「ドル円9カ月ぶりに145円台半ばに」
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場- ドル円は続伸。東京時間に145円22銭まで買われた後上値を重くしたものの、NYでは金利上昇を手掛かりに145円57銭までドル高が進行。
- ユーロドルは反落。1.0874まで売られる。
- 株式市場は3指数が揃って上昇。ハイテク株が買われ、ナスダックは143ポイント高。
- 債券は続落。長期金利は一時4.21%まで上昇し、4.19%台で引ける。
- 金と原油は続落。
| ドル/円 | 145.10 〜 145.57 |
|---|---|
| ユーロ/ドル | 1.0874 〜 1.0940 |
| ユーロ/円 | 158.24 〜 158.80 |
| NYダウ | +28.23 → 35,307.63ドル |
| GOLD | −2.60 → 1,944.00ドル |
| WTI | −0.68 → 82.51ドル |
| 米10年国債 | +0.039 → 4.191% |
本日の注目イベント
- 豪 RBA、金融政策会合議事要旨公表
- 豪 豪第3四半期賃金指数
- 日 4−6月GDP(速報値)
- 日 6月鉱工業生産(確定値)
- 中 中国7月小売売上高
- 中 中国7月鉱工業生産
- 独 独8月ZEW景況感指数
- 英 英ILO失業率(4−6月)
- 英 英6月失業率
- 米 7月小売売上高
- 米 8月NY連銀製造業景況指数
- 米 7月輸入物価指数
- 米 7月輸出物価指数
- 米 8月NAHB住宅市場指数
- 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
- 加 カナダ7月消費者物価指数
本日のコメント
先週末のNYでは145円ちょうどまで買われたドル円は、昨日の東京時間の朝方には145円22銭まで上昇する場面もありましたが、その後日経平均株価の大幅安もあり、上値を重くしましたが、NYでは米金利高を手掛かりに再びドル高が進む。昨年11月以来となる145円57銭まで円が売られました。
昨日の午後、ある通信社の記者の方から電話取材を受けた際、筆者が「政府・日銀による介入には気を付けたい水準ですね」と話すと、「いや、神田財務官は今日は夏休みだそうですよ」と答えてくれました。そうだとすれば、ドル高が進んだ今日も「夏休み」で財務官は陣頭指揮を取れないことから、「介入はない?」のかもしれません。ただ実際には、常に連絡は取れる状況であることは間違いないところで、「夏休み」は関係ありません。要は、介入するとすれば、その効果が最大になる機会を狙っていると考えられます。実弾による介入はないとしても口先介入は容易に想定できる水準です。
今朝の報道では「株安が進む中でも円安。何かの変調か」といった論調の記事が多かったようです。株式は「リスク資産」であるため、株式が買われるとリスクオンから低金利の円は売られやすく、円安に振れる可能性が高く、逆に株安は円高に振れる傾向があります。また株安の局面ではドル建ての日経平均株価が下がるため、ヘッジの意味もありドルが売られるとの説明もあります。従って昨日の東京市場の様に、円安と株安が同時に大きく進むケースはまれなことと言えます。ただ、海外投資家が日本株を買う場合、必ずしもドルを売って円を調達し、その円で日本株を買うだけではありません。バークシャー・ハザウェーのウォーレン・バフェットのように、日本で円建て債券(サムライ債)を起債し、ここで調達した円で日本株を買うケースもあります。このケースでは為替リスクがないだけではなく、バークシャーのような「優良企業」は調達コストが非常に低く、実際今年4月に発行した1600億円程の資金の金利は0.97%程度だったようです。広く報道されたようにバークシャーはこの円資金で日本の5大商社株を購入しました。その後商社株は大きく上昇し、バークシャーは相当の含み益を抱えていると言われています。さらに商社株の配当利回りは高く、少なくとも3−5%程あります。同社は基本的には短期売買は行わないため、ここでも配当から調達コストの0.97%を引いた「2−4%程度の利益」を享受できることになります。まさに「投資の神様、ウォーレン・バフェット」です。
NY連銀が発表した調査結果によれば、1年後のインフレ期待率は7月に「3.5%」と、前月の「3.8%」から低下し、3年、5年後のインフレ期待率もいずれも「2.9%」と、前月の「3%」から低下していました。短期的なインフレ見通しの改善はあらゆる層で「幅広く」見られ、食料品や医療費、家賃といった必要不可欠な生活費は今後1年間でより小幅な上昇になると見込まれています。(ブルームバーグ)この調査結果は、先週末に発表されたミシガン大学消費者マインドのインフレ期待値と一致しており、多くの米国民が今後米国のインフレ率は緩やかに鈍化していくと考えていることになります。
円の弱さは目立ちますが、昨日はドルの強さが際立っており、主要通貨だけではなく、新興国通貨もドルに対して大きく売られました。アルゼンチン・ペソが大きく売られ、ロシア・ルーブルも節目の「100」を割り込んでいます。また、オフショア人民元も続落し、昨年11月上旬以来の安値を記録しました。米10年物の「実質利回り」(インフレ調整後の利回り)が昨日は1.78%まで上昇。2009年以来の高水準に近づき、魅力的なドルに資金が向っているとの指摘もあります。
ドル円は既に年初来高値を更新中です。チャートでは昨年10月に記録した151円94銭まで目立ったレジスタンスはありません。市場のモメンタムもドル買いに傾いてはいますが、毎度のことですが注意は怠らないように。
本日のドル円は144円50銭〜146円30銭程度を予想します。
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What's going on?
