今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「FOMCの結果を受けドル円128円台半ばまで下落」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • FOMCの結果発表前には129円台前半で推移していたドル円は128円55銭近辺まで売られる。長期金利が3.5%を大きく割り込んだことでドル売りが加速。
  • ユーロドルは続伸し、一時は昨年4月以来となる1.1002までユーロ高に。
  • 株式市場は3指数とも上昇。ナスダックは231ポイント買われたもののダウは6ドル高とまちまち。
  • 債券は買われ、長期金利は一時3.38%台まで低下し、3.41%台で引ける。
  • 金と原油は揃って反落。
****************************
1月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 46.9
1月ADP雇用者数 → 10.6万人
1月ISM製造業景況指数 → 47.4
1月自動車販売台数 → 1574万台(年換算)
****************************
ドル/円 128.55 〜 129.87
ユーロ/ドル 1.0888 〜 1.1002
ユーロ/円 140.79 〜 141.69
NYダウ +6.92 → 34,092.96ドル
GOLD −2.50 → 1,942.80ドル
WTI −2.46 → 76.41ドル
米10年国債 −0.090 → 3.417%

本日の注目イベント

  • 欧 ECB政策金利発表
  • 欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
  • 英 BOE金融政策発表
  • 英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 米 12月製造業受注
  • 米 企業決算 → アップル、アマゾン、スターバックス、アルファベット、クアルコム
  • 加 カナダ12月住宅着工件数

本日のコメント

今年最初のFOMCが開催され、今朝方その結果が発表されました。政策金利は予想通り0.25ポイントの引き上げを決め、これでフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジは4.5〜4.75%になりました。FOMC前には129円台前半で推移していたドル円は直後に129円台後半まで買われましたが、その後パウエル議長の会見に沿う形で売られ、一時は128円55銭までドル安が進みました。ユーロドルでもドル安が進み、ユーロは一時1.1002まで上昇し、2022年4月4日以来の高水準を記録しています。ユーロ圏の1月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で「8.5%」と、市場予想の「8.9%」から大幅に減速したものの、ドル安の流れからユーロを買う動きが勝った格好です。

声明文では、「最近の指標は支出と生産の緩慢な伸びを示している。雇用はこの数カ月、堅調に伸びており、失業率は低いままだ。インフレは幾分和らいだが、依然として高水準にある」とし、「委員会は目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、必要に応じて金融政策スタンスを調整する用意がある。委員会は労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待を示す各指標のほか、金融・国際情勢など幅広く考慮して判断する」と記されています。政策金利については、「今後どの程度引き上げるかを決定する上では、金融政策の累積的な引き締めを含む複数の要素に左右される」とあります。従来は、「そうした要素は今後の引き上げペースを決定する上で考慮する」としていました。(ブルームバーグ)

パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「われわれは大きく進展したと考えている」としながらも、「それでも、さらなる仕事が残されている」と述べ、これまでのインフレの減速に一定の評価を与えながら、なお慎重な姿勢を維持しています。また、「物価安定の回復には、抑制的なスタンスをしばらく維持することが必要となる可能性が高い」と指摘し、物価圧力に関する最新の指標は心強い内容だとしながらも、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べています。今回のFOMCとパウエル議長の会見からは明確なヒントは得られなかったと思われます。追加利上げの可能性を残す一方で、声明文では引き締めサイクルの終わりが近く、経済データが政策に追いつくのを静観する用意があることも示しています。個人的には、パウエル議長はもっとタカ派的な姿勢を見せると予想していましたが、市場はひとまず今後の利上げペースの鈍化を好感し、株式と債券を買い、ドル売りで反応しています。今後は、3月会合で利上げが停止されるのか、仮に再び0.25ポイントの利上げがあった場合、それではいつ利上げが停止されるのかに焦点が移ります。

FOMCの陰に隠れ、余り注目されませんでしたが、1月のADP雇用者数は、市場予想を大きく下回る結果でした。予想の「18万人」に対して結果は、「10万6000人」でした。12月は「25万3000人」だったことから、半減したことになりますが、ADPのエコノミストは、「1月は統計の対象週で天候に関連する雇用の乱れの影響があった」と説明しています。事実、地域別では厳しい寒波に見舞われた中西部の減少が目立っています。

