「ECB0.75ポイントの利上げを決定」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は欧州市場からNYの朝方にかけて143円台半ばを下回っていたものの、パウエル議長のタカ派的な発言から上昇。144円43銭まで上昇したが上値は追えず。
- ECBが0.75ポイントの利上げを決定し、ユーロドルは下げから反転。想定内であったこともあり、上値は1.0030近辺と限定的。
- 株式市場は続伸。パウエル議長の発言に驚きもなく、3指数とも終盤に上値を伸ばす。
- 債券は反落。長期金利は3.31%台に上昇。
- 金は続落し、原油は反発。
新規失業保険申請件数 → 22.2万件
7月消費者信用残高 → 23.811b
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ドル/円 | 143.41 〜 144.43 |
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ユーロ/ドル | 0.9931 〜 1.0030 |
ユーロ/円 | 143.18 〜 144.28 |
NYダウ | +193.24 → 31,774.52ドル |
GOLD | −7.60 → 1,720.20ドル |
WTI | +1.60 → 83.54ドル |
米10年国債 | +0.054 → 3.317% |
本日の注目イベント
- 中 中国8月消費者物価指数
- 中 中国8月生産者物価指数
- 米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
- 米 ウォラーFRB理事講演
- 米 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁講演
- 加 カナダ8月就業者数
- 加 カナダ8月失業率
本日のコメント
RBA、BOCに続いてECBも大幅利上げに踏み切りました。ECBは昨日の政策委員会で通常の3倍となる0.75ポイントの利上げを決め、中銀預金金利も0.75%に引き上げられました。この決定を受けユーロドルは上昇しましたが、市場の想定内であったため、上値は限定的でした。3中銀が連日利上げに踏み切り、しかも「想定された利上げ幅の上限」を採用したことで、今月20−21日のFOMCでの利上げ幅も「0.75ポイントで決まった」という印象です。
ECBは声明で、「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」とし、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」と表明しました。ラガルド総裁も会見で、「利上げは全会一致だった。0.75ポイントの利上げは標準ではない」とした上で、「断固とした行動を取る必要があった」と説明していました。また、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」と明言。利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」と答えています。(ブルームバーグ)ECB内部には大幅利上げが今後域内の景気をさらに下振れさせるリスクもあり、反対の意見もありましたが、今回の利上げ幅を「0.5ポイント」ではなく、「0.75ポイント」に決めたのは、ECB内部でインフレ高進への警戒感がさらに強まった背景があります。8月の消費者物価指数(CPI)が「9.1%」と過去最高を更新し、今後冬場に向えばエネルギー価格の上昇からインフレ率が一段と高まる可能性もあり、「背に腹は代えられない」と判断したとみられます。これでECBはFRBと足並みを揃え、「インフレ抑制を最重要課題」に掲げ、景気の減速には目をつぶる政策に踏み出したと言えます。
パウエル議長は、20−21日のFOMC会合を前にし、最後の発言になるだろうとみられる講演を、ワシントンで開かれた金融政策関連会議で行いました。議長は、「われわれはこれまでと同様、直ちに、真っすぐに、力強く行動する必要がある」と述べ、「同僚と私は、このプロジェクトに強くコミットしており、根気よく続けていく」と述べています。ジャクソンホールでの発言と大きな相違はありませんでしたが、今回の発言は何やら出陣式での「決意表明」のような印象で、パウエル氏自身、自分を鼓舞しているように感じました。上でも述べましたが、これで「0.75ポイントの利上げは決まり」で、問題のその先の政策スタンスについて、会合後にどのような言及があるかという点に関心が移ります。また、0.75ポイントの利上げはすでに市場には織り込まれたと受け止めています。
ドル円は145円に1銭届かない水準まで買われた後、やや上値を重くしていますが、それでも下値は143円台半ばまでとなっています。急激な円安を受けて、財務省と日銀、金融庁は8日、「3者会合」を開き、協議を行いました。神田財務官は、「投機的な動きも背景に、一方向で急速な円安の進行が見られる」とし、「政府としては、動きが継続すれば、あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」と述べました。145円付近まで円が売られたことで、これまでよりも強めの「口先介入」があると予想していましたが、想定内の発言でした。市場の反応もほとんどなく、個人的には150円を超えれば、実際の行動が見られるのではないかと予想しています。もっとも、それで流れを変えられるとは思いませんが、やはり、鍵となるのは米財務省のスタンスが「ドル高は行き過ぎ」といった方向に変わるかどうかです。
本日のドル円は143円〜144円90銭程度を予想します。
