今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円140円台は維持できず」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 昨日の夕方には140円45銭まで買われたドル円はNYでは反落。ISM非製造業景況指数が予想を下回ったことをきっかけに、139円25銭までドルが売られる。
  • ユーロドルは1.07を挟みもみ合い、方向感も出ない展開。
  • 株式市場は3指数が反落。先週末の大幅高の流れは続かず、軟調なサービス業の指標が重荷となる。
  • 債券は小幅に反発。長期金利は3.68%台へとやや低下。
  • 金は反発し、原油は続伸。
******************************
5月ISM非製造業景況指数 → 50.3
5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 54.9
5月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.3
4月製造業受注 → 0.4%
4月耐久財受注 → 1.1%
******************************
ドル/円 139.25 〜 140.30
ユーロ/ドル 1.0675 〜 1.0722
ユーロ/円 149.01 〜 149.98
NYダウ −199.90 → 33,552.86ドル
GOLD +4.70 → 1,974.30ドル
WTI +0.41 → 72.15ドル
米10年国債 −0.008 → 3.683%

本日の注目イベント

  • 豪 豪1−3月期経常収支
  • 豪 RBA、キャッシュターゲット
  • 独 独4月製造業新規受注
  • 欧 ユーロ圏4月小売売上高
  • 加 カナダ4月住宅建設許可件数

本日のコメント

昨日は日経平均株価が予想通りというか、予想を超える大幅高を演じたことでドル円も底堅い動きでした。日経平均は700円近く上昇し、33年ぶりとなる3万2000円の大台に乗せて引けています。このところの日本株の上昇には、円安、日銀の緩和継続姿勢、あるいはPBRの1倍超えを目指す企業の姿勢、といった幾つかの理由を専門家は挙げていますが、やはり最大の理由は海外勢の大幅な買い越しということでしょう。先日、ウォーレン・バフェット氏が来日し、大手商社のトップと会談を行った辺りから上昇の勢いが加速しています。世界的に見ても、出遅れ感の著しい日本株にもようやく「春が訪れた」印象ですが、「失われた30年」をどこまで取り戻せるのか、ここからが正念場と言えます。このような動きはこれまでに何度も見られましたが、結局期待外れに終わっています。「今回は本物か?」、見ていきたいと思います。

5月のISM非製造業景況指数は、総合で市場予想を下回る「50.3」でした。項目別では業況指数と新規受注が低下したほか、仕入れ価格指数は3年ぶりの低水準でした。また雇用指数も「49.2」と、昨年10月以来となる低水準で、雇用の減速を示唆しており、先週末に発表された「5月の雇用統計」とは異なる結果を示しています。ISMの担当者は、「現在、コメント欄にリセッションという文言は見かけない。不透明感やわずかな減速などは見かけるが、産業によって違いがあり、産業内でも企業ごとに状況は異なる」と話しています。(ブルームバーグ)6月会合では利上げ見送りに傾いている市場の見方が、今回の指標を受さらにその見方を強めたと思われますが、これ以降来週の消費者物価指数(CPI)の発表まで、重要な発表はありません。失業保険申請件数には多少注意が必要ですが、このままだと余程CPIが上振れしない限り、「据え置き」という判断が下されることになりそうです。そして、どちらかと言えば上に行きたがっているドル円の上値を抑えることにもつながる可能性があります。

先週1日に発表されたユーロ圏の5月のCPIは「6.1%」でした。4月の「7.0%」からは大幅に減速はしていましたが、ECBは15日に開催される理事会では0.25ポイントの追加利上げを行う可能性が高まっています。ECBの政策メンバーであるナーゲル・ドイツ連銀総裁は講演で、「金融政策担当者はインフレとの闘いで手綱を緩めることは出来ず、そうするつもりもない」と指摘し、「現在の状況を踏まえれば、複数回の利上げがまだ必要だ」と述べています。また、ラガルドECB総裁も5日の欧州議会で、「物価圧力は依然強い。中期で2%のインフレ目標に速やかに戻すため、政策金利を十分に景気抑制的な水準へと確実に導き、必要な限りその水準に据え置く」と、これまで通りインフレは高すぎるとの認識を示しました。ユーロ圏ではウクライナ・ロシア戦争という地政学的なリスクも抱えており、しかも米国と比べてもインフレ率の鈍化スピードの遅さは否めません。(米4月のCPIは4.9%)政策金利据え置きについても、米国と比べると、まだ周回遅れといった印象です。