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
| 日時 | 発言者 | 内容 | 市場への影響 |
|---|---|---|---|
| 8/7(8月2日NYTとのインタビューで) | ウィリアムズ・NY連銀総裁 | 「金融政策は好ましい位置にある。政策はあるべきところにある。ピーク金利の観点でこれを調整する必要があるかどうか、また景気抑制的なスタンスをどれくらい長く続ける必要があるかはデータ次第になる」、「景気抑制的なスタンスを当面は維持する必要があると想定している」、「追加利上げの必要性については、議論の余地がある」、「インフレ率が下がり続ける場合、実質金利がさらに上がらないよう、2024年か25年に金利を引き下げる必要があるかもしれない」 | -------- |
| 8/7 | ボウマン・FRB理事 | 「私は7月のFOMC会合でフェデラルファンド(FF)金利の引き上げを支持した。インフレ率をFOMCの目標に低下させるには、追加利上げが必要になる可能性が高いと想定している」、「今後発表されるデータ次第になる」 | -------- |
| 8/4 | ボウマン・FRB理事 | 「インフレ率をFOMCの目標である2%に押し下げるには、追加利上げが必要になる可能性が高い」、「最近のインフレ鈍化は好ましいが、追加利上げとフェデラルファンド(FF)金利がいつまで景気抑制的な水準にとどまる必要があるのかを検討する際、私はインフレ率が2%の物価目標に向って有意な下降線をたどっているという一貫した証拠を探すつもりだ」、「個人消費鈍化と労働市場環境緩和の兆しにも注意する」 | -------- |
| 8/1 | ボスティック・アトランタ連銀総裁 | (9月会合で)「仮に投票権を持っていたなら、不本意ながら支持しただろう」「基本的な見解は変っていないが、当局は9月までに多くの追加データを入手することになるため、自身の予想に反するデータがあれば、9月会合の見通しを調整することもいとわない」、「現在、当局は過度の引き締めのリスクが多少ある段階にあると思う。そのことを念頭に置いておかなければならない」 | -------- |
| 7/31 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | 「インフレの鈍化を示すデータは素晴らしいニュースだ」、「9月にどう動くべきか私はまだ判断していない」、「政策金利が十分に景気抑制的であるかどうか金融当局は臨機応変でなければならない。次回の会合までに、さらにいくつかの重要なデータが得られる」、「しかし、われわれはかなり良い線を進んでいるように見える」 | -------- |
| 7/27 | ラガルド・ECB総裁 | 9月とその後の決定についてはオープンな考えだ。利上げをするかもしれないし、据え置くかもしれない」、(据え置く場合は)「必ずしも長期間続けるとは限らない」 | -------- |
| 7/27 | ECB声明文 | 将来の決定はインフレ率が中銀目標の2%に速やかに戻るよう、必要な限り政策金利が十分に景気抑制的な水準に設定されていることを確実にする」、「政策委員会は景気抑制の適切な水準と期間を決定するに当たり、データ依存のアプローチを続ける」 | -------- |
| 7/26 | FOMC声明文 | 「最近の複数の指標は、経済活動が緩やかに拡大してきていることを示唆する。雇用の伸びはここ数カ月堅調で、失業率は低いままだ。インフレは依然として高水準にある」、「委員会は引き続き、インフレリスクに細心の注意を払っている。委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す。これらの目標実現を支えるため、委員会はFF金利誘導目標のレンジを5.25−5.5%に引き上げることを決めた」 | -------- |
| 7/26 | パウエル・FRB議長 | 「この先、適切と考えられる追加政策引き締めの程度を決定する上では、引き続きデータ重視のアプローチで臨む」と述べ、また「データが正当化すれば、9月会合で再び利上げする可能性は当然あると言えよう。そして、同会合で金利据え置きを選択する可能性もあると言っておく」、「スタッフは現在、成長の顕著な減速が年内に始まると予想しているが、最近の経済に見られる強靭性から、もはやリセッションは見込んでいない」 | 発言内容が「ハト派」と受け止められ、ドル円は140円を割り込む場面も。 |
| 7/20 | バーナンキ・元FRB議長 | 「7月の利上げが最後となることはあり得る」、「インフレ率は向こう6カ月で3−3.5%へと、より持続的に低下すると見ている。家賃の上昇幅が縮小し、自動車価格が下落する」、「FOMCはそこから時間をかけて2%目標に押し下げようとするだろう」、「FRBがインフレとの闘いで勝利を宣言するには、その前に労働市場で需給バランスの改善を確認したいだろう」、「依然としてかなりホットだ」(米景気のリセッションについて)、「向こう1年で深刻なリセッションになるとすれば、非常に驚く」 | -------- |
