今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「米5月のNFPは33.9万人の増加」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は138円台から大きく反発。5月の雇用統計でNFPは大幅に増加したものの、賃金の伸びが鈍化。米金利の上昇に140円09銭まで買われた。
  • ユーロドルは円ほど動かず。1.07台前半から後半で推移。
  • 株式市場はデフォルトを回避できたことや、賃金が上昇していなかったことを好感し3指数が大幅高。特にダウは前日比700ドルを超える上昇を見せ、今年最大の上げ幅を記録。
  • 債券は反落し、長期金利は3.69%台に上昇。
  • 金は大幅に売られ、原油は続伸。
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5月失業率 → 3.7%
5月非農業部門雇用者数 → 33.9万人
5月平均時給 (前月比) → 0.3%
5月平均時給 (前年比) → 4.3%
5月労働参加率 → 62.6%
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ドル/円 138.74 〜 140.07
ユーロ/ドル 1.0705 〜 1.0771
ユーロ/円 149.23 〜 149.96
NYダウ +701.19 → 33,762.76ドル
GOLD −25.90 → 1,969.60ドル
WTI +1.64 → 71.74ドル
米10年国債 +0.096 → 3.691%

本日の注目イベント

  • 中 5月財新サービス業PMI
  • 中 5月財新コンポジットPMI
  • 独 独4月貿易収支
  • 独 独4経常収支
  • 独 独5月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏5月サービスPMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏4月卸売物価指数
  • 米 5月ISM非製造業景況指数
  • 米 5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
  • 米 5月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
  • 米 4月製造業受注
  • 米 4月耐久財受注

本日のコメント

米債務上限問題は、バイデン大統領が3日に法案に署名し、「財政責任法」が成立しました。これで、2025年1月まで債務上限の適用を停止、デフォルトを回避できることになりました。当面は債務上限を巡る政治的なドタバタ劇を見ることはなくなりますが、バイデン政権は今後一層の歳出削減を行う必要があります。

前日138円台半ばまで売られたドル円は、わずか1日で元の鞘に戻ってきました。5月の雇用統計で、米労働市場は「驚くほど好調」だったことが、あらためて確認されました。非農業部門雇用者数は市場予想の「19.5万人」を大きく上回る「33.9万人」で、さらに4月分は「25.3万人」から「29.4万人」に、3月分も「16.5万人」から「21.7万人」に、それぞれ「上方修正」されています。この結果、直近3カ月の雇用数は平均で「28.3万人」と、10回合連続で都合5%もの利上げが実施されましたが、雇用の減速感は全く感じられません。先に発表された「ADP雇用者」も大きく上振れ、求人件数も1000万件に戻るなど、相変らず「人手不足」が続いていることがうかがえます。本来なら、雇用者数の大幅上振れは米景気の拡大→インフレの加速→FRBによる利上げ継続、そして株安、債券安が進み、ドル円が買われる要因になりますが、この日は株価が大きく上昇し、リスクオンから債券が売られた側面もあったようです。NYダウは前日比701ドル買われ、今年最大の上げ幅でした。雇用者数ではNFPが上振れしたものの、失業率は高まり、賃金が伸びていないなど「強弱まちまち」の結果でしたが、市場のセンチメントは「6月会合では利上げ見送り」に大きく傾いていることが背景です。先週の金曜日のコメントでも書きましたが、金曜日の動きは市場のセンチメントが一夜で変わるという良い例だったと言えます。経済指標の結果を受けたり、FOMCメンバーの発言を受ける中で、利上げ見送りから、0.25ポイントの利上げをほぼ織り込み、そして再び利上げ見送りへと市場の見方は変化してきました。こう考えると、13日の「5月の消費者物価指数」発表でも、もう一波乱あるかもしれません。

サマーズ元財務長官はブルームバーグの番組で、FOMCが6月会合で利上げ見送りを選択した場合、7月会合では政策金利を「0.5ポイント」引き上げる可能性を残して置くべきだと述べています。タカ派のイメージが強いサマーズ氏は、「米金融当局が留意しなくてはならない主要なリスクは、景気過熱リスクであるという状況に再び陥っている」と指摘し、雇用統計の結果については、「労働市場が引き続きタイトかつホットだ」と述べていました。

