今日のアナリストレポート[月〜金 毎日更新]

「WTI原油価格3ドルを超える下げに」

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場
  • 144円台半ばで取引が始まったドル円は、米金利の低下に143円67銭まで売られる。
  • ユーロドルは小幅に値を戻し、1.0979近辺まで上昇。
  • 株式市場は3指数が揃って大幅に上昇。米金利が低下したことやハイテク株式への資金流入が続き、ナスダックは319ポイントの大幅高。
  • 債券も買われ、長期金利は4.03%台に低下。
  • 金は続落。原油もサウジによる原油販売価格引き下げの影響から3ドルを超える大幅下落。
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11月消費者信用残高 → 23.751b
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ドル/円 143.67 〜 144.55
ユーロ/ドル 1.0943 〜 1.0979
ユーロ/円 157.68 〜 158.29
NYダウ +216.90 → 37,683.01ドル
GOLD −16.30 → 2,033.50ドル
WTI −3.04 → 70.77ドル
米10年国債 −0.11 → 4.034%

本日の注目イベント

  • 豪 豪11月住宅建設許可件数
  • 豪 豪11月小売売上高
  • 日 12月東京都区部消費者物価指数
  • 独 独11月鉱工業生産
  • 欧 ユーロ圏11月失業率
  • 米 11月貿易収支
  • 加 カナダ11月住宅建設許可件数
  • 加 カナダ11月貿易収支

本日のコメント

先週末のNYでは米経済指標が強弱の結果を示したことでドル円は上下に大きく動き、143円台後半から146円手前まで乱高下する動きを見せました。

まず、12月の雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想の「17.5万人」に対して「21.6万人」と、予想を大きく上回り、ドル円は146円手前まで急上昇。ただ、前月分が速報値から2万6000人も下方修正され、また失業率も「3.8%」と、こちらも市場予想より悪化していたことでドルが急反転。さらにその1時間半後に発表された12月のISM非製造業景況指数が予想を大きく下回ったことでドル売りが加速し、一時は143円81銭まで下落しています。その後ドル円は144円台後半まで反発しましたが、米労働市場が依然として底堅いのかどうかの判断に迷うところです。実際、今回のNFPの上振れは主に景気動向に左右されない「政府部門や教育・医療部門」での雇用が伸びており、この部門だけで12万6000人の伸びを見せています。「FRBは3月にも利下げを開始する」といったハト派寄りの見方が緩やかに後退しているのが現状です。

昨日のアジア市場では概ね144円台前半から半ばで推移していましたが、NYに入ると米長期金利が低下したことで再びドルが売られ、前日の安値をやや下回る143円台半ばまで売られています。アトランタ連銀のボスティック総裁は地元アトランタで講演を行い、「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」と述べながらも「勝利宣言には時期尚早だ」と依然、慎重さを維持していました。またボウマンFRB理事も楽観的な見方を示しながらも、慎重な姿勢を崩してはいませんでした。ボウマン氏はサウスカロライナ州での講演で、「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」との考えを示しましたが、続けて、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」と語っています。

一方、バンクオブアメリカのエコノミストはレポートで、「FOMCは3月、初の25ベーシスポイントの利下げと合わせて、テーパリング開始の計画を発表する」と主張しています。(ブルームバーグ)株式市場の動きを見ると、確かに利下げの可能性を織り込んだ動きを見せています。問題は「利下げ開始の時期」ということになりますが、11日(木)発表の12月の米消費者物価指数が次の材料になります。FOMCメンバーでは昨年のパウエル議長を除いては、他のメンバーは概ねタカ派寄りの姿勢を維持しています。

本日のドル円は143円30銭〜145円程度を予想します。

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What's going on?

