今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円130円台で底堅く推移」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 東京市場では129円台前半まで売られたドル円は上昇し、NYでは130円88銭前後まで反発。リスクオンの流れから長期金利が上昇したことでドル円はしっかり。
  • ユーロドルは1.08台で堅調に推移。ECBによる引き締め政策の継続観測が支えに。
  • 株式市場は3指数が揃って続伸。S&P500は4000ポイントの大台を回復し、ナスダックも大幅高。
  • 債券は3日続落。長期金利は3.51%台に上昇。
  • 金と原油は小幅に反落。
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12月景気先行総合指数 → −1.0%
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ドル/円 130.23 〜 130.88
ユーロ/ドル 1.0846 〜 1.0877
ユーロ/円 141.58 〜 142.06
NYダウ +254.07 → 33,629.56ドル
GOLD −0.40 → 1,928.60ドル
WTI −0.02 → 81.62ドル
米10年国債 +0.031 → 3.510%

本日の注目イベント

  • 豪 豪12月NAB企業景況感指数
  • 独 独2月GFK消費者信頼調査
  • 独 独1月サービス業PMI(速報値)
  • 独 独1月総合PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月製造業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月サービス業PMI(速報値)
  • 欧 ユーロ圏1月総合PMI(速報値)
  • 米 1月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
  • 米 1月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
  • 米 1月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)
  • 米 1月リッチモンド連銀製造業景況指数
  • 米 企業決算 → GE、3M、ロッキード、J&J、マイクロソフト、ベライゾン

本日のコメント

昨日の東京時間昼頃には129円04銭辺りまで売られたドル円はその後上昇に転じ、NYでは長期金利の上昇もあり、130円88銭前後までドルが反発しています。131円台を前に上昇の勢いは止められた格好でしたが、先週末のNYで付けた、130円62銭の高値を抜いています。NY株式市場では連日株価の大幅高が続き、「リスク資産の株が買われたことで、安全資産の債券が売られる」展開が続いています。言い換えれば、「リスクオン」の流れが強まり円が売られ、ドル円が上昇しているとみられます。昨日はマイクロソフトなどが上昇していますが、このところIT企業の人員削減が相次ぎ発表されたことが好感され、株価の上昇につながっている面もあります。

先週後半からは、ドル円が128円台から130円台で底堅い動きを続けていたことで、「日足」チャートではやや変化が出て来ました。昨年10月21日に記録した151円94銭の高値を起点として11月4日の高値、さらには今年1月12日の高値を結んだトレンドラインは抵抗線として機能しており、ドルの上昇を抑えてきましたが、昨日のドル高によってこの線を上抜けしています。日足の「レジスタンス・ライン」を上抜けしたことで、ここから見る限り「短期的にはドルが底を打って上昇に転じるシグナル」の可能性があります。もちろん、このラインの上抜けだけで必ずドル高に転じると判断することは危険です。テクニカル指標に「だまし」はつきもので、今回の上抜けも「だまし」であって今後数日して再び下落に転じる可能性もないとは言えません。また、「MACD」を見ても、上昇を示唆するゴールデン・クロスを点灯させています。ただし、「MACDとシグナル」の両線は依然として「マイナス圏」で推移しており、「ゼロの軸」を越えていない点には注意が必要です。「一目均衡表」では、まだ「日足」での雲抜けにはかなり距離がありますが、短い「120分足」では雲抜けを完了しています。これらを総合して勘案すれば、「短期的にはドルが上昇トレンドに入っているものの、依然として中長期トレンドではドル安の流れは変わっていない」ということでしょう。従って、ドルの下落を見込んでいる「ドルベア」スタンスの人であれば、注意が必要だということです。チャートの「足」は短ければ短いほど早くサインを出します。重要なのは、どの足に変化が出たら、ポジションの入れ替え、あるいは手仕舞いをするのかを、しっかりと決めておくことです。

