今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FOMCでの大幅利上げ懸念広がる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円はじり高となりNYでは143円92銭まで買われる。米長期金利が一段と上昇するなど、FOMCの結果に備える動きが顕著に。
  • ユーロドルでもドル高が進み、0.9956まで下げる。
  • 株式市場は3指数が揃って反落。ダウは一時500ドルを超える下げを見せるなど、全面安の展開。
  • 債券は続落。長期金利は一時3.60%まで上昇し、連日2011年4月以来となる高水準を付ける。
  • 金は続落し先週記録した安値を下回る。原油は大幅に反落し84ドル台に。
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8月住宅着工件数 → 1575千件
8月建設許可件数 → 1517千件
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ドル/円 143.51 〜 143.92
ユーロ/ドル 0.9956 〜 0.9999
ユーロ/円 143.02 〜 143.70
NYダウ −313.45 → 30,706.23ドル
GOLD −7.10 → 1,671.10ドル
WTI −1.28 → 84.45ドル
米10年国債 +0.073 → 3.563%

本日の注目イベント

  • 米 8月中古住宅販売件数
  • 米 FOMC 政策金利発表
  • 米 パウエル議長記者会見

本日のコメント

ワシントンではFOMCが始まり、明日の朝方3時には政策金利が発表されます。市場は明日の発表を前に大幅利上げに対する構えをさらに加速させ、各金融市場では下落に備える動きが顕著になった1日でした。

債券市場では安全資産の債券がさらに売られ、10年債利回りは一時3.6%台に達しました。米金利高を手掛かりにドル高が進み、ドル円は143円92銭まで買われ、ユーロドルも0.99台半ばまで売られています。金利高に弱い金価格も続落し1671ドルまで売られ、大幅利上げを見越した動きと捉えられます。一方、株式市場もほぼ全面安の展開となり、ダウは再び3万1000ドルの大台を割り込んでいます。今回の会合での利上げは0.75ポイントと予想していますが、昨日のNYの金融市場全体を見渡すと「1ポイントの利上げ」もないとは言えないのかもしれません。0.75ポイントの利上げ幅は依然として維持していますが、投資家としては、「1ポイント」の可能性も意識しておくべきなのかもしれません。また仮に0.75ポイントだったとしても、その後のパウエル議長の会見では、ハト派姿勢を前面に出し、データ次第としながらも今後もインフレ抑制に向け全力で立ち向かう趣旨のコメントが予想されます。昨日、スウェーデン中銀が政策金利を1ポイント引き上げることを発表しています。0.75%から1.75%へと大幅に引き上げ、約30年ぶりの大幅利上げでした。世界の中銀が利上げに踏み切る中、1ポイント利上げの先陣を切った格好になっています。

著名エコノミストのヌリエル・ルービニ氏は20日のインタビューで、「ごく普通のリセッションでさえ、S&P500は30%下げる可能性がある」とした上で、自身が予想する「真のハードランディングが実際に起きた場合は、同指数の下落は40%に達し得る」との見方を示し、米国は長く、厄介なリセッション入りする可能性が高いことを予想しています。同氏は2008年の金融危機を正確に予想したことで知られており、「破滅論者」との異名を取っています。(ブルームバーグ)

20日には日本の8月の消費者物価指数(CPI)も発表されました。生鮮食品を除く総合指数は前年同月比「2.8%」と、高水準でしたが、米国の「8.3%」、ユーロ圏の「9.1%」に比べ上昇率はまだ3分の1程度で、世界でも稀にみる「低インフレ率」と言えます。もっとも長い間デフレが続いた日本では、それでも30年11カ月ぶりの「高インフレ」ということになります。今後もこの傾向が続けば、日銀による金融緩和策の解除にもつながり、円安を止めることが出来るかもしれませんが、日銀は「年内は2〜3%くらいまで上昇するが、2023年春以降には再び1.5%程度まで低下する」と予想しており、だから、「金融緩和策の継続は適切」との立場を維持しています。実際にこの予想通りになったら、世界中でインフレ観測が異常なくらい高まり、各国中銀がその対策に苦慮する中、日銀は極めて冷静で、優れた先見性というか洞察力を持っていたことになり、世界から称賛されることになります。

バイデン大統領は18日に放送されたCBSの番組「60ミニッツ」とのインタビューで、北京冬季オリンピックが開幕した2月4日に北京で習氏がロシアのプーチン氏と会談した直後に習氏に電話したと述べています。バイデン氏は習氏に対し、「対ロシア制裁に違反する行動を取れば、大きな間違いになる」と警告していたことを明らかにしました。電話会談がいつ行われたかは明らかにしていませんが、北京冬季オリンピック後の2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始したことを考えると、その直後に行われたとみられ、中国が武器の供与を含むロシアへの援助を行うことをけん制したものとみられます。

