「ドル円130円台半ばまで上昇後反落」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は欧州市場でのドル高の流れを受け朝方に130円62銭の高値を付けたがその後反落。黒田総裁のダボス会議での発言が重しとなり、129円45銭まで売られる。
- ユーロドルは引き続き堅調に推移。次回会合で0.5〜0.75ポイントの利上げ観測が支えに。
- 株式市場は3指数が揃って大幅高に。大きく売られたダウは330ドル上昇し、ナスダックも大幅高に。
- 債券は続落。長期金利は3.47%台に上昇。
- 金と原油は続伸。
12月中古住宅販売件数 → 402万件
*******************
ドル/円 | 129.45 〜 130.62 |
---|---|
ユーロ/ドル | 1.0803 〜 1.0858 |
ユーロ/円 | 140.46 〜 141.20 |
NYダウ | +330.93 → 33,375.49ドル |
GOLD | +4.30 → 1,928.20ドル |
WTI | +0.98 → 81.31ドル |
米10年国債 | +0.088 → 3.479% |
本日の注目イベント
- 日 日銀金融政策決定会合、議事要旨(12月19日、20日分)
- 欧 ユーロ圏1月消費者信頼感指数(速報値)
- 欧 ラガルド・ECB総裁講演
- 米 12月景気先行総合指数
本日のコメント
ドル円はNY市場の朝方には130円62銭まで上昇しましたが、その後は129円台半ばまで押し戻されています。先週水曜日には3.3%台まで低下した米長期金利が3.47%台まで上昇したものの、ダボス会議でパネル討論会に出席した黒田総裁が、持続的なインフレを実現するために金融緩和を続ける自身の決意は揺るぐことはないとの考えを示したことで、日銀の政策変更観測が後退し、ドル売りにつながっています。先週末に発表された日本の12月の全国CPIは「4.0%」と、先行して発表されていた東京都の同指数と一致し、1981年以来、実に41年ぶりの高水準でした。それでも日銀は春以降には1.5%程度に向ってインフレ率は減速するとの見方を変えておらず、金融緩和姿勢を維持しています。岸田首相は昨日のテレビ番組で総裁人事に触れ、「新総裁は4月時点の経済状況をしっかり考えた上で誰がふさわしいかをこれから判断していかなければならない。まずは人選。人は代わる」と述べ、新総裁人事を進めていることを明らかにしています。黒田総裁の任期は4月8日に満了を迎えます。
FRBのウォラー理事は今月31日−2月1日に開催されるFOMCでは利上げ幅を再度縮小することを支持する考えを示しました。ウォラー理事はNYでの講演で、「現時点においては、今月末の次回FOMC会合では25ベーシス・ポイントの利上げを支持する」と発言し、「それ以降については、当局の2%インフレ目標に向け、まだかなりの道のりがある。金融引き締めの継続を支持する見通しだ」と話しています。(ブルームバーグ)すでに多くのFOMCメンバーが「さらなる利上げペースの縮小」に言及しており、次回FOMCでの利上げ幅は「0.25ポイントで当確」といったところでしょう。こうなると焦点は、パウエル議長の会見での発言に集まります。ここで議長が、今後のインフレ率の低下傾向に楽観的な考えを示すのかどうかという点が鍵になります。昨年6月には「9.1%」まで上昇した米CPIは12月には「6.5%」まで低下してきました。急激な利上げに、景気抑制効果が確実に出てきているとみられますが、それでもまだFRBの物価目標の3倍以上にあたるインフレ率です。パウエル議長が楽観的な見通しを示す可能性は低いとみています。
中国の春節が始まり、この間に21億人の人口が移動すると言われていますが、中国疾病予防コントロールセンターは21日、春節連休を控えた今月13−19日に、医療機関で新型コロナウイルス感染症に関連した死者が1万2658人に上ったと発表しました。また、同センターの疫学主席専門家の、呉尊友氏によれば、今回の感染拡大で全人口の約80%がコロナに感染したとの見方を示しています。中国の昨年末の人口は約14億1000万人であることから、80%が感染したとすれば、11億人余りが感染した計算になり、膨大な数になります。呉氏は、「春節連休の移動で一部地域では感染が増える可能性があるが、今後2、3カ月で全国的に大規模感染や第2波感染が起きる可能性は極めて低い」と指摘しています。
現時点では最新鋭といわれているドイツ製戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与を巡り、ドイツのピストリウス国防相は、「NATO同盟国と合意できれば速やかに動くことは可能だ」と述べていますが、ドイツ国内にはNATOとロシアの全面戦争となる可能性のある事態は避けるべきとの意見も強く、結論は出ていません。一方ウクライナの国防相は、同国の軍がレオパルト2の訓練を近くポーランドで受けることを発表し、「大きな前進だ」と語っています。リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国はドイツに対し、レオパルト2のウクライナへの供与を呼びかけており、「ドイツには欧州の大国として、この件に関して特別な責任がある」と、リトアニアの外相は述べています。マスコミは「ウクライナ情勢は新たな段階に入った」と伝えており、侵攻1年を前に空中戦から地上戦に移る可能性を指摘しています。
本日のドル円は128円50銭〜130円50銭程度を予想します。今週は米企業の決算発表が本格化し、週末にはPCEデータが発表されます。
佐藤正和の書籍紹介
