今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米長期金利11年半ぶりに3.5%を超える」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は19日朝方の142円台半ばから上昇し、終始143円台で推移。米長期金利の上昇に143円64銭まで買われたが勢いはなし。
  • ユーロドルは1.01台前半から下げ、0.9976まで売られる。景気の悪化と利上げの綱引きが続く
  • 株式市場は3指数が揃って反発。ダウは197ドル上昇し、S&P500も26ポイント上昇。
  • 債券は売られ、長期金利は一時3.51%まで上昇し、2011年4月以来となる高水準を付ける。
  • 金は続落し、原油は小幅に続伸。
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9月NAHB住宅市場指数 → 46
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ドル/円 143.16 〜 143.64
ユーロ/ドル 0.9976 〜 1.0028
ユーロ/円 143.08 〜 143.61
NYダウ +197.26 → 31,019.68ドル
GOLD −5.30 → 1,678.20ドル
WTI +0.62 → 85.73ドル
米10年国債 +0.041 → 3.490%

本日の注目イベント

  • 豪 RBA議事録
  • 日 8月消費者物価指数
  • 独 独8月生産者物価指数
  • 欧 ユーロ圏7月経常収支
  • 米 8月住宅着工件数
  • 米 8月建設許可件数
  • 加 カナダ8月消費者物価指数

本日のコメント

今日からFOMCが始まり、明日(日本時間22日3時)には政策金利が発表されます。今回の会合では当初0.5ポイントの利上げが市場のコンセンサスでしたが、その後好調な雇用統計を受け、0.75ポイントの利上げ観測が急浮上しました。さらに8月のCPIが市場予想を上回った「CPIショック」を受け「1ポイントの利上げ」を予想する金融機関も出て来るなど、利上げ幅を巡っては見方が大きく揺れ動いた経緯がありました。いよいよ会合を前にして、どうやら市場の見方も0.75ポイントの利上げで落ち着いてきたように見受けられます。それでも、もし実施されれば、「3会合連続で0.75ポイントの利上げ」ということになり、FRBのインフレ抑制への強い意志は理解できるものの、通常の3倍の利上げを3会合連続で行う影響は大きく、昨日は債券市場でその動きが見られました。

米10年債利回りは上昇し、一時2011年4月以来となる3.51%まで上昇しました。米長期金利は6月14日には3.47%台まで上昇し、3.5%超えは時間の問題かと思われましたが、その後ジリジリと低下し、7月29日には2.6%台まで下げています。昨日は3.5%台まで上昇したことで、ドル円ももう少し買われ、144円台を試すのかと思われましたが、上昇も143円台半ばまででした。長期金利の3.5%台までの上昇は株式市場にも逆風でしたが、株価は前日も下げたこともあり、3指数は揃って反発しています。金利の付かない金も、ほぼ2年半前の水準に戻るなど、低水準で推移しています。

では、予想通り0.75ポイントの利上げが決定された場合の市場の反応はどのようなものになるのでしょうか?この利上げ幅はすでに織り込まれていると考えられ、市場は次回11月会合のヒントを探ることになります。ブルームバーグは、「市場は0.75ポイントに傾いている。だが、米リセッションを来年引き越しかねないと投資家が考えるリスクを踏まえると、米金融当局はこれよりも大幅な利上げを恐らく避けたいところだろう。そのような市場の反応を招けば、2023年の米利上げ観測が拡大するという意図しない影響が生じて長期債利回りが低下。金融環境も緩和に転じ、金融政策が誤った方向に進む可能性もある」と論じています。ただ一方で11月の会合は1、2日に開催され、インフレが主な争点の一つとなる中間選挙の1週間前に開催されることを考慮すると、それまでに決着を付けておきたいFRBとすれば、今回大幅な利上げを決定する可能性も幾分残しているのではとの見方もあります。

インフレ抑制を最優先課題にしているFRBも出来れば、「ハード・ランディング」は避けたい意向もあるようですが、世界最大規模の資産運用会社であるブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンCEOはFRBの金融政策について、「不況なしでインフレ率2%を達成することは難しい」との見方を示し、米経済はまだ強いことを理由に、「2%達成にこだわれば、大幅な利上げの継続を迫られ、景気後退に陥るとみられ」、一方、「3〜4%程度のインフレ水準を容認する方針に転換すれば、不況は避けられるかもしれない」と日経新聞のインタビューで語っています。FRBの現在置かれている立場を的確に言い表していると思います。