本日は、再び日経平均が大幅高を見せそうです。株価が大きく上昇すれば「リスクオン」が強まり、低金利の円が売られ易いことは何度も指摘した通りです。一方で、米債務上限問題が決着したことで、米財務省は減少していた手許現金を拡充するため、大量の債券を発行するとみられます。大量の債券発行は市場から資金を吸い上げることになり、ある意味「金融引き締め」と同様の効果が見られます。金融引き締めは、株価の下落要因となり債券高からドル円が売られるリスクもないとは言えません。大量の債券発行は市場の流動性を1兆1000億ドル(約154兆円)減少させるとの試算もあります。一応、留意しておく必要がありそうです。

本日のドル円は139円30銭〜141円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/1 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「政策金利を据え置き、インフレ率を適時に目標に戻すための仕事を金融政策に任せることが可能な地点に近づいていると考える」 株と債券が買われ、ドル安を演出。
5/31 コリンズ・ボストン連銀総裁 「米金融当局は実に高すぎるインフレの抑制に努めている」 --------
5/31 ボウマン・FRB理事 (家賃の下落や不動産価格が横ばいで推移していることを例に挙げ)、「これはインフレ率の低下を目指す当局の闘いに影響を及ぼし得る」 --------
5/31 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「一度様子を見ていいだろうと思う」と述べ、「6月会合では、私は利上げ見合わせを検討する陣営に確実に入っている」 市場はドル売りで反応。
5/31 ジェファーソン・FRB理事 「次回会合で政策金利の据え置きを決定しても、今サイクルのピーク金利に達したと解釈すべきではない」、「実際には、次回会合で利上げを見送ることは、追加引き締めの程度について決定する前に委員会がより多くのデータを見ることを可能にするだろう」 市場はドル売りで反応。
5/30 神田・財務省財務官 「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度の変動は好ましくない」、「為替市場の動向をしっかり注視し、必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」 ドル円141円手前から140円12銭まで下落。
5/30 植田・日銀総裁 「賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%の物価上昇の達成にはまだ時間があると考えているので、粘り強く金融緩和をというスタンスだ」 ドル円140円台前半から140円93銭まで上昇。日経平均株価はマイナス圏か120円を超える上昇。
5/25 植田・日銀総裁 「国民全員にかなり大きな負担になっている」、「サービス部門での価格上昇も進んでいる。原料価格が低下しても、需要面の高まりから物価高が継続する可能性が高い」、「基調適な物価上昇率はすこしずつ上がってきているのは事実だが、持続的・安定的(な達成)には届いていない」、「政策の継続、修正については効果と副作用をみて判断する。(効果と副作用の)バランスに変化があれば修正はあり得る」(日経新聞とのインタビューで) --------
5/25 コリンズ・ボストン連銀総裁 「インフレ率はまだ高過ぎるが、緩和を示す有望な兆候もいくつかある」、「われわれは利上げを一時停止できる地点、あるいはその近くにいるのではないかと考える」 --------
5/24 ウォラー・FRB理事 「インフレが2%目標に向って低下しつつある明確な兆候が得られるまで、利上げを停止することは支持しない」、「6月会合で利上げを実施するべきか見送るべきか向こう3週間に発表されるデータ次第になる」 株安、債券安が進み、金利上昇に伴いドル円は138円台半ばから139円台半ばまで上昇。半年ぶりのドル高を示現。
5/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレが高水準にとどまり、われわれの認識より定着するようになった場合、政策金利をより長期にわたって高い水準に維持する必要が出て来る。そうなれば、銀行セクターへの圧力は強まる」 --------
5/22 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレに十分な下押し圧力を与え、物価上昇率をタイムリーに目標水準に押し戻すためには、政策金利を引き上げざるを得なくなるだろうと」、「今年はあと2回の行動を考えている。具体的にいつになるかは分からないが、遅いより早い方がよいとこれまでにたびたび提唱してきた」、「労働市場が非常に好ましい状況にあるのは、インフレと闘い、目標物価に戻すには非常に都合が良い」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は138円台半ばまで上昇。
5/22 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今の段階では、6月会合での利上げもしくは利上げ見送りのどちらも判断が際どく、五分五分だ。重要なのは、われわれの作業は終了したと示唆しないことだと考える」 --------
5/22 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「政策の選択肢については予断を持っていない」 --------
5/22 デーリー・SF連銀総裁 「与信環境の引き締まりが、2回の利上げに相当し得る」 --------
5/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「大きな変化がない限り、現時点では事態がどう進展するか様子を見ることに違和感はない」 --------
5/19 パウエル・FRB議長 「追加引き締めが適切か、何の決定も下していない」、「結果的に政策金利をそれほど上げる必要はないかもしれない」、「インフレ抑制に失敗すれば(人々の感じる)痛みが長引くだけでなく、最終的に物価の安定を取り戻すための社会コストがより増えることになる」、「これまでのところ、インフレ抑制に時間がかかるというFOMCの見方を支持していると」 株価の下落をやや抑制。ドル円の下げにつながる。