これだけ! FXチャート分析 三種の神器 |
チャートがしっかり読めるようになるFX入門 |
What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
---|---|---|---|
1/20 | ウォラー・FRB理事 | 「現時点においては、今月末の次回FOMC会合では25ベーシス・ポイントの利上げを支持する」と発言し、「それ以降については、当局の2%インフレ目標に向け、まだかなりの道のりがある。金融引き締の継続を支持する見通しだ」 | -------- |
1/19 | コリンズ・シカゴ連銀総裁 | 「政策金利が景気を抑制する領域に入り、最新の指標に基づくとピークに近づいている可能性が示唆された現在、当初の急速な引き締めペースをより緩やかな速度にシフトしたのは適切だと考える」 | 株価の下落につながる |
1/19 | ブレイナード・FRB副議長 | インフレは最近緩やかになったものの、依然として高い水準にあり、これが持続的なペースで2%に下がることを確実にするためには、十分に抑制的な金融政策をしばらく続ける必要があるだろう」 | 株価の下落につながる |
1/18 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今年は数回の利上げがあると私はみているが、75ベーシス・ポイント利上げの時期が過ぎたことは確かだろうと思う。私の見解では、今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」 | -------- |
1/18 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「ペース減速はまさに最善の決定を確実に行うための方法だ」とし、「われわれは利上げペースが減速したとしても金融状況を景気抑制的に保つため全体的な政策戦略を調整することができ、必要なら調整すべきだ」 | -------- |
1/18 | ブラード総裁・セントルイス連銀総裁 | 「あと少しで景気抑制的と呼び得る領域に入る状況だが、まだそこには達してはいない」、(インフレ率が2%目標へと確実に低下することを考えており)、「その点では、ためらいたくはない」 | -------- |
1/18 | 黒田・日銀総裁 | 「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」 | 決定会合で「現状維持」を決めたことと相まって、ドル円は127円台半ばから131円58銭まで急騰。 |
1/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ鈍化に向けて取り組む中で、より慎重にかじを切るのが理にかなう」、「鈍化しつつあるものの、依然として高すぎる」 | -------- |
1/12 | ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 | 「今年はあと数回の利上げを実施する見通しだが、私の考えでは一度に75ベーシスポイント引き上げる局面は確実に過ぎ去った」と発言し、「私の見解では、この先は25bpの利上げが適切になる」 | -------- |
1/11 | コリンズ・ボストン連銀総裁 | 「25(ベーシスポイント)ないし、50が妥当だろう。私自身は現時点で25に傾いているが、あくまでもデータ次第だ」とし、「われわれは利上げを停止する水準に近づいており、ゆっくりと調整することで、毎回の判断を下す前に入手する情報を精査する時間が増える。より小幅な変更を行うことで、われわれの柔軟性は高まる」 | 株価上昇に一役。 |
1/10 | ダイモン・JPモルガンCEO | 「現在の想定を上回る水準までFRBは金利を引き上げる必要があるかもしれない」ただ、5%程度という現在の予想については、「私は、十分ではないのでないかと考える方だ。3カ月か6カ月待ってみることに害はないと思う」 | -------- |
1/10 | ボウマン・FRB理事 | 「過去数カ月に一部インフレ指標で減速が見られたが、われわれにはやるべき仕事がまだ多く残っている。従って、FOMCは12月会合後に表明した通り、金融引き締めに向けて利上げを続ける見通しだ」 | -------- |
1/10 | パウエル・FRB議長 | 「高インフレの状況で物価の安定を取り戻す上で、短期的に『支持されない措置』が必要となることもあり得る」 | -------- |
1/9 | デーリー・サンフランシスコ連銀 | 「政策金利は最終的に5%を幾分上回る水準まで引き上げられる」と述べ、「ただ、利上げ終着点の具体的な水準は不明で、今後発表されるインフレ統計次第だ」 | 株と債券が買われ、ドル円は下落。 |
1/9 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」、「経済から過剰な需要を取り去るため政策金利を5−5.25%に引き上げることが正当化される」、(5%超の政策金利を維持する期間につては)「長期だ。政策転換は考えていない。利上げを停止してその水準を維持し、政策が結果を表すのを見守るべきだ」 | 株と債券が買われ、ドル円は下落。 |
1/5 | ブラード・セントルイス連銀総裁 | 「政策金利は十分に景気抑制的と見なされ得る領域にはまだ入っていないが、それに近づきつつある」 | 株安、債券安、ドル高がやや修正される。 |