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今週厚生労働省が発表した「7月の毎月勤労統計」では、一人あたりの賃金は「物価変動を考慮した実質」で前年同月比1.3%の減少でした。5人以上働く事業所の調査で、名目の一人あたりの現金給与総額は1.8%伸びていましたが、7月の物価上昇は3.1%で、実質賃金はマイナスとなっています。インフレとは「お金の価値が減ること」と教科書は教えていますが、まさにこの調査結果がそのことを示しています。これで4カ月連続ですが、年々増え続ける社会保障費の負担を考えると、2000年以降、日本人の実質的な給与は全く増えていないと主張するエコノミストもいます。岸田政権の掲げる「新しい資本主義」そして、「成長と分配の好循環」は今のところ掛け声だけで、実際には「何も変わらない資本主義」の下、「停滞と根詰まりの悪循環」に終始しており、変化は見られません。日本のインフレ率はまだ2%台ですが、これが欧米のように10%に迫る水準にまで上昇したら一体どうなるのでしょうか?急激な円安が進み、日本だけが別世界にいられるはずはないと思っています。
良い週末を・・・・・。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
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9/8 | ECB声明文 | 「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」 | -------- |
9/8 | ラガルド・ECB総裁 | 「断固とした行動を取る必要があった」、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」(利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には)、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」 | -------- |
9/7 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「金融政策に関する自身の考えを構築するにあたっては、インフレというけだものとの闘いで尚早に勝利宣言しないよう注意したい」、「フェデラルファンド(FF)金利を早い時期に4%超に引き上げ、その後しばらくその水準で据え置くことが必要」 | -------- |
9/7 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「9月の金融政策行動として何がまさしく適切かあまり具体的に言及するのは時期尚早だが、さらなる行動が必要だとあらためて申し上げたい」、「物価はまだ大幅には下がっておらず、われわれはこれを目指すことになる」 | -------- |
9/7 | ブレイナード・FRB副議長 | 「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」、「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」、「引き締めサイクルにおける迅速さとそのグローバルな性質、さらに金融環境引き締めの効果が総需要に行き渡る速さを巡る不透明感は、過度の引き締めに関連したリスクを生み出す」、「時期尚早に退くリスクを回避することも重要だ」 | 株高、債券高が進み、ドル円は145円前後から143円台半ばへ下落。 |
8/31 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「来年の早い時期までフェデラルファンド(FF)金利を4%をいくらか上回る水準に引き上げて、そこで維持する必要があるというのが私の現在の認識だ」とし、「当局が来年FF金利の誘導目標を引き下げるとは、私は見込んでいない」 | 株式、債券、金、原油が売られ、ドル円は上昇。 |
8/30 | バレス・スロべニア中銀総裁 | 「7月に実施した0.5ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを、来週の政策委員会で支持する」 | -------- |
8/30 | ミュラー・エストニア中銀総裁 | 「インフレ見通しが改善していないことを踏まえると、0.75ポイントは9月の選択肢の一つに入るだろう」 | -------- |
8/30 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「今後の指標がインフレの鈍化が始まったことを明確に示すようなら、利上げ幅をここ最近の75bpから巻き戻す理由になるかもしれない」、「どんなデータが出て来るか見極める必要がある」 | -------- |
8/30 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「われわれはインフレ率を目標の2%に戻すことをコミットしており、そのため必要な措置を講じる。金融当局が物価抑制に向けた取り組みでひるむことはない」 | -------- |
8/30 | ウイリアムズ・NY連銀総裁 | 「いくらか景気抑制的な政策を講じて需要を減速させる必要があり、まだそこには到達していない」、(9月のFOMCでの利上げ幅はデータの全体像次第だとしながらも)、「抑制的な水準の維持は2023年末まで続く可能性がる」 | 株安、ドル高につながる。 |
8/29 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「パウエル議長のジャクソンホールで講演の受け止め方を見て、嬉しく思う」、「インフレ率を2%まで押し下げるというわれわれの決意の真剣さが理解された」、「前回のFOMC後の株価上昇については素直に喜べなかった。インフレを引き下げるわれわれの決意の固さを認識し、市場はそれについて思い違いをしていると思っていたからだ」、「1970年代に当局が犯した最大の過ちの一つはインフレが鎮静化に向うと思ったことだ。経済は悪化していたため手を緩めたところインフレは再燃し、その後、ようやく制圧した。この過ちを繰り返してはならない」 | -------- |
