今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ユーロドル9カ月ぶりの高値に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は引き続き上値は重いもののレンジ内で推移。NYでは129円27銭まで売られる。カナダ中銀が利上げを決めたものの、今後の利上げスタンスを見極めるとの声明文が重荷になった。
  • ユーロドルは続伸し、昨年4月以来9カ月ぶりの高値となる1.0923までユーロ高が進む。独ifo景況感指数が7カ月ぶりとなる高水準だったことが材料に。
  • 株式市場は朝方にはマイナス圏で取り引きが始まったが、その後買いが優勢に。ダウはプラスで引け、他の2指数は小幅なマイナスで引ける。
  • 債券は荒っぽい動きの中、結局長期金利は小幅に低下。
  • 金は続伸し1942ドル台まで上昇。原油は横ばい。
ドル/円 129.27 〜 130.02
ユーロ/ドル 1.0865 〜 1.0923
ユーロ/円 141.00 〜 141.47
NYダウ +9.88 → 33,743.84ドル
GOLD +7.20 → 1,942.60ドル
WTI +0.02 → 80.15ドル
米10年国債 −0.009 → 3.443%

本日の注目イベント

  • 豪 豪第4四半期生産者物価指数
  • 豪 豪10−12月四半期輸入物価指数
  • 日 1月東京都区部消費者物価指数
  • 米 12月個人所得
  • 米 12月個人支出
  • 米 12月PCEデフレータ(前月比)
  • 米 12月PCEデフレータ(前年比)
  • 米 12月PCEコアデフレータ(前月比)
  • 米 12月PCEコアデフレータ(前年比)
  • 米 12月中古住宅販売成約件数
  • 米 1月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
  • 米 企業決算 → アメックス

本日のコメント

ドル円は上値を切り下げ、NYでは129円27銭まで売られる場面もありました。カナダ中銀の声明文が重しとなり、FRBも近いうちに引き締め政策を停止するのではとの観測がドルを押し下げたようです。ただ、現時点では引き続き127円台前半から131円台でのレンジ内で推移しています。「レンジ」と言っても、値幅はそこそこあるため、取引が細ることはない印象です。来週行われるFOMC会合に向けて、どのようなポジションで臨むのか、調整期間といった様子です。2月1日に決定内容が発表されますが、FRBはその後のパウエル議長の記者会見は対面で行うと発表しています。議長は先週、新型コロナウイルス検査の結果、陽性だったこともあり、記者会見の形態が流動的でしたが、いつも通り2日の日本時間午前4時半からワシントンンのFRB本部で行うと発表されています。会合では利上げ幅は、個人的には0.25ポイントになると予想しており、これはすでに市場に織り込み済みでしょう。焦点はパウエル議長の会見です。ここで3月の会合でも利上げスタンスが継続されるのか、あるいは一部ハト派が予想しているように利上げ休止があるのかどうかです。0.5ポイントの利上げの可能性はないので、このままではドル買い材料になる可能性は低いと考えられますが、議長がインフレ見通しに対してより慎重な発言を行うようだと、引き締め政策の長期化観測が台頭し、ドル買いに振れる可能性もないとは言えません。多くのFOMCメンバーは足元のインフレ低下傾向を歓迎する考えを示しながらも、慎重な姿勢を崩していないというのが、筆者のこれまでの印象ですが、同時にこれはパウエル議長のスタンスにも通ずるものだと思います。

バイデン大統領は25日ホワイトハウスで、米主力戦車「MIエイブラムス」31両をウクライナに提供すると発表しました。バイデン氏は会見で、「戦車はウクライナの戦略目的達成を助けることになる」と説明し、「戦車の供給には時間がかかるだろう」としつつも、具体的なめどについては言及していません。またそれに先立って、ドイツは同盟国と協力して同国製の戦車「レオパルト2」をウクライナに100台以上供給することを発表しています。声明によると、ドイツとそのパートナー国は合計112台の提供を目指し、ドイツは同盟国によるレオパルト2の再輸出に必要な承認も付与するとしています。ドイツはまず第一弾として、連邦軍が保有する「レオパルト2A6」を14台提供するとしており、ビストリウス国防相によると、最初の戦車は3カ月以内にウクライナに到着する可能性があるとのことです。ただ、ウクライナは冬の終わりとともにロシア軍が攻撃を強めるとみており、早ければ来月にも始まる可能性があり、これには間に合わない公算が大きいようです。これに対してロシア大統領府のペスコフ報道官は、「ウクライナの同盟国は戦争に対する戦車の影響を過大評価している。深い思い込みだ」と述べ、「ウクライナに提供されるエイブラムスとレオパルトは他の戦車と同様に燃え尽きるだろう」と語っています。(ブルームバーグ)ロシアとNATOの戦争になることを避けてきたドイツのショルツ首相も、米国の意向や、ロシアによるウクライナの集団住宅への攻撃などで多くの市民が犠牲になったことを受け、ようやく決断したとみられます。