1/5 | ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 | (FF金利予測に言及し)、「私は自分の予想を5%超に引き上げた」、「インフレが当局の2%に向って説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまで、その水準に当面とどまると私はみている」、(24年になっても金利を5超で維持することが適切になるのが予測かどうか問われると)、「私にとってはそうだ」 | 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。 |
1/5 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | 発言内容:「物価圧力が緩和しつつある兆しなど、最近の報告を歓迎するが、やるべき仕事はまだ山積している。世界中の中央銀行当局者がこれに関して私と同意見であることは間違いないだろう」、「インフレを2%に戻すため、政策手段の活用を引き続き決意している」 | 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。 |
1/4 | カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 | 「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」 | FOMC議事録とともに、ドル円を132円台後半まで押し上げる。 |
1/4 | FOMC議事 | 「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」 | ドル円131円台から132円台後半まで上昇。 |
1/3 | ゲオルギエワ・IMF専務理事 | (世界経済にとって)「厳しい年になり、昨年を上回る厳しさになる」、(その理由として)「米国、欧州連合(EU)、中国の三大経済がそろって同時に減速するからだ」 | -------- |
12/27 | デギンドス・ECB副総裁 | 「ユーロ圏は非常に厳しい経済状況に直面している」、「個人も企業も賢明な姿勢になり長期的視点に焦点を絞ることが非常に重要だ」、「短く浅いリセッションに見舞われた後、4−6月期(第2四半期)には再びプラス成長になる」 | -------- |
12/20 | 黒田・日銀総裁 | 「利上げではない」、(このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由質問され)、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」、「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」 | 長期金利の変動幅を0.5%に拡大したことで、ドル円は東京時間で137円台前半から133円台前半に急落。NYでは130円58銭までドル安が進む。欧米など債券の大きく売られ金利が上昇。 |
12/16 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | 「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」 | -------- |
12/16 | デーリー・SF連銀総裁 | 「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」 | -------- |
12/16 | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」 | 株価が大きく売られる。 |
12/15 | ラガルド・ECB総裁 | (今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを)「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」 | ユーロドル1.06台半ばから100ポイント程上昇。 |
12/14 | パウエル・FRB議長 | 「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」 | タカ派的な内容と受け止められ、株と債券が大きく売られ、金利が上昇したことでドル円は135円近辺から136円手前まで急上昇。 |
12/14 | FOMC声明文 | 「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」 | -------- |
12/2 | サマーズ・元財務長官 | 「インフレ抑制の道のりは長い。金融当局は市場が現在判断し、当局者が今発言しているよりも一段の利上げが必要になると思う」、「6%がわれわれが書くことができるシナリオだ。5%は最善の予測ではない」 | -------- |
12/2 | エバンス・シカゴ連銀総裁 | 「FF金利の引き上げペースは減速する可能性が高いが、ピークの金利水準は恐らく若干高めになりそうだと」、「インフレ率は極めて高い。当局目標の2%に下げるため、われわれは金融環境を適度に景気抑制的水準にする途上にある」 | -------- |
12/1 | ボウマン・FRB理事 | 「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」 | ドル円がさらに下落する一要因に。ドル円136円台半ば→135円台前半に。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書