今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「カナダ中銀利上げでドル円140円台に」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • カナダ中銀が予想外の利上げを決めたことで、ドル円は139円前後から140円台に上昇。米金融当局による利上げが続くとの見方から140円25銭までドル高に。
  • ユーロドルは引き続き方向感が見えず、1.07台前半で小動き
  • 株式市場は米金利が大きく上昇したことを受けナスダックが大幅な下げに。ダウは91ドル上昇するなど、まちまちの展開。
  • 債券は大幅に下落。カナダ中銀の利上げが飛び火した格好で、長金利は3.8%近辺まで上昇。
  • 金は3日ぶりに反落し、原油は反発。
ドル/円 139.03 〜 140.25
ユーロ/ドル 1.0692 〜 1.0740
ユーロ/円 149.27 〜 150.02
NYダウ +91.74 → 33,665.02ドル
GOLD −23.10 → 1,958.40ドル
WTI +0.79 → 72.53ドル
米10年国債 +0.135 → 3.795%

本日の注目イベント

  • 豪 豪4月貿易収支
  • 日 1−3月GDP(改定値)
  • 日 4月貿易収支
  • 日 4月国際収支・貿易収支
  • 日 5月景気ウオッチャー調査
  • 欧 ユーロ圏1−3月期GDP(確定値)
  • 米 新規失業保険申請件数

本日のコメント

「カナダからの手紙」ならぬ、「カナダからの利上げ」により、ドル円は139円を割り込みそうな雰囲気の状況から一転して買われ、140円25銭まで反発しました。カナダ中銀(BOC)は7日、市場予想に反して政策金利である翌日物金利を0.25ポイント引き上げ、「4.75%」にすることを発表しました。

市場では今回の会合では利上げはないと予想していたこともあり、発表後カナダドルが買われたのはもちろんですが、米国のインフレも終わらないとの見方が強まり、金利上昇に弱いナスダックと米債券が大きく売られ、長期金利は3.8%に迫る水準まで上昇。金利上昇に反応してドル円は発表後に1円以上も円安が進みました。前日にはオーストラリア準備銀行(RBA)が予想外の利上げを決めたこともあり、主要国でのインフレの波はまだ引く気配がないというのが共通の認識になりつつあります。BOCは声明で、「経済における需要過剰は総じて、想定より根強いように見受けられる」と指摘し、「需給のバランスを取り戻し、インフレ率を持続的に2%の目標へと回帰させられるほど、金融政策は十分ではなかった」と説明し、予想を上回る1−3月期GDP成長率やインフレ率上昇、住宅市場での活動回復などを理由に挙げています。BOCは昨年インフレの波が世界中に伝播した際、他の中銀に先行する形で利上げに踏み切り、また大幅な利上げの効果を見極めるため、これも他の中銀に先駆けて利上げを見送るなど、同中銀には機動性と先見性があるように、筆者は感じています。そのBOCが再び利上げに踏み切ったことで、FOMCにも何らかの影響を与える可能性もあるかもしれません。

経済協力開発機構(OECD)は7日最新の経済見通しで、「持続的インフレと主要国・地域の中央銀行による景気抑制的な金融政策が影響し、今年と来年の世界経済の回復ペースが、新型コロナウイルスのパンデミック以前の勢いを取り戻せず、ロシアのウクライナ侵攻に伴うショックからの回復も弱い」との予測を発表しました。今年の世界の経済成長率は「2.7%」で、来年は「2.9%」と、パンデミック前7年間の平均である「3.4%」にはいずれも届かないとの予想でした。国別では、日本は今年が「1.3%」、と3月の「1.4%」から引き下げ、来年は「1.1%」に据え置いています。また米国は今年「1.6%」、来年「1%」、ユーロ圏の今年は「0.9%」、来年を「1.5%」とし、中国は今年「5.4%」、来年「5.1%」と予測し、相対的に緩慢な回復を予想しています。(ブルームバーグ)

トルコリラが再び最安値を更新しています。エルドアン大統領が新政権の財務相に起用した元メリルリンチ(現BofA)のストラテジストのシムシエキ元副首相が同国中央銀行に対して、国営銀行を通じた為替市場への介入を緩和するよう要請したと、事情に詳しい関係者が7日ブルームバーグに明らかにしたことがきっかけでした。ブルームバーグは「複数のトレーダーによると、国営銀行がリラ防衛のためドル売りを停止した。新政権がコスト負担の大きい為替介入を断念する兆候とみられている」と報じています。リラはここ1年余りで最大の下落となり、対ドルでは一時23.17リラと、約7%安となり、対円でも5円台前半まで下げる場面があったようです。リラ円は昨年12月には6円台前半まで下げ最安値を記録しましたが、この時はドル円が大きく円高方向に振れたことが主因でした。日銀決定会合で、10年債の誘導目標金利をそれまでの「0.25%」から「0.5%」に突然拡大することを決めた、あの「黒田ショック」です。ドル円が137円台前半からNYでは130円台半ばまで、急激に円高が進んだことでリラ円が急落しました。昨日はその水準を大きく下回る場面がありました。