カナダ中銀は25日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.5%にすることを決めました。ただ声明で、これまでの急速な金融引き締めの影響を見極めるために、利上げを見合わせる見通しであるとしたため、発表後カナダドルは下落しています。カナダ中銀は昨年の利上げ開始の際に、先進国の中でもいち早く利上げを決めるなど、非常に政策決定が早いという印象を筆者は持っています。またその政策判断も正鵠を射ていると言えます。今回の声明文が正しければ、いずれFRBも同様な判断を下す可能性があるのではないかと思われます。

本日のドル円は128円〜130円50銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/23 イエレン・財務長官 「現在目にしているのは、サプライチェーン問題の著しい緩和と在庫の増加、輸送費用の低下だ」、「従って、そうした部分のインフレはもはやあまり有意な形で寄与していない」、「昨年下期の物価上昇圧力に大きく寄与した住宅市場の過熱も今年半ばまでに冷めるだろう」、「向こう6カ月で、米国のインフレに対する住宅価格の押し上げはほぼなくなるはずだ。極めて有益な兆しだ」 --------
1/20 ウォラー・FRB理事 「現時点においては、今月末の次回FOMC会合では25ベーシス・ポイントの利上げを支持する」と発言し、「それ以降については、当局の2%インフレ目標に向け、まだかなりの道のりがある。金融引き締の継続を支持する見通しだ」 --------
1/19 コリンズ・シカゴ連銀総裁 「政策金利が景気を抑制する領域に入り、最新の指標に基づくとピークに近づいている可能性が示唆された現在、当初の急速な引き締めペースをより緩やかな速度にシフトしたのは適切だと考える」 株価の下落につながる
1/19 ブレイナード・FRB副議長 インフレは最近緩やかになったものの、依然として高い水準にあり、これが持続的なペースで2%に下がることを確実にするためには、十分に抑制的な金融政策をしばらく続ける必要があるだろう」 株価の下落につながる
1/18 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年は数回の利上げがあると私はみているが、75ベーシス・ポイント利上げの時期が過ぎたことは確かだろうと思う。私の見解では、今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」 --------
1/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「ペース減速はまさに最善の決定を確実に行うための方法だ」とし、「われわれは利上げペースが減速したとしても金融状況を景気抑制的に保つため全体的な政策戦略を調整することができ、必要なら調整すべきだ」 --------
1/18 ブラード総裁・セントルイス連銀総裁 「あと少しで景気抑制的と呼び得る領域に入る状況だが、まだそこには達してはいない」、(インフレ率が2%目標へと確実に低下することを考えており)、「その点では、ためらいたくはない」 --------
1/18 黒田・日銀総裁 「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」 決定会合で「現状維持」を決めたことと相まって、ドル円は127円台半ばから131円58銭まで急騰。
1/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鈍化に向けて取り組む中で、より慎重にかじを切るのが理にかなう」、「鈍化しつつあるものの、依然として高すぎる」 --------
1/12 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年はあと数回の利上げを実施する見通しだが、私の考えでは一度に75ベーシスポイント引き上げる局面は確実に過ぎ去った」と発言し、「私の見解では、この先は25bpの利上げが適切になる」 --------
1/11 コリンズ・ボストン連銀総裁 「25(ベーシスポイント)ないし、50が妥当だろう。私自身は現時点で25に傾いているが、あくまでもデータ次第だ」とし、「われわれは利上げを停止する水準に近づいており、ゆっくりと調整することで、毎回の判断を下す前に入手する情報を精査する時間が増える。より小幅な変更を行うことで、われわれの柔軟性は高まる」 株価上昇に一役。
1/10 ダイモン・JPモルガンCEO 「現在の想定を上回る水準までFRBは金利を引き上げる必要があるかもしれない」ただ、5%程度という現在の予想については、「私は、十分ではないのでないかと考える方だ。3カ月か6カ月待ってみることに害はないと思う」 --------
1/10 ボウマン・FRB理事 「過去数カ月に一部インフレ指標で減速が見られたが、われわれにはやるべき仕事がまだ多く残っている。従って、FOMCは12月会合後に表明した通り、金融引き締めに向けて利上げを続ける見通しだ」 --------
1/10 パウエル・FRB議長 「高インフレの状況で物価の安定を取り戻す上で、短期的に『支持されない措置』が必要となることもあり得る」 --------