What's going on ?」とは・・・
会話でよく使われる砕けた言い方で「何があったんだ?」「どうなっているんだ?」というような意味。為替はさまざま事が原因で動きます。その動いた要因を確認する意味で「What's going on ?」というタイトルを付けました。
日時 発言者 内容 市場への影響
1/8 ボウマン・FRB理事 「インフレ率が2%目標に向けて徐々に鈍化し続けるなら、金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、政策金利引き下げのプロセスを開始するのが将来的には適切になるだろう」、「ただ、まだそうした地点にはない」と発言し、「政策スタンスの将来的変更を考慮するアプローチにおいて、私としては警戒的姿勢を保つ方針だ」 --------
1/8 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「われわれは現在、2%に向けた道を進んでいる。目標はその道を外さないことだ」、「勝利宣言には時期尚早だ」 --------
1/3 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「米経済がソフトランディングを達成する可能性は高まっているように見えるが、確実とは言えない」、(大半の米金融当局者らが2024年の利下げを想定していることを認識しながらも)、「インフレ率の低下継続と広範な景気の動向という両方の問題に関する確信が金利変更のペースとタイミングを決める」 --------
1/3 FOMC議事要旨 政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークが、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」、「当局者らは、インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当局は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再認識した」、「インフレの鈍化が持続に確認されるまで、景気抑制的なスタンス」、「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/24 石破・元自民党幹事長 「『イシバノミクス』と偉そうなことを言うつもりはないが、本来の資本主義に戻す」、「金利のある世界が必要不可欠」、「異次元の金融緩和を実施し、壮大な実験ではあったが、それが所期の結果をおさめたかは検証が必要だ。需給ギャップが本当になくなったのか、そうではないと思っている」、「岸田首相は聞く力も大事だが、自民党が窮地にあり、発言力を発揮しなければいけない」 債券が買われ株は売られる。ドル円は142円台から143円へ。
12/20 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁 「金利を下げ始めることが重要だ。しかし、あまり急ぐ必要はないし、今すぐやるつもりもない」 --------
12/19 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率は向こう6カ月は比較的緩やかに低下していくと考えている。これは景気抑制的なスタンスを撤回する緊急性がないことを意味する」、(FOMCは来年の後半に2回の利下げを実施するだろうと、自身は予想するが)「それに関して活発に議論しているというわけではない --------
12/19 バーキン・リッチモンド連銀総裁 「インフレがうまく鈍化すると見なすなら、われわれは当然、適正に対応するだろう」、「向こう数カ月間にインフレに関するデータの一貫性と広がりを見たい」 --------
12/18 デーリー・SF連銀総裁 「今年のインフレ鈍化の程度を踏まえ、当局者が24年に利下げの検討を開始するのは適切だとしつつも、それがいつになりそうか臆測するのは時期尚早だ」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「米金融当局は市場がどう反応するかを考えて行動すべきではない」、「先週のFOMC後に公開した四半期の経済・金利予測に対し、市場が示した反応に困惑している」、「インフレについては、著しい改善が見られるものの、目標には依然戻っていない」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/18 メスター・クリーブランド連銀総裁 (来年の早期利下げを織り込んでいる金融市場について)、「政策の正常化について、少し先走っている」、「利下げに関する議論が活発化すれば、1年先のインフレ期待と、それが2%の目標に向かってどの程度のペースで下がっていくかを注視する」 債券が売られ、ドルは上昇。
12/15 ブレイナード・NEC委員長 「サプライチェーンの圧力緩和や堅調な雇用市場、力強い生産性、データにおけるさまざまな遅行効果を総合すると、インフレとの闘いが終わりに近づきつつあることが示唆される」、「想定し得る限りにおいて、経済は実に良好なバランスが取れた状態になりつつある。ディスインフレのプロセスがかなり安定した形で進んでいるようだ。従って、進展の継続を期待する十分な根拠はある」 --------
12/15 ボスティック・アトランタ連銀総裁 「インフレ率が予想通り低下すれば、2024年第3四半期に利下げが始まる」との見方を示し、「インフレ率は2024年末時点で2.4%前後になり、目標の2%からさほど離れていない見通しだ」 --------
12/15 グールズビー・シカゴ連銀総裁 「2023年に多くの進展を遂げてきたが、な注意しておこう。まだ終わっていない。従って、データが今後の金利動向を左右することになる」 --------
12/15 ウイリアムズ・NY連銀総裁 「利下げについて協議しているというほどでもない」、(来年3月の利下げについて考えるのは)「時期尚早だ」、「パウエル議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするため、金融政策は十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ、それが目前にある問題だ」 ドル円は141円台後半から142円台半ばまで買われる。
12/14 ラガルド・ECB総裁 「決して警戒を緩めてはならない。利下げについては全く議論しなかった」(消費者物価の上振れリスクは続いていると警告し)、「現在あるデータを見ると、圧力は弱まっていない」 市場の利下げ観測を一蹴したことで、ユーロドルは1.09台から1.10台に上昇。
12/13 パウエル・FRB議長 「予測はあらかじめ決められた計画ではない。物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はない」、「利下げは視野に入り始めており、実社会で話題になっているのは明白だ。今回のFOMC会合でも議論した」 株と債券が急騰。金利が大幅に低下したことでドル円は145円前後から142円台半ばまで下落。
12/13 FOMC声明文 「最近の複数の指標は、経済活動の伸びが第3四半期の力強いペースから鈍化してきたことを示唆する。雇用の伸びは今年の早い時期より緩やかになってきているが、強さを維持しており、失業率は低いままだ。インフレはこの1年で緩和したが、依然として高い水準にある」 --------
12/6 シュナーベル・ECB理事 「直近のインフレ率を見ると、追加利上げの可能性はかなり低い」、「11月のインフレ速報値は非常に嬉しいサプライズだった。最も重要なのは、より頑固だった基調的インフレ率が、予想以上に急激に低下していたことだ。これは驚くべきことだ。全体として、インフレの進展は心強い」 ユーロ安が進み、ユーロドルは1.0760まで売られる。
12/5 ブロック・RBA総裁 「インフレ率を合理的な時間枠で当局目標に確実に回帰させるため、金融政策のさらなる引き締めが必要かどうかはデータやリスクの評価に左右される」、「インフレ率を目標に回帰させる確固たる決意に変わりはなく、それを達成するために必要なことを行うつもりだ」 --------
12/1 パウエル・FRB議長 「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスが取れてきている」、「政策は今、かなり景気抑制的な領域に入っている」、「十分景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論付ける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合、そうする用意がある」 株式と債券が買われ、ドル円は148円台から146円台半ばまで下落。金価格も過去最高値を記録。
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外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和