ドル円は139円から140円台で一進一退の展開です。来週のFOMC会合では上記両国中銀の予想外の利上げもあり、再び0.25ポイントの利上げを織り込む動きになるなど、先行きが見通せないだけに神経質な動きになっています。本日のドル円は139円〜140円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
6/7 カナダ中銀声明 「経済における需要過剰は総じて、想定より根強いように見受けられる」、「需給のバランスを取り戻し、インフレ率を持続的に2%の目標へと回帰させられるほど、金融政策は十分ではなかった」 予想外の利上げでカナダドルが買われ、ドル円も139円前後から140円台前半まで上昇。
6/6 ロウ・RBA総裁 「インフレ率はピークを過ぎたが、なお高すぎる」と述べた上で、「適切な時間枠でインフレ率を確実に目標に戻すには、金融政策の一定の追加引き締めが必要かもしれない」、「特に経済の生産力が限られ、失業率がなお非常に低い状況を考えれば、高インフレ持続の期待が物価と賃金の両方にとって、より大幅な押し上げ要因になるリスクを政策委員会は引き続き警戒する」 政策金利引き上げに伴い豪ドル円は92円台前半から93円台まで急伸。
6/5 ラガルド・ECB総裁 「物価圧力は依然強い。中期で2%のインフレ目標に速やかに戻すため、政策金利を十分に景気抑制的な水準へと確実に導き、必要な限りその水準据え置く」 --------
6/5 ナーゲル・ドイツ連銀総裁 「金融政策担当者はインフレとの闘いで手綱を緩めることは出来ず、そうするつもりもない」、「現在の状況を踏まえれば、複数回の利上げがまだ必要だ」 --------
6/1 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「政策金利を据え置き、インフレ率を適時に目標に戻すための仕事を金融政策に任せることが可能な地点に近づいていると考える」 株と債券が買われ、ドル安を演出。
5/31 コリンズ・ボストン連銀総裁 「米金融当局は実に高すぎるインフレの抑制に努めている」 --------
5/31 ボウマン・FRB理事 (家賃の下落や不動産価格が横ばいで推移していることを例に挙げ)、「これはインフレ率の低下を目指す当局の闘いに影響を及ぼし得る」 --------
5/31 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「一度様子を見ていいだろうと思う」と述べ、「6月会合では、私は利上げ見合わせを検討する陣営に確実に入っている」 市場はドル売りで反応。
5/31 ジェファーソン・FRB理事 「次回会合で政策金利の据え置きを決定しても、今サイクルのピーク金利に達したと解釈すべきではない」、「実際には、次回会合で利上げを見送ることは、追加引き締めの程度について決定する前に委員会がより多くのデータを見ることを可能にするだろう」 市場はドル売りで反応。
5/30 神田・財務省財務官 「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度の変動は好ましくない」、「為替市場の動向をしっかり注視し、必要があれば適切に対応していく考えに変わりはない」 ドル円141円手前から140円12銭まで下落。
5/30 植田・日銀総裁 「賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%の物価上昇の達成にはまだ時間があると考えているので、粘り強く金融緩和をというスタンスだ」 ドル円140円台前半から140円93銭まで上昇。日経平均株価はマイナス圏か120円を超える上昇。
5/25 植田・日銀総裁 「国民全員にかなり大きな負担になっている」、「サービス部門での価格上昇も進んでいる。原料価格が低下しても、需要面の高まりから物価高が継続する可能性が高い」、「基調適な物価上昇率はすこしずつ上がってきているのは事実だが、持続的・安定的(な達成)には届いていない」、「政策の継続、修正については効果と副作用をみて判断する。(効果と副作用の)バランスに変化があれば修正はあり得る」(日経新聞とのインタビューで) --------
5/25 コリンズ・ボストン連銀総裁 「インフレ率はまだ高過ぎるが、緩和を示す有望な兆候もいくつかある」、「われわれは利上げを一時停止できる地点、あるいはその近くにいるのではないかと考える」 --------
5/24 ウォラー・FRB理事 「インフレが2%目標に向って低下しつつある明確な兆候が得られるまで、利上げを停止することは支持しない」、「6月会合で利上げを実施するべきか見送るべきか向こう3週間に発表されるデータ次第になる」 株安、債券安が進み、金利上昇に伴いドル円は138円台半ばから139円台半ばまで上昇。半年ぶりのドル高を示現。
5/23 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「インフレが高水準にとどまり、われわれの認識より定着するようになった場合、政策金利をより長期にわたって高い水準に維持する必要が出て来る。そうなれば、銀行セクターへの圧力は強まる」 --------
5/22 ブラード・セントルイス連銀総裁 「インフレに十分な下押し圧力を与え、物価上昇率をタイムリーに目標水準に押し戻すためには、政策金利を引き上げざるを得なくなるだろうと」、「今年はあと2回の行動を考えている。具体的にいつになるかは分からないが、遅いより早い方がよいとこれまでにたびたび提唱してきた」、「労働市場が非常に好ましい状況にあるのは、インフレと闘い、目標物価に戻すには非常に都合が良い」 債券が売られ金利が上昇。ドル円は138円台半ばまで上昇。
5/22 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「今の段階では、6月会合での利上げもしくは利上げ見送りのどちらも判断が際どく、五分五分だ。重要なのは、われわれの作業は終了したと示唆しないことだと考える」 --------
5/22 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「政策の選択肢については予断を持っていない」 --------
5/22 デーリー・SF連銀総裁 「与信環境の引き締まりが、2回の利上げに相当し得る」 --------
