今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「日銀レートチェックか?」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は昨日の早朝に144円96銭まで買われたが、その後財務大臣の口先介入や日銀が「レートチェック」を行ったとの報道からドル売りが優勢となる。NYでは142円56銭までドル売りが進んだがその後143円台に戻す。
  • ユーロドルはパリティを挟みもみ合い。
  • 株式市場は前日の大幅な下げから反発したが上げ幅は限定的。依然としてインフレへの警戒感が根強く、S&P500は13ポイントの上昇にとどまる。
  • 債券は反発。長期金利は3.40%台へ低下。
  • 金は続落し、原油は1ドルを超える反発。
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8月生産者物価指数 → −0.1%
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ドル/円 142.56 〜 143.50
ユーロ/ドル 0.9970 〜 1.0009
ユーロ/円 142.29 〜 143.28
NYダウ +30.12 → 31,135.09ドル
GOLD −8.30 → 1,709.10ドル
WTI +1.17 → 88.48ドル
米10年国債 −0.004 → 3.404%

本日の注目イベント

  • 豪 豪8月雇用統計
  • 日 8月貿易統計
  • 欧 ユーロ圏7月貿易収支
  • 米 9月NY連銀製造業景況指数
  • 米 8月小売売上高
  • 米 9月フィラデルフィア連銀景況指数
  • 米 8月輸入物価指数
  • 米 8月輸出物価指数
  • 米 8月鉱工業生産
  • 米 8月設備稼働率
  • 米 新規失業保険申請件数

本日のコメント

「日銀がレートチェック!」昨日の午後日経電子版が市場介入の準備段階である、日銀が市場の状況を銀行に問い合わせる「レートチェック」を行ったと報じました。前日CPIが予想を上回り、FRBのさらなる利上げ観測が高まったことからドル円は一気に3円以上もドル高に振れ、その流れから昨日の朝方7時ごろには、144円96銭までドル高が進みました。筆者もこの動きを見て、145円突破を予想しましたが、その後鈴木財務大臣が重ねて口先介入を行い、「(為替介入を)やるときには間髪入れずに瞬時に行う」と、これまでよりも強い口調の発言を行ったことや、午後には上記レートチェックの報道からドル売りが優勢となり、142円台までドルが押し戻されました。

海外勢がこの報道をどのように受け止めるのか注目していましたが、NYではややドル売りが勝る場面もありましたが、結局143円台に戻して取引きを終えています。もし市場介入への警戒感が強まれば、141円台もあるのではと予想していましたが、海外勢は東京市場での受け止め方ほど、深刻には受け止めなかったようです。仮に政府日銀が介入に踏み切れば、ドル円は5円〜8円程度円高方向に振れる可能性はありますが、それでもドル高の流れを変えることは出来ないと思われます。米国ではインフレの高進が続き、今後も政策金利の引き上げが続くという構図は何ら変わりません。むしろ日銀が大規模な金融緩和政策の修正に踏み切ってくれた方が余程効果があると考えます。また単独介入ではその効果も限られます。米国との協調介入で、東京市場でドルの押し下げ介入を行い、さらにNYに入ってもNY連銀がドルの押し下げ介入を行えば、相当な効果も見込め、投機筋のドル売りも引き出すことがより容易になります。ただ、ドル高は米国のインフレを軽減してくれる効果も見込めることから、米財務省の同意を得るのは簡単ではないでしょう。イエレン財務長官は7月に来日した際、為替介入についての可能性について問われ、「まれで例外的な状況でしか正当化されない」と、明確に答えています。

「レートチェック」という言葉にも違和感を覚えます。政府日銀は市場で幾らのレートが出合っているのかは、これだけネットや情報が発達した現在ではコンマ以下のレートまで把握しているはずです。しかも現在は電子ブローキングが主流で、いわゆる人が介して行うブローキングは極めて少量になっているはずです。筆者が第一線でやっているころはブローカー経由の取引が盛んで、インターバンクのディーラーはどの水準にどの程度の注文が入っているのか、比較的把握し易い状況でした。そのため、日銀も銀行との間に設置してある「ホットライン」で、「今、市場はどうゆう状況?」と尋ねる「レートチェック」を行いました。「EBS」など、電子ブローキングが主流の現在では、市場の状況も掴みにくいのではと思われます。「レートチェック」というよりも、「マーケットチェック」の方が実態に合っているような気がします。

