つと考える」、「引き締めのためにFF金利を常に引き上げる必要はない。引き締めの環境に到達し、そこでしばらく政策を維持することは可能だ」 --------
5/17 ブラード・セントルイス連銀総裁 「次の数会合に0.5ポイントずつの利上げを実施する方向にあるようだと、パウエル議長がこれまでに述べている」、「見通しへのリスクはあり、状況は変わり得るが、今のところわれわれには適切な計画がある」 --------
5/17 パウエル・FRB議長 「われわれが目にしなくてはならないのは、明確かつ納得のいく形でのインフレ低下であり、それを確認するまで取り組みを続けていく」、「そのために広く理解されている中立水準を超えることになるならば、われわれは一切ちゅうちょせずそれを成し遂げる」、「経済は強く、金融緩和の後退や政策引き締めに耐えられる良好な位置につけている」、「物価安定を取り戻すには何らかの痛みを伴うこともあるだろう。しかし、強い労働市場を維持できると考えている」 債券が売られ、長期金利は2.98%台へ急上昇。ドル円は129円台前半から129円台後半まで買われる。
5/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「ウクライナ情勢や中国の『ゼロコロナ』政策は供給制約を悪化させ、さらなるインフレを引き起こしかねない。米国でも非常に高い家賃が物価に反映されるのに時間がかかる。今の物価情勢は上振れリスクが大きい」、(0.75ポイントの利上げの可能性について)「インフレが十分に収まらない事態もあり得るため、0.75%の利上げを含むあらゆる選択肢をテーブルの上に置いておきたい。6月と7月の利上げ幅は0.5%にとどめておくのが妥当だろうが、将来的に0.5%とすることも排除するつもりはない」 --------
5/16 バーナンキ・元FRB議長 「フォワードガイダンスが全体として、インフレ問題へのFRBの対応を遅らせたと考える」、「振り返ってみると、間違いだったと思う。彼らも間違いだったと同意すると思う」、「結果として成長停滞とインフレが同時進行するスタグフレーションの局面に直面する」 --------
5/12 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「50ベーシスポイントずつの利上げは私にとってかなり理にかなうもので、現時点の経済には向こう数回の会合でそれを休止する理由は見当たらない」、(0.75ポイントの利上げについては)「第一に考えられているものではない」 大きく下げていた株価が、ほぼ下げを埋める。
5/12 パウエル・FRB議長 (0.75ポイントの利上げは既に検討から外したのか問われ、当局はそうした動きを)「積極的に検討していない」、「経済がほぼ予想通りに推移した場合、今後2回の会合では0.5ポイントの追加利上げが適切だろう」 --------
5/11 ラガルド・ECB総裁 「ECBが金利に関するフォワードガイダンスで伝えているように、初回の利上げは純資産購入の終了からしばらく後で行われる」「『しばらく』の概念をECBはまだ正確に定義していないが、わずか数週間を意味することもあり得ると私自身これまで極めて明確にしてきた」 --------
5/11 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは、もはや緩和策とはならない中立の領域にまで政策金利を引き上げていく。インフレが高すぎる水準にとどまった場合、私はさらなる行動を支持するだろう。高すぎる水準とは、当局目標の2%に向けて戻っていかないような状況だ」 --------
5/10 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「私が『ソフトランディング』を考える場合、『それは潜在成長率を下回る成長がしばらく続く可能性がある。失業率が幾分か上昇することも確実にあり得るが、大幅に上昇するわけではない』という状況だ」、「私は失業率が3.6%にとどまっている状況をソフトランディングとは定義しない。インフレが鈍化しつつあり、同時に健全かつ力強い労働市場を真の意味で維持している状況が、ソフトランディングと定義されよう」 --------
5/10 メスター・クリーブランド連銀総裁 「今後2会合での50ベーシスポイント利上げは完全に妥当だと考える。その後、加速させる必要があるかどうかを見極める必要性が出て来るだろう。需要が予想より速いペースで減速すれば、少し減速させることも可能かもしれない」、「永遠に75bpの利上げを排除するのではない。今後後半のしかるべき時点でインフレが下がっていなければ、スピードを上げる必要があるかもしれない」 ドル円は小幅に上昇。NYダウ下落の引き金に。
5/9 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「米国民が払っている物価は高すぎる」と述べ、その理由として「労働力の供給が予想していたほど速いペースで回復していないことや、個人消費が貯蓄ではなく現行の収入で賄われているとみられる」 --------
5/9 ボスティック・アトランタ連銀総裁 (0.5ポイントの利上げは)「既にかなり積極的だ」、「さらに積極的に動く必要があるとは思わない。このペース、この歩調を維持し、市場がどのような展開をたどるかを見極めることは可能だ」、「優先事項として私の念頭にあるのはインフレ率があまりに高水準であるということであり、われわれは決然と、また明確な意図を持ってその抑制に向けて行動する必要がある」 --------
5/6 バーキン・リッチモンド連銀総裁 (0.75ポイントの利上げの可能性に関する質問に)、「私は何も排除しない。あらゆることが検討議題になるだろう」、「われわれのペースはかなり加速していることだけは言っておこう」 --------
5/4 パウエル・FRB議長 「インフレはずいぶんと高すぎる、それがもたらしている困難をわれわれは理解しており、インフレを押し下げるべく迅速に行動している」と説明し、「委員会は次の2会合において0.5ポイントの追加利上げを議題にすべきだとの認識が広く見られる」、(0.75ポイントの利上げについては)、「委員会は積極的に検討していない」 株価は大幅高。債券も買われ、ドル円は130円台から128円台半ばへ急落。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和