5/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「ここからはもう少し速度を落としてもいいだろうという考えを排除しない」 --------
5/18 ジェファーソン・FRB理事 「金融政策の作用には長期的かつ変動的な遅れがあり、金利上昇の影響を需要が最大限に受けるのに1年は十分な期間でないことは歴史が示している」、「この先の金融政策における適切なスタンスを考える上で、今後数週間はあらゆる要素を考慮するつもりだ」 --------
5/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「過去10回のFOMC会合全てでFF金利誘導目標レンジを引き上げてきたことで、われわれは一定の進展を遂げた。今後数週間に入手するデータで利上げ停止が適切になることが示される可能性もある。だがきょう現在においては、まだその状況に達していない」 --------
5/16 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鎮静化に成功したとの証はまだ得ていない」、「さらなる利上げが必要であれば、そうすることに異論はない」 --------
5/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策は経済の長期的な成長率に影響を与えることはできないが、経済を物価安定の状態に戻すことで役割を果たすことは可能であり、それは労働市場や金融システム、経済全体のより長期的な健全性のために必要だ」 --------
5/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これまでの急速利上げによる影響の多くがいまだ経済に浸透しつつあるところだ」、「FOMCは次の一手を判断する上で注意が必要になる」「6月13−14日に開かれるFOMCで当局者がどうすべきか述べるのは時期尚早だ」、(5月会合で利上げを支持した自身の判断は)、「銀行セクターで起きている混乱を考え、五分五分だった」 --------
5/15 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「労働市場は依然として過熱状態にあり、あまり軟化していない。つまり、インフレ鈍化にはまだ長い道のりが残されているということだ。インフレ鈍化のため、われわれ金融当局としてなすべき仕事が恐らくさらにあるだろう」 --------
5/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2024年に入ってしばらくするまでわれわれが実際に利下げを検討することはない、というのが私の基本シナリオだ」、「インフレ指標の大半は、依然とし当局目標の2倍だ。つまり、残された道のりはまだ長いということだ」 --------
5/14 ジェファーソン・FRB理事 「3月に予想に反して下落した中古車価格を除いては、コア物価のディスインフレは想定よりも緩やかなペースで起きている。金融政策は経済とインフレに長期かつ様々な時間差を伴って影響を与えるもので、われわれの急速な引き締めの十分な効果は依然としてこれから表れる公算が大きい」 --------
5/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 信用状況の推移とそれが成長や雇用、インフレの見通しに与える影響見極めに特に重点を置いていく」、(FOMCは来月利上げを停止するのかとの繰り返しの質問に対して)、「政策は会合ごとに定められ、入手するデータによって決まる」、(利下げに関する質問には)、「私の基本的な予想では、年内に利下げする理由はどこにも見当たらない」、「かなり長期間、景気抑制的な政策スタンスを維持する必要があるというのが私の予想だ」(当局が目標とする)「2%に戻すには時間がかかり、2%の目標は2年かけて到達する」 --------
5/5 パウエル・FRB議長 (金融不安が収まらないことに触れ)「状況はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭だ」、「深刻なストレスがかかる時間に区切りをつけるための重要な一歩だ」、(銀行破綻については)、「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」、(足元のインフレについて)、「幾分緩やかになっているが、依然として強い」、(金融政策が十分引き締め的な水準かと問われて)、「見極めているところだ」 --------
5/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「この15カ月における積極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、2%目標への軌道に乗っているかどうかはあまりはっきりしていない」、「これから出て来る経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信するには『インフレ率の有意な低下』を確認しなければならないだろう」 --------
5/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (金融セクターの混乱について)、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そうした展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要があるのは確かだ」と語り、「われわれはデータを注視する必要がある」 --------
5/1 イエレン・財務長官 ( 債務上限問題について)、「われわれの最善の予測では、6月初旬までには政府の支払い義務全てを履行し続けてことができなくなる。早ければ6月1日の可能性もある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和