ただ今回の政府日銀の行動は、これまでより一歩踏み込んだ強硬な姿勢を見せたことは事実で、市場に警戒感を植え付けたことは間違いありません。個人的にはこの水準で実弾を伴う介入に出ることはないと予想していますが、145円の節目を超えると、もう一段円が売られる可能性があるため、145円に接近したこの段階で実施したものと受け止めています。実際、今のところその効果もあったように思えます。筆者は市場介入は「おばけ」の様なものだと考えています。「おばけ」は最初に出くわしたら相当怖いに違いありません。ただ、何度も姿を現すようだと、だんだん「おばけ」にも慣れてきて、最後は恐怖心さえ覚えなくなるのでしょう。市場介入も最初に出くわせば驚きもありますが、たびたび姿を見せるようだと、その効果も低減していくものです。もっとも、「怖いもの見たさ」というものもありますが。

本日は「市場介入」に終始した感がありますが、リーマン・ブラザーズが経営破綻したのが2008年の今日です。投資銀行全米第4位だった同社の破綻は金融市場に衝撃を与え、その後ベアスターンズなどが相次ぎ破綻し、あのゴールドマンでさえ、経営危機に直面しました。それを救ったのが著名投資家ウォーレン・バフェット氏でした。足下ではインフレの高進でFRBが大幅利上げを続け、米株式市場はリーマンショックとまではいかないものの、ブルームバーグによるとすでに今年に入り7兆6000億ドル(約1090兆円)という膨大なお金が失われたとか。足下のドル円のボラティリティーはその頃に匹敵するほど高くなっています。