| 7/18 | 植田・日銀総裁 | 「金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策の下で粘り強く金融緩和を続けてきた」、「目標との距離や見通しを毎回の金融政策決定会合できちんとチェックし、その前提が変わらない限り、全体のストーリーは不変だ」 | ドル円137円台後半から139円台前半に急騰。 |
| 7/17 | イエレン・財務長官 | 「多くの国が自国経済の促進に向け、力強い中国の成長に依存している。特にアジアの諸国がそうだ。中国の成長減速は米国にある程度の悪影響を及ぼす可能性もある」、「米国の成長は減速したが、労働市場はかなりの力強さを維持している。リセッションは予想していない。米国は労働市場の大幅な軟化を伴わずにインフレ率を低下させる、『好ましい軌道』を進んでいると考える」 | -------- |
| 7/13 | デーリー・SF連銀総裁 | 「インフレとの闘いで勝利宣言するのは実に早すぎる」、「インフレを2%に押し下げる決意は変わらないため、これについては様子見モードだ」 | -------- |
| 7/12 | ブレイナード・米国家経済会議委員長 | 「リセッションがすぐそこまで来ているとの予想が繰り返されているが、米国の景気回復は堅調で、インフレ率は低下している」、「著しい雇用破壊が伴わなければインフレ率は下がらないとの予測が覆されている」、「これらの経済的利益は偶然に生じたものではなく、熟慮された戦略がなければ維持することはできない」 | -------- |
| 7/12 | バーキン・リッチモンド連銀総裁 | 「インフレ率は高過ぎる。われわれの目標は2%だ」、「手を引くのが早すぎればインフレが再び強まり、そうなれば米金融当局はさらなる行動が必要になる」 | -------- |
| 7/10 | ベイリー・BOE総裁 | 「英国のインフレ率は年内に著しく低下する公算が大きく、利上げの影響はまだ完全には経済に表れていない」 | -------- |
| 7/10 | デーリー・サンフランシスコ連銀総裁 | 「インフレ率を持続可能な2%水準に沿った軌道へと確実に戻すため、年内あと2回の利上げが必要になる公算が大きい」 | -------- |
| 7/10 | バー・FRB副議長 | 「インフレはまだかなり高すぎる。この1年余りにわたって、金融政策で多くの進展を遂げてきた。それは必要な仕事だ」と述べた上で、「あと少しだが、まだやるべき仕事がある」 | -------- |
| 7/10 | メスター・クリーブランド連銀総裁 | インフレが持続的かつ時宜を得た形で2%へと戻ることを確実にするためには、政策金利が現行の水準からさらに幾分か上昇する必要があるというのが私の見解だ。その後は、経済の進展状況についてさらなる情報を収集する中で、政策金利をしばらく据え置く必要がある」 | -------- |
| 7/7 | グールズビー・シカゴ連銀総裁 | (雇用統計について)「より持続可能なペースになりつつある。インフレにとってはこうした動きが必要だ」、「現時点における米金融当局の最優先目標はインフレを押し下げることで、われわれはそれに成功する。リセッションを起さずにそうすることが勝利となる。それは『黄金の道』で、その道を進んでいる感触を私は持っている」 | -------- |
| 7/6 | ローガン・ダラス連銀総裁 | 「インフレ率が持続可能かつ適時な形で目標に戻るかどうかについて、依然として非常に懸念している」、「物価安定と最大雇用というFOMCのゴールに達成するためには、より景気抑制的な金融政策が必要になると考える」 | ドル高に作用。 |
| 7/6 | 内田・日銀副総裁 | 「金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスを取って判断していきたい」、(その上で当面は)「YCCを続けていく」 | ドル円小幅に下落。 |
| 7/5 | FOMC議事録 | 「ほぼ全ての参加者がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5−5.25%に据え置くことが適切、あるいは容認できると判断した」、「一部の参加者は今会合で目標レンジを25ベーシスポイント(bp)引き上げる方が好ましい、ないし、そうした提案を支持できたかもしれないと表明した」 | 株と債券が売られ、ドルが上昇。 |
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書