本日はFOMCの結果発表を前に動きにくいかと思われますが、発表前にポジションの整理による動きも想定されます。

ドル円は142円50銭〜146円程度としますが、予想しにくい状況であまり参考にはなりません。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
9/17 スティーブン・シュワルツマン、ブラックストーンCEO 「不況なしでインフレ率2%を達成することは難しい」、「米経済はまだ強い」、「2%達成にこだわれば、大幅な利上げの継続を迫れ、景気後退に陥るとみられ」一方、「3〜4%程度のインフレ水準を容認する方針に転換すれば、不況は避けられるかもしれない」 --------
9/12 シュナーベル・ECB理事 (インフレ率を目標の2%に戻すために)、「今後数回の政策委員会会合で追加利上げをすることになるだろう」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/12 シクルーナ・マルタ中銀総裁 「今回が唯一の利上げではない。あと数回あるだろう」、「0.75ポイントの利上げ幅はECBにとって標準となるわけではない」 ユーロドル1.01台前半から1.02台目前まで上昇。
9/9 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 「米インフレ率は依然として高すぎ、米金融当局には金融緩和の解除を継続する単純明快な理由がある」、「重要な問いは、それをどの程度、どれだけ早く実施していくかだ」 --------
9/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「75bpの方向に傾いたところ、先週2日に発表された雇用統計の数字はまずまず良好だった」、(来週発表される消費者物価指数(CPI)でインフレ抑止の進展が示される可能性はあるが)、「単一のデータに次回会合で決定を左右させるわけにはいかない。従って、現時点では75bpへの傾斜をより強めているところだ」、「私の考えでは、実施は早ければ早いほど良い傾向にある」 --------
9/9 ウォラー・FRB理事 「インフレはあまりに高すぎる水準にあり、インフレが下方向に意味ある形で持続的に推移しつつあるかどうか判断するのは時期尚早だ」、「政策金利が明確に需要を抑制する水準になるよう、9月20−21日の次回会合で大幅な利上げを支持する」 --------
9/8 ECB声明文 「この大きな一歩は現在の極めて緩和的な政策金利水準からインフレ率を適切な時期に目標の2%に戻す金利水準への移行を前倒ししたものだ」、「今後数回の会合でさらなる利上げを想定している」 --------
9/8 ラガルド・ECB総裁 「断固とした行動を取る必要があった」、「会合ごとに見直す指標が大幅な利上げが必要だと示唆するなら、そうするだろう」(利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかとの質問には)、「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」 --------
9/7 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策に関する自身の考えを構築するにあたっては、インフレというけだものとの闘いで尚早に勝利宣言しないよう注意したい」、「フェデラルファンド(FF)金利を早い時期に4%超に引き上げ、その後しばらくその水準で据え置くことが必要」 --------
9/7 コリンズ・ボストン連銀総裁 「9月の金融政策行動として何がまさしく適切かあまり具体的に言及するのは時期尚早だが、さらなる行動が必要だとあらためて申し上げたい」、「物価はまだ大幅には下がっておらず、われわれはこれを目指すことになる」 --------
9/7 ブレイナード・FRB副議長 「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」、「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」、「引き締めサイクルにおける迅速さとそのグローバルな性質、さらに金融環境引き締めの効果が総需要に行き渡る速さを巡る不透明感は、過度の引き締めに関連したリスクを生み出す」、「時期尚早に退くリスクを回避することも重要だ」 株高、債券高が進み、ドル円は145円前後から143円台半ばへ下落。
8/31 メスター・クリーブランド連銀総裁 「来年の早い時期までフェデラルファンド(FF)金利を4%をいくらか上回る水準に引き上げて、そこで維持する必要があるというのが私の現在の認識だ」とし、「当局が来年FF金利の誘導目標を引き下げるとは、私は見込んでいない」 株式、債券、金、原油が売られ、ドル円は上昇。
8/30 バレス・スロべニア中銀総裁 「7月に実施した0.5ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを、来週の政策委員会で支持する」 --------
8/30 ミュラー・エストニア中銀総裁 「インフレ見通しが改善していないことを踏まえると、0.75ポイントは9月の選択肢の一つに入るだろう」 --------
8/30 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「今後の指標がインフレの鈍化が始まったことを明確に示すようなら、利上げ幅をここ最近の75bpから巻き戻す理由になるかもしれない」、「どんなデータが出て来るか見極める必要がある」 --------
8/30 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に戻すことをコミットしており、そのため必要な措置を講じる。金融当局が物価抑制に向けた取り組みでひるむことはない」 --------
8/30 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「いくらか景気抑制的な政策を講じて需要を減速させる必要があり、まだそこには到達していない」、(9月のFOMCでの利上げ幅はデータの全体像次第だとしながらも)、「抑制的な水準の維持は2023年末まで続く可能性がる」 株安、ドル高につながる。