5/22 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「大きな変化がない限り、現時点では事態がどう進展するか様子を見ることに違和感はない」 --------
5/19 パウエル・FRB議長 「追加引き締めが適切か、何の決定も下していない」、「結果的に政策金利をそれほど上げる必要はないかもしれない」、「インフレ抑制に失敗すれば(人々の感じる)痛みが長引くだけでなく、最終的に物価の安定を取り戻すための社会コストがより増えることになる」、「これまでのところ、インフレ抑制に時間がかかるというFOMCの見方を支持していると」 株価の下落をやや抑制。ドル円の下げにつながる。
5/19 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「ここからはもう少し速度を落としてもいいだろうという考えを排除しない」 --------
5/18 ジェファーソン・FRB理事 「金融政策の作用には長期的かつ変動的な遅れがあり、金利上昇の影響を需要が最大限に受けるのに1年は十分な期間でないことは歴史が示している」、「この先の金融政策における適切なスタンスを考える上で、今後数週間はあらゆる要素を考慮するつもりだ」 --------
5/18 ローガン・ダラス連銀総裁 「過去10回のFOMC会合全てでFF金利誘導目標レンジを引き上げてきたことで、われわれは一定の進展を遂げた。今後数週間に入手するデータで利上げ停止が適切になることが示される可能性もある。だがきょう現在においては、まだその状況に達していない」 --------
5/16 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレ鎮静化に成功したとの証はまだ得ていない」、「さらなる利上げが必要であれば、そうすることに異論はない」 --------
5/16 メスター・クリーブランド連銀総裁 「金融政策は経済の長期的な成長率に影響を与えることはできないが、経済を物価安定の状態に戻すことで役割を果たすことは可能であり、それは労働市場や金融システム、経済全体のより長期的な健全性のために必要だ」 --------
5/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「これまでの急速利上げによる影響の多くがいまだ経済に浸透しつつあるところだ」、「FOMCは次の一手を判断する上で注意が必要になる」「6月13−14日に開かれるFOMCで当局者がどうすべきか述べるのは時期尚早だ」、(5月会合で利上げを支持した自身の判断は)、「銀行セクターで起きている混乱を考え、五分五分だった」 --------
5/15 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁 「労働市場は依然として過熱状態にあり、あまり軟化していない。つまり、インフレ鈍化にはまだ長い道のりが残されているということだ。インフレ鈍化のため、われわれ金融当局としてなすべき仕事が恐らくさらにあるだろう」 --------
5/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「2024年に入ってしばらくするまでわれわれが実際に利下げを検討することはない、というのが私の基本シナリオだ」、「インフレ指標の大半は、依然とし当局目標の2倍だ。つまり、残された道のりはまだ長いということだ」 --------
5/14 ジェファーソン・FRB理事 「3月に予想に反して下落した中古車価格を除いては、コア物価のディスインフレは想定よりも緩やかなペースで起きている。金融政策は経済とインフレに長期かつ様々な時間差を伴って影響を与えるもので、われわれの急速な引き締めの十分な効果は依然としてこれから表れる公算が大きい」 --------
5/9 ウィリアムズ・NY連銀総裁 信用状況の推移とそれが成長や雇用、インフレの見通しに与える影響見極めに特に重点を置いていく」、(FOMCは来月利上げを停止するのかとの繰り返しの質問に対して)、「政策は会合ごとに定められ、入手するデータによって決まる」、(利下げに関する質問には)、「私の基本的な予想では、年内に利下げする理由はどこにも見当たらない」、「かなり長期間、景気抑制的な政策スタンスを維持する必要があるというのが私の予想だ」(当局が目標とする)「2%に戻すには時間がかかり、2%の目標は2年かけて到達する」 --------
5/5 パウエル・FRB議長 (金融不安が収まらないことに触れ)「状況はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭だ」、「深刻なストレスがかかる時間に区切りをつけるための重要な一歩だ」、(銀行破綻については)、「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」、(足元のインフレについて)、「幾分緩やかになっているが、依然として強い」、(金融政策が十分引き締め的な水準かと問われて)、「見極めているところだ」 --------
5/5 ブラード・セントルイス連銀総裁 「この15カ月における積極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、2%目標への軌道に乗っているかどうかはあまりはっきりしていない」、「これから出て来る経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信するには『インフレ率の有意な低下』を確認しなければならないだろう」 --------
5/5 グールズビー・シカゴ連銀総裁 (金融セクターの混乱について)、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そうした展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要があるのは確かだ」と語り、「われわれはデータを注視する必要がある」 --------
5/1 イエレン・財務長官 ( 債務上限問題について)、「われわれの最善の予測では、6月初旬までには政府の支払い義務全てを履行し続けてことができなくなる。早ければ6月1日の可能性もある」 --------
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和