ウクライナ高官が「すでに始まっている」と述べていた、ウクライナ軍による大規模攻撃が5日、ウクライナ東部ドネツク州で確認されたとロシア国防省が発表しています。ただ発表では、「複数の戦車や機械化大隊を含む攻撃だったが、敵は目的を達成することなく、不首尾に終わった」と声明文で説明しています。一方ウクライナの国防次官は、「ロシア当局者がバフムト周辺での敗北から気をそらせようとして偽情報を流している」と反論しています。多くのメディアは、長く計画されていたウクライナの反転攻勢は開始された可能性が高いと伝えています。

本日のドル円は138円50銭〜140円30銭程度を予想します。

佐藤正和の書籍紹介

これだけ! FXチャート分析 三種の神器

これだけ! FXチャート分析 三種の神器
著者:佐藤正和
出版社:クロスメディア・パブリッシング

チャートがしっかり読めるようになるFX入門

チャートがしっかり読めるようになるFX入門
著者:佐藤正和
出版社:翔泳社

What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/5 ラガルド・ECB総裁 「物価圧力は依然強い。中期で2%のインフレ目標に速やかに戻すため、政策金利を十分に景気抑制的な水準へと確実に導き、必要な限りその水準据え置く」 --------
6/5 ナーゲル・ドイツ連銀総裁 「金融政策担当者はインフレとの闘いで手綱を緩めることは出来ず、そうするつもりもない」、「現在の状況を踏まえれば、複数回の利上げがまだ必要だ」 --------
6/1 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「政策金利を据え置き、インフレ率を適時に目標に戻すための仕事を金融政策に任せることが可能な地点に近づいていると考える」 株と債券が買われ、ドル安を演出。
5/31 コリンズ・ボストン連銀総裁 「米金融当局は実に高すぎるインフレの抑制に努めている」 --------
5/31 ボウマン・FRB理事 (家賃の下落や不動産価格が横ばいで推移していることを例に挙げ)、「これはインフレ率の低下を目指す当局の闘いに影響を及ぼし得る」 --------
5/31 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「一度様子を見ていいだろうと思う」と述べ、「6月会合では、私は利上げ見合わせを検討する陣営に確実に入っている」 市場はドル売りで反応。
5/31 ジェファーソン・FRB理事 「次回会合で政策金利の据え置きを決定しても、今サイクルのピーク金利に達したと解釈すべきではない」、「実際には、次回会合で利上げを見送ることは、追加引き締めの程度について決定する前に委員会がより多くのデータを見ることを可能にするだろう」 市場はドル売りで反応。
5/30 神田・財務省財務官 「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度の変動は好ましくない」、「為替市場の動向をしっかり注視し、必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」 ドル円141円手前から140円12銭まで下落。
5/30 植田・日銀総裁 「賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%の物価上昇の達成にはまだ時間があると考えているので、粘り強く金融緩和をというスタンスだ」 ドル円140円台前半から140円93銭まで上昇。日経平均株価はマイナス圏か120円を超える上昇。
5/25 植田・日銀総裁 「国民全員にかなり大きな負担になっている」、「サービス部門での価格上昇も進んでいる。原料価格が低下しても、需要面の高まりから物価高が継続する可能性が高い」、「基調適な物価上昇率はすこしずつ上がってきているのは事実だが、持続的・安定的(な達成)には届いていない」、「政策の継続、修正については効果と副作用をみて判断する。(効果と副作用の)バランスに変化があれば修正はあり得る」(日経新聞とのインタビューで) --------
5/25 コリンズ・ボストン連銀総裁 「インフレ率はまだ高過ぎるが、緩和を示す有望な兆候もいくつかある」、「われわれは利上げを一時停止できる地点、あるいはその近くにいるのではないかと考える」 --------
5/24 ウォラー・FRB理事 「インフレが2%目標に向って低下しつつある明確な兆候が得られるまで、利上げを停止することは支持しない」、「6月会合で利上げを実施するべきか見送るべきか向こう3週間に発表されるデータ次第になる」 株安、債券安が進み、金利上昇に伴いドル円は138円台半ばから139円台半ばまで上昇。半年ぶりのドル高を示現。
5/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレが高水準にとどまり、われわれの認識より定着するようになった場合、政策金利をより長期にわたって高い水準に維持する必要が出て来る。そうなれば、銀行セクターへの圧力は強まる」 --------
5/22 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレに十分な下押し圧力を与え、物価上昇率をタイムリーに目標水準に押し戻すためには、政策金利を引き上げざるを得なくなるだろうと」、「今年はあと2回の行動を考えている。具体的にいつになるかは分からないが、遅いより早い方がよいとこれまでにたびたび提唱してきた」、「労働市場が非常に好ましい状況にあるのは、インフレと闘い、目標物価に戻すには非常に都合が良い」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は138円台半ばまで上昇。
5/22 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今の段階では、6月会合での利上げもしくは利上げ見送りのどちらも判断が際どく、五分五分だ。重要なのは、われわれの作業は終了したと示唆しないことだと考える」 --------
5/22 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「政策の選択肢については予断を持っていない」 --------
5/22 デーリー・SF連銀総裁 「与信環境の引き締まりが、2回の利上げに相当し得る」 --------
5/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「大きな変化がない限り、現時点では事態がどう進展するか様子を見ることに違和感はない」 --------