8/29 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「パウエル議長のジャクソンホールで講演の受け止め方を見て、嬉しく思う」、「インフレ率を2%まで押し下げるというわれわれの決意の真剣さが理解された」、「前回のFOMC後の株価上昇については素直に喜べなかった。インフレを引き下げるわれわれの決意の固さを認識し、市場はそれについて思い違いをしていると思っていたからだ」、「1970年代に当局が犯した最大の過ちの一つはインフレが鎮静化に向うと思ったことだ。経済は悪化していたため手を緩めたところインフレは再燃し、その後、ようやく制圧した。この過ちを繰り返してはならない」 --------
8/26 パウエル・FRB議長 「物価の安定を回復するためには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い。過去の記録は早急過ぎる政策緩和を強く戒めている」、「金利上昇と成長減速、労働市場環境の軟化はインフレを鈍化させるが、企業と家計に痛みをもたらすことにもなる」、「9月会合の決定は、入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される」 株式市場は全面安となり、NYダウは1000ドルを超える下げに。長期金利が上昇し、ドル円は137円75銭までドル高に。
8/26 シュナーベル・ECB理事 「現行の物価上昇でインフレ予想が定着する可能性とコストは不快なほど高い。こうした環境では中銀は力強く行動をしなければならない。人々が法定通貨の長期的な安定性に疑問を持ち始めるリスクに対し、断固として対応する必要がある」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/26 ビルロワドガロー・仏中銀総裁 「政策当局者は後になって『不必要に厳しい』金利の動きを強いられるのを回避するため、記録的なインフレに対応する決心が必要だ」 ユーロドル、1,00台後半から0.99台半ばへ。
8/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることをコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」、「インフレを抑制する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」 --------
8/18 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「われわらは政策金利を少なくとも中立水準の3%をやや上回る水準に政策金利を引き上げる必要があるが、恐らく年内に景気抑制的な領域である3%をやや上回る水準に、来年には3%をさらにやや上回る水準とする必要性がありそうだ」、「利上げ後は水準を維持するという戦略は、歴史的に見ても奏功してきたと考えている」 --------
8/10 デーリー・SFシスコ連銀総裁 「インフレは依然として高水準にあり、われわれの物価安定目標にはほど遠い」、「高水準にあるインフレとの闘いで米金融当局が勝利宣言するのは時期尚早だ」と語っています。また9月のFOMCについては、「9月に0.5ポイントの利上げが自身の基本シナリオだ」 --------
8/9 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレ上振れのサプライズが続くのであれば、米金融当局として高めの金利を長期にわたり維持する用意がある」、「インフレ率が鈍化しつつあるのなら、その間に金利を高めに維持することができると考えられる」(それもって)、「インフレ率がピークに達したと主張するには時期尚早だ」 --------
8/5 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレを抑制するという点で金融当局が役割を果たしたと言える状況からはまだ遠い」、(9月会合で50ベーシスポイントの利上げが実施される可能性について問われ)、「もちろんだ。だがデータに基づく姿勢を取る必要がある」、「考え方をオープンにしておく必要がある。インフレ指標がさらに2つ、雇用統計もあと1回発表される」 --------
8/5 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が明白に低下するまでは先月決めた0.75ポイント利上げと同様の大幅な利上げを検討し続けるべきだ」、「現在進めているような利上げが適切だと予想しているが、データや状況がどのように展開するかについては不確実性を踏まえ、そうした情報を指針としてどの程度の利上げが必要かを判断する」 --------
8/4 メスター・クリーブランド連銀総裁 「米金融当局はインフレ抑制にコミットしており、需要を緩和するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要がある」、(9月の利上げ幅について)「0.75ポイントは不合理ではないものの、0.5ポイントもあり得る」 --------
8/4 ベイリー・BOE総裁 「ポンドの下落は今のところ危機ではない」、「景気見通しを見極めるため政策当局は為替を含むあらゆる指標を注視している」 --------
8/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 (9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について)「50ベーシスポイントが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、75bpでも問題ないかもしれない」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
8/2 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 「インフレははるかに高すぎる。われわれは物価安定の達成をなお強く決意しており、完全に団結している。物価安定は9.1%のインフレではなく、2%に近いインフレを意味する。従って、道のりはまだ長い」 債券が急落し、長期金利は2.54%台から2.77%まで急騰。ドル円は130円台半ばから133円台前半まで上昇。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和