本日のドル円は141円70銭〜144円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/12 シュナーベル・ECB理事 (インフレ率を目標の2%に戻すために)、「今後数回の政策委員会会合で追加利上げをすることになるだろう」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/12 シクルーナ・マルタ中銀総裁 「今回が唯一の利上げではない。あと数回あるだろう」、「0.75ポイントの利上げ幅はECBにとって標準となるわけではない」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/9 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 「米インフレ率は依然として高すぎ、米金融当局には金融緩和の解除を継続する単純明快な理由がある」、「重要な問いは、それをどの程度、どれだけ早く実施していくかだ」 --------
9/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「75bpの方向に傾いたところ、先週2日に発表された雇用統計の数字はまずまず良好だった」、(来週発表される消費者物価指数(CPI)でインフレ抑止の進展が示される可能性はあるが)、「単一のデータに次回会合で決定を左右させるわけにはいかない。従って、現時点では75bpへの傾斜をより強めているところだ」、「私の考えでは、実施は早ければ早いほど良い傾向にある」 --------
9/9 ウォラー・FRB理事 「インフレはあまりに高すぎる水準にあり、インフレが下方向に意味ある形で持続的に推移しつつあるかどうか判断するのは時期尚早だ」、「政策金利が明確に需要を抑制する水準になるよう、9月20−21日の次回会合で大幅な利上げを支持する」 --------
9/8 ECB声明文 「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」 --------
9/8 ラガルド・ECB総裁 「断固とした行動を取る必要があった」、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」(利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には)、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」 --------
9/7 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策に関する自身の考えを構築するにあたっては、インフレというけだものとの闘いで尚早に勝利宣言しないよう注意したい」、「フェデラルファンド(FF)金利を早い時期に4%超に引き上げ、その後しばらくその水準で据え置くことが必要」 --------
9/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「9月の金融政策行動として何がまさしく適切かあまり具体的に言及するのは時期尚早だが、さらなる行動が必要だとあらためて申し上げたい」、「物価はまだ大幅には下がっておらず、われわれはこれを目指すことになる」 --------
9/7 ブレイナード・FRB副議長 「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」、「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」、「引き締めサイクルにおける迅速さとそのグローバルな性質、さらに金融環境引き締めの効果が総需要に行き渡る速さを巡る不透明感は、過度の引き締めに関連したリスクを生み出す」、「時期尚早に退くリスクを回避することも重要だ」 株高、債券高が進み、ドル円は145円前後から143円台半ばへ下落。
8/31 メスター・クリーブランド連銀総裁 「来年の早い時期までフェデラルファンド(FF)金利を4%をいくらか上回る水準に引き上げて、そこで維持する必要があるというのが私の現在の認識だ」とし、「当局が来年FF金利の誘導目標を引き下げるとは、私は見込んでいない」 株式、債券、金、原油が売られ、ドル円は上昇。
8/30 バレス・スロべニア中銀総裁 「7月に実施した0.5ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを、来週の政策委員会で支持する」 --------
8/30 ミュラー・エストニア中銀総裁 「インフレ見通しが改善していないことを踏まえると、0.75ポイントは9月の選択肢の一つに入るだろう」 --------
8/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今後の指標がインフレの鈍化が始まったことを明確に示すようなら、利上げ幅をここ最近の75bpから巻き戻す理由になるかもしれない」、「どんなデータが出て来るか見極める必要がある」 --------
8/30 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に戻すことをコミットしており、そのため必要な措置を講じる。金融当局が物価抑制に向けた取り組みでひるむことはない」 --------
8/30 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「いくらか景気抑制的な政策を講じて需要を減速させる必要があり、まだそこには到達していない」、(9月のFOMCでの利上げ幅はデータの全体像次第だとしながらも)、「抑制的な水準の維持は2023年末まで続く可能性がる」 株安、ドル高につながる。
8/29 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「パウエル議長のジャクソンホールで講演の受け止め方を見て、嬉しく思う」、「インフレ率を2%まで押し下げるというわれわれの決意の真剣さが理解された」、「前回のFOMC後の株価上昇については素直に喜べなかった。インフレを引き下げるわれわれの決意の固さを認識し、市場はそれについて思い違いをしていると思っていたからだ」、「1970年代に当局が犯した最大の過ちの一つはインフレが鎮静化に向うと思ったことだ。経済は悪化していたため手を緩めたところインフレは再燃し、その後、ようやく制圧した。この過ちを繰り返してはならない」 --------
8/26 パウエル・FRB議長 「物価の安定を回復するためには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い。過去の記録は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」、「金利上昇と成長減速、労働市場環境の軟化はインフレを鈍化させるが、企業と家計に痛みをもたらすことにもなる」、「9月会合の決定は、入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される」 株式市場は全面安となり、NYダウは1000ドルを超える下げに。長期金利が上昇し、ドル円は137円75銭までドル高に。
8/26 シュナーベル・ECB理事 「現行の物価上昇でインフレ予想が定着する可能性とコストは不快なほど高い。こうした環境では中銀は力強く行動をしなければならない。人々が法定通貨の長期的な安定性に疑問を持ち始めるリスクに対し、断固として対応する必要がある」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/26 ビルロワドガロー・仏中銀総裁 「政策当局者は後になって『不必要に厳しい』金利の動きを強いられるのを回避するため、記録的なインフレに対応する決心が必要だ」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることをコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」、「インフレを抑制する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」 --------
8/18 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「われわらは政策金利を少なくとも中立水準の3%をやや上回る水準に政策金利を引き上げる必要があるが、恐らく年内に景気抑制的な領域である3%をやや上回る水準に、来年には3%をさらにやや上回る水準とする必要性がありそうだ」、「利上げ後は水準を維持するという戦略は、歴史的に見ても奏功してきたと考えている」 --------
8/10 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「インフレは依然として高水準にあり、われわれの物価安定目標にはほど遠い」、「高水準にあるインフレとの闘いで米金融当局が勝利宣言するのは時期尚早だ」と語っています。また9月のFOMCについては、「9月に0.5ポイントの利上げが自身の基本シナリオだ」 --------
8/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレ上振れのサプライズが続くのであれば、米金融当局として高めの金利を長期にわたり維持する用意がある」、「インフレ率が鈍化しつつあるのなら、その間に金利を高めに維持することができると考えられる」(それもって)、「インフレ率がピークに達したと主張するには時期尚早だ」 --------
8/5 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレを抑制するという点で金融当局が役割を果たしたと言える状況からはまだ遠い」、(9月会合で50ベーシスポイントの利上げが実施される可能性について問われ)、「もちろんだ。だがデータに基づく姿勢を取る必要がある」、「考え方をオープンにしておく必要がある。インフレ指標がさらに2つ、雇用統計もあと1回発表される」 --------
8/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が明白に低下するまでは先月決めた0.75ポイント利上げと同様の大幅な利上げを検討し続けるべきだ」、「現在進めているような利上げが適切だと予想しているが、データや状況がどのように展開するかについては不確実性を踏まえ、そうした情報を指針としてどの程度の利上げが必要かを判断する」 --------
8/4 メスター・クリーブランド連銀総裁 「米金融当局はインフレ抑制にコミットしており、需要を緩和するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要がある」、(9月の利上げ幅について)「0.75ポイントは不合理ではないものの、0.5ポイントもあり得る」 --------
8/4 ベイリー・BOE総裁 「ポンドの下落は今のところ危機ではない」、「景気見通しを見極めるため政策当局は為替を含むあらゆる指標を注視している」 --------
8/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 (9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について)「50ベーシスポイントが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、75bpでも問題ないかもしれない」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
8/2 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレははるかに高すぎる。われわれは物価安定の達成をなお強く決意しており、完全に団結している。物価安定は9.1%のインフレではなく、2%に近いインフレを意味する。従って、道のりはまだ長い」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和