5/19 パウエル・FRB議長 「追加引き締めが適切か、何の決定も下していない」、「結果的に政策金利をそれほど上げる必要はないかもしれない」、「インフレ抑制に失敗すれば(人々の感じる)痛みが長引くだけでなく、最終的に物価の安定を取り戻すための社会コストがより増えることになる」、「これまでのところ、インフレ抑制に時間がかかるというFOMCの見方を支持していると」 株価の下落をやや抑制。ドル円の下げにつながる。
5/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「ここからはもう少し速度を落としてもいいだろうという考えを排除しない」 --------
5/18 ジェファーソン・FRB理事 「金融政策の作用には長期的かつ変動的な遅れがあり、金利上昇の影響を需要が最大限に受けるのに1年は十分な期間でないことは歴史が示している」、「この先の金融政策における適切なスタンスを考える上で、今後数週間はあらゆる要素を考慮するつもりだ」 --------
5/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「過去10回のFOMC会合全てでFF金利誘導目標レンジを引き上げてきたことで、われわれは一定の進展を遂げた。今後数週間に入手するデータで利上げ停止が適切になることが示される可能性もある。だがきょう現在においては、まだその状況に達していない」 --------
5/16 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鎮静化に成功したとの証はまだ得ていない」、「さらなる利上げが必要であれば、そうすることに異論はない」 --------
5/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策は経済の長期的な成長率に影響を与えることはできないが、経済を物価安定の状態に戻すことで役割を果たすことは可能であり、それは労働市場や金融システム、経済全体のより長期的な健全性のために必要だ」 --------
5/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これまでの急速利上げによる影響の多くがいまだ経済に浸透しつつあるところだ」、「FOMCは次の一手を判断する上で注意が必要になる」「6月13−14日に開かれるFOMCで当局者がどうすべきか述べるのは時期尚早だ」、(5月会合で利上げを支持した自身の判断は)、「銀行セクターで起きている混乱を考え、五分五分だった」 --------
5/15 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「労働市場は依然として過熱状態にあり、あまり軟化していない。つまり、インフレ鈍化にはまだ長い道のりが残されているということだ。インフレ鈍化のため、われわれ金融当局としてなすべき仕事が恐らくさらにあるだろう」 --------
5/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2024年に入ってしばらくするまでわれわれが実際に利下げを検討することはない、というのが私の基本シナリオだ」、「インフレ指標の大半は、依然とし当局目標の2倍だ。つまり、残された道のりはまだ長いということだ」 --------
5/14 ジェファーソン・FRB理事 「3月に予想に反して下落した中古車価格を除いては、コア物価のディスインフレは想定よりも緩やかなペースで起きている。金融政策は経済とインフレに長期かつ様々な時間差を伴って影響を与えるもので、われわれの急速な引き締めの十分な効果は依然としてこれから表れる公算が大きい」 --------
5/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 信用状況の推移とそれが成長や雇用、インフレの見通しに与える影響見極めに特に重点を置いていく」、(FOMCは来月利上げを停止するのかとの繰り返しの質問に対して)、「政策は会合ごとに定められ、入手するデータによって決まる」、(利下げに関する質問には)、「私の基本的な予想では、年内に利下げする理由はどこにも見当たらない」、「かなり長期間、景気抑制的な政策スタンスを維持する必要があるというのが私の予想だ」(当局が目標とする)「2%に戻すには時間がかかり、2%の目標は2年かけて到達する」 --------
5/5 パウエル・FRB議長 (金融不安が収まらないことに触れ)「状況はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭だ」、「深刻なストレスがかかる時間に区切りをつけるための重要な一歩だ」、(銀行破綻については)、「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」、(足元のインフレについて)、「幾分緩やかになっているが、依然として強い」、(金融政策が十分引き締め的な水準かと問われて)、「見極めているところだ」 --------
5/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「この15カ月における積極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、2%目標への軌道に乗っているかどうかはあまりはっきりしていない」、「これから出て来る経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信するには『インフレ率の有意な低下』を確認しなければならないだろう」 --------
5/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (金融セクターの混乱について)、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そうした展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要があるのは確かだ」と語り、「われわれはデータを注視する必要がある」 --------
5/1 イエレン・財務長官 ( 債務上限問題について)、「われわれの最善の予測では、6月初旬までには政府の支払い義務全てを履行し続けてことができなくなる。早ければ6月1日の可能性もある」 --------
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和