ザンビアを訪問しているイエレン財務長官は記者団に、「現在目にしているのは、サプライチェーン問題の著しい緩和と在庫の増加、輸送費用の低下だ」とし、「従って、そうした部分のインフレはもはやあまり有意な形で寄与していない」と述べ、「昨年下期の物価上昇圧力に大きく寄与した住宅市場の過熱も今年半ばまでに冷めるだろう」と語っています。その上で、「向こう6カ月で、米国のインフレに対する住宅価格の押し上げはほぼなくなるはずだ。極めて有益な兆しだ」と話しています。(ブルームバーグ)確かに、米住宅市場では新築、中古を問わず昨年中盤からの鈍化傾向は鮮明です。住宅着工件数は昨年4月の「181万件」をピークに12月には「133万件」にまで減少しています。また、中古住宅販売件数も昨年1月の「649万件」から12月には「402万件」と、大きく減少しています。金利上昇の影響がいち早く出る住宅市場の鈍化は当然ですが、この先賃金上昇がどこまでこの傾向に抗うのかといったところです。

本日のドル円は129円〜131円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/23 イエレン・財務長官 「現在目にしているのは、サプライチェーン問題の著しい緩和と在庫の増加、輸送費用の低下だ」、「従って、そうした部分のインフレはもはやあまり有意な形で寄与していない」、「昨年下期の物価上昇圧力に大きく寄与した住宅市場の過熱も今年半ばまでに冷めるだろう」、「向こう6カ月で、米国のインフレに対する住宅価格の押し上げはほぼなくなるはずだ。極めて有益な兆しだ」 --------
1/20 ウォラー・FRB理事 「現時点においては、今月末の次回FOMC会合では25ベーシス・ポイントの利上げを支持する」と発言し、「それ以降については、当局の2%インフレ目標に向け、まだかなりの道のりがある。金融引き締の継続を支持する見通しだ」 --------
1/19 コリンズ・シカゴ連銀総裁 「政策金利が景気を抑制する領域に入り、最新の指標に基づくとピークに近づいている可能性が示唆された現在、当初の急速な引き締めペースをより緩やかな速度にシフトしたのは適切だと考える」 株価の下落につながる
1/19 ブレイナード・FRB副議長 インフレは最近緩やかになったものの、依然として高い水準にあり、これが持続的なペースで2%に下がることを確実にするためには、十分に抑制的な金融政策をしばらく続ける必要があるだろう」 株価の下落につながる
1/18 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年は数回の利上げがあると私はみているが、75ベーシス・ポイント利上げの時期が過ぎたことは確かだろうと思う。私の見解では、今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」 --------
1/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「ペース減速はまさに最善の決定を確実に行うための方法だ」とし、「われわれは利上げペースが減速したとしても金融状況を景気抑制的に保つため全体的な政策戦略を調整することができ、必要なら調整すべきだ」 --------
1/18 ブラード総裁・セントルイス連銀総裁 「あと少しで景気抑制的と呼び得る領域に入る状況だが、まだそこには達してはいない」、(インフレ率が2%目標へと確実に低下することを考えており)、「その点では、ためらいたくはない」 --------
1/18 黒田・日銀総裁 「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」 決定会合で「現状維持」を決めたことと相まって、ドル円は127円台半ばから131円58銭まで急騰。
1/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鈍化に向けて取り組む中で、より慎重にかじを切るのが理にかなう」、「鈍化しつつあるものの、依然として高すぎる」 --------
1/12 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年はあと数回の利上げを実施する見通しだが、私の考えでは一度に75ベーシスポイント引き上げる局面は確実に過ぎ去った」と発言し、「私の見解では、この先は25bpの利上げが適切になる」 --------
1/11 コリンズ・ボストン連銀総裁 「25(ベーシスポイント)ないし、50が妥当だろう。私自身は現時点で25に傾いているが、あくまでもデータ次第だ」とし、「われわれは利上げを停止する水準に近づいており、ゆっくりと調整することで、毎回の判断を下す前に入手する情報を精査する時間が増える。より小幅な変更を行うことで、われわれの柔軟性は高まる」 株価上昇に一役。
1/10 ダイモン・JPモルガンCEO 「現在の想定を上回る水準までFRBは金利を引き上げる必要があるかもしれない」ただ、5%程度という現在の予想については、「私は、十分ではないのでないかと考える方だ。3カ月か6カ月待ってみることに害はないと思う」 --------
1/10 ボウマン・FRB理事 「過去数カ月に一部インフレ指標で減速が見られたが、われわれにはやるべき仕事がまだ多く残っている。従って、FOMCは12月会合後に表明した通り、金融引き締めに向けて利上げを続ける見通しだ」 --------
1/10 パウエル・FRB議長 「高インフレの状況で物価の安定を取り戻す上で、短期的に『支持されない措置』が必要となることもあり得る」 --------