8/26 | パウエル・FRB議長 | 「物価の安定を回復するためには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い。過去の記録は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」、「金利上昇と成長減速、労働市場環境の軟化はインフレを鈍化させるが、企業と家計に痛みをもたらすことにもなる」、「9月会合の決定は、入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される」 | 株式市場は全面安となり、NYダウは1000ドルを超える下げに。長期金利が上昇し、ドル円は137円75銭までドル高に。 |
8/26 | シュナーベル・ECB理事 | 「現行の物価上昇でインフレ予想が定着する可能性とコストは不快なほど高い。こうした環境では中銀は力強く行動をしなければならない。人々が法定通貨の長期的な安定性に疑問を持ち始めるリスクに対し、断固として対応する必要がある」 | ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。 |
8/26 | ビルロワドガロー・仏中銀総裁 | 「政策当局者は後になって『不必要に厳しい』金利の動きを強いられるのを回避するため、記録的なインフレに対応する決心が必要だ」 | ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。 |
8/19 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることをコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」、「インフレを抑制する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」 | -------- |
8/18 | デーリー・SFシスコ連銀総裁 | 「われわらは政策金利を少なくとも中立水準の3%をやや上回る水準に政策金利を引き上げる必要があるが、恐らく年内に景気抑制的な領域である3%をやや上回る水準に、来年には3%をさらにやや上回る水準とする必要性がありそうだ」、「利上げ後は水準を維持するという戦略は、歴史的に見ても奏功してきたと考えている」 | -------- |
8/10 | デーリー・SFシスコ連銀総裁 | 「インフレは依然として高水準にあり、われわれの物価安定目標にはほど遠い」、「高水準にあるインフレとの闘いで米金融当局が勝利宣言するのは時期尚早だ」と語っています。また9月のFOMCについては、「9月に0.5ポイントの利上げが自身の基本シナリオだ」 | -------- |
8/9 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「インフレ上振れのサプライズが続くのであれば、米金融当局として高めの金利を長期にわたり維持する用意がある」、「インフレ率が鈍化しつつあるのなら、その間に金利を高めに維持することができると考えられる」(それもって)、「インフレ率がピークに達したと主張するには時期尚早だ」 | -------- |
8/5 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「インフレを抑制するという点で金融当局が役割を果たしたと言える状況からはまだ遠い」、(9月会合で50ベーシスポイントの利上げが実施される可能性について問われ)、「もちろんだ。だがデータに基づく姿勢を取る必要がある」、「考え方をオープンにしておく必要がある。インフレ指標がさらに2つ、雇用統計もあと1回発表される」 | -------- |
8/5 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率が明白に低下するまでは先月決めた0.75ポイント利上げと同様の大幅な利上げを検討し続けるべきだ」、「現在進めているような利上げが適切だと予想しているが、データや状況がどのように展開するかについては不確実性を踏まえ、そうした情報を指針としてどの程度の利上げが必要かを判断する」 | -------- |
8/4 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「米金融当局はインフレ抑制にコミットしており、需要を緩和するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要がある」、(9月の利上げ幅について)「0.75ポイントは不合理ではないものの、0.5ポイントもあり得る」 | -------- |
8/4 | ベイリー・BOE総裁 | 「ポンドの下落は今のところ危機ではない」、「景気見通しを見極めるため政策当局は為替を含むあらゆる指標を注視している」 | -------- |
8/2 | エバンス・シカゴ連銀総裁 | (9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について)「50ベーシスポイントが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、75bpでも問題ないかもしれない」 | 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。 |
8/2 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「インフレははるかに高すぎる。われわれは物価安定の達成をなお強く決意しており、完全に団結している。物価安定は9.1%のインフレではなく、2%に近いインフレを意味する。従って、道のりはまだ長い」 | 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書