今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「ADP雇用者数予想を上回る」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • ドル円は米長期金利の上昇がけん引する形で144円85銭まで買われる。ADP雇用者数の発表に、米利下げ観測が後退。
  • ユーロドルは反発し1.09台半ばまで上昇。対円でもおよそ2週間ぶりに158円台半ばまで買われる。
  • 株式市場はまちまちの展開。ダウは朝方大きく上昇したが引けにかけて失速し、かろうじてプラスで引ける。他の2指数は続落。
  • ADP雇用者数の発表を受け債券は売られる。長期金利は3.99%台に上昇。
  • 金は反発し、原油は反落。
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12月ADP雇用者数 → 16.4万人
新規失業保険申請件数 → 20.2万件
12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 51.4
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ドル/円 144.12 〜 144.85
ユーロ/ドル 1.0933 〜 1.0966
ユーロ/円 157.55 〜 158.59
NYダウ +10.50 → 37,440.34ドル
GOLD +7.20 → 2,050.00ドル
WTI −0.51 → 72.19ドル
米10年国債 +0.083 → 3.999%

本日の注目イベント

  • 独 独11月小売売上高
  • 欧 ユーロ圏11月消費者物価指数(速報値)
  • 欧 ユーロ圏11月卸売物価指数
  • 米 12月雇用統計
  • 米 12月ISM非製造業景況指数
  • 米 バイデン大統領、演説(ペンシルベニア州)
  • 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
  • 加 カナダ12月新規雇用者数
  • 加 カナダ12月失業率

本日のコメント

12月のADP雇用者数が市場予想を超えていたことで米長期金利が上昇。ドル円は買われ、一時144円85銭と、145円に迫る水準までドル高が進みました。これで昨年末の水準から、わずか3営業日で3円85銭程ドル高が進んだことになります。昨日、日経ラジオの今年最初の番組に出演した際、「ドル円は日足で昨年11月13日の高値を起点とするレジスタンスラインと交差しており、明日の東京で、143円以上で取引が開始されれば上抜けが完成するため、ドル円は145円程度まで短期的には上昇する可能性もありそうです」とコメントしましたが、今朝は明確に上抜けを完成させています。

ドル円は昨年11月末に「一目均衡表の雲」を下抜けし、それまで続いていたドル高トレンドを転換しましたが、それ以来となる上昇傾向が示されてきました。ただ、筆者が重要だと考える「一目均衡表の雲」はまだ上方にあり上抜けしてはいません。現在、雲抜けとなる「先行スパン2」は149円29銭に位置しており、この先ドルが買われたとしても、余程のドル買い材料がない限りこの水準を抜けるのは容易ではないと思われます。その前に「先行スパン1」が位置する148円81銭近辺が重要になってくると考えます。12月のADP雇用者数は市場予想の「12.5万人」に対して「16.4万人」の増加でした。労働市場の熱気が冷めつつある中でも依然として企業が労働力を求めていると見られます。予想以上に強い労働データを受け、市場では利下げのタイミングを考え直す動きが広がり、昨日時点では70%だった3月利下げの織り込み確率は65%ほどに低下しています。また同じく発表された新規失業保険申請件数も昨年10月以来となる低水準で、継続受給者数も減少していました。いずれもADP雇用者数の結果と合致する内容です。今夜の12月の雇用統計でも同じような結果が示されるようだと、ドル円は145円を大きく超えて行く可能性もありますが、毎度の事ですが同指数とADPは必ずしも傾向が一致しないため、逆の可能性も意識しておく必要があります。

イランで3日に発生した爆発事件について、過激派組織「イスラム国」(IS)がテレグラムへの投稿を通じて犯行声明を出しています。同事件では100人近くが死亡しており、中東での緊張が一段と高まっています。ISによる爆破事件は、イスラエルによるガザ侵攻に反対するイランの姿勢に対応したものですが、ISが関与してきたことでイスラエルとパレスチナ自治区ガザとの紛争がますます複雑化し、過激化してきそうです。また、ロシアとウクライナの紛争についても、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「ロシアはここ数週間、ウクライナ空爆の一環として、北朝鮮から提供されたミサイルを発射している」と語っています。「ロシアが北朝鮮から提供されたミサイルは、少なくとも昨年12月30日と1月2日の2回の攻撃に使用されたと米国は考えている」と、ブルームバーグは伝えています。こちらもロシアの侵攻からまもなく2年になろうとしていますが、ロシア軍が攻勢に出ており、停戦の見通しは依然として闇の中です。

今夜発表の12月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は「17.5万人」と予想されており、前月の「19.9万人」から減少していると見込まれています。また失業率も前月の「3.7%」から悪化し「3.8%」の予想です。いずれも米労働市場の堅調さという点では問題はありませんが、予想からどこまでブレルかが焦点になります。

本日のドル円は143円70銭〜145円70銭程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/24 石破・元自民党幹事長 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/20 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 --------
12/19 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない --------
12/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 --------
12/18 デーリー・SF連銀総裁 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/15 ブレイナード・NEC委員長 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 --------
12/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 --------
12/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 --------
12/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。
12/14 ラガルド・ECB総裁 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。
12/13 パウエル・FRB議長 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。
12/13 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 --------
12/6 シュナーベル・ECB理事 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。
12/5 ブロック・RBA総裁 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 --------
12/1 パウエル・FRB議長 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和