1/9 デーリー・サンフランシスコ連銀 「政策金利は最終的に5%を幾分上回る水準まで引き上げられる」と述べ、「ただ、利上げ終着点の具体的な水準は不明で、今後発表されるインフレ統計次第だ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/9 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」、「経済から過剰な需要を取り去るため政策金利を5−5.25%に引き上げることが正当化される」、(5%超の政策金利を維持する期間につては)「長期だ。政策転換は考えていない。利上げを停止してその水準を維持し、政策が結果を表すのを見守るべきだ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「政策金利は十分に景気抑制的と見なされ得る領域にはまだ入っていないが、それに近づきつつある」 株安、債券安、ドル高がやや修正される。
1/5 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 (FF金利予測に言及し)、「私は自分の予想を5%超に引き上げた」、「インフレが当局の2%に向って説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまで、その水準に当面とどまると私はみている」、(24年になっても金利を5超で維持することが適切になるのが予測かどうか問われると)、「私にとってはそうだ」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 発言内容:「物価圧力が緩和しつつある兆しなど、最近の報告を歓迎するが、やるべき仕事はまだ山積している。世界中の中央銀行当局者がこれに関して私と同意見であることは間違いないだろう」、「インフレを2%に戻すため、政策手段の活用を引き続き決意している」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」 FOMC議事録とともに、ドル円を132円台後半まで押し上げる。
1/4 FOMC議事 「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」 ドル円131円台から132円台後半まで上昇。
1/3 ゲオルギエワ・IMF専務理事 (世界経済にとって)「厳しい年になり、昨年を上回る厳しさになる」、(その理由として)「米国、欧州連合(EU)、中国の三大経済がそろって同時に減速するからだ」 --------
12/27 デギンドス・ECB副総裁 「ユーロ圏は非常に厳しい経済状況に直面している」、「個人も企業も賢明な姿勢になり長期的視点に焦点を絞ることが非常に重要だ」、「短く浅いリセッションに見舞われた後、4−6月期(第2四半期)には再びプラス成長になる」 --------
12/20 黒田・日銀総裁 「利上げではない」、(このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由質問され)、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」、「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」 長期金利の変動幅を0.5%に拡大したことで、ドル円は東京時間で137円台前半から133円台前半に急落。NYでは130円58銭までドル安が進む。欧米など債券の大きく売られ金利が上昇。
12/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」 --------
12/16 デーリー・SF連銀総裁 「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」 --------
12/16 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」 株価が大きく売られる。
12/15 ラガルド・ECB総裁 (今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを)「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」 ユーロドル1.06台半ばから100ポイント程上昇。
12/14 パウエル・FRB議長 「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」 タカ派的な内容と受け止められ、株と債券が大きく売られ、金利が上昇したことでドル円は135円近辺から136円手前まで急上昇。
12/14 FOMC声明文 「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」 --------
12/2 サマーズ・元財務長官 「インフレ抑制の道のりは長い。金融当局は市場が現在判断し、当局者が今発言しているよりも一段の利上げが必要になると思う」、「6%がわれわれが書くことができるシナリオだ。5%は最善の予測ではない」 --------
12/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 「FF金利の引き上げペースは減速する可能性が高いが、ピークの金利水準は恐らく若干高めになりそうだと」、「インフレ率は極めて高い。当局目標の2%に下げるため、われわれは金融環境を適度に景気抑制的水準にする途上にある」 --------
12/1 ボウマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」 ドル円がさらに下落する一要因に。ドル円136円台半ば→135円台前半に。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和