今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円130円割れから132円台後半に急伸」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 欧州市場の朝方には130円を割り込んだドル円はNYで急伸。FOMC議事録の内容や地区連銀総裁の論文、さらには労働市場の堅調さを示す指標にドル円は132円71銭まで上昇。
  • ユーロドルは再び1.06を挟む水準まで値を戻す。
  • 株式市場はFOMC議事録の内容に反応し売られたが、引けにかけては買い戻しが活発となり3指数は揃って上昇。
  • 債券は続伸。長期金利は3.68%台に低下。
  • 金は続伸し1859ドル台に。原油は大幅に続落し、昨年12月半ば以来となる72ドル台まで下落。
*************************
12月ISM製造業景況指数 → 48.4
12月自動車販売台数 → 1331万台(年率換算)
*************************
ドル/円 130.95 〜 132.71
ユーロ/ドル 1.0581 〜 1.0628
ユーロ/円 138.60 〜 140.76
NYダウ +133.40 → 33,269.77ドル
GOLD +12.90 → 1,859.00ドル
WTI −4.09 → 72.84ドル
米10年国債 −0.056 → 3.683%

本日の注目イベント

  • 日 12月マネタリーベース
  • 中 12月財新サービス業PMI
  • 独 独11月貿易収支
  • 独 独11月経常収支
  • 欧 ユーロ圏11月卸売物価指数
  • 米 12月ADP雇用者数
  • 米 11月貿易収支
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 12月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値)
  • 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議冒頭で挨拶
  • 加 カナダ11月貿易収支

本日のコメント

新しい年になってまだ3日目の取引ですが、昨日の海外市場でもドル円は大きな値動きを見せました。東京市場では131円台が重く、ドルがジリジリと売られる展開となり、欧州時間の朝方には130円を割り込み、129円92銭前後までドル安が進みました。このままNYでも上値の重い展開が予想されましたが、一転してドル買いが強まり、大台を二つ替えながら132円71銭までドル高が進みました。米長期金利が前日に続き低下する中、やや想定外の動きでした。

きっかけは、12月のFOMC議事録の内容でした。12月の会合では、それまで4会合連続で0.75ポイントという大幅な利上げを実施してきましたが、0.5ポイントの利上げに抑え、利上げペースを減速させた会合でした。市場ではその後、2023年には「利下げ」を予想する声も一部に出るなど、市場全体がハト派寄りにシフトする契機にもなった会合でした。議事録では、「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」と記されており、先走る市場をけん制する内容でした。ただこの内容は決して唐突なものではなく、12月会合後の会見でパウエル議長は、「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」とし、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」と述べ、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」と、議事録の内容に沿う発言を行っていました。(参照:12月15日付け、今日のアナリストレポート)議長の発言自体、タカ派的なものでした。

昨日はさらにミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の小論文もドル買い円売りに拍車をかけました。同総裁はミディアム・ドット・コムに4日掲載された論文で、「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」と指摘し、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」とし、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」と説明しています。(ブルームバーグ)同総裁は今年のFOMCで投票権を持つことから、このタカ派寄りの論文がより影響した可能性もあります。

またこの日発表された11月の求人件数が、前月よりは減少していたものの、市場予想を上回り、引き続き高水準を維持していたことで、労働市場の堅調さが意識され、明日発表される12月の雇用統計にもポジティブなイメージを与えたようです。FRBが昨年3月から全ての会合で利上げを実施して来たことにより、発表される多くの経済指標では、住宅関連指標に代表されるように「鈍化傾向」が明らかになっています。しかし、最後の砦と言うべき「労働市場」だけが、人手不足を背景に好調さを維持しています。FRBは失業率が上昇してでも景気の拡大を抑制する姿勢を鮮明にしています。もともと「雇用統計」は重要経済指標の一つですが、今年はその動向が「消費者物価指数」と並んで、一段と注目されそうです。グリーンスパン元FRB議長は、同氏がアドバイザーを務める投資会社のウェブサイトで、「最近2回の月間統計で消費者物価の減速が示されたものの、少なくとも軽度のリセッションを回避するのに十分なほどの当局の方針転換を保証するものでないと思う」と述べ、「米国のリセッションは最も可能性の高い結果だ」との認識を示しました。米景気が春から夏にかけてリセッション入りする可能性は非常に高く、問題はそれが軽度のものに終わるのか、それともかなり深いものになるのかが焦点とも言えます。いずれ、米国のリセッション入りが市場の大きな材料となるタイミングが来ると予想しています。従ってドルの上値は限定的かと思いますが、昨日の様なこともあり、断定的な判断は避けなければなりません。

本日のドル円は131円〜133円程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」 FOMC議事録とともに、ドル円を132円台後半まで押し上げる。
1/4 FOMC議事 「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」 ドル円131円台から132円台後半まで上昇。
1/3 ゲオルギエワ・IMF専務理事 世界経済にとって)「厳しい年になり、昨年を上回る厳しさになる」、(その理由として)「米国、欧州連合(EU)、中国の三大経済がそろって同時に減速するからだ」 --------
12/27 デギンドス・ECB副総裁 「ユーロ圏は非常に厳しい経済状況に直面している」、「個人も企業も賢明な姿勢になり長期的視点に焦点を絞ることが非常に重要だ」、「短く浅いリセッションに見舞われた後、4−6月期(第2四半期)には再びプラス成長になる」 --------
12/20 黒田・日銀総裁 「利上げではない」、(このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由質問され)、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」、「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」 長期金利の変動幅を0.5%に拡大したことで、ドル円は東京時間で137円台前半から133円台前半に急落。NYでは130円58銭までドル安が進む。欧米など債券の大きく売られ金利が上昇。
12/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」 --------
12/16 デーリー・SF連銀総裁 「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」 --------
12/16 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」 株価が大きく売られる。
12/15 ラガルド・ECB総裁 (今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを)「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」 ユーロドル1.06台半ばから100ポイント程上昇。
12/14 パウエル・FRB議長 「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」 タカ派的な内容と受け止められ、株と債券が大きく売られ、金利が上昇したことでドル円は135円近辺から136円手前まで急上昇。
12/14 FOMC声明文 「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」 --------
12/2 サマーズ・元財務長官 「インフレ抑制の道のりは長い。金融当局は市場が現在判断し、当局者が今発言しているよりも一段の利上げが必要になると思う」、「6%がわれわれが書くことができるシナリオだ。5%は最善の予測ではない」 --------
12/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 「FF金利の引き上げペースは減速する可能性が高いが、ピークの金利水準は恐らく若干高めになりそうだと」、「インフレ率は極めて高い。当局目標の2%に下げるため、われわれは金融環境を適度に景気抑制的水準にする途上にある」 --------
12/1 ボウマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」 ドル円がさらに下落する一要因に。ドル円136円台半ば→135円台前半に。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和