今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ドル円年明けは円安で始まる」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は続伸。リッチモンド連銀総裁の発言やFOMC議事録のタカ派的な内容にドル買いが優勢となり、ドル円は143円73銭まで上昇。
  • ユーロドルは続落。一時は1.09台を割り込み、ドル高の流れにユーロ売りが強まる。
  • 株式市場は3指数が揃って大幅下落。S&P500は3日続落。ナスダックも173ポイント下げ、前日の下げと合わせて2日で400ポイントを超える大幅下落。
  • 債券は買われ、長期金利は3.91%台に低下。
  • 金は大幅に下落。原油はリビア最大の油田が生産停止との報道に2ドルを超える上昇。
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12月ISM製造業景況指数 → 47.4
11月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 879.0万件
12月自動車販売台数 → 1583万台
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ドル/円 142.82 〜 143.73
ユーロ/ドル 1.0893 〜 1.0938
ユーロ/円 156.03 〜 156.78
NYダウ −284.85 → 37,430.19ドル
GOLD −30.60 → 2,042.80ドル
WTI +2.32 → 72.70ドル
米10年国債 −0.013 → 3.916%

本日の注目イベント

  • 中 12月財新サービスPMI
  • 米 12月ADP雇用者数
  • 米 新規失業保険申請件数
  • 独 独12月消費者物価指数(速報値)
  • 独 独12月サービス業PMI(改定値)
  • 欧 ユーロ圏12月サービスPMI(改定値)
  • 米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)

本日のコメント

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。

さて、昨年は年末に向って「円高ドル安」の流れが進みましたが、2024年はその流れに逆らうようにやや、「ドル高円安」で始まりました。2023年最後の取引となる昨年末のNY市場では141円近辺でドル円は引けましたが、年明け2日には142円台に乗せ、昨日のNYではFOMC議事録の内容や、リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言を受け143円台後半までドルが買われています。

昨年12月12−13日に開催されたFOMC議事録が公開され、議事要旨では「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」と記されており、その上で、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」とありました。また議事要旨では、「インフレ面で明確な進展が見られた」と記され、「参加者の間でインフレの道筋に対する楽観が強まった」ことも示されましたが、市場は上記「インフレの鈍化が持続的に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」といった部分に反応し、さらに、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」と記された文言を受け、債券を買い、株式を売り、為替市場ではドル買いに動いた模様です。上記FOMCではパウエル議長の想定を超える「ハト派寄り」の発言をきっかけにドル売りが加速しましたが、その後、メンバーの多くはむしろ「タカ派寄り」であったことを考えると、議事録の内容と合わせ、パウエル議長の変身ぶりが突出していたようにも思えます。FOMC議事要旨の内容を裏付けるように3日、リッチモンド連銀のバーキン総裁はノースカロライナ州で講演を行い、「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」と述べています。バーキン総裁は、大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」と指摘し、「最近起きた長期金利の急低下が需要を過度に刺激し、インフレを高止まりさせる可能性には注意が必要」との認識を示しました。(ブルームバーグ)

2024年がスタートしました。今年は、元旦に能登半島で大規模な地震が発生し、4日朝の時点ではこの地震による死者は73人にも達しています。また翌2日には羽田空港で、日航機と海保機の衝突があり、こちらも海保側に5人の死者が出ています。日航機の乗客が全員無事だったことが、不幸中の幸いでしたが、2024年は、何やら不吉な年の前触れとも取れそうです。為替市場でも能登半島地震で、日銀による大規模な金融緩和政策の変更が遅れるとの観測から「円売り」が進んだ側面もあります。筆者も含め、大方の市場関係者は今年の相場を「円高が進む」と予想していますが、昨年の例もあり、注意は必要か思います。「FRBが利下げに踏み切る」、「日銀が金融政策の修正を行う」といった、この2つのイベントが、どちらか一方のタイミングがずれただけで相場展開は大きく変わる可能性があります。

本日のドル円は142円30銭〜143円80銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/24 石破・元自民党幹事長 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/20 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 --------
12/19 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない --------
12/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 --------
12/18 デーリー・SF連銀総裁 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/15 ブレイナード・NEC委員長 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 --------
12/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 --------
12/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 --------
12/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。
12/14 ラガルド・ECB総裁 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。
12/13 パウエル・FRB議長 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。
12/13 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 --------
12/6 シュナーベル・ECB理事 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。
12/5 ブロック・RBA総裁 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 --------
12/1 パウエル・FRB議長 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和