ドル円はここ1週間の短期レンジでは下限を試す動きになっています。目先は128円割れがあるのかどうかと、1月に記録した127円22銭が意識される展開になるのかが注目されます。全体的にみて、依然としてドルの上値の方が重い展開が継続していると考えています。本日のドル円は127円50銭〜129円50銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
2/1 パウエル・FRB議長 「われわれは大きく進展したと考えている」としつつ、「それでも、さらなる仕事が残されている」、「物価安定の回復には、抑制的なスタンスをしばらく維持することが必要となる可能性が高い」、(物価圧力に関する最新の指標は心強い内容だとしながらも)、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」 株式と債券が買われ、ドル円は128円台半ばまで下落。長期金利は一時3.38%まで低下。
2/1 FOMC声明文 「最近の指標は支出と生産の緩慢な伸びを示している。雇用はこの数カ月、堅調に伸びており、失業率は低いままだ。インフレは幾分和らだが、依然として高水準にある」、「委員会は目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、必要に応じて金融政策スタンスを調整する用意がある。委員会は労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待を示す各指標のほか、金融・国際情勢など幅広く考慮して判断する」、(政策金利については)、「今後どの程度引きあげるかを決定する上では、金融政策の累積的な引き締めを含む複数の要素に左右される」、「そうした要素は今後の引き上げペースを決定する上で考慮する」 --------
1/23 イエレン・財務長官 「現在目にしているのは、サプライチェーン問題の著しい緩和と在庫の増加、輸送費用の低下だ」、「従って、そうした部分のインフレはもはやあまり有意な形で寄与していない」、「昨年下期の物価上昇圧力に大きく寄与した住宅市場の過熱も今年半ばまでに冷めるだろう」、「向こう6カ月で、米国のインフレに対する住宅価格の押し上げはほぼなくなるはずだ。極めて有益な兆しだ」 --------
1/20 ウォラー・FRB理事 「現時点においては、今月末の次回FOMC会合では25ベーシス・ポイントの利上げを支持する」と発言し、「それ以降については、当局の2%インフレ目標に向け、まだかなりの道のりがある。金融引き締の継続を支持する見通しだ」 --------
1/19 コリンズ・シカゴ連銀総裁 「政策金利が景気を抑制する領域に入り、最新の指標に基づくとピークに近づいている可能性が示唆された現在、当初の急速な引き締めペースをより緩やかな速度にシフトしたのは適切だと考える」 株価の下落につながる
1/19 ブレイナード・FRB副議長 インフレは最近緩やかになったものの、依然として高い水準にあり、これが持続的なペースで2%に下がることを確実にするためには、十分に抑制的な金融政策をしばらく続ける必要があるだろう」 株価の下落につながる
1/18 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年は数回の利上げがあると私はみているが、75ベーシス・ポイント利上げの時期が過ぎたことは確かだろうと思う。私の見解では、今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」 --------
1/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「ペース減速はまさに最善の決定を確実に行うための方法だ」とし、「われわれは利上げペースが減速したとしても金融状況を景気抑制的に保つため全体的な政策戦略を調整することができ、必要なら調整すべきだ」 --------
1/18 ブラード総裁・セントルイス連銀総裁 「あと少しで景気抑制的と呼び得る領域に入る状況だが、まだそこには達してはいない」、(インフレ率が2%目標へと確実に低下することを考えており)、「その点では、ためらいたくはない」 --------
1/18 黒田・日銀総裁 「長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない」 決定会合で「現状維持」を決めたことと相まって、ドル円は127円台半ばから131円58銭まで急騰。
1/12 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鈍化に向けて取り組む中で、より慎重にかじを切るのが理にかなう」、「鈍化しつつあるものの、依然として高すぎる」 --------
1/12 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「今年はあと数回の利上げを実施する見通しだが、私の考えでは一度に75ベーシスポイント引き上げる局面は確実に過ぎ去った」と発言し、「私の見解では、この先は25bpの利上げが適切になる」 --------
1/11 コリンズ・ボストン連銀総裁 「25(ベーシスポイント)ないし、50が妥当だろう。私自身は現時点で25に傾いているが、あくまでもデータ次第だ」とし、「われわれは利上げを停止する水準に近づいており、ゆっくりと調整することで、毎回の判断を下す前に入手する情報を精査する時間が増える。より小幅な変更を行うことで、われわれの柔軟性は高まる」 株価上昇に一役。
1/10 ダイモン・JPモルガンCEO 「現在の想定を上回る水準までFRBは金利を引き上げる必要があるかもしれない」ただ、5%程度という現在の予想については、「私は、十分ではないのでないかと考える方だ。3カ月か6カ月待ってみることに害はないと思う」 --------
1/10 ボウマン・FRB理事 「過去数カ月に一部インフレ指標で減速が見られたが、われわれにはやるべき仕事がまだ多く残っている。従って、FOMCは12月会合後に表明した通り、金融引き締めに向けて利上げを続ける見通しだ」 --------