1/9 デーリー・サンフランシスコ連銀 「政策金利は最終的に5%を幾分上回る水準まで引き上げられる」と述べ、「ただ、利上げ終着点の具体的な水準は不明で、今後発表されるインフレ統計次第だ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/9 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」、「経済から過剰な需要を取り去るため政策金利を5−5.25%に引き上げることが正当化される」、(5%超の政策金利を維持する期間につては)「長期だ。政策転換は考えていない。利上げを停止してその水準を維持し、政策が結果を表すのを見守るべきだ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「政策金利は十分に景気抑制的と見なされ得る領域にはまだ入っていないが、それに近づきつつある」 株安、債券安、ドル高がやや修正される。
1/5 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 (FF金利予測に言及し)、「私は自分の予想を5%超に引き上げた」、「インフレが当局の2%に向って説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまで、その水準に当面とどまると私はみている」、(24年になっても金利を5超で維持することが適切になるのが予測かどうか問われると)、「私にとってはそうだ」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 発言内容:「物価圧力が緩和しつつある兆しなど、最近の報告を歓迎するが、やるべき仕事はまだ山積している。世界中の中央銀行当局者がこれに関して私と同意見であることは間違いないだろう」、「インフレを2%に戻すため、政策手段の活用を引き続き決意している」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」 FOMC議事録とともに、ドル円を132円台後半まで押し上げる。
1/4 FOMC議事 「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」 ドル円131円台から132円台後半まで上昇。
1/3 ゲオルギエワ・IMF専務理事 (世界経済にとって)「厳しい年になり、昨年を上回る厳しさになる」、(その理由として)「米国、欧州連合(EU)、中国の三大経済がそろって同時に減速するからだ」 --------
12/27 デギンドス・ECB副総裁 「ユーロ圏は非常に厳しい経済状況に直面している」、「個人も企業も賢明な姿勢になり長期的視点に焦点を絞ることが非常に重要だ」、「短く浅いリセッションに見舞われた後、4−6月期(第2四半期)には再びプラス成長になる」 --------
12/20 黒田・日銀総裁 「利上げではない」、(このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由質問され)、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」、「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」 長期金利の変動幅を0.5%に拡大したことで、ドル円は東京時間で137円台前半から133円台前半に急落。NYでは130円58銭までドル安が進む。欧米など債券の大きく売られ金利が上昇。
12/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」 --------
12/16 デーリー・SF連銀総裁 「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」 --------
12/16 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」 株価が大きく売られる。
12/15 ラガルド・ECB総裁 (今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを)「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」 ユーロドル1.06台半ばから100ポイント程上昇。
12/14 パウエル・FRB議長 「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」 タカ派的な内容と受け止められ、株と債券が大きく売られ、金利が上昇したことでドル円は135円近辺から136円手前まで急上昇。
12/14 FOMC声明文 「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」 --------
12/2 サマーズ・元財務長官 「インフレ抑制の道のりは長い。金融当局は市場が現在判断し、当局者が今発言しているよりも一段の利上げが必要になると思う」、「6%がわれわれが書くことができるシナリオだ。5%は最善の予測ではない」 --------
12/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 「FF金利の引き上げペースは減速する可能性が高いが、ピークの金利水準は恐らく若干高めになりそうだと」、「インフレ率は極めて高い。当局目標の2%に下げるため、われわれは金融環境を適度に景気抑制的水準にする途上にある」 --------
12/1 ボウマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」 ドル円がさらに下落する一要因に。ドル円136円台半ば→135円台前半に。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和