バイデン大統領は18日CBSの番組で、米軍が台湾を防衛するのかとの問いに対して、「実際に前例のない攻撃があればYESだ」と答えました。また、ロシアが侵攻しても派兵しなかったウクライナと違って、米軍は中国の侵攻があった場合に台湾を守るということかとの問いにも、「YES」と答えています。一方で、これまで通り、米国の「一つの中国政策」は変わっていないことも改めて指摘しています。米国にとっての脅威は「ロシアではなく中国だ」ということを明確に言い表した言葉かと思われ、その中国に対して台湾周辺で行われている威嚇行動をけん制したもの思われます。

本日のドル円は142円50銭〜144円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/17 スティーブン・シュワルツマン、ブラックストーンCEO 「不況なしでインフレ率2%を達成することは難しい」、「米経済はまだ強い」、「2%達成にこだわれば、大幅な利上げの継続を迫れ、景気後退に陥るとみられ」一方、「3〜4%程度のインフレ水準を容認する方針に転換すれば、不況は避けられるかもしれない」 --------
9/12 シュナーベル・ECB理事 (インフレ率を目標の2%に戻すために)、「今後数回の政策委員会会合で追加利上げをすることになるだろう」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/12 シクルーナ・マルタ中銀総裁 「今回が唯一の利上げではない。あと数回あるだろう」、「0.75ポイントの利上げ幅はECBにとって標準となるわけではない」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/9 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 「米インフレ率は依然として高すぎ、米金融当局には金融緩和の解除を継続する単純明快な理由がある」、「重要な問いは、それをどの程度、どれだけ早く実施していくかだ」 --------
9/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「75bpの方向に傾いたところ、先週2日に発表された雇用統計の数字はまずまず良好だった」、(来週発表される消費者物価指数(CPI)でインフレ抑止の進展が示される可能性はあるが)、「単一のデータに次回会合で決定を左右させるわけにはいかない。従って、現時点では75bpへの傾斜をより強めているところだ」、「私の考えでは、実施は早ければ早いほど良い傾向にある」 --------
9/9 ウォラー・FRB理事 「インフレはあまりに高すぎる水準にあり、インフレが下方向に意味ある形で持続的に推移しつつあるかどうか判断するのは時期尚早だ」、「政策金利が明確に需要を抑制する水準になるよう、9月20−21日の次回会合で大幅な利上げを支持する」 --------
9/8 ECB声明文 「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」 --------
9/8 ラガルド・ECB総裁 「断固とした行動を取る必要があった」、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」(利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には)、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」 --------
9/7 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策に関する自身の考えを構築するにあたっては、インフレというけだものとの闘いで尚早に勝利宣言しないよう注意したい」、「フェデラルファンド(FF)金利を早い時期に4%超に引き上げ、その後しばらくその水準で据え置くことが必要」 --------
9/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「9月の金融政策行動として何がまさしく適切かあまり具体的に言及するのは時期尚早だが、さらなる行動が必要だとあらためて申し上げたい」、「物価はまだ大幅には下がっておらず、われわれはこれを目指すことになる」 --------
9/7 ブレイナード・FRB副議長 「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」、「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」、「引き締めサイクルにおける迅速さとそのグローバルな性質、さらに金融環境引き締めの効果が総需要に行き渡る速さを巡る不透明感は、過度の引き締めに関連したリスクを生み出す」、「時期尚早に退くリスクを回避することも重要だ」 株高、債券高が進み、ドル円は145円前後から143円台半ばへ下落。
8/31 メスター・クリーブランド連銀総裁 「来年の早い時期までフェデラルファンド(FF)金利を4%をいくらか上回る水準に引き上げて、そこで維持する必要があるというのが私の現在の認識だ」とし、「当局が来年FF金利の誘導目標を引き下げるとは、私は見込んでいない」 株式、債券、金、原油が売られ、ドル円は上昇。
8/30 バレス・スロべニア中銀総裁 「7月に実施した0.5ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを、来週の政策委員会で支持する」 --------
8/30 ミュラー・エストニア中銀総裁 「インフレ見通しが改善していないことを踏まえると、0.75ポイントは9月の選択肢の一つに入るだろう」 --------
8/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今後の指標がインフレの鈍化が始まったことを明確に示すようなら、利上げ幅をここ最近の75bpから巻き戻す理由になるかもしれない」、「どんなデータが出て来るか見極める必要がある」 --------
8/30 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に戻すことをコミットしており、そのため必要な措置を講じる。金融当局が物価抑制に向けた取り組みでひるむことはない」 --------
8/30 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「いくらか景気抑制的な政策を講じて需要を減速させる必要があり、まだそこには到達していない」、(9月のFOMCでの利上げ幅はデータの全体像次第だとしながらも)、「抑制的な水準の維持は2023年末まで続く可能性がる」 株安、ドル高につながる。