1/10 パウエル・FRB議長 「高インフレの状況で物価の安定を取り戻す上で、短期的に『支持されない措置』が必要となることもあり得る」 --------
1/9 デーリー・サンフランシスコ連銀 「政策金利は最終的に5%を幾分上回る水準まで引き上げられる」と述べ、「ただ、利上げ終着点の具体的な水準は不明で、今後発表されるインフレ統計次第だ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/9 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」、「経済から過剰な需要を取り去るため政策金利を5−5.25%に引き上げることが正当化される」、(5%超の政策金利を維持する期間につては)「長期だ。政策転換は考えていない。利上げを停止してその水準を維持し、政策が結果を表すのを見守るべきだ」 株と債券が買われ、ドル円は下落。
1/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「政策金利は十分に景気抑制的と見なされ得る領域にはまだ入っていないが、それに近づきつつある」 株安、債券安、ドル高がやや修正される。
1/5 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁 (FF金利予測に言及し)、「私は自分の予想を5%超に引き上げた」、「インフレが当局の2%に向って説得力ある形で鈍化し始めているという兆候が得られるまで、その水準に当面とどまると私はみている」、(24年になっても金利を5超で維持することが適切になるのが予測かどうか問われると)、「私にとってはそうだ」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/5 ボスティック・アトランタ連銀総裁 発言内容:「物価圧力が緩和しつつある兆しなど、最近の報告を歓迎するが、やるべき仕事はまだ山積している。世界中の中央銀行当局者がこれに関して私と同意見であることは間違いないだろう」、「インフレを2%に戻すため、政策手段の活用を引き続き決意している」 雇用関係の経済指標の改善もあり、ドル円を134円台まで押し上げる。
1/4 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」 FOMC議事録とともに、ドル円を132円台後半まで押し上げる。
1/4 FOMC議事 「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」 ドル円131円台から132円台後半まで上昇。
1/3 ゲオルギエワ・IMF専務理事 (世界経済にとって)「厳しい年になり、昨年を上回る厳しさになる」、(その理由として)「米国、欧州連合(EU)、中国の三大経済がそろって同時に減速するからだ」 --------
12/27 デギンドス・ECB副総裁 「ユーロ圏は非常に厳しい経済状況に直面している」、「個人も企業も賢明な姿勢になり長期的視点に焦点を絞ることが非常に重要だ」、「短く浅いリセッションに見舞われた後、4−6月期(第2四半期)には再びプラス成長になる」 --------
12/20 黒田・日銀総裁 「利上げではない」、(このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由質問され)、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」、「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」 長期金利の変動幅を0.5%に拡大したことで、ドル円は東京時間で137円台前半から133円台前半に急落。NYでは130円58銭までドル安が進む。欧米など債券の大きく売られ金利が上昇。
12/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」 --------
12/16 デーリー・SF連銀総裁 「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」 --------
12/16 ウィリアムズ・NY連銀総裁 「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」 株価が大きく売られる。
12/15 ラガルド・ECB総裁 (今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを)「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」 ユーロドル1.06台半ばから100ポイント程上昇。
12/14 パウエル・FRB議長 「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」 タカ派的な内容と受け止められ、株と債券が大きく売られ、金利が上昇したことでドル円は135円近辺から136円手前まで急上昇。
12/14 FOMC声明文 「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」 --------
12/2 サマーズ・元財務長官 「インフレ抑制の道のりは長い。金融当局は市場が現在判断し、当局者が今発言しているよりも一段の利上げが必要になると思う」、「6%がわれわれが書くことができるシナリオだ。5%は最善の予測ではない」 --------
12/2 エバンス・シカゴ連銀総裁 「FF金利の引き上げペースは減速する可能性が高いが、ピークの金利水準は恐らく若干高めになりそうだと」、「インフレ率は極めて高い。当局目標の2%に下げるため、われわれは金融環境を適度に景気抑制的水準にする途上にある」 --------
12/1 ボウマン・FRB理事 「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」 ドル円がさらに下落する一要因に。ドル円136円台半ば→135円台前半に。
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和