8/29 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「パウエル議長のジャクソンホールで講演の受け止め方を見て、嬉しく思う」、「インフレ率を2%まで押し下げるというわれわれの決意の真剣さが理解された」、「前回のFOMC後の株価上昇については素直に喜べなかった。インフレを引き下げるわれわれの決意の固さを認識し、市場はそれについて思い違いをしていると思っていたからだ」、「1970年代に当局が犯した最大の過ちの一つはインフレが鎮静化に向うと思ったことだ。経済は悪化していたため手を緩めたところインフレは再燃し、その後、ようやく制圧した。この過ちを繰り返してはならない」 --------
8/26 パウエル・FRB議長 「物価の安定を回復するためには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い。過去の記録は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」、「金利上昇と成長減速、労働市場環境の軟化はインフレを鈍化させるが、企業と家計に痛みをもたらすことにもなる」、「9月会合の決定は、入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される」 株式市場は全面安となり、NYダウは1000ドルを超える下げに。長期金利が上昇し、ドル円は137円75銭までドル高に。
8/26 シュナーベル・ECB理事 「現行の物価上昇でインフレ予想が定着する可能性とコストは不快なほど高い。こうした環境では中銀は力強く行動をしなければならない。人々が法定通貨の長期的な安定性に疑問を持ち始めるリスクに対し、断固として対応する必要がある」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/26 ビルロワドガロー・仏中銀総裁 「政策当局者は後になって『不必要に厳しい』金利の動きを強いられるのを回避するため、記録的なインフレに対応する決心が必要だ」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることをコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」、「インフレを抑制する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」 --------
8/18 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「われわらは政策金利を少なくとも中立水準の3%をやや上回る水準に政策金利を引き上げる必要があるが、恐らく年内に景気抑制的な領域である3%をやや上回る水準に、来年には3%をさらにやや上回る水準とする必要性がありそうだ」、「利上げ後は水準を維持するという戦略は、歴史的に見ても奏功してきたと考えている」 --------
8/10 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「インフレは依然として高水準にあり、われわれの物価安定目標にはほど遠い」、「高水準にあるインフレとの闘いで米金融当局が勝利宣言するのは時期尚早だ」と語っています。また9月のFOMCについては、「9月に0.5ポイントの利上げが自身の基本シナリオだ」 --------
8/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレ上振れのサプライズが続くのであれば、米金融当局として高めの金利を長期にわたり維持する用意がある」、「インフレ率が鈍化しつつあるのなら、その間に金利を高めに維持することができると考えられる」(それもって)、「インフレ率がピークに達したと主張するには時期尚早だ」 --------
8/5 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレを抑制するという点で金融当局が役割を果たしたと言える状況からはまだ遠い」、(9月会合で50ベーシスポイントの利上げが実施される可能性について問われ)、「もちろんだ。だがデータに基づく姿勢を取る必要がある」、「考え方をオープンにしておく必要がある。インフレ指標がさらに2つ、雇用統計もあと1回発表される」 --------
8/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が明白に低下するまでは先月決めた0.75ポイント利上げと同様の大幅な利上げを検討し続けるべきだ」、「現在進めているような利上げが適切だと予想しているが、データや状況がどのように展開するかについては不確実性を踏まえ、そうした情報を指針としてどの程度の利上げが必要かを判断する」 --------
8/4 メスター・クリーブランド連銀総裁 「米金融当局はインフレ抑制にコミットしており、需要を緩和するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要がある」、(9月の利上げ幅について)「0.75ポイントは不合理ではないものの、0.5ポイントもあり得る」 --------
8/4 ベイリー・BOE総裁 「ポンドの下落は今のところ危機ではない」、「景気見通しを見極めるため政策当局は為替を含むあらゆる指標を注視している」 --------
8/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 (9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について)「50ベーシスポイントが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、75bpでも問題ないかもしれない」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
8/2 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレははるかに高すぎる。われわれは物価安定の達成をなお強く決意しており、完全に団結している。物価安定は9.1%のインフレではなく、2%に近いインフレを意味する。従って、道のりはまだ長い」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和